続けていくことでまちは故郷になる 有限会社シモヤマランドスケープ軽井沢園 代表 下山和正さん
今、暮らしているまちをどのくらい知っているだろうか。このまちでどんなことをしてきただろうか。シモヤマランドスケープ軽井沢園(青葉区しらとり台)の下山和正さんにお会いしたら、私は、そんな問いを自分に投げかけていました。下山さんはまさに仕事もプライベートも地域活動一色という方でした。

「フラワーダイアログあおば~花と緑の風土づくり~(主催:青葉区、森ノオト)」のプログラムで、201910月に開催したあおばフラワーショーへ参加してくださったシモヤマランドスケープ軽井沢園代表の下山和正さん。「花も団子も」というタイトルで果実や草花が配置された花壇は、五感を刺激し、草木の変化をつい話してみたくなるような楽しい組み合わせでした。下山さんは地域での活動にも熱心だと聞き、お話を伺ってきました。

 

あおばフラワーショー!で展示された花壇の移植作業。江田記念病院内ドリームガーデン(あざみ野南)に移植された

横浜市青葉区しらとり台が「恩田町」と呼ばれていた時代(*)から、下山さんはずっとこの地で暮らしています。畑が広がる農村地帯は、約50年でたくさんの住宅が立ち並び、多くの人々が住むようになりました。お祖父様、お父様、下山さんと受け継がれた家業は農業のほかに、造園業、そして不動産管理が加わり、まちの開発とともに生業も少しずつ変化してきました。

「造園業は私を中心に、その傍ら農業も母を中心にやっています。造園業も農業も植物を扱うので、仕事の相性がいいんですよ。造園業の空いた時間に農業を、農業の空いた時間に造園業を、それぞれの仕事の隙間時間にやるようにしています。だけど、時々、繁忙期が重なって大変な思いをしています」とくったくなく笑う下山さんです。

 

シモヤマランドスケープ軽井沢園周辺を案内してくれる下山さん。手の先には自ら植えたトチノキ。毎年剪定し、落とした枝はどんど焼きの団子を焼く枝に使われる

しらとり台には昔からの住人、新しく移り住んだ方があり、『どんな人たちにも思い入れのあるまちであってほしい』と下山さんは願っています。

下山さんの会社のHPには「シモヤマランドスケープTV」という項目があります。どんど焼き、夏祭り、焼き芋づくりなどの地域行事が15分ほどの動画に編集されたものが並びます。

シモヤマランドスケープTV”は、東日本大震災があった時に、地域情報を発信できるテレビ局のようなものが欲しいって思って私が作りました。当初はもっといろいろ発信したいって思っていたんです。だけど、仕事の傍らで社員に動画配信作業をしてもらうのは時間がかかるし、難しくて。今は細々と地域の行事を掲載しています。非常時のために、普段からこんな場があることをみんなに知ってもらうことが大事かなと思っています。非常時に自分での発信が難しくても、発信が得意な方にお任せして、その場を提供することもできると思うんです」と下山さんは熱く語ります。

 

ずーっと続く花の列、ずーっと続けていきたい

東急田園都市線・青葉台駅からしらとり台へと南北にはしる大きな通り(環状4号線)にパンジーやビオラが植えられています。これは201910月の植え付け作業で、青葉台地区社会福祉協議会(以下、地区社協)主催、青葉台連合自治会の協力のもと、青葉区制25周年記念事業としても行われました。下山さんは地区社協の環境部長という立場でかかわっています。

「地区社協でおこなう地区清掃の一環で、春は清掃、秋は花の植付けをやっています。桜台園芸さんに格安でポット苗を提供していただき、私は、段取りや植付け指導を担当しています。最初は2017年の青葉区の事業フラワーネックレス青葉2017”という活動で始めたものですが、1年限りではもったいないので、継続的にやっています。しらとり台から青葉台、桜台までずーっと花の筋が続いているのは、なかなかいい感じですよ」と造園業を営む下山さんは専門家として満足そうに語るのでした。

 

地区清掃の様子。地域での活動一つひとつが故郷を育んでいく(青葉台南商店会HP写真より)


青葉台南商店会の会長であり、地区社協の環境部長である下山さんは、地区清掃の段取りを行います。

「植え付け当日は350から500人の方にポット苗の移植作業をしていただくんですよ。時間が約2時間と限られているので、事前に私が草を刈り、地ごしらえをしています。会社には機械も道具もありますしね(笑)。この作業は私だけではなく、環状4号線の清掃を担当する桜台商店会や青葉台商店会の方々も行っていますよ」

下山さんの言葉から、地域行事は準備から始まるということ、地域の商店、住人など多くの人が関わっていることに改めて気づかされるのでした。

 

下山さん宅の玄関でお話を伺っていると、しらとり台自治会の方が来訪。「(下山さんに)なんでも話を聞くといいよ。自治会で一番いい人だから」とのこと。これには下山さんも照れ笑い

 

続けていくことの意義

下山さんのお話には「継続」という言葉がたくさん出てきます。なぜ続けていくことへこだわるのでしょうか。

「やっぱり理想のまちづくりのためです」きっぱりとした言葉が下山さんから返ってきました。

「まちづくりは一人ではできない。みんなでやっていかなくては。私だけではなく先輩たちもみんなそうだった。成果は返ってくる。だから割に合わないかもしれないけど、踏ん張る気持ちがないと」と、なかば自分に言い聞かせるように下山さんは語るのでした。

続けていくことの秘訣は「『(実施グループの)一番最後まで残る』と決めて『やる』こと」と言う下山さんの真摯な表情が印象的でした。

下山さんの畑。冬は栽培する野菜が少ないため、イベントに使われることがある。雑木でチップを畑に敷き詰めると、訪れた人の足元を汚さない。イベントが終わると、チップは土の中に漉き込まれ、肥料となる。無駄がない

 

自治会、消防団、商店会など地域の役職に就くのは仕事を退いた方が多く、下山さんのように現役の方が務めるのは珍しいようです。

「私は地元での仕事が多いからできるところもあるんです。地域の役職に現役世代は少ないので、求められる業務も多く、大変ですね。みんなで交流し、学びながら歴史をつないでいくことで、こういうまちをつくってきたという誇りが生まれるんじゃないかな」と下山さん。

例年、3月には東日本大震災で被害にあわれた方々を慰霊する『3・11キャンドルナイト』を地域の人や小学生とともに開催しており、今年も実施する予定でした。しかし、コロナウイルス感染拡大防止のため、やむなく集客なしとし、キャンドルのみを灯すことにしました。続けていれば、思いもよらない事態にあったり、中止を余儀なくされたりすることもあります。

だけど、理想のまちづくりのために下山さんたちはできることを継続していくのです。

 

下山さんの畑の前には恩田川が広がる。「子どものころ、川のほとりの畑は今より低い位置にあって、道から見下ろすようだった」。下山さんの言葉から昔の風景が立ち上がる

 

「しらとり台」の印象は、新興住宅地。恩田川のそばに畑が広がりさらに小高い丘にかけて住宅が連なった穏やかな地域です。下山さんのお話から、昔からの時の流れと地域の方々が支え合って築いてきた地域の営みが見えてきました。

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、みんなで集ったり、出歩くことも難しいこの頃。思ってもみなかった状況に戸惑うことばかりです。

そんな時、自分の暮らすまちについて知り、多くの人たちが営んできた暮らしをたどれば、私たちのこれからを照らしてくれるかもしれません。

 

Information

シモヤマランドスケープ軽井沢園

横浜市青葉区しらとり台53-5  エントピア軽井沢101

shimoyama-land.com/

下山さんが会長を務める青葉台南商店会HP

aobadaiminami.com/

*青葉区しらとり台https://www.city.yokohama.lg.jp/aoba/shokai/rekishi/henreki/sa/shiratoridai.html

明石 智代
この記事を書いた人
明石智代ライター
広島県出身。5年暮らした山形県鶴岡市で農家さん漁師さんの取材を通して、すっかり「食と農」のとりこに。森ノオトでも地産地消、農家インタビューを積極的にこなす。作り手の想いや食材の背景を知ることで、より食材の味わいが増すことに気づく。平日勤務、土日は森ノオトの経理助っ人に。
未来をはぐくむ人の
生活マガジン
「森ノオト」

月額500円の寄付で、
あなたのローカルライフが豊かになる

森のなかま募集中!

寄付についてもっと知る

カテゴリー

森のなかま募集中!

メディアを寄付で支える
読者コミュニティ
「森のなかま」になりませんか?

もっと詳しく