人と人、自然と人がつながる縁側へようこそ。 寺家ふるさと村「里のengawa」を訪ねました。
日本人の心の原風景のような里山が残る、青葉区の寺家ふるさと村の一角にフランスとベルギー生まれの2人の男性が「里のengawa」を作りました。“ご縁がつながる場”であるようにと願う「里のengawa」は人がつどい、ゆっくり過ごす陽だまりのような場所です。
※ピザカフェは2019年、秋に閉店いたしました。詳細はInformation欄のリンクをご確認ください。

東急田園都市線・青葉台駅よりバスに乗り「鴨志田団地」を下車、10分ほど歩いて一山超えた所に「里のengawa」はあります。

前には田畑、裏には森や竹林が広がるのどかな里山の一角にあります。駐車場は8台分

まるで自分が子どもの頃から通い慣れた場所のように感じる、不思議な既視感。

建物の開け放たれた広い空間は爽快で心地よく、自然と伸びをしたくなります。何種類もの小鳥のさえずりが響き、さらさらと葉を揺らす風の音が過ぎていく。シンクロするように「里のengawa」に訪れた人たちの話し声が聞こえてきます。

 

通り過ぎるご近所の方に話しかけられる店主のアレックスの姿、犬の鳴き声とおいしいピザのにおい……。「里のengawa」にはなんとものどかな、ゆったりとした時間が流れていました。

この日はカフェのかたわら、パラコードクラフトの教室が開かれていました

フランス人のAlexandre Gerard(通称:アレックス)さんと、Stephane Roland(通称:ステファン)さん。日本から遠く離れた地で生まれ育った彼らがコツコツと時間をかけて、DIYで創りあげた「里のengawa」は、時々はカフェとなったり、寺家ふるさと村の豊かな自然体験の場であったり、ある時はヨガなどさまざまなワークショップなどのレンタルスペースともなる自由な場所です。

 

今から遡ること18年前、2001年にアレックスは来日しました。語学の講師をしながら青葉区の元石川町で「ozakuyato satoyama」という田んぼの活動に関わり、2015年に寺家町のこの場所に住み始めたそうです。

 

元々は野菜工場、その後会社の社屋として使われていた建物を、自分たちの手で居心地のいい空間へとつくり替えていきました。

薪ストーブを中心に、大きな梁が見える広々とした空間。風通しがよく、窓からの光がたくさん入るのが気持ちいい

グループで使いやすい個室のようなスペース。掘りごたつが楽でうれしい!このテーブルを取り外して畳のスペースとして使うこともできます

奥はキッズスペースやワークショップなどとしても使いやすい広さ

アレックスはこの「里のengawa」でアレックス農園「英語で自然塾シリーズ」として田植え体験や虫観察、流しそうめん、もちつき、たけのこ堀りなど季節を感じる自然体験の教室を開いています。

一方、ステファンは世界を旅する中で日本に興味を持ち、15年前に来日。WEBデザイナーの仕事をしながら、神奈川県の逗子市や青葉区の元石川町を経て、この場所にたどり着きました。
毎週木・金と第2、第4日曜には「里のengawa」はカフェとしてオープンしています。ステファンがDIYでつくったピザ窯で焼くピザはとてもおいしいです!

この日はご近所で掘ったたけのこと自家製ベーコンのピザ。旬のものを使い、季節ごとにピザの具が変わるのも何度来てもうれしいおたのしみ

キッシュはボリューム感があって大満足と、人気の一品です。今日は長ねぎとプチトマトのキッシュでした。

 

さっくりとした生地に、季節のものをとりいれたピザやキッシュなどはできるだけ寺家町など地元のものを使って、地産地消を心がけているそうです。ベーコンやピザにかけるチリソースをはじめ、ジンジャエールにハーブティ、ジェノベーゼまで、あれもこれも自家製だから驚きです!

 

私の一番のおすすめは、アレックスが栽培した玄米をトッピングした「玄米リゾットピザ」です。初めて食べた時は「えっ、炭水化物(ピザ)に炭水化物(玄米)?? いやいやいや、無理! 食べきらない!」と正直思いましたが、ペロリと食べてしまうおいしさです。素材がいいからか消化しやすく、数時間あけば胃がもたれることもなくスッキリ体を整えてくれました。

ステファンが育てている鶏。手作りの鶏小屋には通路があり、広場へとつながっていて鶏たちは自由にお散歩をしています。タイミングがよければうみたて卵がピザにのることもあります

「簡単に買うことよりも自分の手で作る方が楽しい」と話すステファン。暇を見つけてはスプーンを一本一本、木彫りで作っている姿を、駐車場でよく見かけました。

 

「自分たちが楽しめる好きなことをやって、好きな仕事をしつつ自由な時間も過ごす」とアレックスも希望を話します。

 

人から与えられるのではない、自分たちで作り出す仕事や時間、ものや空間。これだけのものを手作りしていて、行くたびにいつもきれいに片づけられ、気持ちよく掃除されている「里のengawa」で、2人はただのんびりしているわけではないでしょう。いつもコツコツと働き、気長に時間をかけて作りあげていく2人の姿は、つい忘れてしまっていた、日本人の昔の生活を私に思い出させてくれました。

 

それは、頭や目だけでなく、リアルに動く手や体を使ってものを作り出すことの大切さなのかもしれません。そして、今の住居にはあまり見かけなくなった「縁側」。その空間とともに、心にゆとりのある暮らしというものが失われている気がします。ここに訪れるたびに感じる、ゆったりとした時間の流れは、今私の生きている時間がどんなに忙しいペースで、先へ先へと走らせているものなのだろうと改めて振り返らせてくれました。

「里のengawa」という名前はここを支える仲間たちと一緒に考えたそうです。「昔はあった縁側のような、ゆっくり集まる場所。家に入るよりもっと気軽に立ち寄れるようなコミュニケーションの場」。そんな思いをこめています

「自分たちだけでなく、皆が手伝ってくれるおかげ。周りの人がいてくれた、それが里のengawaのほとんどすべて、と言ってもいいくらいほんとに皆のおかげ」と2人は声を揃えて言います。

 

ババちゃんと慕う大家さんをはじめ、ご近所さんや「里のengawa」を支えるスタッフや仲間たちを大切に想い、感謝していることが言葉の端々から伝わっきました。

 

「里のengawaは人がつながる場であってほしい」

 

2人は、お店の中で知らない人が犬やひよこ、ピザ窯などをきっかけに話が膨らむのを見るのがうれしいそうです。

「人や自然、ここにいる動物……どんなものとつながるかはその人次第。来た人が、自由に何かにつながる場所でありたい」と2人は話してくれました。

アレックス(左)とステファン(右)。2019年6/2(日)は「風の里まつり」が「里のengawa」で開かれます。「おひさまの時間(リーマーケットや様々なワークショップ)」と「月と蛍の時間(LIVEやダンスなど)」の二部制です。

 

スタッフが困った表情で「暖かくなって蜂がお店に入ってくることがあって……」とステファンに話すと、彼は「蜂も友だちだからね~」と和やかに笑っていました。その会話を聞いて、ここが居心地いい場所なのも腑に落ちて「あぁ、好きだな」と私は思いました。

 

お日様がどこにでも誰にでも降り注ぐように、蜂にも私にも、里のengawaを訪れる誰にでも、ちょっと休める縁側がここにはあります。

 

いろんなご縁が生まれていくことを想像して、暖かな陽だまりの中、私は幸せな気持ちになりました。

Information

※「里のengawa」はシェアスペース・オフィスとして新しい活動を始めています。詳細は以下ののリンクをご確認ください。
https://www.facebook.com/197937604057283/posts/754294005088304/

 

住所:〒227-0031 横浜市青葉区寺家町522

東急田園都市線・青葉台駅北口から東急バス(2番乗り場)

青31「鴨志田団地」ゆき「鴨志田団地」下車、

もしくは、青30「寺家町循環」「四季の家」下車、徒歩10分。

駐車場 8台

 

https://www.facebook.com/satonoengawa/

 

インスタグラム

@satonoengawa

 

メール
satonoengawa@gmail.com

 

アレックス農園「英語で自然塾シリーズ」

https://tabica.jp/users/186

 

田植え・ランチ・山散策/虫観察/クラフト

https://tabica.jp/travels/4832

 

 

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この記事を書いた人
新楽 津矢子ライター
横浜市青葉区在住。地元鴨志田を中心に、フリーのヨガインストラクターとして活動中。生きる素は、ヨガ。笑顔の素は、おいしものを食べること、自然を感じること、親しい人と笑いあう時間。エコで丁寧な暮らしを田舎でしたいと思いつつ、身の丈にあうことが一番!と一歩ずつの生活を楽しんでいる。
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