野菜にときめくフレンチレストラン|青葉台・メゾンサカ
青葉台に野菜のおいしいフレンチレストランがあります。旬の食材の魅力を丁寧に引き出す料理と、控えめだけど温かな心遣いに、心がほかほかになります。そんなレストラン、メゾンサカを営む坂夫婦を訪ねました。

東急田園都市線・青葉台駅から歩いて15分。メゾンサカは、緑豊かな桜台公園の近くにあります。白い扉を開くと、大きな四角いテーブルがひとつ。このテーブルを囲む12席のお店です。ほかのお客さんと隣り合うことになるのですが、不思議なことに、ほどよい距離感で息遣いが温かみとして感じられます。

店主が「坂さん」だから、天井は緩やかな坂になっている。お店の設計者の粋な計らい。四角いテーブルの中央にはいつも季節の枝ものが。同じ通り沿いにある花屋さん「春てりん」にお願いしている

 

お店を営むのは、坂晋吾さんとみずほさん夫婦。都内で10年以上料理の仕事をしてきた晋吾さんは、イタリアンやカフェなど、さまざまな飲食店での経験を重ね、フレンチの道に。住まいに近いエリアで開業を目指して物件を探し、みずほさんがこの場所を見つけました。「ここで頑張ろうか」と二人で決めて、2017年2月、メゾンサカの船出です。

 

店名にある”maison”は、フランス語で「家」。「街場のレストランとして、地域の人に気軽に来ていただけるような、家庭的なお店にしたいね」。そんな思いからシンプルに名付けたそうです。

青葉台駅から歩いて訪れるのもいい。近くの桜台公園もおすすめ

 

地産地消にこだわりたいと思っていたシェフの晋吾さん。「高い輸送技術で、世界中から食材を取り寄せられる時代だけど、旬のおいしいものをコストをかけないで安定的に提供できるのが地産地消。地域に根ざすお店の正しいあり方かな、と思っています」と話します。

 

オープン前に地元、青葉区の農家さんを探す中で、はやし農園の林さんファミリーと出会いました。「この人の作る野菜を紹介したい」と思うほどに、その実直な人柄にひかれたそう。お店では、はやし農園の野菜を毎週取り寄せているほか、坂さんの家族が茨城県で育てている野菜も取り入れています。

 

「どうやったらこの野菜をおいしく出せるだろう」と、メニューありきではなく、そのときに採れる野菜から逆算して考えるのが坂流。メゾンサカの料理をいただくと、じっくりと向き合った時間を経たような食材への思いやりを感じます。夏の前菜のメニューの一つにあった「自家製のハムと焼きナス」。ナスは馴染みの深い野菜ですが、この料理は、ひと目見たときにも、口にしたときにも、ナスをこんなふうに味わえるなんて、と驚きました。フレンチの前菜として仕上げられた華やかな見た目と、ふんわりと口の中でとろけるような食感に、ナスの新しい一面を見たような思いがしました。

焼いたナスの実をたたいて調理し、皮は乾燥させてパウダーにして散らした。上に添えたスプラウトは、「これから大きくなっていくというエネルギーがみなぎっている」と晋吾さんが好きな食材だそう。お店のロゴにもあしらった

 

9月には前菜にイチジクが登場しました。林さんの紹介で知り合ったという寺家町の農家さんのイチジクは、木の上で完熟させているため、そのまま食べられるほど皮が薄く、今年は例年以上に糖度が高かったのです。「青葉区でこんなにおいしい野菜が採れるのね」と、お客さんから驚かれることも多く、それがやりがいにもつながっているそうです。

 

春には自らタケノコを掘りに、青葉区内の竹林に入りました。「竹林の整備にも役立てるし、採ったものをすぐに茹でて、おいしくいただける。永続的な環境づくりの手助けとなるスペシャルな食材です」と晋吾さん。11月ごろからは、茨城県でお兄さんが育てているトマトを味わえます。

 

ランチのコースは、アミューズ(小さな前菜)とパン、前菜、主菜、デザート、食後の飲み物がついて1,800円。前菜と主菜はメニューから1品選びます。季節の変わり目がメニューの変わり目で、コース料理の一皿ひと皿から、季節を感じます。

メインのスモークチキンのコンフィ。口の中でほろりと崩れるほど柔らかく、香ばしい。料理のボリュームにも大満足

 

みずほさんから見る晋吾さんは、料理に対してストイックで勉強熱心。何より料理が大好きなんだそう。「そんなに才能があるわけではないので、常に考えて手間と時間をかけないと、いいものを出せないんです」とあくまでも謙虚な晋吾さん。かつて都内に勤めていたころ、毎日図書館に通い、料理本の読破数は数知れずという知的な料理人。「一番尊重しているのはフレンチの技術だけれども、あまり縛られすぎずに、イタリアンだったり和だったりを自由度高く取り入れていきたい」と話します。

もともとはパンや焼き菓子の作り手だったというみずほさんは、このお店で初めて接客をすることに。「人見知りで初めは不安だったけれど、お客さまの温かさに助けられて」。一つひとつの言葉を丁寧に選んで話すご夫婦の静かで優しい雰囲気は、居心地のいいお店の空気感そのもの

 

「がむしゃらに走ってきて、まだまだひよっこだし、今は自分たちのことで精いっぱいだけど……」と前置きしながら、晋吾さんはこれからの思いを話してくれました。「自分たちのためだけにお店を続けるのではなくて、飲食店として、何らかの形で地域に、社会に貢献したいと思っています。これまでいろんな人から学んできて、それをつないでいくのが仕事でもあります」。地域の食材を使うことはその心がけの一つ。フードロスへの関心もあり、家庭で余った食材を持ち寄って晋吾さんが調理して食べてもらう、ということを将来的にやってみたいと考えているそうです。

 

見た目は若々しい感性で彩られ、口にすると丁寧で優しい。坂さんご夫婦と話していると、メゾンサカの料理は、お二人らしいと感じるのです。謙虚で真面目で、地域社会への思いやお客さん、食材の作り手へのあふれんばかりの敬意。「親世代のお客さまも応援してくださって」と晋吾さんが話すのもうなずけます。

 

ここでの食事は、柔らかな風が心にすーっと吹き込むような豊かな時間。心をこめて調理された季節の料理と重ね合わせながら、過ごしたひとときを思い出すことでしょう。季節がめぐるたび、大切な人と訪れたいお店です。

Information

メゾンサカ

住所:横浜市青葉区桂台1-11-1(東急田園都市線・青葉台駅から徒歩15分、駐車場2台あり)

電話:045-961-0117

URL:http://maisonsaka.iinaa.net/

営業時間:11:30~15:30(LO 14:30)、18:00~22:30(LO 21:30)

定休日:月曜日

梶田 亜由美
この記事を書いた人
梶田亜由美ライター/スタッフ
地元・富山の新聞記者、ウェブやがん啓発関係の仕事を経て、出産後にライティングの仕事を再開。2016年から森ノオトの事務局スタッフとして編集部とファクトリーを担当。布小物とメディアを融合させた新しいものづくりに挑戦中。読書好きで、親子でくつろげるまちの古本屋さんを開くのが夢。
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