「ちょっと面倒な住まい」で、人がつながる暮らしをつくる|ミドリムシ不動産
あなたは住まいを選ぶときに、何を基準に選んでいますか?間取りや駅からの距離などが一般的ですよね。今回紹介する「ミドリムシ不動産」は、ペレットストーブ付き、無垢の床……そんなエコフレンドリーなこだわり条件から住まいを探すことができるサイト。取材を通して、コミュニティが生まれる住まいの姿も見えてきました。
(ローカルライター講座修了レポート:取材・文=相原理紗)

スーパーで元気な鶏の姿を思い浮かべながら平飼いの卵を選ぶ、マーケットで農家さんと話しながら野菜を買う、プラスティックやゴミのことを考えて布おむつを使う、環境に優しい生分解されやすい洗剤に変える…私は、特に親になってから、日々の生活の中で「何を選ぶか」を意識することがぐっと増えました。森ノオト読者の中には、私と同じような人も多いのではないでしょうか。

 

では、毎日生活をする今の「住まい」は、どうですか?

 

私自身、今住んでいる賃貸住宅を探していた当初は、職場からの所要時間、どの沿線にするか、間取りの使いやすさ、見た目のデザインなど、わかりやすいスペックを基準に探していました。

 

ところがその中で偶然出会った物件、「モーラの家」が私の人生と価値観を大きく変えたのです。

 

「モーラの家」は5世帯が長屋のように並ぶ2階建の賃貸住宅。手前にある葡萄棚の下には共用の井戸も。

 

国産材の無垢の床、ペレットストーブ、家庭菜園、太陽熱温水器、そして何よりも、子育てを共有できるコミュニティ……。東北地方にある夫の実家への移住を考えていたはずの私は、この住まいの居心地の良さに「あと10年はここを出られない」と思うくらい、今ではどっぷりと浸かっています。

 

そんな賃貸住宅「モーラの家」をつくった大家さんは、東武東上線柳瀬川駅(埼玉県志木市)にある不動産屋、株式会社ミヤケン。

 

この記事では、この地域密着の不動産屋さんが運営する、住まいの価値観を変える不動産サイト「ミドリムシ不動産」をご紹介します。

 

左上が社長の宮原一さん、左下が宮原元美さん、右がお二人のお母さんの宮原登美子さん。

 

ミドリムシ不動産は、エコフレンドリーなこだわり住宅を紹介する不動産サイトです。北は北海道から、南は宮崎県まで、もちろん神奈川県も含めた、全国の物件が掲載されています。環境に配慮した物件づくりを考えている、物件大家さんのコンサルティングも事業の一つです。

ミドリムシ不動産のサイトに訪れるとまず目を引くのが、「ミドリムシこだわり検索」。

天然素材、薪ストーブ付き、太陽光発電付き、家庭菜園あり……従来の不動産サイトにはまずない、物件の「こだわり」から選べる検索項目が並んでいます。

 

通常のサイトでは一番わかりやすいところにあるはずのエリア、間取りなどは「物件詳細検索」から検索する

 

それぞれの物件情報を詳しく見ていくと、「床にはヒノキ(宮崎産)」「壁は漆喰」「断熱材には天然コルク100%」など、素材の産地や物件への思いなど、それぞれの大家さんのこだわりがたっぷりと綴られています。

 

2012年のスタート当初は2件しか掲載物件が無かったミドリムシ不動産。今では45件の物件が掲載されています。自ら営業をかけたのはなんと1件だけ!そのほとんどが紹介だというから驚きです。使用する木材、自然素材の利用、高断熱や自然エネルギーの導入、そしてコミュニティとのつながりなどをふまえて、掲載する物件を一つひとつ訪問して、掲載を決めています。

 

入居者は、環境に配慮した住まいに住みたい人はもちろん、コミュニティに惹かれて物件を見に来る人、実家が無垢の床で……など、選ぶ理由はさまざまですが、入居後の居住年数が長いのが大きな特徴の一つ。「ミドリムシ不動産から来てくれる人はコンセプトを理解して長く住んでくれるから」と、他の不動産屋さんの仲介ではなくミドリムシ不動産経由のお客さんを待ってくれる大家さんさんがいたり、賃貸物件にもかかわらず「終の住処にしたい!」という入居者も何人もいると言います。

 

もう一つの事業は賃貸物件の「ミドリムシ化」。

賃貸物件を持っていたり、今から建てようとしている物件大家さん向けにコンサルティングを行っています。

ミドリムシ不動産では、建物自体のエコ化はもちろん、コミュニティ作り、その後の運営なども含めて提案していくので、コンサルティング業務を「ミドリムシ化」と呼んでいるそうです。自分たち自身が「モーラの家」「ミーテの家」などを大家さんとして運営しているノウハウからも、物件大家さんさんたちに当事者としてのリアルな声を伝えています。

 

ミドリムシ不動産が「ミドリムシ化」を手がけた埼玉県新座市「だんだんハウス」(写真:ミドリムシ不動産)

 

だんだんハウスの室内。建具はすべて国産無垢材を使用。(写真:ミドリムシ不動産)

 

大家さんとしての「困った」から生まれた、「ミドリムシ不動産」

 

モーラの家の最年少を抱っこしながら「もう、孫みたいだわー!」と宮原さん

 

「ミドリムシ不動産をつくった理由は、モーラの家の募集に私自身が大家として苦戦したからというのが一番大きいですね」

 

宮原さんが、エコをコンセプトにした賃貸住宅「モーラの家」をつくったのは2011年。燻煙乾燥の国産無垢材、太陽熱温水器、ペレットストーブ、家庭菜園、高断熱、共用の井戸、そして畑でつながる緩やかなコミュニティ……。宮原さん自身の「欲しい」を網羅した賃貸住宅は、農業支援で中山間地域に通っていた経験から、森を守るために不動産屋として出来ることとして、住宅を通じて都会と中山間地域をつなぎたい、という思いから誕生しました。

 

モーラの家の家庭菜園では、無農薬「放置」栽培の野菜を季節ごとに楽しみます

 

ところが、取り組みは注目され、業界での反響も大きかったものの、意外にも入居者探しには苦戦。今でこそエリアを限定したり、DIYが可能だったりと、こだわりを持った不動産サイトは増えてきていますが、「モーラの家」竣工当時は、大家さんのこだわりや思いを伝えられる場は、ほとんどありませんでした。事前に同じようなコンセプトで建てた物件を回った時も、募集が大変だったという話をいたるところで聞いていたという宮原さん。

 

「届けたい人に(情報が)届かない状況をどうにかしたいな、と。モーラの家も含めて、賃貸物件はいつかは空きが出るし、潜在的なお客さんに継続的にアプローチするためにも、じゃあ自分たちでやるかー!となりました」

 

自分自身が大家さんだからこそ芽生えた自分ごとの課題から、その翌年にミドリムシ不動産はスタートを切り、今では自社物件を募集に出すとすぐに入居者が決まるほどに成長しています。

 
 

「ちょっとした面倒」を散りばめたら、大家さんも含めたコミュニティが生まれた

 

ミドリムシ不動産を続けていくうちに、物件を「ミドリムシ化」したい大家さんさんに出会い、「だんだんハウス」、「ギンモクハウス」、とコンサルティング物件も増えてきています。

 

「大家さんには、建物のエコ化はもちろん、コミュニティが生まれる仕掛けも提案します。傷のつく床とか、雑草の生える畑とか、ちょっと面倒くさいものを仕込んだ方がいいですよ、というのと、管理は自分でやった方がいいよ、と伝えているんですよ。ちょっとしたトラブルは入居者さん同士で解決してくれて結果楽ですし、何より(手を動かすことで)自分が楽しくなるからと」という宮原さん。

 

夏は流しそうめん、秋はさんまパーティー、忘年会……イベントはすべて住民発信(この時の会場は大家さん宅)

 

実際に「ちょっと面倒な」モーラの家では、シーズンごとの畑作業や、軒先でのコミュニケーションからコミュニティが成長しています。大きく貢献しているのが、宮原さんのお母さん、登美子さん。身近な大家さんとして、子どもたちのことを気にかけてくれたり、入居者を地域の魅力的なお店に連れて行ってくれたり、お野菜を分けてくれたりと、入居者同士はもちろん、賃貸住宅では希薄になりがちな地域とつながるきっかけをつくってくれています。そして今では、毎日の子育ても入居者同士でシェアされ、子どもたちは兄弟のように育っています。

 

「金融資本一辺倒ではなくて、社会資本(コミュニティ)や自然資本(エネルギー)があると、生活が豊かに、持続可能になると思っていて。外部の人にお金を払って解決するのではなく『ちょっと見ててもらっていい?』と、お互いの中でまかなえる、そんなコミュニティが生まれたらいいなと思っていました。まさか日常まで共有するようになるとは思ってなかったですけどね」と、モーラの家の現状には宮原さんも驚いているそうです。

 

保育園から帰ってくるとお隣さんに駆け込み、夕飯、お風呂まで一緒に過ごしています。


 

ミドリムシ不動産の今後は? という質問に、「細く長く続けていけたら」と笑顔で答えてくれた宮原さん。ミドリムシ不動産は株式会社ミヤケンの一事業。まちの不動産屋さんとして、少子高齢化を目の当たりにする中で、地域の中で次世代がのびのびと育つ環境をサポートしていきたいと言います。

 

駅前にあるミヤケン事務所。地域密着の不動産屋さんだからできることがある。

 

私がモーラの家に住んで実感したのは、住まいの選び方によって、毎日の暮らしは変わるんだということです。どこに住んで、どんな暮らしをして、そしてどんな未来を子どもたちと描いていくのか。自分たちの未来の暮らしを想像しながら賃貸住宅を探すのは、今までの不動産屋さんやサイトでは難しいのが現状です。でも、「ミドリムシ不動産」を通して、自然素材やコミュニティ、そこでの暮らし方へと注目が集まれば、まちの大家さんたちが物件を「ミドリムシ化」したいと思うきっかけになるかもしれません。

国産材、自然エネルギー、エコな暮らし、住民同士や地域とつながるコミュニティ……そんなコンセプトを持った「ちょっと面倒な」賃貸住宅を楽しむ大家さんと、住まい手さんがそれぞれの地域で増えて、持続可能な未来へとつながったらいいな、と思っています。

Information

【ミドリムシ不動産】

https://midorimushi-estate.com/

運営会社:株式会社ミヤケン

住所: 埼玉県志木市柏町6-29-45

電話:048-473-6262

営業時間:10:00〜19:00

定休日:毎週火曜日・毎月第三水曜日

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