布1枚で子育てが変わる!? おんぶライフの楽しみ
のぼせるような暑い日が続く今年の夏。4歳と0歳の子どもを育てる私は、“おんぶ”でこの夏を少しでも軽やかに過ごしたいと思います。使っているのは、好みの色に染めたさらし1枚。赤ちゃんとの時間が変わるおんぶライフをご紹介します。

おんぶーー。昭和生まれの私は、その響きに懐かしさや温かさを感じます。子どものころ自分がおぶってもらっていたように、もともと日本人の子守りの主流は、おんぶでした。今では、まちで見かけるのは抱っこ紐やベビーカーがほとんど。昔ながらのおんぶスタイルを見かけることは少なくなりました。

 

私がおんぶに興味を持ったのは、妊娠中の昨秋、省エネ生活研究家のアズマカナコさんのコラムを読んだのがきっかけです。妊娠中は腹帯として使っていたさらしを、3人の子どものおんぶ紐に使ってきたそうです。両手が空くので時間にゆとりができることや、新たな道具に頼らずに、身近にある布を使い込んでいることに惹かれました。お腹の赤ちゃんが生まれたら私もやってみたいな、と思っていたのです。

 

産後、さらしでのおんぶの仕方が分からなかったので、赤ちゃんの首がすわると、出産した横浜市青葉区の助産院、バースあおばで開かれている「心地よい抱っことおんぶの練習クラス」に参加しました。講師の石坂あきさんは、自身の子育てを通じて、抱っこやおんぶへの関心を深め、「他のお母さんたちにも伝えたい」と、NPO法人だっことおんぶの研究所の養成講座を受け、「ベビーウェアリングコンシェルジュ」 として活動を始めました。

助産師としての仕事のかたわら、2年前から抱っこやおんぶを教えている石坂あきさん。4歳と1歳の2児の母(写真提供:石坂あきさん)

 

「ベビーウェアリング」というのは、直訳すると「赤ちゃんを身にまとう」という意味ですが、その名の通り、まとうように赤ちゃんと密着して抱っこやおんぶをすることです。同研究所によると、ベビーウェアリングは赤ちゃんの心地よい姿勢を保って、お母さんと密着して過ごすことで、身体的にも精神的にも一体感を得られると考えられています。一方、バックルタイプの抱っこ紐やベビーカーなどは「ベビーキャリア」と分類され、赤ちゃんを安全に運搬するものと捉えられています。

 

あきさんのクラスでは、ベビーウェアリングの抱っことおんぶについて、座学と実技で教えています。赤ちゃんにとって心地よい抱っこの仕方から教わり、スリングやさらし、「へこおび」という昔の着物の帯をアレンジしたアイテムなどを実際に試しながら、学んでいきます。さらしもへこおびも、5メートルほどの一枚布で、抱っこもおんぶもできるのです。

「 なぜそれがいいのか、根拠を押さえた上で伝えたい」とあきさん。その日から実践できるように、何度も繰り返し教えてくれる

 

座学に続き、人形を使ったデモンストレーションを見た後、実際に赤ちゃんを抱っこやおんぶしてみます。安全におんぶするためのポイントを丁寧に教わります。

 

最初に、赤ちゃんの背骨に布の中央を当て、赤ちゃんの両脇から布を通し、胸元で2本の紐をぎゅっと握ります。紐の下にお母さんのひじを入れながら赤ちゃんを背中に回した後、紐を両肩に掛けます。2本の紐を片方ずつ足で押さえつけ、たわみがないよう1本ずつ赤ちゃんのお尻を覆っていきます。紐に緩みがあると、赤ちゃんがずれてしまうため、要所要所で布をぴっちりと締め、緩みなくお互いの体に巻き付けていくことが肝心です。赤ちゃんを降ろす際にも、赤ちゃんが大人の背中から落ちないよう、紐をたるませることなく降ろしていきます。

おんぶが初めてというお母さんは、まずは赤ちゃんを後ろに回すことから始める

 

乳児期の赤ちゃんを育てるお母さんにとって、抱っこやおんぶの時間は少なくないのではないでしょうか。抱っこやおんぶが少しでも上手になれば、育児の時間がきっと変わるはず。「たかが抱っこおんぶ、されど抱っこおんぶ」とあきさんは言います。 核家族化が進んだ現代では、抱っこやおんぶは、暮らしの中で教わる機会がなかなかありません。「抱っこだと家事ができなくて、泣かせているんです……。おんぶができるようになりたくて」。参加者からはそんな声が聞かれました。

初めてのおんぶに成功した友人は「うれしい!」と思わず声が出る。鏡を見ながら後ろ姿もチェック。使っているのはへこおび

 

私も、クラスに参加するまでは、さらしでのおんぶが自分でもできるようになるのか、不安がありました。おんぶを教わり、娘 の生き生きとした表情を見て、ますますおんぶ習得への意欲がわいたのです。その日から繰り返し使うことで、少しずつ布のさばきもこなれてきました。うまく自分の体と密着しておぶえると、重心が体の上の方で安定します。さらしでのおんぶを生活に取り入れるようになり、育児の時間に変化がありました。

私が習ったおんぶは、リュックを背負うように布を回すスタイル。胸元が強調されないので、外でも気にせず出かける

 

赤ちゃんとともに見る楽しみ

おんぶをしていると、赤ちゃんがぴったりと私の背中にくっつきます。顔はほぼ真横に。赤ちゃんはよく手を伸ばして、私の髪をひっぱったり、なでたり。鏡で身だしなみを整えているときも、台所仕事をしているときも、大きな目を見開いて、肩越しにのぞき込んで私の手元に見入っています。腰にバックルが付いたタイプの抱っこ紐でもおんぶができるのですが、赤ちゃんは私の腰のあたりまで降りてしまうので、同じ視点で見ることはできませんでした。

 

あきさんは、高い位置でおぶうベビーウェアリングの一番の利点として、赤ちゃんがおぶう人と同じ目線で見て学んでいく「共視」を挙げます。自分の真横にある娘の きらきらとした瞳を見ながら、赤ちゃんにとっては、生活のすべてが興味の対象なのだな、と感じます。おんぶで時間をともにすることで、愛おしさを感じる瞬間が増えたのはうれしいことです。

 

高い位置でおんぶされた娘のこの笑顔!同じ目線で見られるのが私もうれしい

 

育児中の生活の質

赤ちゃんや子どものいる暮らしの中で、特に気ぜわしく感じるのが夕方からの時間です 。上の子を保育園に迎えに行き、子ども二人をお風呂に入れて夕飯を作って食べさせて……。その間にも二人からの要求が止まることなく、息つく暇がありません。おんぶができるようになり、家事と育児に追いかけられるようなプレッシャーから少し解き放たれたように感じています。おんぶをしていたら、娘の機嫌はよく、自分の両手は空くのですから。

 

あきさんも、2人目が生まれてからは特におんぶの出番が増えたそうです。自分の体の正面が空き、家事のしやすさや上の子との時間もつくれることから、おんぶに助けられていると言います 。「子育て中のお母さんたちにふれるなかで、お母さんの自己肯定感が低いと感じることがあります。抱っこするけど泣き止まない、おっぱいの繰り返しでくたくた、だんだん自信がなくなってきた、両手が空かずに自分の時間がとれない……などなど。お母さんだって自分の人生、自分の時間を持つ権利がある。おんぶや抱っこが上手になれば、リフレッシュできる時間が増え、わが子への愛おしさも増して前向きな気持ちになれる と、クラスを受講したお母さんたちが教えてくれます。私も母親として、まさに今同じことを肌で感じています。おんぶや抱っこのスキルがあることが、お母さんの自信になるはずです。赤ちゃんの月齢が小さいときから関われるこのクラスを通して 、お母さんたちの未来をちょっとでも開いてあげたい」と話します。

 

講座でおんぶを学んだお母さんたち。体を覆う部分が通気性のいい布なので、夏にちょうどいい。赤ちゃんの姿が外から見えやすいからか「おんぶいいわね〜」とよく声をかけられる

 

 

布1枚を使い込む知恵

腹帯として使っていた1枚布のさらしが、抱っこ紐にもおんぶ紐にも。布を使いこなす知恵を身につけていれば、災害時にも手助けとなるかもしれません。さらしもへこおびも、14キロまでのお子さんをおぶうことができるそうなので、ベビーカーを使えないときには、子どもを連れて避難する時に役立ちます。また、さらしはおむつや包帯、ガーゼの代わりになったりと、重宝します。

 

育児も時代のトレンドがありますが、私は流行の便利なアイテムを追いかけるのではなく、おんぶスタイルを取り入ることで、昔ながらの子育ての文化、暮らし方の知恵を先人から受け継いでいるように思います。クローゼットの奥にしまいかけた1枚のさらしが、こんなふうに暮らしの中で生き、使うほどに愛着を感じています。子どもたちが大きくなったら 、手ぬぐいや風呂敷に作り変え、また新たな道具として生きるでしょう。そのころには、子育ての思い出が染み付いたさらしに育っているはずです。それまで、おんぶライフを楽しみたいと思います。

オリーブ色に染めたさらしは、洗ってもすぐに乾く。使いこむほどに生地がしなやかになってきた

 

 

*参考記事

・『生活と自治』2017年11月号「アズマカナコの子育てエコライフ」

・北極しろくま堂公式ブログ「おんぶ紐は家事の時にも大活躍!実はこんなメリットがいっぱい!」

https://www.babywearing.jp/blog/2015/04/25/266

 

Information

「心地よい抱っことおんぶの練習クラス」

開催日:毎月第2木曜日が基本(月によって変動あり。8月はお休みの予定)

会場:助産院バースあおばケアハウス(横浜市青葉区。詳細は、お申込みの方にご連絡)

参加費:3,000円(ご家族と一緒の場合は+1,000円)

問い合わせ方法:件名に「抱っことおんぶクラス申込み」と記載の上、aki.kirakiramw027@gmail.comまで、メールにてお問い合わせください。

 

梶田 亜由美
この記事を書いた人
梶田亜由美ライター/スタッフ
地元・富山の新聞記者、ウェブやがん啓発関係の仕事を経て、出産後にライティングの仕事を再開。2016年から森ノオトの事務局スタッフとして編集部とファクトリーを担当。布小物とメディアを融合させた新しいものづくりに挑戦中。読書好きで、親子でくつろげるまちの古本屋さんを開くのが夢。
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