たまプラーザから「花育」を進める「フラワークラブなな夢」
川崎市宮前区にある北部市場。このあたり一帯に花を提供する花卉(かき)市場から、花を育て慈しむ体験を通して、お互いを思いやるあたたかな心を育み、社会へとつなげる“花育”を伝えている団体があります。NPO法人「フラワークラブなな夢」さんを訪ねました。

私は移り行く季節を追いかけるように各地の花を巡るのが大好きです。梅に始まり、桜の時季には南から北へと桜前線を追い掛け、その次はチューリップ畑や新緑を愛で、バラや紫陽花と季節の花を探し求めて歩いたり走ったりしています。

 

「国際バラとガーデニングショー」「世界らん展」などを巡ったり、花と聞けばどこへでも飛んでいきたくなるくらいの花好きですが、家からもほど近い川崎北部市場には、食材の買い出しには行ったことがありましたが、花を目的にはこれまで行ったことはありませんでした。

 

そんな北部市場の仕入れ客で賑わう端っこに花卉市場があります。その一角に事務所を構えるNPO法人「フラワークラブなな夢」は、子どもからお年寄りまで、年代を問わず、花や緑に親しみ育てる機会を通して、思いやりと創造力を育てる「花育」を推進している団体です。

色とりどりの季節の花で華やぐフラワーアレンジメントは部屋も心も明るくしてくれます

そんな「フラワークラブなな夢」さんが、私の子どもの通う保育園からも近い、美しが丘地域ケアプラザで、とてもリーズナブルな価格でフラワーアレンジメント講座を開催すると聞き、喜んで参加してきました。

 

会場に入ると川崎北部市場で仕入れたという季節の花が並んでいます。その日の花は、スプレーカーネーション、アルストメリア、かすみ草、レザーファン。王冠の形をしたかわいい容器に美しい包装紙を二枚重ね、真ん中にはオアシスという、花を挿していくスポンジをセットしてくれていました。

 

10センチ程度にカットしたストローで長さを合わせ、均等に切った花を 順々に挿し、円を描くように生けていく……。集中して花と向き合う時間はとても楽しく、花にふれるとともに心がスーッと澄んだような気持ちになり、リフレッシュしている自分がいました。美しく凛と咲く花の彩りに元気をもらい、とても清々しい気持ちで教室を後にしました。

 

美しが丘地域ケアプラザでは、2015年より毎月第二金曜の18時から19時の1時間で、大人向けのフラワーアレンジメント「フラワークラブ花夢」というサークル活動がひらかれています。そこに講師として、フラワークラブなな夢のスタッフが来て、アレンジメントのアドバイスなどをしてくれます。

 

先日そこに見学に伺ったとき、花や木を切りながら、イースターの設えに向けて皆さん和気あいあいと準備をしていました。参加者の方は、「落ち着いてきた子育てと仕事の合間、ここで花とふれるひと時が楽しみです。ホッと一息ついて花と向き合える貴重な時間。毎月季節やイベントに合わせた花を提供して下さり、それをアレンジメントして家に持ち帰ると、家の中がとても明るくなり、それでまたしばらく楽しめるのが嬉しい」と笑顔で話されていました。

川﨑北部市場の花卉市場にて、笹本さんと菊地さん

フラワークラブなな夢の理事長、笹本美穂さんと理事の菊地悦子さんは、お二人でアレンジメントの教室も開催されています。お話を伺いに、事務所のある川崎市中央卸売市場・北部市場へと向かいました。週末にしか来たことのない市場、ここは青果部、水産部、花卉部、関連商品と4つに分かれており、東端に位置するのが花卉部でした。広いエリアに色とりどりの花がたくさん並んでいて、季節の花である紫陽花や胡蝶蘭も目に止まります。

 

NPO法人「フラワークラブなな夢」は2015年に立ち上がった団体です。初代会長の村上博子さんは、たまプラーザでフラワーアレンジメントの教室を主宰されていて、教室で使う花を北部市場で仕入れていたそうです。その頃、北部市場を運営する川崎市花卉園芸株式会社社長の柴崎太喜一さんが「花に手軽にふれてもらう機会を増やしたい」と、川崎市の小学校などで花育をやってくれる人を探していたタイミングで、村上さんに声をかけたのだそうです。

 

そのことがきっかけになり、小学校などで子どもたちに花の魅力を伝える、なな夢の前身となる活動が始まりました。現在のなな夢の理事長の笹本さんと理事の菊地さんはともに、村上さんの教室に通う生徒で、活動の当初からサポートとして関わっていました。川崎市花卉園芸株式会社の後押しもあり、2015年になな夢はNPO法人化して、活動の範囲を広げてきました。

 

 

笹本さんと菊地さんたちは、支えてくれるボランティアの仲間たちと力を合わせて、花育の普及活動に取り組んでいます。

 

ところで、読者の皆さんは「花育」という言葉を聞いたことがありますか? 農林水産省の定義によると「花卉の多様な機能に着目し、教育、地域活動に取り入れること」だそうです。「食育」や「木育」と同じように、教育的な要素を盛り込み、花も動物などと同じように生きていることを実感してもらうことで、命の大切さを伝えたり、他人の思いを察することにもつながる体験型教育の要素も盛り込んでいるのが特徴です。花育は従来、生花店や華道教室などが展開していましたが、2008年3月に業界団体や卸売業者らが全国花育活動推進協議会を発足し、普及活動がスタートして、広まっていったそうです。笹本さんは、花育ネットワーク協会が主宰する「花育アドバイザー」という資格も持ち、横浜北部を中心に花育の普及に貢献しています。

「花育」

フラワークラブなな夢では、「感謝」する気持ち、「思いやり」「創造力」「コミュニケーション力」「達成感」「自信」「夢」という7つを花育で育むことを目指しているとのこと。

 

実際私も今回の講座を通して、生けるものや花への感謝の気持ち、そして花にふれることを通して優しい温かい気持ちが生まれ、穏やかになれた気がしましたし、美しいアレンジメントができあがって達成感や自信も感じました。

美しが丘地域ケアプラザで花育のアレンジメントを伝える二人

なな夢には10人のメンバーがいて、サポーターが4~10人、花育アドバイザーの資格を取得した方も3人います。近隣だと美しが丘小学校でのハロウィン企画やお正月企画、東柿生小学校、横浜市瀬谷区では「ガーデンネックレス せやっこ 2019」という、瀬谷区制50周年記念イベントとして、小中学生向けのフラワーアレンジメントにも関わっているのだそうです。

 

横浜市中区にある山元小学校ではコミュニティハウスでの実施など、知り合いを通して、幼稚園の植え込みを通して花を育てる活動に携わったりもしています。

 

笹本さんはご自宅で添削の仕事もされながら、うまく合間を縫ってなな夢でのお仕事をされていて、菊地さんもほかの仕事と掛け持ちしながら続けています。ほかのメンバーにも保育士の傍ら、花育活動に関わっていて、みな自分たちのやりたいことを自由に続けながら、好きな花に携わる仕事もされているとのこと、とても自由で活気がありました。

 

今後もハーバリウム体験や多肉植物の寄せ植えや模擬競りの見学、ハロウィンやクリスマス等の花育が目白押しです。

 

笹本さんに今後やりたいことは、と聞くと、「花育に関する本を出したい」とのこと。子どもたちがとても喜んでくれるこの活動を形にして、世に更に広めていきたいと、夢を語ってくれました。そのために写真の撮り方、SNSなど日々学びながら発信されているようです。花育は関西の方が普及しているとのことで、関東でももっと推進したい、花を通して豊かに生きる人を増やしたいと意気込む二人に、これからのパワーをもらいました。

 

子育てもひと段落し、好きなことを仕事にして幸せを周りに広げていく二人の話を聞いて、自分もまだまだこれからやれることがたくさんある、いつからだって新たなスタートを切れる、と活力をいただいた気分で、清々しくこの北部市場を後にしました。

Information

NPO法人「フラワークラブなな夢」

http://kawasakikaki.co.jp/npo-nanayume/

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この記事を書いた人
隂山綾ライター
大阪出身で横浜市青葉区在住。広がり続ける好奇心をエネルギー源に生きる2児の母。登山、キャンプ、美術館めぐりが趣味。里山保全活動での畑仕事やランニングで地域のよさを発見しつつ、お酒・美味しいもの、素敵な場所を求めて旅することが好き。
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