新しいお店ができるたびに、その一方で必ず、廃棄処分されるカウンターや部材、椅子やテーブルがあります。空間内装や建築を生業にする寺家町の会社「月造」に集まってきた「かつてお店で愛されてきた材料たち」が、今、カフェのカウンターや床材として蘇りました。
「JIKE STUDIOでは、新しい材料はいっさい使っていません。椅子もテーブルも、部材も、すべて古いものを使っています」
こう話すのは、青葉台駅前の「gallery a」でいつも元気で明るい笑顔を振りまいている、ギャラリー担当の坂上浩美さん。JIKE STUDIOのオープンに当たり、最近は青葉台ではなく、寺家に缶詰状態だといいます。寺家回廊の事務局を担当する傍ら、JIKE STUDIOの開廊に向け、展示に準備に引っ張りだこ。ようやくオープンしたJIKE STUDIOは、これからもまだまだ変化していきそうな匂いがします。
新しいモノや空間を造るだけでなく、今存在している建物や空間をていねいに見直し、そこへの思いや愛を生かしながら次に伝えていくことをコンセプトに、家、お店、街をつくっていきたい……。そんな思いを抱きながら建築業務に携わってきた月造社長の月森忍さんが全幅の信頼を寄せるのが坂上さんで、月造の「ソフト」部分、つまり、モノ、ヒト、コトをつなげるギャラリーとカフェの運営を任されています。次世代に伝えたい芸術、工芸、人、そして思い……。それが、JIKE STUDIOとgallery aに集まってきているのです。
寺家回廊での企画展では、檜の細工師・三浦玉舟(みうらぎょくしゅう)として知られる三浦宏さんの「江戸の町、イキな町 三浦宏の世界展」を開催。大正時代に浅草で生まれた三浦宏さんは、船大工であった父と祖父、そして浅草の職人たちの中で育まれ、自らも風呂桶職人として木に携わる仕事をしてきました。1980年代から江戸の長屋、呉服屋、湯屋、吉原の街などを時代考証に基づき再現。今回、その三浦さんの作品が、JIKE STUDIOに「江戸の街」として蘇りました。
三浦さんの作品に魅せられた写真家・田所美栄子さんのワークショップ「針穴写真で江戸を撮る」も、この10日に開催されます(予約受付中。10月10日10:30〜16:30。8000円。江戸弁当付き)。また、10月23日(土)には、「江戸の町、イキな町」をテーマに、世界的庭師・安諸定夫さんと三浦宏さんの対談が実現します。
寺家町の空間で、世界レベルの作品や作家と気軽にふれあうことのできる機会が得られるなんて!
「作家、作品は、世界クラス、地元作家など、有名無名にこだわらずに、ご縁のある方々を大切に、ともかく“心”をお伝えしていきたい。JIKE STUDIOは広いし、何でもできる空間。モノにこだわらず、食や空間、踊りがあってもいい。心動かされる、いろんなジャンルの人々とコラボレーションしていきたい」
と、坂上さん。寺家町という環境を生かしながら、JIKE STUDIOが今後、どんな発信して、またどんな人が集い、出会い、新しい世界が造り出されていくのか、とても楽しみです。
★ワークショップ「針穴写真で江戸の町を撮る」の詳細は、
JIKE STUDIO
住所:神奈川県横浜市青葉区寺家町435-1
TEL:045-350-3804
OPEN:10:30〜17:00(寺家回廊会期後は11:00〜17:00)
定休:火曜
駐車場:あり
アクセス:東急田園都市青葉台駅よりバス「鴨志田団地」行き、終点鴨志田団地バス停下車徒歩15分