ありのままに、みんなで育ちあう。そとあそびクラブのびる
【ライター養成講座修了レポート:染谷靖子 】子どもが産まれたときの「とにかく元気に育ってほしい」「この子らしく生きてほしい」という気持ちが薄れ、「親にとっての良い人生」を押し付けそうになりがちなこの頃。川崎市高津区で野外活動をする「そとあそびこどもクラブのびる」に参加して、“自ら育つ子どもたちの力を信じ、ありのままの子どもをそのまんま受け入る”姿勢から、子どもらしさを見守るヒントをもらいました。

自分の住んでいる地域の子育て情報を得るため、子育て支援センターにあるチラシをみていたところ、NPO法人 子育て支えあいネットワーク満(以下、満)が発行する“あったかつうしん”(2007~2017年まで高津区からの委託事業)をみつけます。それ以降、満の発信する子育て情報をチェックするようになり、同団体が主催する「そとあそびクラブのびる」(以下、のびる)の紹介に書かれていた“子どもの育つ力”、“自主保育”という言葉に「!?」なりました。

 

のびるでは川崎市高津区にある市民プラザ、梶ヶ谷第3公園などの場所で外遊びを楽しみます。0歳から就学前の子どもが参加でき、母子での参加のほか2歳前後の子の一時預りもしています。私が息子を連れて参加したとき、一時預かりでの参加の子が泣いていて、のびるのスタッフが慰めていました。スタッフの方は、その子をすぐにほかの子と遊ばせようとはせず、寂しい気持ちのその子に寄り添っていたら、いつの間にかその子がほかの子と遊んでいたことが印象的でした。そんな光景をみつつ、先輩お母さんたちのあたたかい雰囲気の中で私と息子ものんびり過ごしていました。そしてふと、自分の子育てで「子どもに何をしたら良いのか」ばかり考えすぎていて、「子どもがどうしたいか、何を感じているのか」を置き去りにしていたと感じました。

 

子どもたちは水遊び大好き!色水を混ぜたり、移しかえたりを真剣にやっている(写真提供:そとあそびこどもクラブのびる)

 

のびるでは自主保育経験者が保育スタッフとして子どもたちを見守っています。のびるの活動をスタートさせた中心メンバーである河村麻莉子さんは、3人の男の子を育てるお母さんです。幼稚園を見学した河村さんの長男が「人がたくさんいて怖かった」と言ったことから、子育て交流会で出会った自主保育経験者の友人たちと親子で過ごし始めます。この活動は、現在も活動が続く自主保育グループ「B.Bだん』となり、多い時で13家族が参加していました。その後、長男が小学校へ入学したことをきっかけに、自宅の近くで自主保育の活動を始めます。

 

東京都羽村市にある玉川上水の取水口(水源)である羽村堰から多摩川の河口までのおよそ50キロをサイクリングしたり、何もすることなくとことん暇を持て余す時間を過ごすなど、「当時の自主保育は、充実した部活動みたいだった」と話す河村さん。

 

一方で子どもを自主保育で育てることに迷いもあったとか。でも「自分の子が泣いているときに、ほかの子のお母さんがなぐさめてくれてほっとした」ことから、「一人で100%の子育てをしようとするのではなく、自分にはないものを持つほかの親たちとやっていけばいいんだ」と思えたそうです。

 

河村さんが3人目の子を妊娠したとき、上の子のお迎えにきてもらうなど「他のメンバーにお願いすることがしんどくて、心苦しかった」時期がありました。メンバーのお母さんから「自分たちではなく、ほかの人にかえしてくれればいいから」と言われたこともあり、いつか「自主保育経験者の友人たちと外遊び活動グループを立ち上げたい」と考えます。子どもに手がかからなくなってきたタイミングもあり、2014年に自主保育と並行して活動していた満のイベントとして「子どもとの今を10倍楽しんじゃう講座」を実現することに。これが後ののびるの活動となりました。

 

自然の中で遊ぶことで、子どもたちは五感をフル回転させて楽しんでいる(そとあそびこどもクラブのびる)

 

自主保育ではメンバーの親同士が一人ひとりの子どもとどう関わるかを話し合い、共有します。その中には子ども同士のケンカやいじわるなど、ときには答えのない見つからない状況もあります。河村さんが参加していた活動でも、どうしたらいいかわからず、みんなで途方にくれてしまうこともあったそうです。それでも「いつの間にか子どもが次のステップに進んでいた」と振り返ります。

 

河村さんの3男が川崎市にある子どもの遊び場「子ども夢パーク」のタワーに登りたくて、でもまだ自分の力では登れず、親たちも手を貸さず、いつも大声で泣いていた時期がありました。やっと自分の力でタワーを登れた時の顔を、河村さんは今でもよく覚えています。「自分で登れるまでとっておいたの」と、懐かしそうに話してくれました。

 

自主保育の活動は、幼稚園や保育園が“集団生活”の場だとすると、“一人ひとりをとことん尊重する”場だといえます。急な斜面を登って行く場面でも、手助けが必要な子には手を貸すけれど、いらなかったらスルーしてもらうスタンス。子どもをサポートする準備は常にしているけれど、邪魔はしないことも大切にしています。子どもにとって“必要なときには助けてくれる存在”ができることは、ほかの人と信頼関係を築いていく土台にもなるのです。

 

スタッフの酒匂さん(写真左)はのびるの活動に出会って「こんなに怒らなくていいんだ」と驚いたそう。「子どもを注意していたのは周りの親の目を気にしていたからだったと思う。」(酒匂さん)写真右が河村さん

 

河村さんは今子育て中のお母さんたちとふれあう中で、「子どもを“自分一人で”“きちんと”育てなければ」という状態はしんどいと感じています。“でも、頼ることって勇気がいるんだよね”という言葉には、私も強く共感します。人に頼ること、助けてと声をあげることのハードルはどうしてこんなに高いのか。“自分の力ではできない”“自分は十分ではない、余裕がない”ときに、それ自体つらいことでもあるのに、その上にさらけ出さないといけないなんて、とも思います。

 

でも河村さんは、「自分がダメなのではなく、環境が整っていないからできないんだよね」と、さらりと言い切ります。“実家が遠い”、“夫の帰りが遅い”、“子どもが食べない、寝てくれない”など、自分一人の力では及ばないことまで背負う必要はないのだと。

 

「欠点だらけで、でこぼこの自分だけど、補い合って子育てをしていけばいい」。自主保育で信頼関係を育んだ親子たちを通して、河村さんが感じたことです。「良いことばかりでなく、悪いことだってある。悪いこともなかったことにはできないし、折り合いをつけてやっていく。生きるってそういうことだと思う」(河村さん)。良いところしか見ない、認めないでいると、自分も子どもも息苦しくなってしまうのかもしれません。“良いことも悪いことも受け止められる”力は、私自身も改めて鍛えたいと思いました。

 

「私たちが大切にしていることは、のびるの時だけしかできないことじゃない。参加して感じたことがあったら、普段の生活に活かしてほしい」という河村さん。私自身のびるでの時間を過ごしたことで、子どもが何を感じているのかに注意を向けるようになってきました。そうしたら、自然に「葉っぱが赤いね」とか「花が咲いているね」などの言葉が出てきます。子どもと同じものを感じたり、気持ちを通わせることを喜べたらそれでいいんだと思い、少し肩の力が抜けたように思います。

 

 

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