子どもはまちづくりの大切な仲間!NPO法人ミニシティ・プラスの10年【前編】
子ども自身の「やりたい!」という気持ちを尊重しながら、子ども自身のまちをつくっていく「ミニヨコハマシティ」を始め、青少年がまちづくりに参画していく機会を10年に渡りつくり続けてきたNPO法人ミニシティ・プラス。その軌跡と未来の展望を設立メンバーが語り合うトークセッションが、横浜市都筑区のシェアリーカフェで開催されました。対談の様子を前後編に分けてお届けします。

子どもがつくるまち「ミニヨコハマシティ」からスタートして、こどもがまちを取材する「つづきジュニア編集局」、子どもを商店や地域活動団体に送り出しまちの課題解決に取り組む「特命子ども地域アクター」の3本柱で、子どもと大人が交わりながらまちづくりを進めてきたNPO法人ミニシティ・プラス。設立10年を迎えた2018年、「NPO法人ミニシティ・プラス 10年の軌跡トークイベント」を開催し、理事長の三輪律江さん、事務局長の岩室晶子さん、理事の杉山昇太さんが、活動の歴史を振り返り未来を展望しました。会場は、横浜市都筑区にある「シェアリーカフェ」。聞き手は、NPO法人森ノオトの理事長・北原まどかです。

※文中でミニヨコハマシティをミニヨコと略する場合もあります。

 

<登壇者プロフィール>
三輪律江さん:㈱坂倉建築研究所、横浜国立大学VBL、地域実践教育研究センター准教授などを経て、横浜市立大学准教授(国際総合科学部まちづくりコース、大学院都市社会文化研究科)。市民参画型のまちづくりや、子どもの社会参画などが研究テーマ。共著書の『まち保育のススメ』(萌文社)でこども環境学会賞を受賞。

 

岩室晶子さん:NPO法人I Loveつづき理事長、NPO法人ミニシティ・プラス事務局長、NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ理事、NPO法人テレワークセンター横浜理事、日本ナポリタン学会副会長など、横浜のまちづくり活動のキーマン。本業は音楽家で、TV番組のバックミュージックや有名アーティストへの楽曲提供、編曲などを手がける。

 

杉山昇太さん:ニッカウヰスキーを経て横浜市役所に転職、中区役所で選挙啓発を担当している時にNPO法人ミニシティ・プラスの立ち上げに関わり、現在理事。市役所を退職して横浜市立大学の三輪ゼミで修士号を取得。現在は大学の事務職にも関わりながら、ミニシティ・プラスを本職にしている。

 

北原まどか(聞き手):NPO法人森ノオト理事長・未来をはぐくむ人の生活マガジン「森ノオト」編集長。リユース食器貸し出しのNPO法人Waveよこはまでの活動を通じてミニヨコハマシティに参加し、取材。今年度より森ノオトで三輪先生を招いて「まち保育」にも関わる。

 

 

■三本柱が子どもの社会参画のステップに

 

北原:

現在、ミニシティ・プラスではミニヨコハマシティ、つづきジュニア編集局、特命こども地域アクターという3つの柱で事業を運営されていますが、これらの概要について教えてください。

 

岩室:

私たちNPO法人ミニシティ・プラスは「まちはすべての人たちでつくりあげていく」という理念のもと、特に未来を担う子どもたちが自由な発想で、社会のことを考えたり、体験することができるステージを用意しています。
ミニヨコハマシティは、2007年から開催している19歳以下の子どもがつくる「大人口出し禁止」の子どものまちです。
前年度の市長選挙で選ばれた「子ども市長」を中心に、年に一度、子どもの自由な発想で話し合いながら自分たちの理想のまちをつくります。そこにはお店があり、通貨があり、ジョブセンターで自分の仕事を見つけてアルバイトをし、自分が稼いだお金で買い物をして、市長選挙でルールをつくることもできます。開催場所は都筑区中川にある「ハウスクエア横浜」や、中区の大桟橋ホールなど、横浜市内が主で、2012年には東北の被災地に出張して現地に子どものまちをつくって交流したこともあります。2017年は施設から飛び出て中川のまちで開催、2018年は公共機関も参加して都筑区役所で行うなど毎年様々な形態で開催しています。

 

2017年のミニヨコハマシティは、中川西地区センターを拠点に、中川のまち全体で開催した。商店会や実店舗での運営も。写真は市長選挙での立候補者の演説

 

次に「つづきジュニア編集局」ですが、こちらは横浜開港150周年、都筑区制15年の事業として2009年からスタートしました。最初は都筑区からの委託でしたが、東京都市大学環境情報学部中村研究室の協力を得て、現在は都筑区の後援を得て運営しています。
今年は小学5年生以上の37名が参加し、子ども目線を活かして、横浜と都筑の魅力を取材し、年に一度「つづきジュニアタイムズ」という新聞を発行しています。

今年からはみなとみらい地区で活動する、MMジュニア編集局も立ち上げました。

 

つづきジュニア編集局の活動風景。ジュニア記者が市役所を取材している(写真提供:ミニシティ・プラス)

 

最後に「特命こども地域アクター」は、ミニヨコで成長して仮想のまちでは満足できなくなってきた子どもたちから、実際のまちで活動してみたいという声を受け、2011年に立ち上げました。

まちづくりに積極的に関わろうとする小学校高学年から高校生までの子どもを、商店会やNPOなどの「まちづくり団体」とマッチングし、地域のまちづくりの現場に「特命」として派遣しています。青少年が地域と深く関わり、まちづくりに活かされる社会参画のしくみづくりを目指して活動しています。

ミニヨコハマシティから始まり、子どもの「やりたい」気持ちを尊重することで、活動の場がどんどん広がっています。

 

特定子ども地域アクターでは、商店会などに子どもが入り、イベントを企画したり、地域課題解決に向けて議論していく(写真提供:ミニシティ・プラス)

 

 

■NPO法人ミニシティ・プラスの立ち上げ秘話

 

北原:

その3つの活動のうち、ミニシティ・プラスのメインの事業であるミニヨコハマシティがどうやって誕生したのかお聞かせください。

 

杉山:

僕が横浜市役所の職員として中区で統計選挙係長をしていた2006年、何か選挙啓発になるイベントはないかと探していました。そんなときに、早稲田大学の卯月盛夫先生の著書で、ドイツでおこなわれている子どもがつくる遊びの都市「ミニミュンヘン」の紹介をしている文献を読んで、「これは非常に面白そうな事業だ」と思ったんです。そこで、横浜市の職員数名、そのほか、NPO法人I loveつづきの岩室さんや、当時横浜国立大学に在籍し保土ケ谷区のまちづくりをしていた三輪先生など、一緒にやってくれそうな人たちに声をかけて研究会を立ち上げたことがミニヨコハマシティの始まりです。

 

2009年には本場ドイツの「ミニミュンヘン」を訪問した。浴衣を着て日本の文化を紹介した(写真提供:ミニシティ・プラス)

三輪:

ミニミュンヘンとは、ドイツのミュンヘン市で8月の3週間、7歳から15歳までの子どもだけで運営する「遊びの都市」です。ドイツでは1960年代より「遊びの中にこそ本当の学びがある」と教育のあり方を問い直す機運があり、1979年の国際児童年に初めてミニミュンヘンという形で本格的に子どものまちを開催しました。その後、1986年より2年に一度夏休みの期間中におこなわれるようになり、就労や政治、都市計画など様々な社会の仕組みを体験することができます。
日本では1997年、高知県香北町で初めてミニミュンヘンを模した取り組みがおこなわれました。2002年3月には、ドイツに渡り本場で「こどものまち」の仕組みについて学んできた人たちを中心に、千葉県の佐倉市でミニさくらがおこなわれました。これを皮切りに、今では全国各地に60〜70カ所くらいに「子どものまち」が広がっています。

 

岩室:

2006年、そのミニ佐倉へ数名で視察に行き、フィードバックしてミニヨコハマシティをやってみようと動き出したのが10月。勢いづいた市の職員の方から委託事業での実施の提案を受けて、年度内にともかくやってみようと、私が運営するNPO法人I loveつづきの主導で、2007年3月に都筑区のハウスクエア横浜で、第1回ミニヨコハマシティを開催することになりました。
12月の冬休みに入る前に市内の小中学校へ出向いて子ども市民になりたい人、市長選に出たい人を募集し、なんでもいいからやりたいことを書いてくれと呼びかけたのですが、大人の反応は「こんなの意味がわからないから誰も来ないよ」というものでした。しかし実際は私たちの呼びかけに応じて、30人くらいの子どもたちが集まりました。そして一人ひとりに「何をやりたいのか?」を丁寧にヒアリングしていくことで、その子どもがまた別の友達に声をかけることにつながり、最終的に50人くらいの参加者が集まりました。

 

2007年3月に開催した初めての「ミニヨコハマシティ」での市長選挙の様子。会場は都筑区中川にあるハウスクエア横浜(写真提供:ミニシティ・プラス)

 

杉山:

2007年3月に初開催した「ミニヨコハマシティ」からたいへん盛り上がったのが、市長選挙でした。
元々選挙啓発のイベントとして考えていたこともあったので、市長選をして出馬する子どもたちが立候補演説をしたり、当選した子どもが所信表明演説をおこなったり、本物の投票箱や投票用紙を使うなど、基本的な日本の選挙のルールにのっとってやってみました。そうして選ばれた市長がマニュフェストを掲げ、また次の年のまちづくりをしていくところがミニヨコハマシティの特色の一つです。
こうしておこなわれた第1回目のミニヨコハマシティは、選挙啓発イベントとしてもとても成功したので横浜市の「平成19年度アントレプレナーシップ事業提案」で「ミニシティプログラム活用による地域協働のまちづくりプロモーション」として、2008年2月に事業提案しました。これは当時の中田宏市長のもと、横浜市の職員が事業を提案し、1年間かけて研究した内容を市が取り上げれば事業化する制度です。研究対象として1年間採択してもらったのですが、最終的には市の事業にはなりませんでした。しかしその内容をとても評価してもらい、「横浜市で応援するのでぜひ民間主体でやってほしい」とのことで、すぐNPOを立ち上げることにしました。これがミニシティ・プラスの始まりです。

 

トークセッションの会場は「シェアリーカフェ」。岩室さんが代表を務めるNPO法人I loveつづきが運営するコミュニティカフェだ

 

北原:

NPOになったときに三輪先生が代表になったのはどういう理由ですか?

 

岩室:

私や杉山さんは猪突猛進なところがあるので、俯瞰して全体を見ることができる三輪先生が適任だと思いお願いしました。

 

三輪:

こういうまちづくりに関わる事業は、客観的に評価していくというアプローチを常に繰り返していかないと、ただ「イベント屋」になって運営者が忙しくなってしまいがちなんですよね。ミニシティ・プラスでは、イベントだけで終わらせず、社会的にインパクトを与えていきたいという思いがありました。私はNPOの中でも、アドバイザーというか重しのような役割であることを意識しています。

 

 

■なぜ「大人口出し禁止」なのか。

 

北原:

ミニヨコハマシティは大人の口出し禁止であることを徹底していますよね。口出し禁止はどういう思いから始まったのですか?

 

岩室:

ミニヨコハマシティを始めたころ、私の子どもは小学校4年生だったのですが、その頃私は「登校拒否母親」だったんです(笑)。
PTAなどで学校に行くとお母さんたちが、「習い事は何をさせる?」「これはやらせた方がいいわよね?」というような話や、5~6年生くらいになると「中学に入ったら何の部活に行かせる?」など子どもが選ぶ前に親が決めてしまうような話を聞いていて、「それは違うんじゃないか?」と思いながらも、他の家のことなので口を出すこともできず。
子どもはお母さんが大好きだから、親に「これをやったらいいんじゃない?」と言われたら、「それもいいかもな」と思って従うこともあるかもしれません。でももし自分が本当は何をやりたいのか考える前に、親が決めてしまっているのだとしたら、それはちょっと嫌だなと思いました。
自分の意志でやりたいことを見つけて、大人が何も言わないで自由にやらせていったとしたら、子どもはどんなことができるのか? そうして育った子どもたちが一からまちの自治を考えた時に、どんな面白い社会のしくみをつくっていってくれるのか? そんな思いが私の原点としてあります。

 

「大人口出し禁止」だが、子どもたちが困ったことがあれば尋ねることができるよう、「?」マークの帽子をかぶった大人たちが会場を回遊している

 

北原:

「口を出さない」というのは今どきの大人になかなか難しいことですよね。ついつい、自分の経験をもとに良かれと思って言ってしまいがちだと思うのですが。

 

岩室:

最初にミニヨコハマシティを開催したときに、「絵描きをやりたい」という子どもが2人いました。そのうち一人は「似顔絵を描く」、もう一人は「自分の好きなものをしおりに描いて売る」ということで、隣に2つの店が並んでいたのですが、しおりをつくった子どもの方がどんどん売れていく中、似顔絵の子どもは1人もお客さんが来なかったんです。大人はそこを通る度に胸を痛めていたのですが、その子自身はさっさと似顔絵のお店をたたんで、別のお店でアルバイトをしていました。そして最後にアンケートをとったとき、その子どもは「自分が提供したサービスは、今回この町のニーズに合っていなかったので失敗しちゃったけど、次回は必ず売れる絵を描く」というようなことを書いていました。
その時私が思ったのは、きっと子どもは、自分で決めたことを自分でやろうとして失敗することは日ごろよくあって、それ故あまり傷つかないのかなと思いました。逆に大人や周りに言われてできなかったことは、がっかりしたり傷ついたり苦しくなったりしてしまうのかもしれない。だからやっぱり自分の意志で決めて失敗することはとても大事なのではないでしょうか。

 

北原:

ミニヨコハマシティでは、関わる大人がいろんな意味で試されると思うのですが、実際に関わる大人たちは口出しせずにいられるのでしょうか?

 

岩室:

ミニヨコハマシティのスタッフになってくれる人やボランティアには、丁寧に説明してマニュアルをお渡しして「これだけは守ってね」ということを伝えるので、大方理解していただいています。口を出してくるのはほとんど保護者の方ですね。
私も子どもを持つ親なので、最大限力を発揮しておしいと願ったり、100%がんばってもらいたいと思い、焦って先回りして口出ししてしまう親の気持ちもよくわかります。
しかし子どもは全然急いでないのに、「早く仕事を探しなさい!」とか「次の仕事が終わったらすぐ働きなさい!」みたいなことを大人が子どものまちで言うのはおかしいと思います。
ある時、選挙の投票所のところで選挙演説の映像を見ている親子がいました。じっと映像を見ていた母親がふいに、子どもに向かって「お母さんはこの人は信頼できると思う」と言っていました。これは大人の世界では選挙法違反にあたる行為ですよね。それを大人が子どもに示してしまっていることになるわけです。すかさず「それは選挙違反になりますよ」と私が注意すると、その母親はとても驚いていました。子どもの力を信じていないんだな、と思ってしまう出来事でした。

 

ミニヨコハマシティは子どもがつくる「仮想のまち」だが、本物の投票箱で市長選をおこなうなど、徹底的にリアルを追求する(写真提供:ミニシティ・プラス)

 

杉山:

子どもにとって親の影響は思った以上に大きいので「お父さんお母さんに言われたことは守らなきゃ」という思いがとても強いんです。だから逆に我々はそこを外してあげなくては、と思っていて、「あなたが考えたことを自由にやってください」と伝えることを意識的にやっています。

大人が考える既成概念の成功に捕らわれず、自分たちが思い描く「こうなったらいいな」と思うものを、子どもたちにミニヨコハマシティで実現していってもらいたい。

 

三輪:

大人の口出し禁止とは言っても、完全に何も口を出さないのではなく、「子どもの主体性をどこに置くのか」、「子どもがどうしたいかという所にいかに大人が聞く耳を持つか」が大切だと思っています。

子どもの主体性について話すとき、先ほどの絵描きのエピソードの他にもう一つよくする話が、「ケーキ屋さんをやりたい」というリクエストをした子に対して、大人は既成概念で「生クリームでデコレーションされた食べられるケーキ」を想像し、「ミニヨコで販売する場合、保健所の許可を得るのが大変だから、そんな生ものは扱えない」と返してしまいがちです。でもそう決めつけてしまうのは、本人がどういうケーキ屋さんをやりたいのかを聞くアクションをしていないからなんですよね。

もし普通のデコレーションケーキをつくれなかった場合、代わりに「食べることができるケーキをつくりたいのか?」それとも「ケーキと同じ見栄えのものをつくりたいのか?」という選択肢を子どもに与えるための対話ができることがとても大事だと思っています。
もし前者だった場合は「ケーキはつくれないけどホットケーキを重ねてトッピングすることならできるよね」と伝えられますし、後者だった場合「食べられるケーキはつくれないけど違った素材を使ってケーキの形をしているものはつくれるよね」と伝えることができます。そして子ども自身「それでいい!」と案外納得したりします。

岩室さんや杉山さんは子どもたちの思いを聞く能力に長けていて、そうやって大人が一人ひとりのやりたいことを丁寧に聞くプロセスを繰り返すことで、子ども自身が本当にやりたいことを見つけていくことにつながっていきます。そして「この大人はすごく話を聞いてくれる」と満足し、「次は本物のケーキをつくってみたい」という思いにつながっていったりします。
彼らのやりたいことの聞く耳を持つ、そして「聞く耳を持っているよ」ということを子どもに伝える、ということが、とても大事だと思っています。

 

子どもが「ケーキをつくって売りたい」と言った時に、保健所での要件などもしっかりとクリアしたうえで販売可能なよう、法令順守についても一緒に考える(写真提供:ミニシティ・プラス)

 

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トークセッション【後編】では、ミニヨコハマシティを経験した子どものその後や、NPO法人ミニシティ・プラスの今後の展望などが語られています!

Information

NPO法人ミニシティ・プラス

http://minicity-plus.jp/

中西るりこ
この記事を書いた人
中西るりこライター
静岡県出身、横浜在住歴20年以上の2児の母。広告制作会社でWEBデザイナーとして働き、出産後はフリーでロゴ、パッケージデザインなども。旅行、自然、映画、音楽、古いものが好きで、キャンプや野外イベントに目がない。にぎやか兄妹に振り回されつつ、休日は家族と各地を飛び回る。
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