麻布に描かれた抱きしめ合う親子の姿。大好きなお母さんにギューっと抱きついたまんまる笑顔の少年。息子をしっかりと包む母親の、少しだけ照れたようにも見える穏やかな笑顔。SNS上で紹介されていた、私の友人親子がモデルとなったその絵に、私の目は釘付けになりました。描いたのは画家の小林憲明さん。小林さんは東日本大震災を契機に、ダキシメルオモイプロジェクトとして、日本全国の様々な境遇の親子の抱きしめ合う姿を描き続け、各地で展覧会を開催しています。
絵のモデルとなった私の友人は、放射能被害を懸念して、4年前に埼玉県から名古屋市へ移住をしました。東京で会社を経営するご主人とは離ればなれで暮らしながら生活しています。友人の、母親として子どもを守りたいという強い意志と行動力に、私はいつも学ばせてもらい刺激を受けています。
友人の絵を通して小林さんのことを知って以来、全国各地で開催されている「ダキシメルオモイ展」の情報をフォローしていた私。写真からでも伝わってくるその作品の温もりに、「いつか実際に作品を観てみたい」と思っていました。願いは叶うものです。なんと今回、横浜で開催されるのです。しかも、森ノオトではおなじみの鴨志田町のカフェ「ウチルカ」で!
鴨志田町の台所、カフェ「ウチルカ」では2013年から毎年2月に震災復興支援イベントを開催しています。2月のカモカモマーケットと同時開催する今年の企画「ダキシメルオモイ展」について、ウチルカの相原あやさんに話を聞きました。
「福島に留まる親子として、小林さんの作品のモデル第1号になったのが私の姉でした。その絵を観てから、いつかウチルカでも展覧会を開催できないかと思っていたんです」(相原さん)
小林さんが関東で展覧会を開催した際に、ご本人に直接お願いをしに行き、今回の展覧会が実現することになったのだそう。相原さん自身も震災後、不安でいっぱいになった横浜のお母さんたちを癒そうとgomoku+というユニットでリフレクソロジーの支援活動を続けてきました。
「震災から6年経って、被災地や原発への関心が薄れてきていたり、もう復興が済んだと思っている人もいる。私だって日常の中でそういったことを思い出す時間が少なくなってきていることは確かです」。相原さんはこう続けます。「反原発!と声高に叫ばなくとも、被災地のためにできることはあると思うんです。また、今横浜では避難してきた子どもたちへのいじめの問題も取り上げられていたりします。この展覧会が、避難した方々の気持ちにオモイを寄せる機会になれば」(相原さん)。
小林さんの作品は、何百枚とモデルの写真撮影をし、丁寧な取材をした上で描かれます。作品の対象にしているのは、福島の親子だけでなく、日本全国の親子。「日本全国に54基もある原発を作らせた、今まで無関心だった自分を含めて大人の責任を感じています。福島だけの問題ではないと、日本に暮らす親子を対象に、それぞれのオモイを実際にお会いしてお話を聞いて描いています」(小林さん)。小林さんは、絵を通じ、大人へ、日本社会へ問題提起をし続けています。
福島に留まる家族、避難した家族、原発で生計を立ててきた家族、無関心な家族……。これまでに取材したのは240家族を超え、110家族の「ダキシメルオモイ」が作品化されてきました。「それぞれの立場や境遇で、分裂し相容れなかった様々な家族が、この活動でつながっていけたらと思っています。また、抱っこされている子どもがいつか大人になり親になった時、再びこの絵を観て親のオモイを感じて欲しい」と、小林さんはこの展示を続けるオモイを話してくれました。
今回はタペストリーのほか、各地の展覧会の写真や、それぞれの家族のオモイ(エピソード)をパネルにして展示する予定。会期中ウチルカは通常営業していますが、絵の観覧のみも大歓迎とのこと。最終日の26日(日)14時からは、小林憲明さんとフリーライターの棚澤明子さんのトークイベントも開催されます。
日本全国の様々な家族と小林さんが紡いできた「ダキシメルオモイ展」。あなたの抱きしめたい大切な人と一緒にぜひ足を運んでみませんか?
「ダキシメルオモイ展」in ウチルカ
日時:2017年2月21日(火)-26日(日) 全日10時-15時
最終日の26日(日)の14時から小林憲明さんと棚澤明子さんによるトークイベントを開催(予約不要)
会場:ウチルカ店内 横浜市青葉区鴨志田町561-1
入場無料
問合せ:045-961-6522(ウチルカ)
ウチルカfacebookページ https://www.facebook.com/hulameshi/
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