「まち保育」を体験!子どもの視点で見直す住宅街の花と緑
普段何気なく歩いているまちを、子ども目線で歩いてみると多くの発見があります。子どもと一緒にまちに出てお散歩を楽しむことは、たくさんの可能性を持っているということを実感したフラワーダイアログあおば事業「まち保育」体験をレポートします。

森ノオトと青葉区の協働事業「フラワーダイアログあおば」のプログラムの一つとして、「子どもの視点からまちを見直す」が11月8日に開催されました。保育園児の目線で住宅街のなかの花と緑をとらえ直してみようと、青葉区荏田西にある横浜市認可保育所ピッピ保育園で行われてきたプログラム「まち保育」を体験する内容です。「まち保育」の研究者で実践者である横浜市立大学准教授の三輪律江先生を迎えて行われました。

 

「まち保育」って何? 印象的な言葉に私は興味を持ちました。

三輪先生の共著『まち保育のススメ』(三輪律江・尾木まり・編著、萌文社、2017年)の中では、以下のように説明されています。

 

“まちにあるさまざまな資源を保育に活用し、まちでの出会いをつないで関係性を広げていくこと、そして、子どもを囲い込まず、場や機会を開き、身近な地域社会と一緒になって、まちで子どもが育っていく土壌作りをすることを「まち保育」とよんでいます。”

 

三輪先生は2012年からピッピ保育園で、防災まち歩きワークショップ、おさんぽマップ点検ワークショップなど、保育園の園児、保護者、地域の人たちと一緒になって、様々なワークショップを行ってきました。

今回はその中の一つ、インスタントカメラを使って、子ども目線の日常風景を切り取るキッズカメラマンワークショップを行いました。

 

ピッピ保育園で以前作成したおさんぽマップ「おもしろいものコース」「赤いお花コース」など、いろいろなテーマでおさんぽマップを作成する

 

20名近くの参加者と、学生12名、ピッピ保育園の子どもが一緒になり、4つのチームに分かれて、それぞれの散歩ルートが描かれた地図とカメラを持ってお散歩スタートです。

 

お散歩の始まりは大人も子どもも少しぎこちない様子でした。散歩を始めて10分ほどたった時、一人の男の子が「タヌキ!」と立ち止まりました。

「えっ?住宅街にタヌキ?」と周りを見回す大人たちに男の子は、住宅の植え込みの間からこちらを見ているタヌキの置物を指差してニコッ。

大人の目線では気付かなかった、タヌキの置物を見つけた男の子は嬉しそうな表情でタヌキの写真を撮りました。

このタヌキの発見から散歩はグンと楽しいものになりました。

 

子どもの視線の先には大人が気づかないものがたくさん。男の子が見つけたハートの形の葉っぱ

ひっそり佇むタヌキ

 

「つるつるの木」

「ボコボコの木」

「たんこぶみたい」

土からのぞく木の根を見て「くねくねの木だ!」と子どもの表現は実に豊かです。柊の葉を見て「なんでこの葉っぱトゲトゲなの?」と聞かれ、大人は答えに困ります。

 

手でさわって、匂いをかいで、全身で自然と向き合う子どもたち

 

木陰のちょっと湿った場所で男の子が「はりもぐらの匂い」と叫び、通りかかった小学校の給食室からのいい匂いに女の子が「おでんの匂い!」と嬉しそうです。子どもたちは、見えるものだけでなく、五感を全開にして散歩を楽しんでいました。

 

木の上の方だけが赤く紅葉しているのを見つけた男の子。近くのものだけでなく、子どもは大人が見過ごしている遠くのものにもよく気がつく

 
大きな塀の穴の中にクモの巣を見つけた女の子を見て、私も幼い頃、同じように、塀の穴を覗いていた記憶が、穴の中の湿った香りとともに一気に蘇りました。

 

壁の穴をのぞく子。苔むした湿った香りが私の幼い頃の記憶を呼び覚ます

 

幼稚園の園庭の前を通りかかった時、園庭で遊ぶ子どもたちが、緑道を散歩している私たちに話しかけてきました。

 

「なにしているの?」

「お散歩だよ」

「それはなに?」

「赤い葉っぱだよ」

知らない子ども同士が、園庭の柵越しに話をしていました。

 

子どもたちと散歩をしていると、犬の散歩をしている人から声をかけられたり、玄関先の掃除をしている人が挨拶してくれたりと、多くのコミュニケーションが生まれることにも改めて気づきました。

 

子育てをしていると、子どもと一緒だからこそ生まれるコミュニケーションは多く、知らない人から話しかけられたり、そこから会話が生まれるのは心温まる瞬間です。子どもは固くなってしまったコミュニケーションの畑を、耕してくれるミミズみたいだな、なんて感じることがあります。

 

地面に落ちている赤い実を撮る子。子どもたちに植物の名前を教えてもらいながらの散歩は楽しい

 

お散歩の後、チームでお散歩マップを作成しました。子どもたちが撮った写真を地図に貼り、コメントを記入します。

それぞれのチームで全く様子の違うお散歩マップが出来上がっていて、驚きました。

 

出来上がりのお散歩マップはチームによって全く違う仕上がりに

 

「お花の写真を撮る子どもが多い中、虫ばかり探していた子どもがいて、たった1時間の間に10種類もの生き物に出会えた。子どもそれぞれの個性が見られてとても楽しかった」「大人だけだったら気づけないことを子どもと一緒だからこそ気づくことも多かった」「あの小さなスイカみたいな植物はなんだったのだろう」など参加者からは子どもと一緒に散歩を楽しんだ感想が多く聞かれました。

 

三輪先生(左から2人目)と子どもたちの掛け合いは見ていてとても楽しい

 
「公園に行くというような、ただ目的地に向かう行為としてではなく、歩く道のりの中で何かを発見したり、感じたり、お散歩すること自体を楽しむと、そこには新しい発見が多くあります」と三輪先生は言います。

 

三輪先生の話の中で、とても心に残るものがありました。

いつもお散歩の途中、子どもたちが庭先のきれいなお花を楽しんでいるお宅に、「いつもきれいな花を楽しませてもらってありがとう」という気持ちを込めたカードを配るという「ありがとうカード大作戦」のお話です。

はじめは恐い顔をして玄関から出てきた男性が、子どもたちからのありがとうカードを受け取ると、とてもいい笑顔になったそうです。

 

玄関先に植えられたきれいな花を見つけて、喜ぶ子どもたち

 

自分の家の軒先の花を、道ゆく人も楽しんでいるということを知ると、きっと嬉しくて、お手入れの励みにもなりますよね。

「自分のテリトリーである軒先を、別の人も楽しんでいるという感覚が生まれると、その場がパブリックに開かれていきます。緑を楽しめる軒先が増えると、そこは美しい空間になっていき、まちが良くなっていくことにつながると思います。プライベートな場をパブリックに開いていく良さを指摘できるのは子どもたちです」。三輪先生の言葉に会場は一気に引き込まれました。

 

「幼児が家から歩いていける公園や商店までの狭い生活圏を豊かにしていくことがとても大切です。それが子どもの成長に大切な環境をつくることにつながります。まちの中に知り合いや顔見知りがいることで、子どもは成長した時に自然とそのまちに帰りたいと思うのではないでしょうか」(三輪先生)

 

ピッピ保育園園長の相原むつみ先生もこう語ります。

「幼い子どもにとって“いつも挨拶をしてくれるおばさん”、“きれいな紙をくれるおじさん”が地域にいるという思い出はとても大切です」。

子どもが多くの人から関心を寄せてもらい、見守られて育っていくという環境は、子どもたちがまちに出ていくからこそ生まれ、育まれていくものなのかもしれません。相原先生は、「まち保育」との出会いから、ピッピ保育園も地域とのつながりを深めていったというエピソードも披露してくださいました。

 

今回の「まち保育」体験は短時間ではありましたが、子どもたちがまちに出て、地域の環境にふれて、驚いたり喜んだり何かを発見するといったちょっとしたアクションが、地域交流のさまざまな可能性を生み出すことがわかりました。そして、子どもたちが育つ環境をさらに豊かにすることにつながっていくことを実感させられた貴重な体験となりました。

Information

今後のフラワーダイアログあおばの事業のお知らせ

 

対話交流 フラワーダイアログ「青葉区らしい花と緑とは?」

 

年間プログラムの振り返りの後に、今後の企画提案をして、そこに区民の皆様の意見を取り入れて、ともに作っていくプロセスにご参加いただきたいと考えています。たくさんの方のお越しをお待ちしています。

 

2019年2月8日(金)14:00-17:00(開場13:45)

会場:青葉区役所4階会議室

定員:50人

参加費:無料

 

申込みは、イベントのタイトル、お名前、ご住所、電話番号、メールアドレスを明記し、event@morinooto.jpまでお申し込みください

Eメールをお持ちでない人は、FAXで企画調整係045-978-2210へお願いします

牧志保
この記事を書いた人
牧志保ライター
色々な地を転々としながら2度目の横浜暮らし3年目。「興味あることは、やってみる!」をモットーに忙しい毎日を楽しく奮闘中。週末、家族と過ごす、もちより畑、キャンプ、DIYでリフレッシュ。テンコ盛りな今の生活が結構気に入っている。福岡県出身、 2女の母。
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