「旅する八百屋」が青葉区に戻ってきた! 青果ミコト屋の新たな挑戦
ポップでおしゃれ、アートや音楽、スポーツなど、分野を越境しながら自然栽培の野菜の魅力を伝えてきた「旅する八百屋」・青果ミコト屋の鈴木鉄平さん、山代徹さん。創業から10年、世界を旅してきた彼らが初の実店舗を開いたのは地元・青葉区でした。野菜のアイスクリームが早くも評判の「Micotoya House」を訪ねました。

「いってきます!」

 

そう言って旅立った彼らの背中が、ひとまわり大きくなって青葉区に戻ってきました。

 

自然栽培に特化し、イベントや宅配で販路を広げてきた青果ミコト屋の鈴木鉄平さん、山代徹さん。彼らを初めて取材したのは2011年初頭、東日本大震災の直前のことです。大きくてボロボロのキャンピングカーを公園の横に停めて、立ち話で取材したことを覚えています。30代になりたての彼らは、まだ顔つきも初々しさが残り、「旅する八百屋」のコンセプトを熱く語っていました。

 

あれから10年。「旅する八百屋」の名前は全国に知れ渡りました。ライフスタイルや料理、ファッション雑誌で取り上げられること数多、テレビコマーシャルでその姿を見たり、デニムブランドで起業した若者が「憧れはミコト屋」と語った講演を聞いたこともあります。青葉区出身の二人が、青葉区を飛び出て全国区で活躍する姿に、彼らを初めて取材した身としてはわがことのように誇らしくもありました。

4月に訪れた時は、Micotoya Houseのシンボルでもある藤の花が満開。青果ミコト屋のアートディレクションを務めるチョークボーイさんがお店の看板のライブペインティングをおこなっていた

コロナ禍は、彼らの活動にも大きく影響を及ぼしました。旅する八百屋が旅に出られないーー。

「おじゃまします!」

と、産地や、各地のイベントに顔を出していた彼らは、今度は

「いらっしゃいませ!」

と、地元の人たちを迎え入れる場をひらきました。

実店舗では全国から集まる自然栽培の野菜や調味料、加工品が美しくディスプレイされている。地元・はやし農園さんの野菜も時々手に入るとか

2021年3月初旬、青葉区梅が丘に誕生した「Micotoya House」は、自然栽培の野菜や果物、加工品を販売する「青果ミコト屋」と、ナチュラルアイスクリームの店「KIKI」、野菜の仕分け場と倉庫、オフィスを備えた複合施設です。昨年11月からクラウドファンディングで資金を募り、559人から876万9000円もの資金を集めてつくったMicotoya Houseでは、八百屋の宿命でもある野菜の売れ残りや規格外野菜をロスなく加工するジェラート店と工房が新たな「顔」になります。

 

「生産者が丹精込めてつくる野菜のロスは、できるだけ少なくしたい。これまで、ジュースなどいろんな加工品をつくってきたけれど、アイスクリームには賞味期限がないので“ロスをロスしない”ことが可能になります。それに、アイスクリームって楽しい食べ物でしょう? アイスはミコト屋の新たなポップスターなんです」と、真面目な理由も茶目っ気たっぷりに話す鉄平さんの愛嬌は、すっかり体が大きくなった今も変わりません。

 

「Micotoya Houseは、これまで広がってきたミコト屋を、地域に還元できる場所。僕らが提供できるものを、スペシャルというよりも“日常”に落とし込んでいきたい」と話すのは徹さん。これまで幾度も都内での出店要請があったそうですが、あくまでも二人のホームベースでもある「青葉区以外では(実店舗は)考えられなかった」と言います。

アイスクリームは常時10種類ほど。ヴィーガンコーンも人気で、ガリガリと食べ応えがあると評判!

ともに青葉区育ちの鉄平さん、徹さん。高校の同級生として出会い、仕事でもパートナーとなって、2010年に青果ミコト屋を起業しました。当初は、森ノオトの活動拠点でもあったウィズの森(青葉区さつきが丘、閉店)や、美しが丘公園で開催されていた軽トラ元気市(美しが丘公園、現在お休み中)に定期的に出店し、ペグルカフェ(青葉区桜台、現在は形態変更)への野菜の卸売や、青葉区を中心とした宅配でファンを広げていきました。当時は鉄平さんの自宅が仕分けや倉庫を兼ねていて、なんともアットホームな規模感でした。

 

什器やディスプレイ、ファッションに徹底的にこだわる彼ら独自のスタイルで、「おしゃれ八百屋」として知名度がどんどん上がっていきました。2012年にCINEMA CARAVAN「逗子海岸映画祭」に出店したのを機に、映像や音楽、ファッション、アートとコラボレーションの幅を広げ、彼らの活躍の場は全国に広がりました。2015年には青葉区鉄町の倉庫街に社屋を移転し、スタッフも増え、全国を飛び回る鉄平さんや徹さんと地元で会えることは稀になりました。

 

「一時期、地元でのイベント出店がほとんどできなくなりましたね。森ノオトの“あおばを食べる収穫祭”くらいかな(笑)。イベントに頼らないと食べていけない時期でもあったので、踏ん張るしかなかった。どこか後ろめたさもあったんです。だって、ずっと僕らを支えてくれたのは地元の人たちだから」(鉄平さん)

 

ミコト屋が実店舗を持つならば、青葉区しかないーー。この3年ほど、「いい場所ないすかね?」と拠点を探していた彼らが梅が丘の物件を見つけたのは、宅配からの帰り道のことでした。創業以来欠かさずに続けてきた、地元への宅配。原点を失わずにいたことが、原点でもある場所でも新たなスタートにつながったのです。

 

そういえば、宅配もまた、小さな旅のようなものだったのかもしれません。

 

「おじゃまします!」

 

そう言って、毎月わが家の玄関のチャイムを鳴らし、全国から届いた自然栽培の野菜を届けてくれた徹さん。まだ小さかった長女と、箱を開けるのが楽しみで、聞いたこともない名前の珍しい野菜を、同封されているレシピと一緒に調理しながら、全国から旅してきた野菜を食べた日々を思い出しました。

当然ながらお買い物のレジ袋はなし。野菜を買ったら軒先の台で新聞紙にくるんで持ち帰る

「いらっしゃいませ!」

 

今度は、全国からいろんな人が青果ミコト屋を目指して青葉区の住宅街にやってくるようになりました。オープンしてから2カ月足らずで、青葉区梅が丘はちょっとしたホットスポットのようです。土日にもなればMicotoya Houseの駐車場はアイスクリームを頬張る人でいっぱい。

 

「酒かすと日本酒」「赤ワインの搾りかす」「ごぼう」「ハニーローズ」「月桂樹とオリーブオイル」「ほおずきミルク」「ローストオニオン」……どれも食べてみたくてたまりません。自然栽培の米ぬか、きなこでつくったグルテンフリー・ビーガンコーンとの相性もバッチリです。

 

「野菜のおいしさを引き出す理恵ちゃんの調理技術は本当にすごい。例えばごぼうのアイス。繊維と皮を丸ごと使うために、丸く切ったりささがきにしたり、ローストしたり水分量を調節したり、さまざまな工夫を重ねて、ごぼうそのものを味わえるアイスをつくったんです」と、アイスクリーム工房で調理を任されている坂場理恵さんに絶大な信頼を寄せる鉄平さんです。

アイスクリームの製造責任者・坂場理恵さん。アイスのショーケースの詩的なPOPは、膨大な試作メモから生まれている

「Micotoya Houseで出会える野菜、KIKI Natural IceCreamで口に入る野菜、すべて全国から旅してきて、ここ青葉区に集まってきたものたちです。僕たちの旅の10年を、また違う形でアウトプットできるようになった」と、鉄平さん。徹さんは「Micotoya Houseができたことで、広がったものがローカルに戻ってきて、ここでまた新しいことができるようになるかもしれない」と、何やら次の展開も考えているようです。

この春から新たに料理人の伊藤渉さんがスタッフに加わった。新しい展開が期待できそう!

 

青果ミコト屋が創り出す新たな世界観――。この青葉区で、少しずつ、いや、すごいスピードで進化していく彼らに、心の底からエールを送りたいと思います。

 

「おかえりなさい!!」

店舗のサインもおしゃれでミコト屋らしい。Micotoya Houseの機能が一目でわかる

 

これからはアイスクリームがおいしい季節!「自称・子ども」としてキッズサイズで食べ比べるのもいいかも!?

 

Information

青果ミコト屋 

HPhttps://micotoya.com/ 

Micotoya House 

住所:横浜市青葉区梅が丘7-8 

電話:045-507-3504 

営業時間:11:0018:00 

定休日:曜・ 

駐車場は店舗前に2台あり。路上駐車はご遠慮ください 

北原 まどか
この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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