(text&photo:ながたに睦子)
「こどもうちゅう」のサイトは、こんな青山さんの文章から始まります。
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こどもうちゅうは、いま「子ども」を生きている人、
その子どもの隣で生きている人、
そしてかつて子どもを生きていたすべての人に贈る、webマガジンです。
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青山さんによると、10月にサイトがオープンしてから、保育に関係する人たちや編集に関わる人、子育て真っ最中の大人たちに、じわじわと注目されているとのこと。まずは青山さんに、サイトを作ろうと思ったきっかけについて伺いました。
「きっかけは、汐見稔幸先生(東京大学名誉教授・白梅学園大学学長)の立ち上げた『保育の次世代リーダーの会』の集まりで、僕と松本理寿輝くん(ナチュラルスマイルジャパン株式会社代表取締役。都内3カ所で“まちの保育園”を経営)が出会ったことです。保育園や保育という枠を超えた幅広いつながりのなかで、こどもに関わる何かができないか、という思いが湧き出てきて、理寿輝くんと話すなかで、新しくこどもの世界を伝えるメディアを立ち上げたいね、という話になりました」
「その時は、何も具体的なイメージはなかったんですけどね」と、青山さんは続けます。
「ただ、理寿輝くんと共通して考えていたのは、親向けの子育て情報を伝えるメディアや、保育者向けのメディアはいっぱいあるのだけど、“こどもそのもの”を伝えるメディアというのはあまりないよね、ということ。そこで、“こどもの世界”“こどもの生態”をダイレクトに伝えるメディアを作りたいなという思いがありました。
ウェブメディアを作ろうと思ったときに、僕がイメージしたのは、僕の知る、こどもに関わる人たちが、夜空に、てん、てんと、星のように散らばっていて、それが色々な図に見えてくるというイメージでした」
青山さんは、そのイメージを「コンステレーション」という言葉で伝えてくれました。「コンステレーション」とは「布置、星座」と訳され、一見無関係に並んでいるように見えるものが、あるとき意味を含んだ図のように見えてくること、という意味を持つ言葉です。
「こどもうちゅう」のメンバーには、保育者、保育園職員、幼稚園教諭、写真家、イラストレーター、映像ディレクターなど、さまざまな人たちが関わっています。メンバーを集めるにあたっては、一つの党派、結びつきの強いチームのようなものを作るのではなく、お互いにある距離感はとりつつ、向いている方向もバラバラでよい。でも何かをするときはぎゅっと集まる。一人ひとりは、「こどもの世界」という大きな夜空に浮かぶ、個性ある星々の一つであり、それらの星が集まり、さまざまな星座を描く、そんなイメージがあったそうです。
青山さんは、続けます。
「僕と理寿輝くんに加え、斎藤紘良くん(町田市にある「しぜんの国保育園」園長。チルドレンミュージックバンドCOINNメンバー)が入ってくれました。おとなとこどもの世界を分けられてしまうのはなんだかおかしい、それぞれは別々の世界ではなくて連続性があって、おとなもこどもも同じ文化を作る一員だよね、という意見がでてきて、こどもうちゅうのもう一つの柱として『こどもと一緒に文化を耕す』というコピーが出てきました」
青山さんには、日頃からこんな思いもあったそうです。
「保育の現場の様子って、プライバシーの問題もあって、あまりオープンにはされていない。そのせいか、保育の世界では当たり前のように語られていることが、実は一般の子育て世代にはあまり伝わっていないんです。例えば、子どもがおもちゃの取り合いをする。でも、取り合いしたときに、貸さなくたっていいんだよ、ってそんな話が子育て番組で放送されたりすると、SNSなどでものすごくシェアされたりする。でも、僕たちからしたらそんなの当たり前の話なんです。だから、伝わってほしい情報が、実際に子育てしている人たちにはあんまり伝わってないんだなあって思って。
例えば、雑誌などでお母さん向けに『子育てのコツ』みたいな特集があったとする。でも、それを読んで本当にお母さんは楽になるのかなあ。子育てのコツよりも、子どもってこんなにぐちゃぐちゃだよ、面白いよ、ってのそのまま伝えたほうがいいんじゃないかなと思ったんです。
また、子育て中の大人だけでなく、保育者にもメッセージを込めているとのこと。
「保育の世界って、何かとネガティブに伝えられがちじゃないですか。もちろん大変なところもあるけれど、その中にも素敵な部分もいっぱいある。だから、世間で伝えられている保育のイメージと逆のことを伝えてみたかった。保育の実践って、憧れをもって引き継がれる部分も大きいんです。あの人みたいなこどもの写真を撮ってみたい、あの人みたいにこどものこを話してみたい、あの人みたいにこどもと関わってみたい……。そんな風に保育を実践している人たちがいる、保育って素敵だなっていうことが伝わればいいな、と」
こどもうちゅうのサイトデザインを考えるにあたっては、私も何度かラフ画を描き、メンバーとあれこれ話し合いを重ねました。可愛らしい、こどもらしい、女性が好む、そんなデザインからはちょっと離れたデザインにしよう、という意見で一致しました。それは、ターゲットを子育て世代だけに絞りたくないという思いからでした。
最後に、「こどもうちゅう」のこれからを青山さんに話してもらいました。
「まずはコンテンツを充実させながら、ゆくゆくは、こどもに関わる人に向けたスクールのようなものが出来たらと思っています。保育の世界では、どうしても職場の倫理や常識に縛られてしまうところもある。でも、子どもを相手にしているからこそ、正解が一つではないことも多いんです。こどもや保育に関わる人の学びの裾野を広げたいという思いから、学び合いの場を作りたいと考えています。実は、今年の12月11日に、広尾にある聖心女子大で“こどもうちゅうフォーラム”をすることが決まっていて、こどもに関わる人や、こどもに興味ある人などにぜひ来てもらいたいです。そこでは、保育や教育という分野以外のことにも触れてもらえるようにするつもりです」
まだまだ始まったばかりの「こどもうちゅう」ですが、私の周りでも「あの連載を楽しみにしている」「こどもの写真に癒やされる」「動画を何度も何度も再生してしまった」など、評判は上々。そして、今後も、ゲストに寄稿してもらったり、メンバーから新たなコンテンツが始まる予定もあり、私も今後のうちゅうの広がりが楽しみです。
また青山さんは、今年で三回目を迎える「こどもみらいフェス」の実行委員の1人でもあり、今年の「こどもみらいフェス」には、「こどもうちゅう」メンバーの1人でもある斎藤紘良さんが所属するバンド、「COINN」の出演が決定しています。青山さんと「COINN」メンバーの楽しい対談も、こどもうちゅうサイト内にアップされています。ぜひ訪れてみてください!
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