当たり前のことですが、木は生きています。世界で最古級の木は4000年以上生きていることもあります。日本でもよく知られている屋久島の縄文杉の樹齢は実ははっきり分かっていないものの、2000年以上は生きているのは間違いありません。
縄文杉ほど長生きな木はさすがに少ないのですが、樹齢100年を超えている木はそんなに珍しくありません。
なぜ木はそんなに長生きなのでしょう、木の構造からみていきたいと思います。
まず、植物はどこで成長しているかというと、根や茎の先端が伸びて大きくなります。先端には細胞分裂する組織があり、そこで維管束(いかんそく)と言う水を通す木部(もくぶ)と、葉で出来た栄養を通す師部(しぶ)が組み合わさった組織ができます(これを、分化と言います)。木部と師部の間に細胞分裂の機能を持った形成層ができ、形成層が環状につながると内側に二次木部、外側に二次師部ができるようになります。
木が年々太る(肥大する)のはこの二次木部と二次師部ができるからで、これこそが樹木の特徴と言えます。
木の形成層は樹皮のすぐ内側にあります。形成層の部分で成長が起こることで、内側に材が出来ます。
ここで「樹木はどこが生きているのか?」という本題に入ります。幹の部分で言うと、主に形成層と師部の組織が生きていますが、内側の木部の多くは死んでいる細胞でできています。
スギやヒノキなどの太い丸太の内側は色が濃く、外側は色が薄いのは皆さん見たことがあると思いますが。内側は芯材(赤身)、外側は辺材(白太)と言います。どちらも木部が残っている部分です。
色が薄い辺材は水を通していて生きている細胞も残っていますが(水を通す導管は死んでいる細胞です)、色の濃い心材はすでに水を通す役目を終えた、全て死んでいる細胞なのです。芯材の細胞は水分が少なく腐りにくい物質が入っています。
すごく太い木でも細い木でも、樹皮のすぐ内側の薄いところが生きていて、さらにその内側の多くの部分は死んでいる細胞が積み重なっているのです。外に外に生きている部分が成長して大きくなっていきます。
幹の内側が空洞になって材木として使える部分が無くなっている木でも、元気に生きて成長しているのはその為です。
では内側の死んでいる細胞は必要ないのかと言うと、そうではありません。
木が大きく高くなるために、骨のように支える役割を持っているのです。住宅用に使われる杉やヒノキなどの材木は、赤身がち(つまり死んでいる部分が多い)の方がくるいにくく、構造強度もすぐれているという特性があります。
また、内側に空洞ができていても木は生きていけますが、あまりに大きな空洞は強い風がふくと幹が折れてしまう可能性が出てきます。
街の街路樹を見ても、元気そうだった木が突然伐られてしまったのを見たことないでしょうか? それは、幹や根に空洞ができていたり、材が腐っていて全体を支えることが難しくなってしまい、危ないと判断されたからなのです。
僕たち樹木医はそういった危ない木がないか、木の健康診断して判断しています。
木が長生きできるのは、動物のように全体の細胞を入れ替えているからではなく、生きている部分は少なく死んだ細胞をうまく使って体を支えているからだと言えます。木は動かない一生を選んだことで、長生きできる体を手に入れたのですね。
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