リモート座談会・今こそ考えたい私が選ぶ働き方。 前編 — 私たちの場合。
新型コロナウイルス(COVID-19、以下コロナ)の感染対策を機に一気に広がった在宅勤務。フリーランスデザイナーの私は9年にわたる在宅勤務の中で、そのありがたさが身に沁みながらも、リモートでのやり取りに不満、いや悩みを抱えています。コロナ収束後も続くであろう在宅勤務ひいてはリモートワークについて感じていることを森ノオトの仲間3人で語り合いました。

在宅勤務どうですか?

道代: コロナの自粛下で在宅勤務が随分と広がりましたよね。私もあっこさんも長く在宅などのリモートワークをやっているんですが、二人とも自由業的なんで、企業で働く朋子さんの話も聞きたいなと思っていて。朋子さんの在宅勤務の状況ってどうですか?

 

朋子: 私が勤務する会社では、(4月7日の)緊急事態宣言が出てからオフィスに行く人数をごそっと減らして基本在宅にしたのが全体としての動きで、宣言が解除された6月以降もグループを2つに分けて出社人数を減らしています。ただ、私は妊娠しているのもあって、3月中も半々ぐらいで在宅勤務をしていました。それで3月末の棚卸しを最後に完全に在宅勤務になりました。

 

道代: 職種は何をされているんですか?

 

朋子: メーカーの営業部で企画プロモーションをやっています。在宅勤務前半は積もり積もった仕事がいっぱいあったんですけど、外での営業ができなくなった4月中旬ぐらいからやることが減ってきて……。その頃から息子も保育園に行けなくなったので、仕事量と中身としてはある意味ちょうどよかったんですけど。息子と一緒に居て何かをアウトプットする思考はなかなか厳しいというか。

 

道代: そうですよね。横浜市からも「在宅勤務になった方は保育園の登園を自粛してください」とアナウンスされて、元々在宅勤務の私としては「ええ~っ!」って思いました(笑)。

 

あっこ: 子ども居たら無理だよねえ。子どもも友達とも遊びたいだろうし、体力も持て余すよね。

 

朋子: 朝3時に起きて仕事をして、昼間は息子の相手をしつつ仕事したりしてました。

 

道代: 今後も在宅勤務は続きそうですか?

 

朋子: 私はもうすぐ産休に入ってしまうけど、6月いっぱいは今の二交代制が続いて、今後も在宅の比率を増やしていくようです。

 

道代: どうですか、在宅勤務は?

 

朋子: 私は向いています。何がいいって、アウトプットの質が上がる気がするんです。会社にいると、誰が電話をしているとか、誰が誰に相談しているとか、すっごい気になっちゃうんです。

 

道代: へえ~。意外。

 

朋子: あっちこっちで電話が鳴って、あの人あんな顔で戻ってきたから怒られたなとか、めっちゃ考えるんですよ。

 

あっこ: それは大変!

 

朋子: ただ、前は若い子と上司をつなぐポジションにいたから、私のこの性質がチーム運営の中で役には立ったんですけど、自分の仕事のアウトプットが全然できないという……。だから家でオフィスの雑音がない状態で働いていると、自分が考えていることを形にできて、充実度がすごい上がる!あとは、通勤が楽よねー。通勤しなくなるとその無駄さが分かるというか。その間にね、ロールキャベツ作れるし。

 

道代: そうそう、私も9年前に在宅勤務を始めた時に、やたら煮込み料理作ったり、パン焼いたりして喜んだ!

在宅勤務を始めてパンを焼くことが増えました。こねる時間は取れないのでパン焼き器にお任せです。この日焼いたのは白パン

朋子: 通勤がなくなると、子どもの世話とかもしてるけど、24時間が自分のものになったという感覚があった。

 

あっこ: 通勤に使うエネルギーってすごいと思う。大変だよね。

 

道代: 私自身も在宅勤務をしているんですが、クライアントとのリモートでのやり取りで難しさを感じることが多いんです。私の場合、独立した頃の13年くらい前までは雑誌の1ページみたいな小さな仕事でも編集の方がデザイナーの所に打ち合わせに来てくれるのが通例で、そのために都心に事務所も借りてたくらいなんです。それが電話とメールだけのやりとりが多くなって、結婚を機に在宅勤務にしたんです。最近ではメールだけとか、初めての担当者とも結局会わずに仕事が終わってしまうなんてこともあって。コロナで在宅勤務が増えたけど、このまま進んで大丈夫なのかなって思ってて、それで編集会議でその話をしたら、あっこさんが同意してくれたんですけど。

 

あっこ: そう、ちゃんと打ち合わせをしないで依頼して、仕事が完結すると思っている人が多いと思ってることに同意したんだよね。私も経験があって、私のことそう知りもしないのに、頼んでくる人がいて……。できる人なら誰でもいいみたいな頼み方されると傷つくじゃないですか。

 

道代: そうなんですよね。会わなくてもデザインできなくはないんですよ。でも直接会わないとニュアンスが分からないことって多いですし、こちらのやる気にも影響するんですよね。リモートだけだと良いものを作るのって難しいってずっと思っていて。そこを分かってほしいなって。

 

あっこ: やっぱりイメージを言葉で表現するのって難しいから、絵を描きながら説明したりしないと伝わらないのに、そこを省く人が多いから、そこは対面にした方がいいよね。リモートワークについては、オフィスで働くホワイトカラーの人はもっとやった方がいいと思う。

 

道代: あっこさんは、リモートワークはいつ頃からやってるんですか?

 

あっこ: 私は全然みなさんと感覚が違うと思うんですけど。そもそも私の場合は、どこかに毎日電車で通うという生活スタイルをしたら心が病むと思って、いかにそうしないで生きていけるかを問いながらやってきていて。私は隠居したい願望があって、20代は出家するかしないか悩んでいて、そういう性質なんですよ(笑)。

 

朋子・道代: えー!

 

あっこ: いかに普通に生活しながらも出家できるかということがテーマなんですよ。リモートワークというか、家で働くスタイルにしないと私はやっていけないかなというのがあったんです。

 

道代: 大学卒業してからずっと?

 

あっこ: いやいや、3年くらいアルバイトをしていたんですよ。それと同時に絵を描いたりしていて、そっちの方でと思っていたんです。ただ、アート業界とかイラストレーター業界とかの枠組みに入らずにやっていけないかなって、細々とね。昼間地域を歩く、そういうぶらぶらしてるのって大事なことだよねって思ってて。だけど、アーティストとして街や地域に入っていくのはなんか違うなと。そうなんです。普通の人でいるためにっていうところで、色々やってきてて、その過程で森ノオトに出会って。

 

道代: 森ノオトは天職じゃないですか!でも忙しそうだけど。

 

あっこ: そうそう。なんか色々やることになっちゃって、おかしいなと思って(笑)。

 

「テレワーク」と「リモートワーク」は、どちらもほぼ同じ意味で使われています。いずれも造語で、パソコンやインターネット、電話、ファックスなどを使い、時間や場所に縛られない働き方のことを指します。自粛下で広がった「在宅勤務」はテレワークの一形態と定義されています。文中では、話者それぞれが使い慣れた言い回しをしていて、修正していません
(引用:https://japan-telework.or.jp/tw_about-2/https://teleworkers.style/knowhow/55/   一般社団法人日本テレワーク協会HP)

 

リモートワークでの管理と評価

 

道代: そういえば、在宅勤務用の勤怠管理ソフトがあるって知ってびっくりしたんですけど。そういうのは使ってます?

 

朋子: ありますよ。朝定時でポチッと押して、夕方また定時過ぎて押すんです。これは、私の勝手な解釈ですけど、7時間勤務だとしたら、その7時間をどっかで埋めればいいって思ってて。

 

道代: そうですよね。それが、ランダムにスクリーンショットを撮って送るソフトとかもあるらしくて。

 

あっこ: そんなの疲れちゃうね。

 

朋子: 管理の価値観ですよね。

 

道代: 成果を出すというか、やることやればいいわけじゃないですか。

 

朋子: 時間とお前のやる気で評価ってね(笑)。

 

道代: そういう評価基準だと、リモートワークは不向きなのかなあ。根性論というか、そういうので評価されるってあるんですかね。

 

朋子: ええ、そういう会社もあると思いますよ。私は、野心はあるんですけど、子どもを産んだりしてて、そうすると見えない壁じゃないけど……。マミートラック(※1)に乗らないように気をつけていますけど、もう乗っているのかも。お迎えで早く退社する分、他の部分で挽回を心がけたりしてますけど、なかなか思うようにはいかないかな。

(※1:仕事と子育てを両立する女性が辿る、昇進していくキャリアコースから外れたコース)

 

あっこ: へえ。

 

朋子: 内辞のある2月ぐらいは近場の上司に泣いて文句言うみたいな(笑)。

 

あっこ: すごいね。ドラマになりそうだね。

 

道代: 勤怠管理の話もそうだけど、在宅でぶらぶらしてようが、豆煮てようが、良いものを出せばOKだと思うんですけど。多分、ちゃんと仕事しようと思ったらそんなにぶらぶらしてられないし。できたものを単純に評価するのじゃダメなのかなあ?

 

朋子: お二人はできたものがクライアントから評価されるという、ある意味シンプルな世界じゃないですか。組織だとそこに、変なものが入ってきますよね。時間とお前のやる気とか色々と……。

 

あっこ: 能力主義に陥るのもよくないなと思うんだよね。居るだけで、チームの雰囲気を良くする人とかもいるしね。それをお金に替えるのは難しいのかなって。

 

朋子: 確かに、あっこさん言うように、居るだけで意味がある人っているんですよ。チームの場が明るくなるとか、会議や商談がスムーズに進むとか。人望は厚いし、周りからは慕われているけど、会社の評価ではあまりステップアップはしていかない。評価がすべてではないけど。

コロナ感染対策のためリモートで行なったこの日の座談会。森ノオトの会議はZOOMを使うことが多いのですが、この日は「Google MEET」を使ってみました。あっこさん(写真左)と私はノートパソコンから、朋子さん(写真右)はスマートフォンからアクセスしています

 

リモートワークでのコミュニケーション

 

道代: 居るだけで意味がある人って、リモートだと成果を残しづらいんですかね。

 

朋子: 意外とそうではないと私は思っていて、リモートだからこそこまめな連絡とか大事だし、オンラインでミーティングしている時にチャットなんかで「言ってることいいね」みたいなことを言えるとか。多分離れているからこそ、そういう一言が効いてくるっていうのがあって。それが評価にはつながらないとは思うんだけど、存在としては変わらず大事。

 

道代: コミュニケーションが上手な人は、オンラインになっても上手っていうことですね。

 

朋子: そう。どうしてもオンラインとかメールとかのやり取りになると、間違いなどの指摘は必要だから当たり前にするけど、対面では普通にしていた「それ面白いね!」「それはいいね!」みたいな反応はしづらいんですよね。

 

道代: 私はリモートでのコミュニケーションが難しくて。最近はメールに関係ない無駄話的なことを書いてみたりしてるんです。多少は会ったことのない人とも距離が近づいた気がしますけど、どうすればいいのかほんと悩みます。最近は、若い方は特に電話すると迷惑になるって思っているみたいで、そう思われるとこっちも段々と電話したら迷惑かなあって思うようになってきた。

 

あっこ: 電話に関してはこっちの都合を優先しようって、逆に思うようになりましたね。面倒臭いと思われてもいいやって。あと、細かい話だけど、私は割とSNSを駆使してコミュニケーションを取ったりしているんですけど、絵文字を使うようになりましたね。昔はこんな絵文字使いやがって~って思ったりしてたんだけど(笑)。文字だけよりニュアンスが伝わるよね。

 

道代: なるほどね。ところで、朋子さんとか企業の人は元々会社で会ってて、その上でリモートになってるじゃないですか。例えば、これから入ってくる人が、スタートからリモートだったとしたらどうですかね? あの人トイレばっかり行ってるわ……とか。ダメだ、良い例えが浮かばない(笑)。なんか横にいると人となりがわかるじゃないですか。さっき話してた、居てくれると助かる人とか。そういう存在がうまれるのかな。

 

朋子: 遠慮しそうですよね。リモートスタートだと、なかなかそういう存在はうまれないかもしれないですよね。

 

道代: 評価できない部分のコミュニケーションをどう埋めていくのかって難しそうですよね。会社にいた頃は一緒に働いていると、なんとなく誰がどんなことしていて、何が大変なのかとかもわかったけど、リモートだと伝わらないというか。

 

あっこ: なんか、肌感覚っていうか、一緒にいるっていう空気感をいかに補うかっていうのは全体的な課題にはなりますよね。

 

道代: そう、それが言いたかった!

 

あっこ: リモートワークだけに限らずだけどね。学校だって、リモートだとね。雰囲気っていうんですかね。そういう、肌で感じることがなくなるからね。リモートだと視覚がものすごく優位になってしまうっていうのはあるよね。そうすると、ZOOM(※2)的なバーチャルとリアルがもっと伝わりやすい技術が必要ですよね。

(※2:パソコンやスマートフォンを使ってビデオ会議ができるオンライン会議のアプリ。)

 

道代: 私のママ友の会社は、夕方にZOOMで部署の人たちと会議をして、その日の進捗報告と明日の作業の指示受けをするらしいんですけど、人によってはカメラをオフにしてるんですって。私はリモートワークといっても、メールと電話だけだったので、最近ZOOMを使ってみて、やっぱり顔が見えるのはいいなあって思ってたんですけど、映るのが嫌な人は嫌なんですかね。

 

あっこ: 別の人から聞いた話で、家の状況が結構映っちゃうじゃないですか。時々お子さんも入ってきちゃうことがあったり。それで、子どもとのやり取りも映って、意外に子育て頑張ってんだなあって、株が上がったっていう。そういう効果もあるんだなと思って。会社だとそう私生活を見せ合うことってないじゃないですか。

 

朋子: 確かに、そうですね。

 

道代: 会社のオンライン会議って、服とかどんな感じなんですか?

 

朋子: 私服ですよ。Tシャツとか。だけど、オンライン慣れしてない人はスーツ着てます(笑)。お客さん相手だと襟付きかな。

 

あっこ: ネクタイばっかり売れるってね。下はパジャマでとかでね。

 

道代: そうだ、ズボン履いてなくてパンツ映っちゃった動画が話題になりましたね(笑)。

 

あっこ: ね。人間らしいよね。(森ノオト編集長の)まどかさんのお子さんは、受けてる塾のオンライン授業の前に映るところだけ綺麗にして、笑顔の練習までするんだって(笑)。

 

道代: ちょっと分かるなあ(笑)。お二人はオンライン会議をするのに良い場所がありますよね。

 

あっこ: 部屋の隅ですよ(笑)。

 

朋子: 目の前電子レンジが並んでますよ(笑)。

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この記事を書いた人
畑道代ライター卒業生
広島市出身。本や雑誌を得意とするグラフィックデザイナー。フリーランスとなって12年の節目に、新たな刺激を求めて森ノオトに参加。築34年の古家のセルフリノベがライフワーク。夫・息子と3人暮らし。
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