リユース&リサイクルを暮らしの中に。中部リサイクル運動市民の会へ
1980年の発足以来、市民を巻き込んでリユース&リサイクルの活動を続けている団体が名古屋市にあります。行政に先駆けて取り組んできた資源回収や、新しい形のチャリティーショップの運営を通して、だれもが暮らしの中で気軽にリユース&リサイクルに参加できる仕組みづくりを進めています。日本のリサイクル&リユースの老舗団体、NPO法人中部リサイクル運動市民の会を訪ねました。

森ノオトでは、不用になった布モノを回収し、新たなデザインで生まれ変わらせ、地域でエコの輪を広げていくアップサイクルのファクトリーづくりに取り組んでいます。布回収の仕組みを模索する中で、長年にわたって地域でリユース&リサイクルを広げる活動に取り組んでいる中部リサイクル運動市民の会(以下、中部リサイクル)の現場を視察しました。

 

現地で対応してくださったのは、NPOの副代表理事で事務局長の和喜田恵介さん(39)。取材同行してくれた、森ノオトの北原まどか編集長と同年代の若きリーダーです。

 

中部リサイクルは1991年から、家庭から出される缶やびん、古紙などの資源を回収する「リユース&リサイクルステーション」(ステーション)の運営を続けています。行政の資源回収に先駆けた取り組みで、現在はスーパーの駐車場などを会場に、名古屋市内の約40カ所で年間のべ1,300回開催しています。

 

昨年度は、全会場で合計2千トンを超える資源を回収し、古紙のリサイクル効果として3万2,720本もの木材節約につなげました。

 

スーパーの駐車場などで開かれているリユース&リサイクルステーション。対面式で資源を回収する

 

私たちが取材に訪れたのは、残暑厳しい9月上旬。名古屋市内のショッピングセンターの駐車場に、「リユース&リサイクル ステーション開催中」のぼり旗が立っていました。新聞やダンボール、牛乳パックなどの古紙、スチール缶、なべ・やかん・金属類、びん(透明)など、12品目のリサイクル品を受け付けています。

 

暑い日も、雨でも風が強くとも、欠かさず開催されるステーションの運営を支えているのが、「市民リサイクラー」と呼ばれるボランティアの存在です。現場を訪れると、資源を出す際のマナーの良さに驚かされます。丁寧に分別がなされ、紙類もきれいに種類ごとに束ねてあります。

 

和喜田さんにお聞きすると、ボランティアの方が資源を持ち込む市民にアドバイスしてきた積み重ねの成果だそうです。

 

立っているだけで汗が流れるような暑さの中、2人の市民リサイクラーが来場者一人ひとりに声をかけ、寄付品や資源回収の対応をしていた

 

さて、リユースとリサイクル、その違いご存知ですか?

リユース品とは、そのまま再利用できる物品を指し、リサイクル品は一度工場で粉砕などして再加工し、再生原料となる資源のことです。「リユース」と「リサイクル」、カタカナで似た響きなので、混合しやすいのですが、中部リサイクルは、その2つを区別し、迷わずに出せるように、分かりやすく市民に発信しています。

 

新聞折込で2カ月に一度発行しているステーションの利用ガイド。リユース品とリサイクル資源の出し方を丁寧に記載している

 

利用ガイドのチラシでは、リユース品の寄付方法について、本や衣類・布類など7つの分類ごとに、出し方と受け付けられるものを説明しています。まだ使えるアイテムを、無駄にせずにスムーズにリユースのラインに乗せるための工夫です。

 

リサイクル資源の出し方の欄では、8つの分類ごとに、出し方や回収できるアイテムに加え、回収後に何にリサイクルされるのか示されています。たとえば、牛乳パックならばトイレットペーパーになる、ガラスびんならばもう一度粉砕してガラスの原料になるなど、どんなものに生まれ変わるのかイメージすることで、出す側も「ごみ」ではなく「資源」として扱おうという意識が育まれるように思います。

 

リユース品を回収する別の試みとして、「チャリティBOX」にも案内していただきました。不用になった衣類やバッグなどを寄付できる常設のBOXです。

 

BOXが置かれた場所は、ナゴヤドームにほど近いショッピングセンターの出入り口付近で、食品トレーや牛乳パックなどのリサイクルコーナーの並びです。人の行き交いが多い場所で、週に3、4回程度回収しないとあふれてしまうほどのモノが寄せられるそうです。

 

イオンモールナゴヤドーム前店に設置された「チャリティBOX」。「リサイクルの前に、リユースを」との一文が目にとまる

 

このBOXに託された物品は、ある場所で販売されます。

寄付品の販売先の一つ、熱田区の「エコロジーセンターRe☆創庫(りそうこ)あつた」を訪ねました。ここは、ステーションやBOXに寄せられた物品を新しい持ち主へと橋渡しする「チャリティーショップ」です。中部リサイクルは、名古屋市内で4店舗運営しています。

 

2010年にオープンしたエコロジーセンターRe☆創庫あつたは、4店舗のうち一番広い

 

Re☆創庫の特徴は、寄付品の販売だけでなく、資源回収も行っていることです。店外には資源回収エリアが広くとられ、ドライブスルー形式で車で乗り入れて荷物を降ろすことができます。

ここでも、ステーションと同じようにリサイクル品と合わせてリユース品の寄付を受け付けています。

 

同じ衣類でも、状態によってリユース、リサイクルと行き先が違う。リユース品は、そのまま店舗で販売できるもの。リサイクル品は繊維工場に運ばれて海外に古着として輸出するほか、ウエスや反毛の材料となる

 

リユース品として寄付されたものは、食器などは欠けや割れがないか確認し、古着は黄ばみや汚れ、破れなどがないかをチェックして仕分けます。はじかれたモノは、海外でリユース品として再利用されます。

店内に一歩入ると、広々とした空間が広がっていました。

 

天井の高い店内には、アイテムごとに整然と商品が並べられ、すっきりとした印象

 

中部リサイクルが運営するチャリティーショップのうち、あつた店は一番規模が大きく、2015年度は約2万6300人が利用し、8万9千点をリユースし、約1600万円を売り上げ、約495トンの資源回収をしました。

 

1日あたり(週5日開店)でおきかえると、おおよそ110人が訪れ、370点をリユースし、6万円を売り上げ、2トンの資源を回収した計算です。その規模の大きさに驚かされます。

 

子ども服のエリア。きめ細かく仕分けられ、使用感が少なく新品のような洋服も少なくない

 

商品の入れ替えを頻繁に行ったり、客層に合わせた値付けをしたり、セールや手仕事のイベントを企画したりと、さまざまな工夫が、売り上げにつながっているようです。

「和服を蔵出しする日」「休日前20%オフの日」などの企画は、毎月の定例イベントとして定着し、開店前からお客さんが並ぶそう。そのほか、お店のイベントカレンダーには、「毛糸出します」「ガラス食器大提供」「65歳以上半額デー」など、毎日催しがびっしり。お目当てのイベント目掛けて、足を運びたくなる仕掛けがつまっています。

 

取材日は定休日。連休明けから販売が始まる毛糸が並び、ついつい手が伸びる

 

商品の仕分け、値付けやレジなど、店舗の運営を担っているのが、3人のサブマネージャーのほか、約20人の市民リサイクラーです。メンバーは30-50代が中心で、79歳の方が最高齢。さまざまな企画や陳列などの工夫はスタッフが発案し、楽しんでお店を運営している様子が伝わってきます。

 

Re☆創庫あつたのスタッフと事務局長の和喜田さん(左から2人目)。カメラを向けると、自然と笑みがこぼれるチームワークのよさが魅力的

 

スタッフの女性の一人は「リユース品は不思議なものも入ってきて、楽しいんです。掘り出し物を見つけて買っていただき、“もったいない”の橋渡しをできるのがうれしい」とやりがいを話してくれました。

 

カトラリー類も新品同様のアイテムがそろう。お手ごろ価格で買えるので、掘り出し物を探すのが楽しい

 

「まずは、4店舗すべて黒字化し、利益を社会に還元していきたい」と和喜田さんは話します。

 

ところで、読者のみなさんは「チャリティーショップ」という言葉を耳にしたことがありますか? 「リサイクルショップ」が家庭の不用品を買い取るのに対して、チャリティーショップでは寄付として受け付けます。ボランティアが店舗の運営を支え、利益は社会貢献活動に活用されます。

 

欧米などに比べて、日本ではチャリティーショップの形態が広くは浸透しておらず、中部リサイクルなど国内でチャリティーショップを運営する6団体が昨年12月に「日本チャリティーショップ・ネットワーク」を立ち上げました。チャリティーショップの認知度を高め、リユースや寄付の文化を広く発信していこうとしています。

 

日本チャリティーショップ・ネットワークのリーフレット。チャリティーショップの仕組みや、全国のチャリティーショップが紹介されている

 

和喜田さんは、こう言います。「全国のネットワークを通じて、各地域でチャリティーショップをつくりたい人を応援したい。チャリティーショップが不用品を処理する選択肢のひとつになってほしい」

 

資源回収からリユース品の橋渡しまで、市民や地域団体、全国の関連団体と手を携え、エコの輪を広げていく中部リサイクルの環境活動。同じ環境活動にかかわるNPOの大先輩として、多くの学びをいただきました。

Information

中部リサイクル運動市民の会

http://www.es-net.jp/

日本チャリティーショップ・ネットワーク

http://charityshop.jp/

森ノオトはセブン-イレブン記念財団の助成を受け、アップサイクルのファクトリーづくりに取り組みます。

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この記事を書いた人
梶田亜由美編集長/ライター
2016年から森ノオト事務局に加わり、AppliQuéの立ち上げに携わる。産休、育休を経て復帰し、森ノオトやAppliQuéの広報、編集業務を担当。富山出身の元新聞記者。素朴な自然と本のある場所が好き。一男一女の母。
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