梅原さんのエネルギー夜話・その9 身体のエネルギー
社会的なエネルギーの問題をテーマに講座を行っていても、どうしても行き着いてしまうのが身体へのまなざしです。人間の身体をよく見つめて、自分自身のエネルギー効率をよくすることもエネルギー問題を考える時に欠かせない視点ではないでしょうか。
(この記事は、消費者力アップ県民提案事業の委託事業の一環でお届けしています)

古い知人で「わたしは燃費が悪い」とよく言っている人がいました。小柄で痩せている割に、たくさん食べないとダメな体質で、お腹がすいた状態を我慢していると、どんどん機嫌が悪くなるのです。

 

それまで燃費という視点で、自分を見つめてみたことがなかったので、面白い表現だなと思ったことを覚えています。わたしはというと、食べるのが楽しい時、義務とかつきあいとして食べる時、ものすごく億劫で面倒な時、食べられない、あるいは必要としない時が、緩やかに混じっていて、毎日同じ時間にきちんと3食食べるということが苦手です。そのため、一人暮らしだと際限なくルーズになるので誰かと過ごすようにしている、というところがあります。今は、だいたい一日2食で過ごしていて、総合すると燃費が良い方なのではないかと思っています。

 

住宅や建物には「燃費」を評価して表示する「BELS(ベルス)」という制度があります。Building-Housing Energy-efficiency Labeling System の略で、日本語にすると、建築物の省エネ性能表示制度といい、建物の一次エネルギーの消費性能と、外皮の断熱性能を5段階の星の数で表すものです。BELSの星をたくさん取得しているほど、省エネの性能が高い、つまり燃費の良い家というわけです。人間も燃費で分類したら、どうなるでしょうね。

 

BELSの表示。人間の燃費はいかに

 

食べ物が自分の手元に来るまでにも、エネルギーがたくさん使われているので、いわゆるフードマイレージの要素も加えると、私も、自分が思っている以上に燃費が悪いのかもしれません。手付かず食品として消費期限のものを捨ててしまう、フードロスしてしまうことも時折あります。

 

個人的に今気になっているのは、「不食」の人たちです。ほとんど食べない、水さえそんなに飲まなくても普通に日常生活を送っている方が一定数いて、その方々はエネルギー効率が非常に良い状態、燃費から見ると最高級と言えるでしょう。呼吸だけで十分生きていける人がいるというのは知らない人にとっては衝撃的かもしれませんが、それが自然な人もいるのですね。夢中になってムシャムシャと美味しそうに食べる人の姿を見るのはなんとも言えない快楽で、食に関するエッセイなんかも好きですが、食べなくてはいけない、食べないと健康によくないとは言い切れないようです。不食の方々は、それをメソッドとして他人に押し付けたりもしないので素敵だなと感じています。

 

人間が最もたくさん食べているものは空気。成人の場合、水や食べ物は、一日平均して3〜5kg摂取している

 

人間は発熱しているし、エネルギー源とも言える

 

エネルギーdeエコロジー入門講座の「コース2」では、暮らしに使うお金の全体から、エネルギーについて考えてみるというワークを行いますが、参加者のなかで、衣食住の中でも「食」に投入する金額がもっとも大きいという人は多いです。食の楽しみは残しながら、でも、身体の要求以上に飲んだり食べたりしていないか、自分の燃費を自分で悪くしていないかと、時に自分の常識を疑ってみてはいかがでしょう。

 

美容とか痩身、精神の健康のために断食する方も多いかもしれません。その行動は、持続可能なエネルギー社会の問題とも関わっているのだと考えると、より深い体験ができるのではないでしょうか。本当に美味しいと思うものを食べているかどうかという視点もとても大切でしょう。そのためには労力を惜しまない、エネルギーを注ぎ込むというのも、幸せな生き方の一つです。

 

 

 

食べ物から熱源を得るだけでなく、自分が発熱する動物であることも、忘れないでいたいことです。自分の体力を発揮する場を減らしていないかどうか、考えて動くことはエネルギーの問題とつながっています。知力、体力とも、動かすことで、パワーを発揮できますし、火事場の馬鹿力というように、想像以上のパワーを人間誰しも秘めています。

 

寒い時には重ね着をする対策が最も簡単な方法ですが、厚着をしすぎることが、冷えの根本から抜け出せない原因になっていたりします。それも自分で燃費を悪くしている一例です。私は、健康法というものにあまり興味がなかったのですが、自分にフィットする方法を見つけて、冷えが気にならなくなりました。最近は、靴下って、もしかして暮らしていく上であまりいらないものだったのかも、という状態になっています。

 

住まいは、冬でも裸足で過ごせるくらい暖かい断熱仕様にしていくのがいいように思いますが、同時に、そこそこ寒いところでも暖かくいられる身体、暑さの中でも涼しくいられる身体をつくる、といったことに挑戦するのも楽しいものです。それは我慢の世界、忍耐と努力の世界とはまた違います。自然にそうなっていた、気持ち良い方を目指したら、違和感が解消されて、そうなっちゃった、というのが理想です。世の中に一つしかない自分の身体は、一番大きな謎でもあるかと思うので、身体の燃費の研究も終わりのない、持続可能な仕事です。そして誰もがいつでも始めることができます。

 

省エネを進めていく際に、政治や行政の枠組みを変えていくこともとても大事です。でも、その前提として、個々人が、自分の暮らしや、身体を置き去りにしないで欲しいなといつも思っています。

 

 

(了)

……夜話(やわ)とは、

(1)夜間にする談話。また、それを書き記した書物。

(2)気軽に聞ける話、また、そのような内容の本。

(3)禅宗で、夜に修行場の訓話をすること。

Information

住まいの燃費

BELSについて詳細を知りたい方に。

一般社団法人住宅性能評価・表示協会

https://www.hyoukakyoukai.or.jp/bels/bels.html

梅原 昭子
この記事を書いた人
梅原昭子理事/事務局長/ライター
難しいものをおもしろく、かたいものをやわらかく翻訳し、絵で表現できる編集者。市民電力会社「たまプラーザぶんぶん電力」の社長になってしまうが、エネルギーの世界にも飄々とたゆたう視点で、こんがらがった世界を解きほぐす。アートユニット「WAKUSEI/ワクセイ」として縦横無尽に活動中。
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