2/8(日)「あおば・未来へつなぐ食と農のフォーラム」参加レポート
2月8日、マクロビオティック料理研究家の中島デコさんをゲストスピーカーに迎えた「あおば・未来へつなぐ食と農のフォーラム」が開催されました。デコさんトークから始まり、参加団体の皆さんによるトークセッション、ワールドカフェでは思いがけず自分と対峙する時間もあり……。聴く・話すだけでなく、会場の全員が動き回り、意見を交わし、語り合った! 120人超の参加型フォーラムの模様をレポートします。(写真:ながたに睦子)

寺家ふるさと村で自然農の田んぼや畑での作業を通じ、里山を再生していく活動をしているNPO法人農に学ぶ環境教育ネットワークが「平成26年度日本郵便年が寄附金助成事業」として主催した「あおば・未来へつなぐ食と農のフォーラム」。森ノオトは事務局として企画・運営を担いました。

前売りチケットは完売!

当日はあいにくの雨模様でしたが、満員御礼、多くの方にご来場いただきました。

食・農・子育てに興味がある女性に人気が高い、中島デコさんを迎えた今回のフォーラム。チラシにあった参加型トークセッションって? ワールドカフェって何するの? つながりを生み出すプログラム……?

リポーター板垣は、ワクワクする気持ちで参加してきました。

 

この広い会場が満席になる。参加団体のブースも大盛況。女性の参加者が大半だが、男性の姿もちらほら見られた

 

中島デコさん流子育てのコツ

フォーラムのスタートは、中島デコさんが千葉県いすみ市で現在の自給自足的な生活までに至る経緯、子育てのコツを語ってくれました。

「なぜ都内の生活から千葉県へ拠点を移したのか……子どもが増えて、都会の生活が息苦しくなったからかな。あとは、ぶっちゃけ、子どもが増えて、ご飯食べるのが大変になっちゃった(笑)。食事のことも、5人いる子どもになるべく自然なものを、と考えて。自分の家族分の分の食料を、自分で作りたいと思うようになってきて」

東京都心から千葉県いすみ市に移住の後、自給自足の生活の中で得た気づき、それは「子育てと農は似ている」ことだったそう。

 

デコさんのトークはとても生き生き。5人のお子さんを自然の中で育てている情景が浮かぶ

 

「やっぱり日本人は米でしょ! 作るしかないでしょ! って。何も知らない状態からいきなり米を作り始めたんだけど、田んぼのエネルギーはすごい! 子育てに似ている。親が邪魔しないことが大切なの。水も肥料も与えすぎないほうがいい。子どももしかり。稲は自分で水と栄養を探し、根を深く張っていく。植物に付き合っていると、学ぶことが多いです」

 

話にうなずく方がいたり、ドっと笑いが起きたり。会場は終始和やか

 

そして、会場には子育て世代の女性が多いことから、5人の子どもを育てあげた母として、子育てコツを5つ、を話してくださいました。

(1) 与えすぎないこと。与えすぎないと子どもは自分で工夫する。

(2) 子どもに話しかけるときに、[こうしなさい]と上から目線でモノを言わないこと。

コツとしては、「私はあなたにこうしてほしい」と、I(アイ)メッセージで伝えること。

(例:「お母さんは、これを片づけてくれると、とてもうれしいな」)

(3) すべて「よかったね〜」につなげる。「よかったね探し」をしよう。

(例:子どもが転んで泣いたら、まずは「よかったね!足折れてないじゃん!」)
(4) 旅をさせる。子どもの背中を押す。

(5) お母さんが自分のケアをして、バランスをとって、いい精神状態にいること。

例えば、子どもがお味噌汁をこぼしても、自分がハッピーで体調が良ければ、余裕が生まれる。同じことをしても、親が怒る時とそうでない時があれば、子どもは混乱する。まずはお母さんがいい状態でいることが大切。たまには気を抜いてリラックスし、楽しく過ごして、いい状態を家族に還元すること。

そんな風に、ざっくばらんに、話してくださったデコさん。自然体でとてもチャーミングでした。しなやかな行動力で正直に生きているデコさんの話を聞き、「生き方」の選択肢は無限なんだと感じました。

また、自然の中で5人のお子さんを育て上げた母だからこそ言える子育てのコツは、板垣の心に深く浸透しました。

 

「子どもの自然性」と農の関係

 

中島デコさんのトークに続き、トークセッションに移りました。ここで登壇したのは、NPO法人農に学ぶ環境教育ネットワークの木村広夫さん、中島デコさんのブラウンズフィールドに住み込み農業を学んでいた、青果ミコト屋の鈴木鉄平さん、森ノオトのキタハラマドカと、次のグループの代表の皆さんです。

青空保育ぺんぺんぐさ/ウィズの森/NPO法人もあなキッズ自然楽校/NPO法人横浜シュタイナー学園/Natural&Harmonic PLANT’S/横浜みどりの学校ひまわり/りんごの木こどもクラブ

「農・食・子ども・子育て」について、日々活動現場で感じていること、それぞれの想いを、自由に語っていくトークセッション。

これからの都市と農の関係に必要なことも見えてきました。

「デコさんのお話を聞いて、以前、木村さんと自然農の稲作の紙芝居をつくったことを思い出した。自然農の稲は、根を張り、分けつ(苗が分かれて育っていくこと)する力が強く、人間は草取りだけして手伝うだけでいい、と。子育てに通じるという話も共通していて、驚いた」(森ノオト・キタハラ)

「自然に寄り添った生活をする。自然栽培の野菜は、有機肥料すら与えない、もともと大地にあったものを引き出していく」(Natural Harmonic Plant’s・馬場寛明さん)

「子どもの中の自然性を大切に。大人はどうしても指導や強制しがち。保育者は、目の前の子どもが、何を感じ取ろうとしているのかに耳を澄ますことが大切」(りんごの木こどもクラブ・青山誠さん)

「子どもの中の自然性を妨げなければ、子どもは育ってていく。まずは自然の中にいること。自然といると子どもは喜怒哀楽をはっきり示す。囲われていない自然と遊ぶこと」(青空保育ぺんぺんぐさ・ミエコさん)

「農“を”学ぶ、ではなく、「農“に”学ぶ」(NPO法人農に学ぶ環境教育ネットワーク・木村さん)

「農には敷居がある。青葉区には自然が残されているのに、それを断絶している状況。いかに距離を縮めるか、それを参加出来るカタチにし、発信していくのが森ノオトの仕事ですね」(青果ミコト屋・鈴木さん)

デコさんの話を受け、横浜北部活動している各団体が、日々感じていること、またこのフォーラムを通じて伝えたいことに、たくさんの共通点がありました。

自然に寄り添い謙虚に学ぶ姿勢、子どもの自然性を大切にすること、農と都市の距離感、人とのつながり…子育てや農のプロの立場から聞けたお話は、私たちと自然、子ども、農との関係をより良くするためのヒントが隠れていたと感じました。

 

ファシリテーターの有福さんに導かれながら、トークセッションは進む

 

ワールドカフェ

 

今回のイベントでは、横浜北部で共通の意志を持つ団体をつなぐことに加え、参加者全員でおこなうワールドカフェも、大きな試みの一つでした。

ワールドカフェとは、参加者が4人程度のグループを作り、テーマに添って話し合いをし、その後メンバーの組み合わせを変えながら、対話を続ける方式です。

まずは近くの方同士でチームを作り、軽く自己紹介。そして、ファシリテーターの有福英幸さん(株式会社フューチャーセッションズ)からテーマが出されると、会場の参加者みなが自分自身に問いかけ、内観します。

「自分の暮らしが豊かになるために、必要なことはなんだろうか」

「そのために取り組みたいことはなんだろう」

これらのテーマをグループで語り合い、共有し、さらに自分に問い直す。話すほどに会話が弾み盛り上がる会場。

「2人の子育てをしているなか、閉塞感があって……。今日は勇気を出してここに来た。まずは、自分がゆとりを持って子育てをすることから始めたい」

「自分が住んでいる地域で、自然栽培で畑を始めたのだけれど、せっかくだからもっと色んな人と共有したい」

「地域にこんなに素敵な団体があると初めて気がついた。まずは一歩踏み出してみようと思う」

様々な意見を聞いていると、無意識にもっともっと考えを巡らせている自分がいました。

みなさんは、どう考えますか? 「豊か」とは何でしょう。

自分や家族の暮らしが穏やかになること。

ゆとりをもってシンプルに暮らすこと。

地域のみんなと豊かさを共有し、まちを盛り上げていくこと……。

それぞれが描く、「自分の暮らしが豊かになるため」にできる具体的な行動とは、何なのでしょうか。

 

ちなみに、私のチームで出たものは、人とつながること、コミュニケーションを育むこと。バランスを取ること。心身ともに健康なこと。自分の心の安定……だった

 

ワールドカフェの終わりには、参加者全員が大きな円を作り、一人ひとり、自分の意見をひと言発表する時間が設けられました。

 

 

大きな大きな輪になり、ひと言ずつ発表する

 

家族を愛する、バランスを取る、すぐに行動する、お裾分けする、早寝早起き、受け入れる、ワークライフバランス、助けを求める……。

全員の言葉は書ききれませんが、どの意見にもはっとしたり、共感したり、なるほどと思ったり、そんな空間を共有することで、会場が一体化した瞬間を体感できました。

 

参加者一人ひとりが発表したキーワードを板垣流に整理すると……(作図:板垣恭子)

 

実際にワールドカフェに参加してみて、自分が心身ともに健康であること、精神的に満たされ安定していること、人とのつながり、地域のつながり、人とコミュニケーションがとれる状況にあることが「豊かに生活するために」大切なのではないか……私はそのように感じました。

「自由で個性あふれるまち、多様性を認めることがベースとしてある」(青果ミコト屋・鈴木さん)

「血のつながりだけでないつながりを、みんなでフォローしあう。みんなで大家族をつくる、そうするといろんなことが解決するのでは?」(デコさん)

「農に学ぶ」(木村さん)

さまざまなフィールドの方がいて、切り口・窓口、みな違うけれど、情報や想いを共有し、その多様性を受け入れ、新しいつながりを作り、はじめの一歩を踏み出す。

例えるならば、点と点が線になり、面になり、立体になり、それがゴロゴロ動き出すように。

今回のようなイベントが起点となり「食と農」をキーワードに地域を活性化していく、そういうムーブメントを今後、森ノオトでも発信していきたいと感じました。今回参加した方々から、企画があがってくると、うれしいですね!

以上、「あおば・未来へつなぐ食と農のフォーラム」のレポートでした。

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この記事を書いた人
板垣恭子ライター卒業生
静岡県出身で四姉妹の長女。大学卒業後、デザイナーとして働きつつ花屋で修行。現在は子育ての合間に、その経験をいかせるような世界観を目指して制作活動中。森ノオトではジャーナリスト的な一面を見せ、硬派な記事も立派に書き上げる努力家でもある。
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