梅原さんのエネルギー夜話・その1 電力会社を切り替えた
2011年の東日本大震災を受けてから様々な経緯を経て、ここ2年ほど、求められれば神奈川県内、何処へでも馳せ参じ、エネルギーについての講座をおこなっています。講座でお伝えしていることのエッセンスや、エピソード、また、講座の中では紹介しきれない話を改めてまとめてシリーズでお届けします。
(この記事は、消費者力アップ県民提案事業の委託事業の一環でお届けしています)

自分の暮らしや志向に合わせて、電力会社を選べるようになったことは、みなさんもうご存知ですよね。きっとコマーシャルや営業によって、どうしようかなと悩んで、わからなくて放棄している人も多いのではないでしょうか。

 

電力会社を切り替えたかどうかを尋ねてみると、2016年の電力自由化が始まった初期の頃から関心があって即変えましたという人、変えたいけど色々迷って一年以上経ってから変えた人、まだ傍観中の人、そもそもあまり興味のない人、様々です。

 

新しい電力会社には、自治体が主導しているもの、民間企業が新規事業としてはじめたもの、市民電力といって地域住民が電力会社を立ち上げたもの、生協等の団体が母体となった電力会社などがあります。また、民間の企業が立ち上げた会社の中でも、大手電力会社の電気を販売する代理店もあります。

電力会社には、発電と送電と売電と3つの部門があり、売電部門も、大規模な工場へ、学校や事業所などへ、一般家庭へと小売事業が分かれます。発電事業と小売事業と両方を行う会社と、自社の発電所を持たずに販売のみを代行する会社もあるのです。

 

私自身も電力会社を切り替えたいなと思いながら、思った以上に色々な会社があるし、市民電力系の方々との縁があったので、どれを選ぶべきか色々迷いました。そうして自由化から一年以上経ってから、「湘南電力」という神奈川県で自然エネルギーの地産地消を目指す会社から、電力を買うことにしました。ここ数年、神奈川県という括りが何となく面白いなと感じていたのが主な理由です。神奈川県民か県内の事業者しか購入できないという限定具合とか、選べる地域応援プランがあって、そのうちの一つ、環境保全や美化活動をする県内のNPO等に電気代の一部が寄付されることにも魅力を感じました。

 

電源構成を見ると、今のところ、地産の再生可能エネルギーの電気の割合は19%で、あとは、その他となっており、天然ガスや、石炭石油由来の電気の割合が実際にはまだ多いのですが、今後、地産の電気を増やしていく余地があるところに投資しようと思って選びました。

 

我が家は、もともと賃貸の団地での二人暮らしで、2015年に15Aから10Aに契約を変えました。電気料金は月々1800円前後。大した寄付にもならないわけですが、今まで、個人ではどうにもできなくて、大きなものに巻かれるしかなかった大手企業の独占状態からは少し抜け出せた気がして、ほっとしたのを覚えています。

湘南電力の電力料金のしくみは、基本料金があって従量料金があるという既存の電力会社と変わらない形ですが、1kWあたりの単価が低いので、料金も少し安くなりました。

 

2017年8月には、森ノオトの北原まどか編集長とともに、湘南電力の代表取締役社長の原正樹さんを訪ねました。

 

すっきりとして爽やかな風を感じさせる原社長(46歳)。「持続可能な社会を作るためには、市民として生活の基盤に等しく責任を持つ、責任のシェアリングという考え方がこれからは必要ではないか」と語る

 

原さんは、現在、小田原市で100年以上続く老舗ガス会社、小田原ガスの14代目社長をつとめています。湘南電力の社長に就任したのは2017年5月のこと。副社長はライバル会社である、ガスの販売事業を手掛けてきた株式会社古川の古川剛士さんです。電気に続いてガスの小売事業の自由化が始まったこともあり、エネルギーで持続可能な仕事と暮らし、地域をつくるために、競争を超えて、手を取り合うことになったそうです。

 

小田原では、東日本大震災の後に、ほうとくエネルギーが立ち上がり、市民の出資による発電所がいち早く作られました。地産はできたが地消はどうするかと検討する中で、事業所などへの売電をすでに行なっていた株式会社エナリスの子会社として湘南電力を立ち上げ、2016年10月から小売事業を開始します。

 

(ほうとくエネルギーについては、以前、バスツアーの企画があり、青木真紀さんによる記事が残っています)

 

その後、エナリスは、もともと東京の会社であることもあり、地域主導をより推しすすめていくために、原さんたち、小田原の経営者たちが事業を担うことになりました。ここに至る仕掛け人的人物については次回に書くとして、若い経営者たちが自ら変革の旗を振り始めたことは、未来への希望を感じさせます。

 

小田原ガスの本社にある大きなガスタンク。ガスが当たり前に使える環境に慣れきってしまっている現代の私たちですが、1970年代には、ガスタンクの危険性に対する反対運動があったとか

 

ところで、ガスはどこからどうやって、私たちの住まいまで届くのでしょうか?

海外のプラントから、専用タンカーで運ばれて来るということは知っていても、その後については私も実はいまいちわかっていなかったので、原さんのお話を元に簡単なイラストにしてみました。

 

磯子区の根岸の天然ガス基地から長いパイプラインを通って、小田原まで運ばれる。さらに、小田原ガスから、各家庭へとパイプが続く。普段の生活では目に見えない、道路の下の世界に思いを馳せる

 

天然ガスは、石炭や石油に比べて燃焼時の有害物質が少ないクリーンなエネルギー源だとして利用が拡大しており、その全てが海外からの輸入で賄われています。日本の天然ガスの輸入量は年間8000万トンを超え、世界各国でもガス田の開発やプラントの設計計画が進み、全体として増加傾向にあります。そのことについては、もう市民としてはなすすべなしというか、ただ受け入れるしかありませんが、海外に流れる莫大な燃料代の1パーセントでも地域で回るような仕組みを考えていきたいものです。

 

今後、地域のエネルギーをどうするかについて、対立構造を作らずに進むという道を、私たちも原さんたちも模索していることがわかり、同志を得たという気持ちになったのでした。

 

(その2に続く)

……夜話(やわ)とは、

(1)夜間にする談話。また、それを書き記した書物。

(2)気軽に聞ける話、また、そのような内容の本。

(3)禅宗で、夜に修行場の訓話をすること。

Information

小田原ガス株式会社

http://www.odawaragas.co.jp/

 

湘南電力

http://shonan-power.co.jp/

梅原 昭子
この記事を書いた人
梅原昭子理事/事務局長/ライター
難しいものをおもしろく、かたいものをやわらかく翻訳し、絵で表現できる編集者。市民電力会社「たまプラーザぶんぶん電力」の社長になってしまうが、エネルギーの世界にも飄々とたゆたう視点で、こんがらがった世界を解きほぐす。アートユニット「WAKUSEI/ワクセイ」として縦横無尽に活動中。
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