寺子屋+だれでも食堂? 子どもも大人も、楽しくおいしく憩える「てらこみーる」
学習支援の寺子屋+だれでも食堂のてらこみーるは、初めて行ってもくつろげて、子どもも大人もみんなで楽しくおいしいご飯が食べられる、居心地の良い場所です。今年2月、オープンから3年目を迎えました。副代表の宮澤さんとキッチン担当のカメさんをはじめ、学習ボランティアさんや利用者のみなさん、キッチンスタッフさんたちに、てらこみーるの魅力を伺ってきました。

寺子屋と聞くと、江戸時代に、お寺で子どもたちが読み書きそろばんを習う、そんなイメージが浮かんだ人が多いのではないでしょうか? てらこみーるは、現代の寺子屋+「だれでも食堂」です。近年、「こども食堂」が注目を集めていますが、だれでも食堂は対象を子どもに限定せず、地域のだれもが安心・安全な食事を真ん中に交流を生み出し、楽しく働ける場として、近年増加の一途をたどる「コミュニティレストラン」の一つと言えます(「地域食堂」という言い方もあり、団体がそれぞれの思いを持って呼称を決めています)。川崎市では公立小中学校の放課後の教室を利用した「地域の寺子屋」事業があって、“寺子屋”は聞きなじみがあるのですが、コミュニティレストランのだれでも食堂と両方をやっているところは珍しいと感じ、私は前々から興味を持っていました。

 

そこで昨年の6月に、学習ボランティアとして初めててらこみーるを訪れました。スタッフさんたちの明るく和やかな雰囲気と、小さな子どもたちが泣いてもすねても、その場にいる誰もが笑顔で、よしよし、と見守るのんびりと包容力のある空間に、私の緊張もすっかりほぐれました。子どもたちとバルーンアート作りを楽しみ、お迎えに来たお母さんたちと野菜たっぷりの絶品ランチプレートに舌鼓を打ち、くつろいでしまいました。初めてなのになぜか居心地が良く、もっと多くの方にてらこみーるを知ってもらいたいなぁ、と思い、今回てらこみーるの誕生までの背景を取材してきました。

 

てらこみーるは川崎市のJR南武線・武蔵新城駅から徒歩2分にあるコミュニティカフェ「メサ・グランデ」にて、毎月第3日曜日に開催されています。

 

午前10時半から11時45分までは寺子屋として、子どもたちは持参した宿題やワークなどをします。就学前の子どもが取り組める塗り絵や迷路などのプリントや学習プリントも用意されています。今春からは、算数・数学検定など、希望者には資格取得を目指した勉強にも取り組んでいます。てらこみーるで勉強をする子どもたちに、将来役立つものを残したい。また、大人も子どもと一緒に勉強することで、子どもたちの勉強への意欲を向上し、維持できるのではないか、という考えからの新たな試みです。

勉強する子どもたち。学習ボランティアさんたちが優しく教えてくれる。大学2年生だった立ち上げ時から大学を卒業する今春まで学習ボランティアをしていたちひろさんは、「てらこみーるは私たちボランティアの居場所にもなりました。普段自分が接することの少ない子育て世代や運営の30代~40代の方たちと関わりを持つことができました。私にとってのてらこみーるは、温かくてにぎわいがあふれる場所。自分が子どものときに、こんな場所が欲しかったです」と話す

 

テーブルの上を片づけて、12時頃からはだれでも食堂になります。子どもは無料、大人は500円で、飲み物とスープ付き。野菜を無駄なく美味しく食べられる工夫がされたワンプレートランチを食べられます。店内のキッチンで、朝からボランティアスタッフの皆さんが作ってくれた出来立てのランチは絶品です。お迎えにきた親御さんや一般のお客様、スタッフも含めみんなででいただきます。

本日は中華ランチ。メインは五香粉の効いた春巻き。キッチンスタッフをしていたユウコさん(70代)は「雰囲気がとにかく良かった。リーダーがしっかり采配してくれたから、特に苦労を感じたことはなかった。新しいメニューを作るたび、こんなことができるんだ、と勉強になった」。セツさん(80代)は「月に1回でも、働く楽しみがあった。健康のバロメーターみたいなもので、生活の張り合いとなって良かった。若い人と交流できる場は貴重で、エネルギーをもらえた」

 

「地域をつなぐ社会貢献がしたい」

 

副代表の宮澤明子さんの普段の顔は、ヨガの先生です。2016年11月頃、当時マタニティヨガの生徒として通っていた立ち上げメンバーからだれでも食堂をしないかと誘われ興味を抱きます。以前から「地域とつながりを持った社会貢献がしたい」と考えていた宮澤さんはそれからすぐに、他の2名の立ち上げメンバーとともにいくつかのこども食堂の見学兼ボランティアに参加しました。翌月には、そのうちの一つであった「メサ・グランデ」主催の地域食堂「めさみーる+」で、運営主体であるNPO法人ぐらす・かわさきの田代美香さんから食堂の開催場所として「メサ・グランデ」の提供と寺子屋の同時開催を提案されました。偶然にもいつか寺子屋をやりたいと考えていた他の立ち上げメンバーの希望とも合致し、話はトントン拍子に進み、それから2カ月もたたない2017年2月には、他にはあまり見ない寺子屋+だれでも食堂という形のてらこみーるが誕生しました。

学習プリントが準備されているので、子どもは手ぶらでも学習ができる。就学前から取り組めるプリントも充実。レジカウンターに置かれている可愛いイラスト付きのメニューも、毎回宮澤さんが手書きで作成。

 

 子どもも大人も同じものを食べる喜び

 

みーる(=meal/食事)は、キッチンリーダーのカメさんこと野菜ソムリエの中島梨佳さんが担当です。調布にある野菜ソムリエ認定レストランで働いていたカメさんは、野菜の扱い方を熟知し、切り方で味や食感を変えて無駄なく使います。今回のかぶも、葉は刻んで春巻きの具に。かぶの皮と葉は浅漬けにして、捨てずに使い切りました。食育の一環として、旬の野菜を使い季節感を出したり、収穫時の野菜の形がわかるような切り方や調理をしたり。ときには食べる前にメニューに使った野菜の説明をすることもあるそうです。

 

カメさんが大人も子どもも同じメニューにこだわっている理由は、大人と同じものを食べている、という子どもたちの嬉しい気持ちを大事にしたいからです。だからといって、子どもだけではなく、大人も満足してくれる味にしたいので、子ども用には、野菜を小さく刻んだりスパイスは少し控えめにするなど、食べやすいように心配りをしています。子どもが食べやすい工夫は、子育て中のスタッフさんたちの意見を大いに参考にしています。「家では食べられない野菜が、てらこみーるでは食べられた!という声がとても嬉しいんです」とカメさん。普通の飲食店とは違い、食べる人と作り手の距離がとても近いので、カメさんがテーブルに行くと、自然に会話が始まるのが印象的でした。お母さんがたに聞かれてランチのレシピを教えることも。カメさんは子どもがランチを残したら、その子のお母さんに理由を聞くようにしています。例えば、見た目が苦手な野菜と似ていたから手をつけなかった、などの声は、次回の調理に活かせるよう、今回のレシピの余白にしっかり記録します。

野菜は寄付の他、メサ・グランデで購入している有機や無農薬の野菜、地元の川崎で採れた野菜なども購入している

地元で野菜作りをしている畑に朝7時に集合し、収穫をすることも。新鮮で美味しいうえに、作り手の顔が見えるので安心して調理ができる

 

てらこみーるでは、年に数回は季節を意識した食のワークショップを開催し、子どもたちが自分でつくったご飯やお菓子を食べる機会をつくっています。「こどもたちは、自分でつくるとよく食べるんです」(カメさん)

子どもたちがキッチンのお手伝いをすることも。スタッフに教えてもらいながら、春巻きを上手に包む常連のあいちゃん(小学3年生)。「てらこみーるの好きなところは、みんなが優しいところ。ご飯がおいしいところ。あと、お手伝いをすると楽しい」

当日は集まったスタッフで臨機応変に。チームワークのおかげで、試作のときより美味しいものが出来あがるのだそう

メニューの計画からレシピ起こしまで約5時間。レシピの余白には、当日の反省や気づいたことを毎回メモ。何冊もの分厚いファイルには、カメさんの真摯で熱い思いがぎっしり

和気あいあいとランチ。お迎えに来ていたお母さんは、てらこみーる開設当初から利用している。「息子は、年上の社会人や大学生のお兄さんと話せて、共感してもらえるのが嬉しかったみたい。ランチもとても美味しい」

 

てらこみーるはみんなの居場所

 

てらこみーるは、2017年度から今年度まで継続して川崎市地域子ども・子育て活動支援助成モデル事業として認定されています。運営スタッフはみんな、日中は別の仕事をしているため、限られた人員や予算でやりくりをしながら、現在は月に1度の開催をしています。

 

私がてらこみーるに来るたび感じる居心地の良さは、誰にも気兼ねせず、素のままの自分でいられるから。美味しいご飯でおなかも心も満たされて、ゆるゆると気持ちがほぐれていくのを感じられるから。そして楽しい雰囲気を、場のみんなで共有できるから。確かに利用する子どもたちは、貧困に苦しんでいるようには見えません。でも、家庭や学校以外で、安心して自分らしくいられる居場所として、てらこみーるにやってくるんだと感じました。それは「てらこみーるに来てくれたあなたのために」という真心が、じんわり心に沁みてくるから。スタッフの「どこであろうともこのメンバーなら、その場がてらこみーるになる」という言葉に象徴されているように思います。

 

第3日曜日に、1人でいるのは淋しいな、美味しいごはんが食べたいな、と思ったら、気軽に行けるみんなの居場所、それがてらこみーるです。今いる場所でしんどい思いをしている子どもや大人たちが、ほっと一息つけて明日も頑張ろうと思えるように。地域に根差し誰もが行けて、学びや食で多世代とつながれる、てらこみーるのような居場所は、現代社会に必要な存在だと思いました。そして、本当に支援を必要とする人たちに、てらこみーるの存在を知らせること、そして私たち一人ひとりが地域であたたかな眼差しを持って子どもたちを見守る存在となり、その輪を広げていけたらいいな、と感じました。

食後にボランティアさんのバルーンアートを楽しむ子どもたち。初めて来た子たちが「今日はとても楽しかった」と口をそろえた。みんないい笑顔

Information

てらこみーるFacebookページ:https://www.facebook.com/teracomeal/

中島裕子
この記事を書いた人
中島裕子ライター
川崎市中原区在住。高1男子の母。現在は、地元のタウン誌やfacebookで記事を書く。美味しいものや手作りが好き。今の関心テーマは、食と教育。趣味は書道。今年の目標もダイエットの成功と断捨離。森ノオトでは、ライターとして経験を積み、イベントに参加して世界を広げたいと思っている。
未来をはぐくむ人の
生活マガジン
「森ノオト」

月額500円の寄付で、
あなたのローカルライフが豊かになる

森のなかま募集中!

寄付についてもっと知る

カテゴリー

森のなかま募集中!

メディアを寄付で支える
読者コミュニティ
「森のなかま」になりませんか?

もっと詳しく