地震が起きたらトイレはどうする?女性の視点で防災知識を学びました
今後30年以内に、首都圏に大地震が起こる確率は70%以上と言われています。防災対策といえば、まず食料などの備蓄に目が行きがちですが、私たちの健康と衛生に直結する「トイレ」の備えを忘れていませんか?

もし、私たちが住む神奈川県を大地震が襲ったら……。生き延びたとして、その後の生活はどうすればいいのでしょうか。断水後の水道の復旧は、1~3週間かかるといわれています。それまでに、トイレに行きたくなったらどうしますか?

 

 

地域の防災訓練で「集合住宅では、震災直後に水道が止まったら、水洗トイレは使えません。排水管が壊れていた場合、上階の住民が用を足して溜め置きの風呂水などで水を流すと、階下のトイレに汚水や汚物が逆流することがあります」と話がありました。トイレに関する防災基礎知識を身につけて、いざという時に備えたいものです。

 

 

今回お話を伺った「女性の視点でつくるかわさき防災プロジェクト(略称JKB)」の代表・三村英子さんは、私が保育園生活6年間を共に過ごしたママ友です。川崎市男女共同参画センター(すくらむ21)を拠点に、防災に関する調査や発信、「トイレ」「集合住宅」「避難所運営」などの防災講座の企画や実施、イベントや町内会の防災訓練などで出前講座を行っています。

 

 

三村さんは、1995年の阪神淡路大震災で被災された経験があります。

「私は阪神淡路大震災で、自宅は全壊し、母が亡くなりました。父と避難所に行きましたが、スペースがなかったので、自宅前の大きな公園に避難することにしました。遊具にブルーシートをかけて、壊れた家から布団を引っ張り出して敷き、寝るスペースを確保しました。空腹は感じませんでしたが、トイレには行きたくなりました。水が止まった公園のトイレは汚物があふれ、立って用を足すしかありませんでした。1月の公園の寒さは厳しく、なるべく水を飲まずトイレを我慢した結果、膀胱炎になってしまいました。女性が襲われたという噂が耳に入ってからは、トイレは必ず父に付き添ってもらいました」

 

 

そんな三村さんが地域防災活動を始めたきっかけは、2011年の東日本大震災です。お母様を救えなかった後悔に長年苛まれていた三村さんは、娘には自分と同じ思いをさせたくない、と、東日本大震災を経験して痛感しました。過去の大震災のサバイバーとして、地域防災活動を始めることを決心し、自身の経験から「トイレ」の備えの重要性を活動のテーマにしました。

 

JKB代表の三村英子さん。同プロジェクトのメンバーは現在7名。男女のニーズの違いを発信し、女性の視点を生かした避難所運営や、主婦目線で、お金や手間がかからない実用的な知恵とアイディアを生かした防災対策を提案しています

JKBは、各地の防災講座や講演会に参加して知識を学び、情報を得ています。川崎に避難してきた東日本大震災の被災者の方たちに、直接話を聞く機会もありました。

 

 

「多くの避難所では、男性が運営側、女性は炊き出しなどの実働、といったステレオタイプの性役割分担になりがちです。そうなると、女性ならではの心理的、物質的なニーズへの理解を運営側に求めることが難しく、対応が後回しになる傾向がみられます。例えば生理用品です。ある避難所では、男性が生理用品を配付しているので、女子中学生は恥ずかしくて受け取りに行けませんでした。また、別の避難所では、女性が支援物資に生理用品を希望しましたが、運営側の高齢の男性は、生理用ナプキンとおりものシートと尿漏れパットの違いがわかりません。『あるもので代用してくれ。非常時にわがままを言うな』と怒られてしまったそうです。女性のニーズを男性に知ってもらい、避難所運営に反映するには、女性も避難所の運営側に入ること、そのためには、女性が日頃から地域の防災活動に積極的に参加することが重要です」

 

 

三村さんはJKBの活動を通じて、地域防災の主体となっているのが定年退職後の男性であり、話をするにつれ、日本は未だ男女の役割の性差が大きいと感じるそうです。

「今の若い世代のお父さんたちは、赤ちゃんを抱いて保育園に登園するのは自然なことでしょう。でもひと昔前の世代には、それはありえないことです。時代も教育も異なるので考え方が異なるのは当然です。その現実をふまえて、伝えるべきことは伝えなければなりません。男女のニーズの性差を理解し、協力しあうことが、避難所運営では大切なことです」と話してくれました。性役割分担ではなく、個人の適材適所で役割分担ができるよう、人任せではなく自ら進んで行動したいですね。

 

男女のニーズの性差について、女性への配慮が必要な行動をポスターで説明している

地震の揺れがおさまっても、避難所にすぐ仮設トイレが設置されるわけではありません。トイレの無い場所で被災するかもしれませんし、トイレが長蛇の列で、我慢できないこともあるでしょう。そんなときに役に立つのが携帯トイレや簡易トイレです。

 

 

「携帯トイレはメーカーで仕様が異なります。アウトドアなどの機会を使って実際に試して、自分が使いやすいものを選ぶとよいでしょう。100円均一やホームセンターで販売しています。色付きのポンチョがあれば身体をすっぽり覆うので目隠しになり、外でも人目を気にせず用を足せます。ポンチョがないときは、黒い大きなゴミ袋でも代用することができます」(三村さん)

 

携帯用防災セット(市販)。ヘッドライトは夜間や、昼でも暗いトイレ利用時に必須。ウェットティッシュ、大判ハンカチ、薄型ブランケット、携帯トイレ。JKBではこれに自分に必要なもの(例えばマスクや生理用品など)をプラスして常に携帯することを提案している

色付きポンチョ。外で用を足すときの目隠しとして着用する

簡易トイレは市販もされていますが、身近な材料で簡単に作ることもできます。今回は3種類のトイレを紹介してもらいました。軽くて移動が簡単。座って用が足せるので、和式トイレが使えない車いすの方や子どもにも便利です。何でもトイレになるんだな、とその知恵に感動しました。

 

段ボールトイレ。材料は2リットル入りペットボトル6本入りの段ボール1つと使用済み牛乳パック8本。ペットボトルは支援物資として配布されることが多く、避難所でも入手しやすい。牛乳パック2本を使った柱で四隅を補強しているため、大人が座ってもびくともしない。側面にガムテープを巻いて更に補強をしてもよい

ポリ容器トイレ。材料はバケツやごみ箱などのポリ容器とプチプチシートなどの梱包材、ポリ袋、ガムテープ。ふちが包まれているので、座った時にあたりが柔らかく、安定している

レジ袋トイレ。レジ袋は形が保てるものがお勧め。箱にいれると袋が安定する。小さいお子さんのトイレや、携帯トイレ代わりに使える

 

次に、三村さんに簡易トイレの使い方を教えてもらいました。

「用意するものは凝固剤と汚物袋と防臭袋です。携帯トイレ同様、100円均一やホームセンターなどで購入できます」

凝固剤は、排泄物を固める目的で使用します。抗菌消臭効果の高いものを選ぶとよいです。

「汚物袋は、排泄物を入れます。黒やグレーの色付きの45リットル入りゴミ袋で代用可能です。防臭袋は、汚物袋を入れて、臭いを外部に漏らさないために必須です。実際に試しましたが、全く臭いは気になりませんでした」

 

非常用トイレセット。凝固剤、汚物袋、防臭袋が入っています。家庭の水洗トイレや、簡易トイレ使用時の必需品。備蓄は3日分1人15個が目安

「簡易トイレを使う時には、トイレには便器のカバー用に1枚汚物袋をかけておきます。その上に、凝固剤を入れた汚物袋をかけて用を足します。用を足した後、汚物袋の袋を閉じて揉みます。成人の尿は1回平均200cc。20秒もあればゼリー状に固まります。同様に、便も80%が水分なので、凝固剤に水分が吸収されて、かさが減ります。繊維質が残りますがそれもゼリーに包まれてしまいます」

 

段ボールトイレ。尿に見立てた黄色い水を、凝固剤にかけて袋を揉み、固まった所です。用を足した後のイメージです

汚物袋はニオイが漏れないように、防臭袋に入れます。

「家族で尿だけなら、4~5回は同じ汚物袋が使えるので、毎回袋を取り替える手間を省いてもいいかもしれません。川崎市では、汚物袋は燃えるゴミとして捨てられます。ゴミ袋の表面に、“トイレゴミ”と明示します。各市で対応が違うので、確認が必要です」

 

 

三村さんのお話しを聞いて、森ノオト読者の多い横浜市について調べたら、横浜市では、汚物袋の分類は、トイレパックで、そのまま「燃やすごみ」で捨てられることがわかりました。

 

 

簡易トイレも携帯トイレ同様、いざ被災時に使おう、作ろうと思っても、なかなか上手くいかない場合もあるので、前もって使い方や作り方を練習しておくことが望ましいな、と思いました。

 

三村さんは、これからの地域防災は、「モノの備え」から「心の備え」が大切だと話してくれました。

 

「防災グッズを買っておしまい、では不十分で、日々の心の備えが大切です。災害時には予想をはるかに超える事象が発生します。被災地で女性が襲われるとき、年齢は関係ありません。配給所でお年寄りを突き飛ばして物資を我先に受け取るなど、通常ではしないであろう行動をとる人もでてきます。避難所で集団生活をするとき、何が起こりどう行動すべきかの状況判断は、知識の他に想像力が必要です。地震のニュースを見たり通勤通学の道すがら、今地震が起きたら自分はどう行動するかを考えるのは実践的でいいと思います」

 

防災ゲームや防災体験を通じて、想像力や判断力を養うのも良い方法です。防災ゲームは、幼児から楽しめるものもあります。三村さんおすすめの防災体験学習施設「そなエリア東京」は、「首都圏直下型地震発生から72時間生き抜く」をテーマに、無料でリアルな防災体験学習ができます。避難所生活では1人で行動しないなど、女性に覚えて欲しい知恵や知識が掲載された「防災拭いレディのココロエ」などの防災グッズも販売しているので、ご家族で足を運んでみてださい。

 

「JKBの夢は、全ての人が、1人1トイレを携帯することです。これからもライフワークとして、女性の視点を生かした防災、減災の活動を続けていきます」と三村さんは語っていました。

 

Information

川崎市男女共同参画センター すくらむ21

https://www.scrum21.or.jp/disaster_prevention/gender/

 

女性の視点でつくるかわさき防災プロジェクト

https://www.facebook.com/womenbousai21

中島裕子
この記事を書いた人
中島裕子ライター
川崎市中原区在住。中学生男子の母。現在は、教育工学のプロジェクトで記録員をしながら、地元のタウン誌や子育て掲示板の記事を書く。美味しいものや手作りが好き。今の関心テーマは、食と教育。趣味は書道。今年の目標はダイエットの成功と断捨離。森ノオトでは、ライターとして経験を積み、イベントに参加して世界を広げたいと思っている。
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