おたまじゃくしは、一生モノ
横浜市都筑区えだきん商店街の中にある一時保育さんぽは、横浜市乳幼児一時預かり事業の保育施設です。預ける理由は問いません。0歳から未就学のお子さんをお預かりし、自然の中でたっぷり遊びます。たくさんの地域の方に見守られながら、親も子もスタッフも一緒に育ち合っています。
昨年度は、新型コロナウイルスの影響で、本来なら泣き声でいっぱいの保育室は静まりかえっていましたが、今年の一時保育さんぽの春は、にぎやかさを取り戻しています。

(文=一時保育さんぽ・燕昇司 知里/写真=一時保育さんぽ)

*このシリーズでは、「子どもを育てる」現場の専門家の声を、毎月リレー方式でお送りしていきます。

 

親の心 子知らず

 

春は新しい場所、新しい人に出会う季節でもありますね。緊張と不安と期待が入り混じる匂いがしてきそうです。

ましてや、自分の子どもを初めて家族以外に預けることは、緊張や不安だらけだと思います。「一日中泣いているんじゃないかな」「ご飯は食べられるかな」「どんなふうに過ごすのかな」「他の子と仲良くしているかな」「スタッフの人はどんな人なのかな」などなど、わからないことだらけですよね。

 

荷物も、気持ちも、準備をして、登園してくるお母さん、お父さん。

 

子どもより緊張です。

 

スタッフに家庭での様子を伝えて、まずは荷物を渡して、そしてわが子を渡す。

 

泣きながらスタッフに抱かれて、バイバイしなければいけない。そんな様子に後ろ髪引かれまくりです。

「泣いているのに預けてしまっていいのかな」「そこまでして一時保育を利用していいのかな」親の気持ちは揺らぎます。

それでも身軽な自分に気がついて、すこし身体の力が抜けて、「ふぅ」と一息。そんな罪悪感のようなモヤモヤと、開放感のようなスースーを感じている親御さんへ、渾身の「行ってらっしゃい」を送ります。

 

わが子がどんなふうに過ごしているのか気になりながら、日常を送っていると、あっという間にお迎えの時間になる。そんなふうに過ごされる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

子どもたちは、そんなお父さん、お母さんの複雑な心情は知りません。でも私たちスタッフは、お父さん、お母さんの心情を知りたいと思っています。不安なことは口に出してみてください。口に出して、スタッフと共有して、少しだけかもしれませんが、気持ちを軽くして、出かけて行ってほしいなって思っています。

 

ここが落ち着いたの

 

子の心 親知らず

 

お父さん、お母さんから離れて、泣いてバイバイした後、子どもはどんなふうに過ごしているのかというと……

スタッフに抱っこされ泣いていたり、抱っこも拒否で泣いている子どももいます。どちらも、お母さんやお父さんがよかったのに!で泣いています。私たちは、まずその気持ちをとにかく受け止めます。「お母さんがよかったね」「お母さん行っちゃってさみしいね」「お母さんの抱っこがよかったね」(もちろんお父さんも)。

 

子どものその時の気持ちを肯定して、受け止めています。子どもが寂しくて

泣くことや、怒って泣いていることは、悪いことではありません。反対に私たちに「泣く」という自己表現を一生懸命している真っ最中です。その一生懸命をこちらも一生懸命受け止めます。すると子どもは受け止められていることに安心感を得て、泣き止んでいきます。これがすごい!いつも子どものその力を尊敬します。

そして安心感を得ながら泣き止んで次はどうするかというと、おもちゃや他の子どもへ視線が行くのです。ここもすごい!!遊びに対しての意欲。NOPLAY    NOLIFEです。

こちらはその一瞬を見逃してはいけません。

さら~っと遊びに誘ってみる。そ~っとおもちゃを手の届くところに置いてみる。何気な~く私も遊んでみる。

すると子ども自身、自分で遊んでみようと手を伸ばす。

 

勇気を出した瞬間です。

 

この仕事をしていて一番好きな瞬間かもしれません。担当しているスタッフはもちろん、周りで見守っていたスタッフも心の中で「やったー!」「すごいっすごいっ」と叫んでいます。

子どもは「これで遊んでもいいの?」とアイコンタクトを取ってきてくれます。「いいよ」とアイコンタクトを返します。そのやり取りが始まればもう大丈夫。

 

例えばですが、泣き止ませるために遊びに誘うと、遊びに飽きた時、ふとした時にお母さんを思い出して、またぶり返して悲しくなってしまいます。そんなことをさせてしまっては、子どもは遊ぶことに集中できないですし、心もしんどくなってしまいます。そのためにも、最初にしっかり寄り添って、受け止めることが大事になってきます。

 

歩いて登るのもありなのね。ハイハイでもがんばる

 

そんな心配はよそに、バイバイもそっけなく、泣かずに登園しているお子さんもいます。お父さん、お母さんのほうが、「あ、あれ?」みたいな。もう少しくらい寂しがってよ。と思ったりしますよね。でも子どもは、もう遊びに夢中です。おもちゃも大好き、人も大好き、お外遊びも大好き。

そしてお母さんがお迎えに来ると泣き出す。「帰りたくないっ」「まだ遊びたいっ」。

でもそれは遊び疲れている証拠でもあります。

たくさん遊んで疲れているし、家や家族とは違う集団生活の中で過ごすことは、子どもは口にはしませんが疲れます。お母さんやお父さんの顔を見て、ホッとして怒って、泣く。そんな心情なのだと思います。

 

竹藪

 

たけのこをみつけた

 

実は……子どもたちを見守っているのはスタッフだけじゃないんです

一時保育さんぽは、普通の保育園とは異なり、毎日違うお子さんを預かっています。そのため、毎日誰かは泣いていて、大変にぎわっています。室内に入ることができないお子さんもいたりします。そんな時はえだきん商店街を抱っこして歩いたり、カートに乗せて散歩したりしています。そんな私たちに必ず声をかけてくださる地域の方々がいらっしゃいます。

「今日は新入りさんだね」「大丈夫よ。楽しいこといっぱいあるよ」「かわいい、かわいい」と、とても温かく見守ってくれます。

とくに45月は、泣いている子も多く、外に散歩に行く時間も早くなります。先日も、早めに出発しようと準備をしていると、「おっ、今日は早めの出発式だね。どこに行くのかな?天気もいいね。いってらっしゃい!」と声をかけてくれます。子どもたちは目をまんまるにしてそのおじちゃんの声を聞いています。まだ何を言っているか理解はできないけど、バイバイもできないけど、なんだか味方がいっぱいいるなと感じさせてくれる。人と人とのふれあい。温かいまなざし子どもたちに注いでくれます。

 

優しくて、ありがたくて、そして欠かせない存在なのです。

 

温かいまなざしって、子育て中の親にとっても、子育ち中の子どもにとって、何よりの支援、応援ではないでしょうか。

子どもの言動への周りの冷たいまなざし(こういう時は、まなざしというより、視線かな)は、親の心をざわつかせます。ざわついた心は、予定外の言動をおこさせる。予定外の言動は子どもを傷つける。子どもを傷つけてしまったことに親も傷つく。人の目を気にせずに子育てできれば楽だけど、そんな器用なことができるには、仲間が必要です。その仲間として、地域の方々が私たちには付いています。

「仲間になろうよ」=「おはよう」のあいさつなんだと思います。

だから、子どもたちも、さんぽの散歩に慣れてくる頃は、子どもたちのほうから「おはようございま~す」「行ってきま~す」「ばいば~い」「ただいま~」と近所の方々へ「仲間になろうよ」のあいさつ合戦がはじまります。仲間を自ら増やして、自分の子育ちの糧にしています。

 

みつけた水場。入るか入らないかはあなた次第です

 

子どもたちに一生モノを贈りたい

 

鴨池公園のおたまじゃくし。初めて見る子もいます。小さくて、黒くて、太陽の光でキラキラしていて、子どもも大人も、おたまじゃくしから目が離せなくなります。

一人が勇気を出して、池の中に手を入れて、でもすぐ引っ込める。何度も繰り返しているうちに、おたまじゃくしが手のひらにヒョロヒョロって触れる。

「ワーッ」と「キャー」の間のような叫び声をあげる。その声に反応して気付けば、みんなが池の中に手を入れている。手のひらに、何匹もおたまじゃくしをのせて、じーっと見つめる。地面に落ちる。それを一生懸命池に戻すのは大人の役目。

お父さん、お母さんはおたまじゃくし触ったことありますか?あの感触思い出せますか?もし、未経験でしたら、来年の春、一緒に触りに行きましょう。   鴨池公園の中心で「わー」と「キャー」の間を叫びましょう。

おたまじゃくしを触ったことがある人は、思い出してみてください。

あの柔らかさ、動く度のくすぐったさ、口には出さないでいられる程度の気持ち悪さ、あのにおい、あの丸い部分に対しての力加減などなど。潰したことがある人も、引っ張ったことがある人も、子どもの頃のあの感覚はよみがえってくるはず。

あの感覚は、一生モノなんです。そしてその感覚はあなただけのモノ。

今の子どもたちも、一生モノの感覚を手に入れています。一生モノですからね、大事にしたいです。

そしてそれは、季節もの。春じゃないと味わえない。次の週にまた鴨池公園に行っても、もう一匹もいない。姿がない。その不思議さがたまりません。

手のひらいっぱいにおたまじゃくし

 

そんな一生モノは、どうして大事なのでしょうか。

自然の中での遊びは、何かができるようになることを目的としていません。スポーツができるようになったり、音楽ができるようになったり、英語ができるようになったりもしません。

何かができるようになるのではなく、自分が何者なのかを知ることができる環境だからではないでしょうか。

 

桜を見てきれいだと感じる、感じる自分に気づく、そんな自分が好き。

虫を見て、怖いと感じる、感じる自分に気づく、そんな自分を認める。

桜も、虫も自分とは違う感じ方をする人がいる、そんな人もいるんだと受け止める。

 

自然は自分が何者なのかを知る環境を与えてくれて、自分とは異なる人のことも何者かを知る環境を与えてくれる。できるとできないで人を知るのではなく、感じ方の違いを知る。それってやっぱり大事なことだと思いませんか。自然が人間に平等であるのは、そういうことだからだと思うのです。

 

この場所が好き

Information

横浜市乳幼児一時預かり 一時保育さんぽ 平日9001700

横浜市都筑区荏田南5-8-13 1階
TEL045-532-9960 FAX045-532-9967

http://www.nohara-net.com

一時保育さんぽの情報は、さんぽ公式LINEID @787edpet)に登録または、ホームページで。

LINEチャットで世間話やお悩みや愚痴を吐き出しませんか。

さんぽの扉LINE (ID @159qtebc

プロフィール

燕昇司知里

21歳で結婚して、22歳、23歳で女の子を出産。育児を楽しめなかった暗黒期を経て、33歳で男の子を出産。そこで初めて家族との育児の楽しさ、地域との関わりでの子育ての楽しさを知る。自分の経験から育児をつらく感じている人に寄り添いたいと思い、35歳から通信制短期大学で保育士資格を取得し、子育て支援の世界へ。その後様々な生きづらさを感じているご家庭にも直面し、特別支援士、早期発達支援士を勉強、取得。おしゃべりカフェ「ぽこぺん」に参加。自身ではワークショップ「ワレワレハウチュウジンダ」にて、だれもが暮らしやすい地域を目指している。

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