一点だけでも存在感のある流木。お庭やインテリアに取り入れれば、山を身近に感じる暮らしができるかも!
「ぼくりゅう亭」は、お店とはいっても卸が専門なので、訪れた場所は店舗ではなく倉庫でした。直接見て買いたいと訪ねることもできますが、通常はホームページからメールで注文すると、商品が宅配便で届きます(詳細は下のinformation欄にあります)。
取り扱う流木は川のものだけ。海のものは混ぜていないので「アルプスの流木」と銘打って販売しています。仕入れのために、長野県のダム湖(ダムによって河がせき止められて出来上がった湖)に、雪のない時期、年間20回ほど通って集めているのだそうです。
通常、流木というと、一点もの、あるいは作品として愛好家向けに販売されることがほとんどなのですが、S、M、L、その他とサイズ別に分けて、規格化し、商品として販売しているのは全国でもここだけだそうです。例えば全国の市場に出回っている流木の多くは、「ぼくりゅう亭」のものであることが多いのだとか。
最初は、園芸で使う商品として販売し始めたそうですが、最近では、ショーウインドウのディスプレー用など、ファッション系、デザイン系の領域からの注文も増えています。同じようなサイズのものを大量に! といった注文に応えられるのが、ぼくりゅう亭の底力です。
その他にも、形や種類の違う木をコラージュしてくっつけたようなパネルが、カフェテーブルの天板や壁材として利用されたり、某居酒屋チェーン店の扉の取っ手部分として利用されるなど、アルプスの流木たちは、さまざまな形で、都市に生きています。
しかし、実は山の流木を販売するにはいろいろな許可がいるので、簡単なことではないのです。山の木々は「一般廃棄物」と仕分けされて、このお店で取り扱われる量の倍以上が捨てられています。
苦労して許可をもらった場所(企業秘密! 長野のかなりの山奥)に出向き、販売できそうなものを丹念に拾い集めて持ち帰り、必要ならば洗浄し、乾燥、仕分け、という作業をするのはかなりの労働です。自然が相手なので、バンいっぱいに持って帰れる時もあれば、ほとんどない状態で帰ってくることもあるとか。
話を聞きながら、わたしは、なんとなく、おばあさんは川へ洗濯に、おじいさんは山へ柴刈りに……という、昔話の冒頭部分を思い出しました。
山で仕入れてまちで売る。いまの時代では新しいようで、実は伝統的なスタイルなのかもしれません。
「ごみでビジネスして……みたいなね、批判は未だにありますよ。散々言われてきて……でも、お客さんに接するのは楽しいし、捨てられるのはやっぱりもったいないですから」
「実際には廃棄物として捨てられている量の方が圧倒的に多いので、同じような仕事をする人がもっと増えてもいいんじゃないかなと思っています」
と、穏やかに語る平野さんが印象的でした。
ダム湖に溜まる流木資源など廃棄物の循環をすすめようと、ビジネス化を試みたのは、実は東京電力。もともと東京電力で技術系のお仕事をされていた平野さんは、そのプロジェクトリーダーに立候補して採用され、平成14年に「自然の問屋」という会社の副社長として事業を開始したのでした。
電力会社が流木販売にのりだした? と当時話題になり、メディアでも多数紹介されたので知っている方もいるかもしれません。その後5、6年で撤退が決まってしまうのですが、流木の魅力や、直接お客さんと話ができる楽しさも知ってしまった平野さんは、平成22年に思い切って新しい会社を立ち上げて、細々と流木販売を続けてきました。
わたしが「ぼくりゅうてい」の社長である平野さんと出会ったのは、今年の夏に行われた有隣堂主催の「親と子のはかせセミナー」終了後の講師打ち上げの飲み会の席でした。平野さんは、流木ねんどアートといって、流木を土台やフレームにして、小さな人形と組み合わせて一つの世界をつくるワークショップも各地で開催して、流木文化を広めているんですね。もし、どこかで遭遇した時には、気軽に参加してみてください。
ぼくりゅう亭
住所:横浜市都筑区東山田町36-2
*市営地下鉄グリーンライン東山田駅徒歩10分。駅を出たら右に道なりに進み、
東山田交差点を左折して2軒目。
電話:045-514-5711
FAX:045-516-6890
イベント情報はFacebookでご確認ください。
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