干し野菜がつくる福祉と暮らしの輪|とうり(社会福祉法人グリーン)
青葉区鴨志田町に社会福祉法人グリーンのアンテナショップ「とうり」はあります。そこには、施設の利用者さんが丹精込めてつくる野菜や果物、滋味深い干し野菜がもたらす、福祉と暮らしのすてきな循環がありました。

私が青葉区鴨志田町にある「とうり」に初めて立ち寄ったのは、同じ町内で行われた森ノオトライター養成講座の帰り道のことでした。お店のおもてに出ていた看板には「ドライやさい・フルーツ いろいろあります」の文字がありました。

 

ドライりんごは好きで食べますが、梨…みかん…。はて…。思わず足が止まりました。お店に入ってみると、ずらりと商品棚に並んだドライ野菜とドライフルーツ。どれも余計なものを添加せず、素材そのものをそのまま乾燥させてできたものです。迷った挙句、その日は2歳の娘も食べやすそうなりんごと、私の好物の梨、それからなんだか気になるみかんを買って帰りました。

 

家に着くやいなや、おやつを兼ねて早速娘と試食しました。

まず、りんごです。甘さと酸味が両方あって、噛むごとに味わいが深まります。娘の「りんご、ちょーだい!」も止まりません。

そして、梨。浜なしのみずみずしいさっぱりした甘さを想像していると、意外や意外、ぎゅぎゅっと凝縮された濃密な甘さ!このギャップはおもしろいなぁ。

そして、みかん。見た目はボリューム感があるのですが、それを気持ち良く裏切る、さくさくっとした小気味良く軽い食感と果実のうまみ。あとを引くおいしさです。ムムム、これは良い!!

 

パッケージをくるりと裏返すと「製造者 社会福祉法人グリーン」、そして「商品開発 干し野菜研究家 澤井香予」さんの記載があります。このドライフルーツはどんな人たちによって、どんな風に作られているんだろう?フルーツ以外にも他にもたくさん商品が並んでいたけれど、どんなものだったのだろう?なんだか色々気になってきたのでした。

素材だけの、シンプルな原材料。小さな子にも手軽で安心なおやつになる

4月4日、鴨志田町にある社会福祉法人グリーンを訪ねました。グリーンは、横浜市青葉区を中心に、農薬を使わない野菜作りや食品加工・販売を通して知的障害者の生活支援・自立支援を行う日中活動施設です。施設には、現在20代から50代までの56名が通所しており、このうち35名が畑仕事を担当する農作業班として、21名が加工班・アンテナショップとうりの担当として、干し野菜の製造・販売に関わっています。

 

この日、ちょうど見頃を迎えた枝いっぱいの桜の花が施設脇に咲き誇り、青空に映えていました。明るい笑顔で迎えてくださったのは、グリーンの職員、笹村久子さん。

もともとは、青葉区すみよし台にあったグリーンですが、2016年に鴨志田町に移転。笹村さんが指さす先には、利用者さんが野菜を作っている畑が見えます

施設奥の作業室に案内されると、作業室では職員の金井拓磨さんのもと、利用者さんがちょうどドライ商品用のキャベツを切っているところでした。和やかな雰囲気の中、グリーンの畑で農薬を使わずに育てられた野菜は、一つひとつこの作業室で加工されていきます。なお、畑での作業は、森ノオトでもおなじみのはやし農園の林英史さんがアドバイザーを務めています。そんな畑で採れたばかりの新鮮な野菜をドライにするということにこだわるのがグリーン流。傷んだものは使いません。「そうすることで美味しさの質もやはり違ってくると感じています」(金井さん)

利用者さんが丁寧にカットしたキャベツが乾燥機に並んだ

部屋の奥にはたくさんのトレイが入る大きな乾燥機が今まさに稼働中でした。

既にキャベツやほうれん草が何段ものトレイで乾燥にかけられている様子が見えました。

 

乾燥機にかけられる野菜は、その水分量や糖度によって水分の蒸発の具合が違うため、どのくらいの時間乾燥させるかを種類により細かく割り出しているそうです。乾燥機の一番上の段にはトレイが重ねて置かれていました。何だろうと質問すると、「あれは乾燥機のファンの風のあたりを柔らかくして乾燥機の中で野菜が飛ばされてしまうのを防いでいるんですよ。出来上がりの品質を保ちやすくなります。これは利用者さんが作業の中で見つけたアイデアなんですよ」と金井さんが教えてくださいました。

 

もともと、グリーンでの干し野菜の取り組みが始まったのは、泉区で干し野菜研究家として活動していた澤井香予さんからの連絡がきっかけでした。

 

澤井さんは2児の母。5年前、第二子が生まれてから食事の用意をすることが大変に感じていたころに出会ったのが干し野菜です。何かを添加せずに作れるので小さな子に食べさせるのにも安心なこと、また保存がきくので予めカットして「後は入れるだけ」状態の干し野菜のストックがあることは日々の心強い味方になりました。しかも、何より、美味しいこと。干すことで生まれる旨味に衝撃を受けたと澤井さんは言います。また、干し野菜製造は作業がシンプルで、様々な感覚を持った方も携わりやすいと気づき、「干し野菜を製造したい!」と、一軒一軒福祉施設に電話をかけ交渉したそうです。そうして出会ったのが、グリーンでした。

乾燥した野菜や果物そのままの商品はもちろん、お鍋に丸ごと入れてお水と調味料を入れるだけでできるパスタセットなど、日常の中でよりかんたん便利に干し野菜を使えるような工夫を凝らした商品づくりが行われている

 

「それではとうりに行ってみましょうか」と、笹村さんがとうりへ案内してくれました。グリーンととうりは同じ鴨志田町内。歩いて5分程のところです。

私が玄関で靴を履いていると、農班のみなさんがちょうどわいわいと農作業から帰ってくるところでした。とれたての野菜が次々と運ばれてきます。直売する分はとうりに、ドライ加工する分はグリーンに運びます

地域にグリーンの活動を知ってもらい、つながるための場所、アンテナショップとうり

グリーンの干し野菜は、作り手の見える安心な食材でありながら、インスタント食品のように気軽に常備できて思い立ったときに手軽に作れる、まさに「自然派インスタント食品」と言えます。何とも心強い暮らしの味方!一度利用すると、そのおいしさと便利さの虜になり引き続き愛用される方も多く、ご家族やお友達などへ贈り物として使ってくださる方も増えているというお話にも頷けます。

 

「とうりができてから、利用者さんもお客様に自分たちの作ったものを買ってもらう場ができて、利用者さんが喜びや張り合いを感じられるようになったことは大きいと思います」(笹村さん)と、利用者さんのやりがいにもつながっているようです。

「とうり」で販売を担当する大場さん。大場さんの隣でゆったりと接客をする利用者さんとの時間は、お客さんにとってもリラックスタイム

「干し野菜の取り組みが始まってから、旬で大量に野菜が採れた時も無駄にしてしまうようなことがなくなったんです」と話してくださったのは、職員の大場里美さん。「輸送をする時も、軽くなって運ぶのが楽になったし、例えば夏にしか採れない野菜でも年間を通して楽しめるようになりました」

 

利用者さんが地域の中で汗を流し野菜を育て、それを自ら加工し、このとうりで地域の方々の手にとってもらう。おいしかったよ、便利だったよ、助かったよ、という感謝の声の輪がぐるぐるまた回っていく。干し野菜を媒介に、関わる皆が笑顔になる循環が生まれているのを感じました。

知れば知るほど、色々試したくなってしまう魅惑の棚!

取材帰りにホクホクと色々な干し野菜、食材を買って帰った私。早速、干し野菜がセットになっているペンネのキットで夕食を作ってみました。

 

パッケージを開けたら中身を鍋に移します。お水とオリーブオイル、塩を書かれた分量通りお鍋に入れ、沸騰後10分ほど火にかけます。時折混ぜながら、醤油を入れ水分を飛ばして、なんと完成!パスタを茹でている間に、簡単なサラダなりスープなりを準備するも良し、本当にあっという間に出来上がりです。

ドライにしたきのこのぎゅっとした旨味とお醤油の香ばしさ。美味しい…!

ザルにあけてお湯を切る必要もないので、片付けもらくちんです

忙しくクタクタになった日でも、このような安心・かんたんな常備があったら、こんがらがった気持ちもほどけるというものです。

とうりのお店の名前の由来。込められた想いのように、日々とうりという場所を通じて、福祉と地域が関わりあっていく

身近な地域でまわるすてきな輪。おいしく楽しく、自分の暮らしを通してその輪に加わってみませんか。

Information

<アンテナSHOPとうり>

住所:横浜市青葉区鴨志田町561-6
営業時間:平日10:00~15:00
TEL:045-482-7277
とうり商品紹介ページ(グリーンHP内)

https://www.green1993.or.jp/dry.html

社会福祉法人グリーンの干し野菜ブログ

https://ameblo.jp/green1993yokohama/

 

<社会福祉法人グリーン>

https://www.green1993.or.jp/index.html

住所:神奈川県横浜市青葉区鴨志田町335-1

TEL:045-961-0305

MAIL:green@green1993.or.jp

原田則絵
この記事を書いた人
原田則絵ライター
横浜市緑区在住、一女の母。やんちゃな小さい人に翻弄されつつも、彼女が運ぶ自由な風が吹く日常を楽しんでいる。普段はゆるゆる、無理をしない。時々寝食惜しまず。春から親子ともども新生活に挑戦中。質実「柔」健でありたい。
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