2/9(金)エコキネマvol.3は『玄牝』上映会
年に一度、東急田園都市線青葉台駅の青葉台フォーラムを会場に開催するドキュメンタリー上映会”エコキネマ”。今回は、河瀨直美監督の2010年の作品『玄牝(げんぴん)』です。

これまで、エコキネマ来場者アンケートで、「今後観てみたいドキュメンタリー映画は何ですか?」という質問に、毎回一番多く名前が挙がっていた『玄牝』。
今回、やっと上映する機会を得ました。
 
自然なお産を願う女性たちの中ではあまりに有名な、愛知県岡崎市の吉村医院を、『萌の朱雀』『嬪の森』などで知られる河瀨直美監督が撮ったドキュメンタリー映画です。
お産という普遍的なテーマを、河瀨直美監督が撮るとどう描かれるのだろう、と、とても興味を持っていました。
 
 
ストーリー(チラシより抜粋)
…………
 
愛知県岡崎市、森の中にある吉村医院には、「自然に子を産みたい」と願う妊婦たちが全国からやってくる。「不安はお産お大敵。ゴロゴロ、ビクビク、パクパクしないこと」。こう話すのは2万例以上のお産に立ち会ってきた院長・吉村正先生だ。お産は痛くて苦しいと思い続けていた人、初産で経験した医療行為が辛い記憶になってしまった人……。
それぞれの事情や想いを抱えながらも、妊婦たちはいきいきと輝きはじめる。そして、迎える出産の日。新たな命と呼応するように、彼女たちは声をあげる……「きもちいい」「あったかい」「ありがとう」。その様子を見守る家族や助産師の想い、そして、生まれることなく消えてゆく命とも向き合う吉村先生の葛藤……現代に生きる私たちの強さと脆さ、喜びと悲しみがないまぜとなって、ひとつに結ばれていく。
 
…………

吉村正さん:1932年愛知県生まれ。1961年より吉村医院院長として49年にわたり、2万例以上のお産に取り組む。この映画の撮影後に病気で引退、昨年11月に亡くなる。たくさんの著書や講演活動で、「現代的な生活に頼らず、伝統的な日本の食事を食べ、不安を抱えず自然体でいる」=「ごろごろ、ぱくぱく、びくびくしない」妊娠生活を提唱(写真提供:組画)


この映画では、現代医学の技術を取り入れつつも、昔ながらの自然なお産に対して揺るぎない信念を持つ在りし日の吉村院長の姿や、助産師さんたちの思いや葛藤、それぞれの意思でそこに集う妊婦さんたちが描かれています。

自然なお産は暮らしの延長”として、ここに集う妊婦さんは昔懐かしい里山のような場所で、薪割りや雑巾掛けなどの昔ながらの労働を体験する(写真提供:組画)


 

村先生を囲んでの両親学級。思い思いに自分のことを話せる場となっている(写真提供:組画)


 

私自身は、出産のあり方に対してさして疑問を抱くことなく、当時住んでいた都内の小さな産院で自然分娩をしました。「助産院」という場所があることは知っていたものの、高齢出産でもあったので、何かあれば大きな病院にすぐ行ける距離の、通いやすい産院。その頃は、吉村先生の存在も全く知りませんでした。
「まあこんなものだろう」という想定内の出産体験であり、痛みや後遺症もなにせ初めての経験で年齢的にしょうがないと思っていたので、何の疑問を抱くこともなかったのですが、その後森ノオトエリアに引っ越してきて、なんとここは、助産院、個人産院、総合病院……出産をする場の選択肢が多いのか、そして、中でも周りには意思を持って産院を選ぶ人が多いこと、さらに、それ以前に以前の出産時のトラウマを抱える人も多いことを知りました。
そして、助産院を選んだ友人たちが、出産後一様に「楽しかったー」「また産みたい!」と言っているのを聞き、私は、子どもが誕生したことへの喜びはあったものの、出産すること自体にそこまでの思いはなかった、というよりは、「もう結構です」くらいの気持ちではなかったか、と我が身を振り返りました。その頃になって初めて、吉村先生のことを知り、こういう自然なお産も体験してみたかった、と思うと同時に、その気持ちが『玄牝』という作品、吉村先生自身への興味につながっていきました。
 
この映画は、河瀨直美監督の視点が、自然分娩礼賛というものではなく、一歩ひいていて俯瞰しているように感じます。だからこそ、色々な人の思いや、葛藤、確執……様々な思いが自然と描かれているように感じます。
そして、やはり、赤ちゃんが生まれてくる瞬間は本当に全てが美しく、妊婦さんは神々しくすら感じました。
この奇跡的な映像を、10分しか続けて撮ることができない16ミリフィルムで撮っているというので驚きます。

河瀬直美監督は、1969年生まれ。自主映画『につつまれて」『かたつもり」で、1995年山形国際ドキュメンタリー映画祭国際批評家連盟賞などを受賞。初の劇場映画『萌の朱雀』で1997年カンヌ国際映画祭カメラドールを史上最年少受賞。2007年『殯の森』で審査員特別大賞グランプリ受賞。2009年にはカンヌ国際映画祭に貢献した監督に送られる「黄金の馬車賞」受賞(写真提供:組画)

映画の中で「生きるものは生きる、死ぬものは死ぬ」と吉村先生が話すシーンがあります。
本来、生命とはそのようなものなのだ、と思いつつも、医者である先生からそういう言葉を聞くと、ドキリとします。きっとたくさんの命と向き合って、受け止めてきたからこその言葉なのだと感じます。
 
出産のこと、子どものこと、命のこと……何が正しくて何が間違っているということは何一つないのだと思います。もちろん、このような自然出産を誰もが選択しなくてはいけない、ということでもありません。選択肢の一つとして知ればいい、と。

新しい命が生まれた

私は、ドキュメンタリー映画は、時々立ち止まってふっと考えるきっかけを与えてくれるもの、自分の中に何か刺激を与えてくれるものだと思っています。
この「玄牝」を観終わった後、私は、娘を無性に抱きしめたくなりました。
 
今回、午前の部は、小さなお子様(未就園児)も一緒にご覧いただける回とし、午後は、お子様連れはご遠慮いただき、静かに鑑賞していただく回となります。
さあ、映画を観に出かけませんか?
 

 

Information

エコキネマvol.3 『玄牝』

玄牝公式HPhttp://www.genpin.net/index.html

監督・撮影構成:河瀨直美/2010/ 92分 

日時:201829日(金)

午前の部10:00-11:45/ 午後の部13:00-14:45(開場:上映30分前)

午前の部は未就園児同伴可とします。周囲の方はあたたかい目で見守ってください。

午後の部はゆったりみていただくためにお子様の同伴はご遠慮ください。

会場:ホテル&レストラン青葉台フォーラム(横浜市青葉区青葉台1-5-8) 

東急田園都市線「青葉台駅」徒歩2
 

http://www.hotel-aobadai-forum.com/access.html

入場料:前売り1,000/当日1,200

お申し込み:

・希望回(午前or午後)

・お名前(複数名の場合はお連れ様のお名前も)

・人数

・お電話番号(代表者)

・お子様連れの有無(お子様の月齢)

をご記入の上、event@morinooto.jp へお申込みください。

お支払い方法はオンライン決済とお振込がございます。

上映会の詳しい情報などは、随時こちらでも掲載していきます。
https://www.facebook.com/events/1059054074234479/

主催:森ノオト/青葉台フォーラム

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この記事を書いた人
齋藤由美子AppliQué事業部マネージャー/ライター
森ノオトの事務局スタッフとして、主にAppliQuéのディレクションを担当。神々が集う島根県出雲市の田舎町で育ったせいか、土がないところは落ち着かない。家では「シンプルな暮らし」関連本が十数年にわたり増殖中。元アナウンサーで、ナレーターやMCとしての顔も持つ。小3女子の母。
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