昨年7月末の草取り時に、稲穂が茎の間から顔を出しているのに気づいた。出穂(しゅっすい)と言うそうだ。その日は、同じ田んぼの一部の稲にとどまっていたが、その後1、2日で、ほぼすべての稲が一気に出穂した。
出穂したばかりの稲穂では、薄緑色のたくさんのお米の粒が、びっちりと一塊になっている。その様子、形からも、窮屈な茎の間を、力強くくぐり抜けてきたことが想像できる。
一粒ずつをよく見ると、小さな白い花のようなものがついている。まさに、これが稲の花。晴れた日の午前中、2、3時間ぐらい見えるそうだ。少し遠めに眺めると、夏の暑さで塩を吹いているようにも見える。きれいというよりは、健気でかわいらしい感じだ。田んぼ全体に目をやると、茎の深緑色とのコントラストで、花を咲かせる稲穂の色が鮮やかに飛び込んでくる。
ここからの稲の成長には、目を見張るものがあった。出穂の時点では、稲穂よりも高い葉の部分がある。それが、しばらくすると、葉の部分を通り越して、稲穂はほぼ頂上にいる。そして、この稲穂の高さが、日を追うごとに徐々に高くなっていく。太陽の陽をさえぎるものはなく、稲穂全体で光を吸収している。その太陽に向かって、まさにてっぺんを目指しているようだ。
私事で恐縮だが、今年の夏、次女の母校が初めて高校野球の神奈川県代表になった。準々決勝あたりからは、名前負けするような強豪校との対戦が続いた。逆転、延長、サヨナラなど、いま振り返っても信じられないような奇跡的な展開が続いた。厳しい日差しが照りつける猛暑の中、ひとつずつの試合をとおして強くなっていく高校生たち。夏場の稲の成長とダブらせながら、年甲斐もなく夢中になって応援していた。
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