めぐる仕事、めぐる暮らしの楽しさと心地よさ。7月のサマースクールを終えて
7月に森ノオトのサマースクールをオンラインで初開催しました。翻訳家の服部雄一郎さん、青果ミコト屋の鈴木鉄平さん、TABELの新田理恵さんの3名のお話を聞きながら、自分の軸を大切にして日々を積み重ねていくことで、いろんな“めぐり”につながっていくことを感じました。受講された方の声とともに、サマースクールのダイジェストをお届けします。

サマースクールは7月15、16日にオンライン配信の形式で開き、森ノオトの梶田亜由美、齋藤由美子、梅原昭子が聞き手となって3名に公開インタビューを行いました。いつもの取材ではインタビュー後に編集し、文章の形で森ノオトのウェブメディアに掲載しているものを、今回はリアルタイムでの配信でした。さて、ゲストからはどんな言葉が引き出されたのでしょうか。

 

■あくまでも楽しく自由に。自分が信じることを自分のペースで (服部雄一郎さん)

1限目のゲストは、服部雄一郎さん。『ゼロ・ウェイスト・ホーム』(アノニマ・スタジオ)『プラスチックフリー生活』(NHK出版)の翻訳者で、最新の翻訳本『ギフトエコノミー』(青土社)も注目を集めています。わたしが服部さんの翻訳本の読者で、服部さんの仕事や暮らしの考え方をお聞きしたく、お声がけしました。

服部さんの翻訳本は、柔らかい言葉で、著者のもつ文章の雰囲気も感じながら読めるのが魅力。「翻訳のときに心掛けていることは?」という参加者からの問いに、「語感やリズム、読んだ時に肌に落としやすいなじみやすさを大事にしています」と服部さん

『ゼロ・ウェイスト・ホーム』の翻訳は、思いもかけない意外な展開というそのきっかけを教えてくれました。1本の企画書が、たまたまお会いした編集者の方の目にとまり、出版につながっていったそうです。服部さんは20代前半のころから翻訳をしたいと思いつつ、「自分には専門性がない」と負い目を感じていたそう。この本に出会い、「これだったら背伸びをしないでできる。自分が今まで暮らしてきたそのまんまの世界だと、のびのびと翻訳できたんですよね」と振り返ります。

 

服部さんがごみに関心を持つようになったのも、アートの分野の仕事から転職し、町役場のごみ担当職員になったことがきっかけです。「コンポストをやってみたらごみの面白さに気がついた」と、何でも自分ごととして楽しんでいく姿が印象的です。「まさかごみの翻訳書を出すとは想像もしていなかった。今となっては、いかにも自分らしい展開だったと思えているので、人生とは面白いもの」と服部さん。お話を聞いた方からは、「動き出せば何か次につながると、とてもシンプルなことを気づかせてくれました」とのメッセージをいただきました。

聞き手は梶田亜由美。「等身大のわかりやすい言葉が、スーッと心に入ってきて、生活そのものを楽しむ活力も湧いてきた!」「ごみの削減はクリエイティブな行動。とにかく楽しんで、という言葉が印象的でした。自分にできることをやってみて、できた自分をほめる。それだけで変化を起こせている。自分は変えられても、人は変えられない。という言葉も心に残ります」と参加者から

ゼロウェイスト、プラスチックフリーの暮らし方を発信している服部さんですが、「サスティナブルな暮らしのエッセンスとして、『環境』と『自分』の双方のサスティナビリティがとっても大事」と言います。自分が無理せず続けていける習慣を大事にして、自分が変えられることだけにフォーカスする、という視点を大切にしているそうです。

 

子どもとの暮らしについてもこんなお話がありました。「環境問題に限らず、社会問題全般について一緒に考えることをしています。問題の共有を楽しむことで、一緒にゼロウェイストやプラスチックフリーに取り組めているという感覚が強まってきます。あくまでも、ごみを減らすと決めるのは子ども。親目線で指示をしないようにしています」

服部さんの暮らしの工夫や、サステナブルな物選びのヒントもいただきました。「まずは目に見えやすい、変えやすいところから。歯ブラシは見た目も手ざわりも、生活の変化を実感しやすいです」

「自分が信じることを自分のペースで」「できることをやればいい、できたことについて、自分をほめたらいい」。そんな服部さんのメッセージから、自分の心地よさを軸に、のびのびとやりたいことをやってみる楽しさを感じるとともに勇気が湧いてくるような時間でした。

 

■自分がわくわくするか、胸をはれるか(鈴木鉄平さん)

2限目のゲストは、創業から10年目の今年3月、青葉区内に廃棄野菜を生かすアイスクリーム工房を備えた八百屋「Micotoya House」を構えた青果ミコト屋代表の鈴木鉄平さんです。なぜ鉄平さんが八百屋という仕事を選び、野菜を介して何を伝えようとしてきたのか、じっくりとお聞きしました。

Micotoya Houseは森ノオトの拠点と同じ青葉区。この時間は現地から配信しました

会社員を辞めて世界に旅に出てから、自然栽培の農家さんのもとで研修修業行をした鉄平さんとパートナーの山代徹さん。そこで感じた畑と食卓との乖離が、八百屋という仕事を選ぶきっかけになったと話します。

 

「農家さんのこだわりだったり、土地の景色だったり、その野菜に宿っている物語をちゃんと伝えられる八百屋でありたいと思った。それを伝えるのが自分たちの仕事」と鉄平さん。野菜の背景を知ることで、その野菜への愛おしさが生まれ、家庭でのフードロスも劇的に減ると思うと言います。

聞き手は齋藤由美子。「ブランディングは意識してやっているわけではない。おしゃれと言ってもらえるのは、周りの仲間がつくってくれている」と鉄平さん。店内のあちこちに、ミコト屋の仲間が協力したアートやデザインの数々が

「若い世代も含めてもっと幅広い世代、野菜にも関心がない人にも伝えて間口を広げていかない限りは、ぼくらの扱う野菜がメインストリームになることはないと考えたんです」と鉄平さん。イベント出店においても、音楽やスポーツなど、食とはつながりの薄そうな場にも意識して出ていったそう。「おしゃれ」「かっこいい」というミコト屋のイメージがつくられていった背景にも、自然栽培、オーガニックの野菜をスタンダードなものに、という思いがあったのだと知りました。新しい拠点で始めた「アイス」もまた、いろんな人が気軽に足を運びたくなる、ポップで愛される題材。そんなアイスに、廃棄野菜を掛け合わせるというのも、ミコト屋らしい社会問題へのアプローチです。

 

この回は学生の参加もありました。就活中という学生さんから、「働く上で大切にしていることは何ですか?」との質問も。「ぼくだったら、儲かるか儲からないかは二の次にします。自分がわくわくするかどうか。それって社会にとってもいいことかだと思えるか、胸を張れるかどうかだと思います」と、鉄平さんは言葉を選びながら答えてくれました。

 

「自分がワクワクするか、胸を張れるかというのは、野菜だけの話ではなくて生き方みたいなものも学べた感覚がありました」。受講した方からはそんなメッセージが届きました。

 

「お金が価値を持ちすぎている」と鉄平さん。農家さんとも、お客さんとも、上下の関係ではなく対等でいたいと言います。ミコト屋のお店づくりに関わってくれている仲間にはお金というよりも、物々交換でやりとりしているそうです。お金に頼りすぎない、気持ちのいい関係性づくりが、ミコト屋のいいめぐりを生んでいるのだと感じました。人情味あふれる鉄平さんの素顔とともに、生き方の哲学までも感じる2コマ目でした。

 

■守りたいもの、つくりたいもの、大事にしたいものは何か。(新田理恵さん)

3限目のゲストは、薬草茶のブランド{tabel}をプロデュースしたり、薬草大学を開校したりと、広く薬草文化を発信しているTABEL代表の新田理恵さん。新田さんが在学中の大学院とつないでオンライン配信しました。

新田さんが手がける{tabel}の薬草茶。サマースクールを通して人柄にふれ「新田さんが関わったお茶はきっとおいしい。飲んでみたい!」と早速注文したという方も。「信頼できる人や物に出会えると、暮らしが少しいい方に変わるのを実感する」と、参加してからの暮らしでの変化を教えてくれました

もともと食のことを学んでいた新田さんが、日本の薬草を訪ねる旅に出たのは、蓮の葉茶がきっかけだったそう。横浜中華街に買いに行っていたときに、あるのは外国産ばかり。「日本でこれだけ蓮が生えているのに、なんでお茶にしないんだろう?」そんな疑問を抱きました。そこからの行動力が新田さんならでは!

 

その後、すぐに蓮農家さんにコンタクトを取って、遊びに出かけたそうです。農家さんのお話を聞くうちに、蓮の葉は間引きして捨てていることを知り、お願いして間引いた葉を使わせてもらうことに。「今まで飲んでいた蓮の葉茶よりもすごくおいしいものができたんです。ちょうど熊本で在来種を育てている農家さんで。栄養価がつまっておいしくて衝撃を受けて、みなさんに届けたいなと」。そんなふうに、{tabel}の商品化のきっかけを語りました。

聞き手は梅原昭子。聡明で明るくいきいきと話す新田さんに、新たなファンも生まれたようです。「その行動力や将来のビジョンについて、楽しく話される新田さんのお姿がとても印象的でした」と参加者から

「すこやかな食卓を提案したい」「社会的な健康をみんなで考えていきたい」と、自分自身の言葉でビジョンを語る新田さん。ストレートに届いてくる言葉の裏側には、どんな思いがあるのでしょうか。事業をおこし、続け、広げていく上で、「守りたいもの、つくりたいもの、大事にしているものは何かを明確にすることを大事にしたい」と話します。創業当時3人で始めた事業も、目指すスピード感や規模感にズレを感じて、いったん一人で進めることを選んだというエピソードもありました。「何をもって事業の成功というのか、そこに多様性が出てきて、会社によってKPI(成功の指標)自由に決めていい時代。だからこそ、自分たちが大事にしたいものは何かを明確にしたほうがいい」とメッセージを送ってくれました。

新田さんの暮らしのひとコマから、よもぎを使ったアイピローを紹介してくれました。「人間が知っている栄養は限られています。植物や自然と向き合うときに、人間の知識やできることの範囲の外側と付き合っていくという感覚が大事かなと思います」

「薬草を学べる場が欲しかったけど、ちょうどいいのがなかったので自分たちでつくった」という薬草大学については、コロナ禍でオンラインに切り替え、受講生が教える側にまわったりと、よい循環が生まれてきているそうです。サーキュラーエコノミーにまつわる新たなチームづくりの話にもふれ、自分自身の思考や学びを深めながらも、躍動的につながりを育んでいく新田さんの姿が印象的でした。

 

■暮らしを変える新たな一歩に

今回のサマースクールに参加した方から、さまざまな感想を送っていただく中で、ゲストの方々が、自分らしく活動を切り拓いてきたことが伝わったのだと感じました。3名の方の具体的な活動やメッセージの届け方はそれぞれですが、自分自身の思いを大切にしながら、活動を広げてきたというのが共通するところだと思います。参加者の方で、プラスチックフリーの新しいチャレンジを始めた方もいて、この学びの場が、暮らし方を小さく変える一歩につながる場になったことをうれしく思います。「だれもが環境活動の主体者になれる時代」。そんな言葉が服部さんからありましたが、小さな個人から始められることがある、そんな思いが私の胸に広がっています

Information

■サステイナブルに暮らしたい(服部雄一郎さんブログ)

http://sustainably.jp/

■青果ミコト屋
https://micotoya.com/

■{tabel}

https://tab-el.com/

梶田 亜由美
この記事を書いた人
梶田亜由美編集長/ライター
2016年から森ノオト事務局に加わり、AppliQuéの立ち上げに携わる。産休、育休を経て復帰し、森ノオトやAppliQuéの広報、編集業務を担当。富山出身の元新聞記者。素朴な自然と本のある場所が好き。一男一女の母。
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