衣類の「もったいない」を次世代へ。ファイバーリサイクルネットワーク
女性たちが中心となり、古着・古布の回収を行政に先駆けて行なってきた市民団体が横浜市南区にあります。生活の中で身近な「衣」にまつわる環境問題へのアクションに30年以上にわたって取り組んでいる「ファイバーリサイクルネットワーク」を訪ねました。

森ノオトでは2016年から、地域に眠る使われなくなった布を寄付などで回収し、新たなデザインで布小物をつくりあげる取り組み「森ノファクトリー」事業を展開しています。「AppliQué」(アプリケ)というブランド名で、地域の子育て世代がつくり手となり、オリジナルのものづくりに取り組んでいます。

 

この事業の参考になる他団体の活動を探していたところ、お仕事でも付き合いのあったフォーラム南太田(男女共同参画センター横浜南)さんから「女性が中心となり、古布・古着の回収を行政に先駆けて行ってきた市民団体がある」という紹介を受けて、横浜市南区に拠点を構える「ファイバーリサイクルネットワーク」(以下、FRN)を訪ねました。

 

ファイバーリサクルネットワーク代表の赤岡清子さん。2013年から2代目の代表となった

 

横浜市南区宿町、横浜市営地下鉄ブルーラインの蒔田駅から歩いて5分ほど。ビルの一階にFRNの事務所があります。扉を開けると、鮮やかなリサイクル着物がずらっと並んでいます。代表の赤岡清子さんが出迎えてくれました。

 

私が訪ねた冬のある日は、週に2回のボランティア作業日。10人ほどのボランティアさんが作業をしていました。

「毎日のように全国から着物が届くんです。多いときはダンボール10箱も。何も届かない日は珍しいくらいなんですよ」と取材に答える赤岡さん。その横では、お昼時を過ぎたお茶の時間で、ボランティアさんが茶菓子を囲みながら休憩タイム。ちょうど私たちの親世代、お孫さんのお話など笑い声が絶えない和やかな雰囲気です。

 

入り口付近に並んだリサイクル着物は販売しているので、店頭で買うことができる。取材中にもお客さんがお買い物に来る姿も

 

古着・古布の回収からその活動が始まったFRNですが、現在は着物などの和服を寄付や回収などで集めて、春・夏・秋の年に3回開催する「リサイクルきものフェア」の開催を活動の軸としています。

 

「あるシニア向けの雑誌に私たちの活動が紹介されてから、全国から和服がドッと送られてくるようになって、慌てて倉庫も借りることにしたんです。毎日のように届くので、整理の仕方には力を入れてきて、みんなで考えながら工夫してきたんですよ」と赤岡さん。

私たち森ノオトでも「AppliQué」のことが日刊紙の記事で紹介されてからというもの、県内各地から不要になった生地が続々と届き嬉しい悲鳴をあげる、ということを体験したばかり。どのように管理しているのか参考にさせてもらいたく、倉庫を見せてもらうことに。

 

届いた着物の行き先は、きものフェア用、フェアには向かないけれど、着物・帯・ハギレでも活用してくれる支援登録先、汚れや虫食いなどがひどいものは回収業者行きなどに仕分けられていく

価格決めを待っているのものは同じ色の風呂敷に包んで、丁寧に保管

 

ボランティアさんについて、倉庫に入ると、着物や浴衣、羽織などさまざまな和服が分野ごとに風呂敷に包まれて、高々と積み上がっています。次回のきものフェアの出店用にと、値段別だったり色別に仕分けられているのだとか。和服を包んだ風呂敷にはきちんと紙に分類が書かれ、出店する際に困らないようにと、丁寧に整理されています。

 

届くダンボールの中にはシミがあったり、保管状態が悪い着物などもあります。二人一組になったボランティアさんが、状態をチェックしながら、価格別に着物を分ける作業をササッと進めていきます。

「やはり人の目と手だからできることですよね。うん、これは絶対に機械にはできない仕事」と赤岡さんは強く頷きます。

 

ボランティア登録者は約300人。長い人で15年もボランティア活動を続けているベテランも。リユース着物を活用して自分でつくった服を着ている方も。家庭で着られることのなくなった着物たちが次の誰かにわたるのをつなぐ作業を担っている

 

FRNでは、団体の仕組みを変化させながらも、「女性」たちの手で、「布」にまつわるエコ活動に取り組んできました。その歴史は30年以上にも及びます。

 

1980年代、当時は行政による資源回収のない時代。バブル景気によって、消費は加速して、廃棄物の拡大も進んでいた時代です。一方で消費者団体などではすでに循環型社会を目指す活動の一環として、バザーなどのリユース活動に取り組んでいました。

 

「あの頃(1980年代)は今よりもずっとフリーマーケットやバザーが盛んで、あっちこっちで開催されていたんです。でも売れ残るものにも衣類が多くて、結局はゴミに出さざるを得ないという状況がありました」(赤岡さん)
そういった市民側が感じる課題と並行して、古繊維回収を行っている事業者からは、「個人宅から古着・古布が集まらなくて困っている」という声があがっていました。後にFRNの初代代表となる「横浜市消費者の会」の服部孝子さんたちによって、古繊維回収業者のナカノ株式会社(本社:神奈川県横浜市)の当時の中野恭社長(現会長)を講師に迎えて講演会を開催したのがきっかけとなって、古着・古布の回収を市民の手で行おうという動きが立ち上がることになります。

 

 

複数の消費者団体からメンバーが集まって、ナカノ株式会社との勉強会が開催され、県内2カ所で実験回収が行われました。

「(実験回収は)そんなに集まらないだろうとあまくみていたんですが、15畳の部屋が回収袋であふれてしまって。個人宅で集めたんですが、700Kgを超える古着が集まったんです」と目を大きくして振り返る赤岡さん。この実験回収を通して、市民側に古着・古布回収のニーズがあると確信したメンバーは、1992年、「ファイバーリサイクルネットワーク」と命名して市民団体を立ち上げました。

 

取材中に偶然お会いできたナカノ株式会社の中野聰恭会長。FRNの立ち上げ当時からのメンバー、赤岡さん、志澤さん、黒柳さんと一緒に

 

古着・古布の回収拠点を地域に設置し、そこに近隣の住民が持ってくる。それを、回収業者のネットワーク「綿’s倶楽部」が回収してまわる、という仕組みをFRNではつくってきました。回収された古繊維は業者によって選別され、国内リユース、主に東南アジアでの海外リユース、ウエス(工場用雑巾)、反毛として利用されています。

 

税金を使って燃やすごみとして焼却されていた古着たちが資源として再利用されたり、リユース市場に回ることでごみの減量にもつながる。それと合わせて、FRNは環境教育も各地で行ってきました。

 

「衣食住の“衣”って、生活する上で欠かせないってものですよね。だからみなさん必ず服を買うと思います。でもその“出口”を考えて買う人は、きっと少ないですよね。入り口のところで、“その服、本当に必要なものですか?”ということを考えてもらいたい。そう思って長年この活動を続けています」(赤岡さん)。

 

ナカノ株式会社秦野工場で見た古着がプレスされた山。これから海外に出荷される

 

私たち森ノオト編集部では2016年に「リサイクルツアー」を実施して、家庭から出た古紙・古布がどこに行き、どのように生まれ変わるのかを知るべく、県内にある2カ所の工場を訪ねました。そのツアーで訪ねた先の一つに、FRNと提携しているナカノ株式会社がありました。

 

そのツアーを通して私たちは“衣類はほぼ100%リサイクルできる”、ということを学びました。それと同時に、衣類が消耗品のように次々に消費されている現実も目の当たりにしたのです。

 

一つの工場に毎日4万点もの古布が届くこと、店頭で販売されてからわずか数週間で「ごみ」として届くものあると言うサイクルの早さ……。出口を考えられずに消費された服たちが、目の前で次々にプレスされ大きな塊となって運ばれていく……赤岡さんのお話を聞きながら、その時の様子を思い出しました。

 

大掃除や片付けといったテーマで雑誌などに取り上げられてきたことも多々

 

FRNの活動は、行政の資源回収に先駆けてスタートしたことや、市民が民間企業と提携した珍しい取り組みとして、これまでメディアにも数多く取り上げられてきました。その地道な活動が評価され、2012年にかながわ地球環境賞、横浜環境活動実践賞を受賞しています。

 

一方で、行政の資源回収が各地で始まると、一番多い時で県内各地に315カ所あったFRNの回収拠点が、年々その数を減らし、2018年現在では61拠点にまで減っています。また拠点の担い手が高齢化していて、登録はあるものの、実際に稼働している拠点が少なくなってきました。

 

「行政の回収が始まると、市民団体がやる意義ってなんだろう? 団体としては辞める時期に来ているのかな……」と活動の岐路に立たされた時期もあったと話す赤岡さん。しかしその頃、主に東南アジアを古着の輸出先としているナカノ株式会社で、海外では需要がないと工場にコンテナ1台分ほどの着物などの和服に、FRNのメンバーは活動の新たな道を見つけました。

 

リサイクルきものフェアの様子。毎回楽しみにしているファンが多い(写真提供:ファイバーリサイクルネットワーク)

 

1999年の春に第1回を開催した「リサイクルきものフェア」は好評を博し、毎回400人あまりの来場者があるイベントに成長し、現在は年に3回開催しています。さらに、着物の布を利用しての小物の製作と販売など、ボランティアメンバーから出たアイデアを形にして活動を広げてきました。

 

古着・古布回収による売上げなどを合わせると、団体として年間800万円ほどの収入をあげ、どこからの助成も受けない市民団体として活動を続けているのです。毎年その売上げの一部をFRN基金として位置づけ、国内外のボランティア団体の支援金や災害発生時の義援金として、これまでの活動の中で、累計約1千2百万円の支援を行なってきました。

 

赤岡さんに団体の紆余曲折を聞かせていただきながら、「エコ」「布」「女性」といった、私たち森ノオトと共通するキーワードならではのやりがい、悩み、継続の工夫など、共感することがあまりに多く驚きました。

 

「団体立ち上げ当初から今も続けている古着古布の回収の歴史は私たちの誇りです。でも時代に合わせて活動の形が変わってもよいと思っているんです。着物が好きな人、手作りが好きな人、この場所が好きな人。お仕事とは違う、ここに来ることが楽しいと思う人たちが集ってきているし、そう思ってもらえる場にしなくちゃいけない」。

 

赤岡さんはこれからの活動や次世代への引き継ぎを模索しながら、他団体の活動も積極的に話を聞く機会をつくっているのだそう。私は、赤岡さんのハツラツとした気負わない言葉に、ただシンプルに、自分たちの活動を楽しめる場所をつくっていくこと、長く活動を続けていく秘訣はそこにあるのだろうと感じました。

 

赤岡さん(左端)とこの日の活動メンバーでパチリ。皆さんの和服の着こなしがおしゃれ

 

「布」という生活の一番身近なところから環境問題へのアクションを続け、声高に叫ぶでもなく、むしろ女性ならではの朗らかさで、地道に活動を続けている先輩団体から、私たちのこれからの活動の大きな学びを得ることができました。

Information

ファイバーリサイクルネットワーク

https://www.fiber.jp/

宇都宮 南海子
この記事を書いた人
宇都宮南海子ライター/スタッフ
元地域新聞記者。エコツーリズムの先進地域である沖縄本島のやんばるエリア出身で、総勢14人の大家族の中で育つ。田園風景が残る横浜市青葉区寺家町へ都会移住し、森ノオトの事務局スタッフとして主に編集部と子育て事業を担当。ワークショップデザイナー、2児の母。
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