「寄付で支えるメディアをつくるための5つの問い」〜greenz.jp植原正太郎さん
メディア関係者や情報発信に関心のある人たちのための勉強会「かながわローカルメディアミーティング」。第5回目は、日本初の寄付型メディア「greenz.jp」のコミュニティエディターの植原正太郎さんをゲストにお招きしました。寄付で支えるメディアの仕組みについて学び、その可能性を探りました。

森ノオト読者なら、「ほしい未来は、つくろう。」をテーマにしたウェブマガジン「greenz.jp」をよく知る人は多いのではないでしょうか。

 

greenz.jp(以下グリーンズ)は2006年の創刊以降、持続可能な社会を目指す非営利のメディアとして、これまでに6000本以上の記事を配信しています。記事テーマは、働き方やものづくり、教育やエネルギーなど、そのジャンルは多岐にわたり、取材エリアも日本全国のみならず海外まで幅広く、ほしい未来をつくる担い手という視点でさまざまプレイヤーを紹介しています。私たち森ノオトも2017年3月に取り上げていただき、森ノオトの活動の認知や広がりに、大きな影響を与えてくれました。

 

2012年にNPO法人化すると、2013年からは「greenz people」というグリーンズの活動を寄付でサポートする寄付会員制度をスタートしました。従来のメディアの広告や購読料で運営資金を稼ぐという手法ではなく、寄付金を集め、それを記事の原稿料や取材費として活用するという新しいビジネスモデルに挑戦してきた先進的なメディアです。

 

「寄付型メディア」とは、どんな仕組みで運営されているのでしょうか? 2018年1月19日に開催したローカルメディアミーティングのゲストは、NPO法人グリーンズで、寄付会員制度「greenz people」を担当するコミュニティエディターの植原正太郎さん。寄付で支えるメディアの運営やその意義について学びました。

 

greenz.jpコミュニティエディターの植原正太郎さん。ライターインターンとして学生時代からgreenz.jpとの関わりが始まったそう

 

植原さんは、一般的なNPO組織でいうところの、資金調達分野の専門家・ファンドレイザーの役割で、「コミュニティエディター」という肩書きで活動しています。その名のとおり、グリーンズでは寄付会員制度「greenz people」を「支援する側」と「される側」とに分けず、「ほしい未来をつくる仲間」という一つのコミュニティとして考え、コミュニティの運営を植原さんは一任されています。「グリーンズはメディアでありコミュニティでもある不思議な存在なんですよね」(植原さん)。

 

寄付会員「greenz people」になると、オンライン、オフラインともに会員限定の情報を得ることができ、イベントや部活動的な活動に参加できたり、コミュニティ内での発信ができるといったメリットがあります。しかし、グリーンズの記事は全て無料。お金を払わずして読めるのに、寄付をしてメディアを支えたいと思うのは、どういう人たちなのでしょうか。

 

「記事を読んで影響を受けた人がpeopleになってくれることが多いです。寄付してくださっている方々の中に、実は家づくりの専門家がいたり、まちおこしに取り組んでいる人だったり、『おもしろいじゃん!』っていう人たちがたくさんいたんですよ」と植原さん。寄付者はまさにグリーンズが取材対象としてきたような「ほしい未来をつくる担い手」であったと言います。

 

その気付きから植原さんは、積極的にコミュニティ運営をしていこうと考えるようになり、仕事で地方に行く機会があればそこに住むpeopleに個別に連絡をして会ってみたりと、地道に丁寧にコミュニティを育んでいます。

 

スタートしてから5年目の現在、「greenz people」は880人を超え、年間300本あがる記事のうち約120本が寄付を原資にして制作コストをまかなうことができているそうです。

 

「サービスを“買う”になると対価として求めるものが大きくなっちゃいますよね。でも寄付だと“応援”っていう健全なコミュニケーションになると思っていて。寄付するって日本ではまだそんなに馴染みがない感じがするんだけど、税金以外のお金の使い方として、もっと広がると良いなと思います」(植原さん)。

 

植原さんからの5つの問い。「自分自身もこの問いを考える良い機会になった」と植原さん

 

寄付型メディアの仕組みを学んだあとは、参加者同士のグループディスカッションを行いました。植原さんから出されたディスカッションテーマは、寄付で支えるメディアをつくるための5つの問いです。

 

「どれだけ読者に「Give」できるか?/どれだけ読者を「仲間」にできるか?/メディアとしての価値観は何?/マーケティングとコミュニティのバランス/寄付でどんな価値を生み出せるのか?」

 

この中から各グループで1つテーマを選んで自由に話し合ってもらいました。各グループともに「どれだけ読者を仲間にできるか」という問いについて話しを深めたようで、「読者を仲間にすることも大事だけど、ライター仲間を増やしてそのまわりの人たちにファンになってもらうのも良い方法かも」「リアルに会えるお茶会的なイベントを実際にやってみます」といった具体的なアイデアがあがりました。

 

この日も県内を中心に地域で情報発信を行う人たちが参加した

 

植原さんは「読者がメディアに対していつ“仲間”だと思うのかと考えると、“貢献”できた時だと思います。メディアに関われる入り口をつくる、貢献できる仕組みをつくっていくことが大事なのかなと思っています」と大きなヒントを残して話を締めくくりました。

 

かながわローカルメディアミーティングは神奈川県の市民活動を情報の力を使って強くしていくための情報集積会議です

 

森ノオトもグリーンズと同じく、広告費を取らずに運営している非営利のメディアです。私が以前に勤めていた地域新聞社では広告費で全ての運営費を稼いでいました。報道機関として通常の記事におけるペンの自由は保障されていましたが、一方で自分の身近な「いい活動をしている人」や「本気で紹介したいお店」というのは、広告扱いになってしまうため記事として紹介することができないというジレンマがありました。

 

森ノオトでライターをするようになって、自分が本当に良いと思うこと、世の中に知ってもらいたい人やお店を取材し記事にできることに喜びを感じています。同時に、ライターの書きたいことを書け、かつ編集権をしっかりと持ったメディアは稀有であることにも気付きました。

 

ライターのペンの自由と、どこにも依存しない編集権を持ち続けていくメディア運営を継続するために森ノオトがたどり着いたのは、グリーンズと同じように「寄付で支えるメディア」というスタイルです。森ノオトではこの春から、マンスリーサポーター制度を設け、オンラインで寄付ができる寄付決済システムも導入しました。森ノオトというメディアが生み出している社会への効用に共感し、応援してくれる人々が託してくれたお金で、ローカルメディアを運営していきたいと考えています。一歩先を行く、グリーンズの背中を追いかけ、メディアとしての価値を問い続けながら「寄付型ローカルメディア」という新しいチャレンジをしていきたいと思います。

 

Information
宇都宮 南海子
この記事を書いた人
宇都宮南海子ライター/スタッフ
元地域新聞記者。エコツーリズムの先進地域である沖縄本島のやんばるエリア出身で、総勢14人の大家族の中で育つ。田園風景が残る横浜市青葉区寺家町へ都会移住し、森ノオトの事務局スタッフとして主に編集部と子育て事業を担当。ワークショップデザイナー、2児の母。
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