農家に嫁いでよかった~私の居場所づくり。保土ケ谷区・苅部みつほさん
「横浜の地産地消を未来につなぐ体験講座」第6弾、2018年1月18日(木)の講師は、保土ケ谷区の苅部みつほさん。苅部大根を生み出した苅部博之さんのお母様でもあります。「嫁いで50年。大変だったけど農家でよかった」と語る苅部さんから、お話を伺ってきました。(写真:北原まどか)

片付かない家事、仕事でのミス、ささいなことが積み重なり、こんなはずじゃないと叫びたくなるようなある日。ふと母や友人の言葉を思い出し、なるようになるさと肩の力が抜ける時はありませんか?
農家のお母さんを講師にむかえた「横浜の地産地消を未来につなぐ体験講座」は、郷土料理はもちろん、横浜のいまを生きる女性へのメッセージもほんのり込めて企画されました。

第6弾の講師は苅部(かるべ)みつほさん(76)。
ご本人曰く「直売所FRESCOの看板おばあちゃん」であり、神奈川県の「ふるさとの生活技術指導士」、横浜市の「よこはま・ゆめ・ファーマー」の資格をもち、料理講師を務める方です。

 

苅部さんは山野草が大好き。お盆を彩るサザンカはお庭から

ご自宅にお邪魔し、応接間に通されると、「そこに座ってて」との一言とともに、苅部さんは台所へ。そして、大ぶりのお茶椀とお盆をもって現れました。
お盆には畑からとった柿、お手製の栗の渋皮煮、そしておかき。
手の込んだ品々に訪問した森ノオトのスタッフ3人、思わず黄色い歓声がもれます。苅部さんの笑顔と出されたお膳を前に、舌鼓と世間話にしばし夢中になってしまいました。

かたもち(かきもち)は苅部さんの自慢の一品。この俵型を保つのが難しい。冬に室内で餅を40日ほど干し、床下に置くと何年もカビが生えない保存食。今回は女性向けに焼いたもの。揚げたものは子どもや男性に人気

 

お昼ごはんにいただいた筑前煮は、こっくり甘い。「苅部家の味よ」と苅部さん。お嫁さんにもおいしいと好評で、煮しめはお客様に出すおもてなし料理の一つ。

苅部さんは保土ケ谷区西谷町の農家に嫁いで50年。嫁は農家の働き手の一人として当然のように考えられていた時代、子どもを産んでまもなく畑仕事に復帰しました。
今でもその時のやるせなさがこみあげてきます。
「母乳が出ているのに、義母に息子を託し、自分の手で育てられなかった。それがくやしい。世間知らずだから我慢できたのかもしれない」。
家族の中、ただ一人、家事に畑仕事にと時間に追われる暮らしにつらくなったこともあったといいます。

今は亡きご主人との思い出は尽きない。仕事熱心だったご主人は畑仕事に厳しかったが、そのほか新しくはじめること、家のこと、食べることなどすべてに寛大だった

そんな日々の中で、ふるさとの生活技術指導士の交流で出会ったのは「農家の嫁」仲間。
苅部さんは、はじめて仲間の家を訪問した時のことを今でも覚えています。
「30年前くらいかしら? いつも祭りや打ち合わせの担当は義父母や主人だったから、人のお宅に行くなんて初めてだったの。すごくうれしくてね」。そのお宅は、地産地消講座第5弾の講師を務めてくださる三澤百合子さん。互いの家を行き来し、今ではなんでも話せる仲だそう。

そして、仲間と話題になるのは「大変だったけれど、農家でよかったね」ということ。
苅部さんは自信に満ちた顔で語ります。
「この歳になっても忙しいけれど働く場所があって、存在感がもてる。“お袋がいなきゃ困るよ”って言われるような居場所があるの。それに自分で収穫したものを楽しめて、仲間と交流もできるしね」。
必要とされること、自分の自由になるお金や時間のあること、そしてなんでも語れる仲間がいること、苅部さんの居場所はそんなところにあるようです。

農家の嫁仲間6人で小径(こみち)会を結成。1998年には料理本を出版。梅干じゃこごはんやかたもちなど苅部さん自慢のレシピも収録。約20年前当時の写真とそれぞれ想いを綴ったエッセーが素敵

 

直売所FRESCOの前で。何よりも孫がかわいいと笑う苅部さん

「唯一、息子にほめられるのは……ね」とにっこり。
「“野菜の扱いがていねい”って。ホウレンソウを束ねたり、里芋を袋わけしたり。野菜は同じ形ばかりじゃないから、お客さんのために、どの袋も同じ品質に分けるのがコツなの」
息子の博之さんが経営する「直売所FRESCO」では、苅部さんが不在だと「今日はお母さんいないの?」と聞く人がいるほどの人気ぶり。野菜購入には、苅部さんの料理アドバイスがかかせません。さすがは「直売所FRESCO看板おばあちゃん」。
そして、おしゃべりが大好きな苅部さんにとっても、大好きな仕事の一つです。

昔の苦労をさらりと語り、話題の尽きない苅部さんと話していると、不思議と元気が出てきます。
苅部さんは大変だった時、どんなふうに人生を切り拓いてこられたのでしょう?
「栗の皮むきはいくらやっても飽きたことがない」「毎年、かたもちづくりは欠かしたことがない」「おしゃべりが好き」「フィギュアスケートを見るのが好き」「山野草が大好き」「朝の孫の見送りを楽しみにしている」……
苅部さんから決定的な一言で聞いたわけではないけれど、目の前のことを一つひとつ懸命にこなし、“好き”を積み重ねての今の居場所なのだと少し分かった気がしました。

「横浜の地産地消を未来につなぐ体験講座」で、苅部さんとのおしゃべりからもっとお話を伺ってみませんか?
息子さんが9年の歳月を経て生み出した鮮やかな紅い苅部大根のお料理も必見ですよ。

Information

平成29年度 横浜市経済局消費生活協働促進事業

「農家のお母さん発!横浜の地産地消を未来につなぐ体験講座」

【第6回】「大根の漬物と大根ステーキ」

講師:苅部みつほさん

日時:2018118日(木)10:00-12:30

会場:クッキングサロン ハマッ子

(横浜市都筑区中川中央1-26-6

横浜市営地下鉄ブルーライン・グリーンライン センター北駅より徒歩1

料金: 2,500

定員:15名(先着順)

申し込み方法:参加希望回、氏名、生年月日、住所、電話番号、E-mailアドレス、参加の動機を記入の上、event@morinooto.jpまでお申し込みください。

主催:特定非営利活動法人森ノオト

227-0033 横浜市青葉区鴨志田町818-3

TEL045-532-6941FAX045-985-9945

共催:アートフォーラムあざみ野(男女共同参画センター横浜北)

後援:横浜市環境創造局、JA横浜

この講座は、2月、3月も続きます。連続受講もおすすめです。

第7回

2018224日(土)

会場:飯田神社脇の竹林(泉区上飯田町)

テーマ:竹林の中でつくる竹の「ひな巻き寿司」

講師:まゆの会

桃の節句までもうすぐ。農家のおばちゃんたちの秘密基地・竹林で、竹のひな巻き寿司をつくります。火であったまって、豚汁を飲んで、心も体もポカポカに。

この回はお子様連れでの参加もOK。巻き寿司の追加も可(1500円)

第8回

2018328日(水)

テーマ:よもぎ団子と季節野菜のすいとん

講師:野路幸子さん

春の味覚を体いっぱい味わいましょう!出始めのよもぎでつくるお団子は、目にも鮮やかな緑が特徴。米粉や小麦も地元・青葉区田奈町産です。野路さんの畑からの採れたて野菜ですいとんも。

会場:アートフォーラムあざみ野 3F生活工房

明石 智代
この記事を書いた人
明石智代ライター
広島県出身。5年暮らした山形県鶴岡市で農家さん漁師さんの取材を通して、すっかり「食と農」のとりこに。森ノオトでも地産地消、農家インタビューを積極的にこなす。作り手の想いや食材の背景を知ることで、より食材の味わいが増すことに気づく。平日勤務、土日は森ノオトの経理助っ人に。
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