面積も栽培量も横浜一! コミュニケーションから広がる花栽培 桜台園芸 森健太さん
寒くなり、色を失った景色のなかで花は一際目を引きます。横浜市青葉区恩田町にある田んぼの真ん中のビニールハウスには、花がいっぱい。横浜市内で栽培ポット数、栽培面積、ともに1位を誇る花農家、森健太さんからお話を伺ってきました。

横浜市青葉区恩田町にある桜台園芸のビニールハウスには、ポップな色合いの花が色別にきれいに整列しています。日が高くなり温かくなるにつれ、次第に花の香りがハウスに満ちてきました。

そんなハウスにパイプ椅子を並べ、花農家の森健太さんのお話を伺ってきました。森さんはパンジーやビオラ、ペチュニア、プリムラ、ガーデンシクラメン、マーガレットなど25種から30種くらいの花を年間40万ポット栽培しています。

 

農家になるまで

森さんは森家の29代目。青葉区の森家は、青葉区桜台の別宅にお祖母さまとお祖父さまが移り住んだことが始まりでした。お祖父さまは不動産業のほかに、農業を営み、そしてお父さまの代で花栽培が主軸となります。お祖父さまが亡くなられた時、高校2年生の森さんは農家を継ぐことを決意しました。その後、専門学校に進み、実際に農業を始めたのは21歳の時。当初はお父さまと一緒でしたが、25歳の時から一人で栽培するようになりました。

 

恩田町での栽培は、森さんが農家になるという意志を確認したお父さまが農地を購入してからのことです。

 

ホースを肩から背にかつぎ、プリムラに水をやる森さん。水は一つひとつのポットにたっぷりと。冬の水やりは気温にもよるが3~4日に1回

独立して約10年、培養土の配合を少しずつ変えて花の生育を見てきた森さんは、

「ようやく理想の培養土ができてきた。花に応じてこの基本の土にピートモスなど土の配合を少し変えていくことで栽培がうまくいくようになった」と自信をのぞかせるのでした。

 

徐々に規模を拡大してきた森さんは、いつしか69軒ある横浜の花農家のうち、花栽培の生産量、面積において、横浜で一番になりました。

「横浜で一番になるというのは目指してきたところでもあります」と森さんは言います。

 

コミュニケーションを大切にしています

森さんが農業で大事にしているのはコミュニケーション。これは花の栽培、仲間づくりや販売にも生かされています。

 

まずは栽培。市場関係者と交流をはかり、ライバルが少なく、買い手が求める花苗を栽培するよう心がけています。

森さんが出荷する市場はいくつもあり、市場ごとにそれぞれ高値で取引をされるものが異なります。また、作り手が多い品種は花苗そのものの価格が低くなることから、出荷した花苗の価格変動の理由を見極めることが大切になるのです。

パンジーフリフリ。印象的な名前と愛らしい花。フラワーオークションジャパンの2019年秋 第17回 ポットプランツコンテストでは銀賞受賞

次に仲間づくり。同じ種屋さんが縁で知り合った花農家さん4軒とグループを組むことで、大口の依頼に応えられるようになりました。

販売先が大手の場合、自分だけでは生産できない数量の花苗を求められることがあります。そんな時、複数の農家で対応すると、A農家で1,000ポット、B農家3,000ポット、C農家1,000ポットというように契約を分散させることができるのです。

また、グループ間で技術や新品種の花栽培法を共有して、それぞれの花栽培のスキルを磨くようにもなりました。

 

さらに販売。買い手となる業者との名刺交換等から交流が生まれ、生産の7割が契約栽培となりました。花栽培農家において、これほど高い契約割合は珍しいそうです。

それが可能なのは森さんのコミュニケーション力はもちろん、契約先の求める花苗を着実に納品する技術と姿勢があってこそ成り立っているのだと思います。

 

市場関係者との交流から、家族と夕飯を共にできないことが多い森さんは「嫁さんや子どもには申し訳ないけど」という言葉をたびたび口にするのでした。

 

花農家に見えている景色

気負いなく、スマートに花栽培に邁進している森さんは自らを「新しもの好き」と評します。新商品が出れば飛びついてしまうのだとか。

教えていただいたパンジーの品種は、色、形ともにバラエティーに富み、見ていてとても楽しくなります。森さんから品種の名前を聞けばまたそれぞれに味わいが増してくるのでした。

一方で「栽培期間が長くて手がかかるシクラメン栽培は、僕は苦手かな」と森さん。パンジーの栽培期間が3カ月と短いのに比べて、シクラメンは春から冬までずっと栽培し続けることになります。

納期のことが常に頭にある森さんにとって、「なにか迫られているようで精神衛生上よくない」とのこと。

同じ愛らしい花を見ていても、作り手の森さんには『納期』で、私の目に映るものとは大きく違うようです。

試しに植えたというシクラメンの鉢物。「もう一度、シクラメンを栽培するとは思わなかった」という森さん。お父さまが育てていたシクラメンに対する感慨は大きい

 

「お客様が喜ぶ花を育てたい」と森さん。土の配合をわずかに変えながらポット苗の試作を繰り返す。相手先の満足いく花作りに余念がない

 

家族と地域と農業と

「何か依頼があった時、基本、断らないつもりだけど、新しいことに挑戦する時には、嫁さんの後押しがでかいですね」と語る森さんは、多くの地域活動にも取り組んできました。
森ノオトと青葉区が共催した「フラワーダイアログあおば」の講演会には若手農家として登壇してくれました。青葉区の小学校では「花育」という花を育てる授業やバケツ稲を育てる指導をしています。

「最近の子どもたちはものすごく調べてきてくれています。こちらが説明する必要がないくらい(笑)。でも、体験することは少ないと思うので、その機会を大事にしてほしいです」。

小さい頃は学校が終わると、そのまま祖父がいる畑に行ったという森さん。畑での優しい記憶が子どもたちへの体験を伝える原動力になっているのかもしれません。

敷地に大量に積まれた赤土。培養土として利用される。近年、土地開発が少なくなり、赤土は手に入りにくくなっているとか

 

ポットに土を入れるための機械。年間40万ポットを栽培するには機械化が欠かせない(photo:梅原昭子)

横浜の花農家一番を目指してきた森さんの次なる目標はなんでしょう?

「花栽培はこのままの規模を維持して、ブルーベリーとか無農薬のハーブガーデンを嫁さんとやってみたいです」と、家族とともにある農業を森さんは考えているようです。

 

お話を終えて帰る途中、目にした路地の花は、森さんが栽培した花苗かもしれない。そう思うと、さっき見てきた花苗の愛着のせいか、より一層花が輝いて見えるのでした。

Information

桜台園芸

https://www.facebook.com/sakuradaiengei/

明石 智代
この記事を書いた人
明石智代ライター
広島県出身。5年暮らした山形県鶴岡市で農家さん漁師さんの取材を通して、すっかり「食と農」のとりこに。森ノオトでも地産地消、農家インタビューを積極的にこなす。作り手の想いや食材の背景を知ることで、より食材の味わいが増すことに気づく。平日勤務、土日は森ノオトの経理助っ人に。
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