大きな空の下の、ちいさな なかまたち。 ~いのちの力~
青葉区のゆたかな自然の中で、季節の移り変わりを心とからだいっぱいに感じて育ち合う「NPO法人青空保育ぺんぺんぐさ」。安心できる場で一人ひとりの意思と個性を輝かせて遊びこむことで、だれでも子どもは自ら育ちゆく「力」を発揮します。1年半前の初夏のできごとから、子どもたちのそんな素敵な力をお伝えできたら嬉しいです。
(文=NPO法人青空保育ぺんぺんぐさ保育士・土井三恵子 / 写真=NPO法人青空保育ぺんぺんぐさ)※このシリーズでは、「子どもを育てる」現場の専門家の声を、リレー形式でお送りしています。

「ブーブーブー」
「ブーブーブー」
「ほら、もっかい行くよっ、せえの」
「ブーブーブー」
「ブーブーブー」
「もっかい、せえの」
「ブーブーブー」

 

5月の畑。ドア全開の小屋の中で、私が子どもたちより遅れてお弁当をいただいていた時、耳に入り続けていたブーブーという音。あれ?なんだかおもしろい音がするな、と途中からふと気がつきました。その音ははじめ無意識に私の耳に入りこみ、だんだんだんだん大きくなって510分鳴り続け、ついに私の意識の扉を叩いたのでした。そのくらいまわりにまぎれた雑音のように鳴り続いていました。

息を吹きかける

 

音頭をとっていたのは、年少さんの3歳のアヤコ。虫とドロと水の大好きな、よく遊べて元気だけれどとってもシャイで、そのうえ妹が生まれて、ただいま赤ちゃんがえり中。そのまわりを10人近い子どもたちが、小さな輪になっている。ひとり増え、またひとり増えたらしく、アヤコの音頭に、年上の年中年長さんまでも、忠実に従って息を合わせていました。

 

「あれ?アヤコの大きな声がして、めずらしいな」
まだブーブーは続いていて、よく見ると、子どもたちは小さな小さなチョウチョを取り囲んでいたのでした。

 

「チョウチョ乾かしてるんだよ」と、アヤコの声。
そうか、10分くらい前、ハルマが足洗い用のタライの水の中に、チョウチョが溺れそうだったのを見つけて教えてくれたっけ。「つかんで助けてあげたらいいよ」と答えて、うっかりそのままにしていた私だったのでした。

 

そのチョウチョを、小さい3歳のアヤコを中心に10人の子どもたちが助けている。しかも片羽1.5センチくらいの、モンシロチョウのように華やかではなく、とても地味な小さなシジミチョウを、です。
私は子どもたちの自発的なやさしさに触れ、心あたたまる一方で、本当は「フーフー」というべきところを、大真面目に「ブーブー」と唇をブルブル震わせる様子に、笑いを必死にこらえました。だって、唇が鳴るだけで、ちっとも息はチョウチョに届いていないんですから。

早春の小さないのち

虫ってすごい。
小さなちいさな体ひとつで、子どもたちの心は大きく揺さぶられます。とくに春先は、虫を見つけたとたん、子どもの目がぱあっと輝きます。冬の間、しばらく動くいのちに出会うことが少なかった分、その出会いは強烈です。
暖かい陽ざしを感じて、枯れ葉や石垣の割れ目から顔を覗かせる小さなテントウムシや、ありんこや、ダンゴムシ。名前も知らない1ミリくらいの羽虫でさえ、ぐるりと取り囲み、息を呑むほどの集中ぶりです。

テントウムシをみつめる

 

1ミリほどの虫に心をおどらせる

 

「うちの子、虫は苦手みたいで」という言葉をよく聞くけれど、強烈すぎると「こわい」となってしまうのですね。でも、目は真剣に虫に釘付けだったりします。「いのち」ってそういうものなんですね。

 

そして、心が動くってとっても大切。心が動くと、ぐぐっと成長したりします。

 

バッタ、つかまえたよ!

 

今でも忘れられないのが、5年前。マオという2歳の元気な女の子が、虫だけは苦手で、はじめはダンゴムシを見るたびに号泣していました。でもまわりがどんどん捕まえるのを見ているうちに、ある日「小さな動かない丸いダンゴムシ」を大人の手のひらの上からつかむことができました。
はじめて捕まえたそのダンゴムシは、すぐに死んでしまったのだけど、マオは2日間、動かなくなったダンゴムシと一緒に眠りました。袋に大切に入れて、一緒に布団に入って。その袋が見つからないと、泣きそうになりながら必死に探していたそうです。

 

それ以来、マオはしばらくの間「ダンゴムシの虜」となり、朝来れば決まって「みえこぉ~~~!!ダンゴムシさがそう~~~!!」と公園中響きわたる大きな声で、宣言するようになりました。

 

とはいえ、「大人の手のひらの上の、小さな動かない丸いダンゴムシ」以外は怖くて触れない。ダンゴムシを見つけるたびに、手を伸ばしてはひっこめ、また手を出してはひっこめ、友だちに捕られそうになると大騒ぎ。今度は、ダンゴムシを見つけるたびに欲しくて号泣する、といった具合でした。

 

たいていはじめはありんこもダンゴムシも怖くて、でも気になって、見つめつづけます

 

ところがある日、5分近く粘ったことがありました。まず1匹目は手を出したり引っこめたり、なかなかつかめなくて小さな動かないダンゴムシを、私の手のひらからカップの中へ。2匹目、ちょっと大きい動かないダンゴムシを、手のひらにのせてもらってカップの中へ。3匹目、小さい動かないダンゴムシをやっと私の手から自分でつかめて、4匹目、5匹目、6匹目、次々大小動かないダンゴムシを手のひらからつかめて、7匹目、少し動くダンゴムシをつかめて、そして8匹目は、動くダンゴムシを土の上から……

 

この時だけはマオは、けっして涙を見せずに、真剣なまなざしで、何度も挑戦していました。ためしに私はマオの腕だけ軽くつかんでみると、勇気が伝わったのか、とうとう土の上の動くダンゴムシを捕まえることができました。震える手で。小さな手を、ほんとうにブルブル震わせて。ダンゴムシをカップに入れたあと、小さなちいさなため息がフ~っと漏れた時、2歳というこんな幼い子どもでも、これだけ真剣に息を呑むほどに集中することができるのだと、私は胸があつくなったことを覚えています。

  

              *       *        *

  

さて、最初の、チョウチョを取り囲んだ、あの一件。私がお弁当を食べ終わっても、まわりを片付けたり、用事を済ませた後も、4~5人がずっと取り囲んでいました。もう、かれこれ3040分。こんな単純な遊びがこれだけ続くことにも、正直私はおどろきました。
羽の少し乾き始めた、そのチョウチョは、少しずつ歩き出し、それに合わせて子どもたちの円陣も少しずつ移動。

 

「飛ばせてあげようよ」と、だれかの声。
今度は誰が持つかで、キャーキャー騒ぐ声。
「コッちゃん、つかんでよ」と、3歳のアヤコが、また年上のコッちゃんに指示していました。

 

お兄ちゃんと赤ちゃんにはさまれて、3人きょうだいになったばかりのアヤコ。お兄ちゃんに連れられて、赤ちゃんの頃からぺんぺんに通って、恐いものなしの元気な元気なアヤコだったのに、急に口数が減っていました。
同じくきょうだいのように育ってきたゲンちゃんも、赤ちゃんが生まれて、二人で赤ちゃんがえりの名コンビ。言葉をかわさなくても通じ合う二人は、いつでもどこでも二人っきりで黙々としゃがみこんで、ドロ団子をつくったり、バッタをつかまえたり、チョウチョを追いかけたり……

 

きょうだいのような二人

 

赤ちゃんが生まれるまでは、どんなにじゃまされても、どっかり座り込んで遊び続け、とびきりの笑顔の一方、「ダメー!!」という大きな声に何人が泣かされてきたことか……。そんな強気の声が聞かれなくなってから、しばらくぶりのアヤコの楽しげな音頭とり。次の日も、どしゃぶりの雨やどりのあと、晴れた空に向かって歌い始めた子どもたちの『虹』のうたでは、アヤコの歌声がひときわ高く響いていました。あの日、弱った小さないのちに心がふっと動かされて、もともと持っていたアヤコの力強さが、ひょいっと顔を出したような気がしました。
これから赤ちゃんがえりを抜けたあと、もしかしたらアヤコは盛り上げ役のような新たな力を発揮するのかもしれない。そんな嬉しい予感を持った出来事でした。

 

コッちゃんのつかんだ畑のチョウチョは、弱っているようだったので、まさか飛べないと思っていましたが、ふいに手を離れ、空を舞いました。その舞い上がる姿を追って、見上げ見つめる子どもたち。そのはっとしたまなざしの奥にキラリとしていたものは、子どもたちの可能性なのかもしれないと、私の心に今でも深く焼きついています。

 

これからも春や夏が来るたびに、子どもたちはいのちと出会い、そしてそのたびにたくさん心を動かしていくのでしょうね。

 

おたまじゃくしにはじめて挑戦して、やっぱり手がふるえました

 

何度も手を出しては引っ込めて、大きなカマキリをはじめて捕まえたあとは、とびきりの笑顔がこぼれました

 

年長になれば、ザリガニ捕りはお手のもの。セミも、カマキリも、アゲハチョウも、トンボも……。どんなふうに捕ればいいか、体が覚えていきます。大きい子ぐみになると、里山で遊ぶことが多いので、おどろく出会いにも時々遭遇します。冬眠中の寝ぼけた15センチくらいの大ガエル、2キロ近く続くアリの行列、冬眠しようと集まってきた200~300匹のテントウムシ、山で夏を過ごすために次々道路横断中の1センチほどのチビアマガエル……。都会の近くでも、里山は一期一会にあふれています。

(文=NPO法人青空保育ぺんぺんぐさ保育士・土井三恵子/写真=NPO法人青空保育ぺんぺんぐさ)

Information

ぺんぺんぐさは「ひとりで子育てしないで」を合言葉に、1歳半から約20人の子どもたちが育ち合う「預かり保育」の場を、保育者とお母さんたちで手づくりしています。そして、ひとりでも多くの人たちに外遊びのきっかけや魅力もお伝えしたくて、定期的に講演会や、だれでも参加できるあそぼう会を開いています。

【月刊クーヨン編集長・戸来祐子さん講演会『外で遊ぼう。子どものしあわせって、何だろう。』】

◎さまざまな情報にあふれているいま、わが子の将来を思えばこそ「何をさせてあげられるか」「何ができて何ができていないか」ということで、頭がいっぱいになりがちですよね。国内外の子育てや幼児教育の実践をたくさん見てこられた編集者として、何を大切にしたらいいかヒントをお話しいただきます。

日時:2019124日(水) 10:0012:00頃(9:40開場)

場所:もえぎ野地域ケアプラザ(東急田園都市線「藤が丘駅」より徒歩7分)

参加費:500

申し込み:penpengusaevent@gmail.com 090-9147-3027(内藤)

共催:もえぎ野地域ケアプラザ

後援:青葉区役所、青葉区社会福祉協議会、青葉区冒険遊び場づくりの会

交流会&活動紹介もあります(13:30無料)。お弁当持参で一緒におしゃべりしましょう。

詳しくは、HPをご覧ください。

席に限りがありますので、お早めにご予約をおすすめします。

託児はありませんが、マット敷きの座席でお子さんと同室できます。

……………………………………………..

【土と水と草と虫とあそぼう会】

◎秋の恵みを楽しむ季節から、だんだん凛とした透明感を増す冬の季節へ。季節の移り変わりに、子どもも大人もきっと楽しい発見がいっぱい。晴れて風を避けられる場所なら、びっくりするほどポカポカです。冬を暖かくあそぶコツもお伝えしますよ。

日時:12/19(木)1/16(木)2/20(木)3/12(木)9:4513:00頃 以降毎月第3木曜

場所:桜台公園 青葉台駅より徒歩10

参加費:400円+100円保険代

申し込み:前日朝11時まで

Mailaoba.penpengusa@gmail.com

電話:090-9147-3027(内藤)

のびのび自由に遊ぶ、外遊び体験会とおしゃべり会。生後8ヵ月ごろから、どなたでもどうぞ。

天候が悪く寒い日は、屋内もある場所でやきいも体験や、畑あそび等に変更します。

変更の場合がありますので、HPでご確認ください。

……………………………………………..

【保育士さんを募集しています】

ミーティング・懇談会などの時の、室内保育だけでもかまいません。

もちろん自然の中での青空保育でも。

現在の4人の保育者(保育士・幼稚園教諭)と一緒に、のびのびとした育ち合いを見守りませんか?

NPO法人青空保育ぺんぺんぐさ 

http://jisyuhoikupenpengusa.blogspot.jp/

 

NPO法人森のようちえん全国ネットワーク連盟の安全認証を受けた認証団体になりました

http://www.morinoyouchien.org/


Profile

土井三恵子

NPO法人青空保育ぺんぺんぐさ保育士/共同代表。10年の田舎暮らしと2人の出産を経て、療育センター・里山保育を行う保育園などを経験、そして横浜市青葉区のお母さんと青空保育を立ち上げ、8年目。現在保育スタッフ4人と20組前後の親子でにぎやかにすごし、野山で土や水や草や虫と子どもたちとたわむれ、日々小さな発見に胸を躍らせる(ザリガニを見つけると急に真剣になって子どもと張り合ってしまう面も……)。保育士、幼稚園教諭免許、小学校教員免許、中学・高等学校理科教員免許。

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