ライター仲間の「麻生区にオーガニックなお花農家があるらしいよ」という言葉から始まった今回の取材。化学物質過敏気味の私は、花にはたくさん農薬が使われていると聞いて以来、花のある生活に憧れつつも花屋に行くことすらためらいながら生きてきましたが、そんな花農家さんがあるならぜひ取材に行きたい! と手を挙げたのでした。
その吉垣花園は、以前ライターの羽田麻美さんが取材した「夕やけ山」の開催場所でもあります。羽田さんに初めて吉垣花園へ連れて行ってもらった日、想像とは全く違う花畑にとても驚きました。私の中の花農家のイメージは『オランダのチューリップ畑のように一列に同じ花が並んでいる』というものでしたが、吉垣花園は里山の地形を利用しつつ、いろんな種類の花が植えられており、雑草が生え放題! 土を柔らかくするために、マメ科の植物のカラスノエンドウやスズメノエンドウが生えるのはむしろ大歓迎で、根を深くのばし土をほぐしてくれるイネ科の植物である麦も通路に植えられていました。
吉垣和也さんは3年前までは慣行栽培で花を育てる『普通の』花農家でした。農薬も除草剤も使うことが当たり前、そうしなくては花は育たないと思っていました。結婚して子育てをする中で、夫婦でたくさんの話し合いを重ねて「次世代に胸をはって受け渡せる農業であることを柱にした時に、農薬を使う前提の農業から人にも環境にも安全な農業へと考え方を変えよう」と、無農薬での花作りを決断しました。
そんな時、自然栽培の野菜と出会います。美しくおいしい野菜を目の当たりにし、そんな『安全で究極』な野菜のように花も作れるのではないかと考え、各地の自然栽培農家やオーガニック農家を訪れ、教えを請いました。
オーガニックフラワーを育てると決めたものの、先代のお父様からの激しい反対を受けます。時には大声で怒鳴りあうこともあったそうです。野菜の自然栽培農家の講演を聞きに行ってもらい、説得を重ね、最後には納得してもらいました。
しかし、栽培方法を切り替えてからは苦難の連続。様々な工夫をしながら、いろんな品種を育ててみるも、芽が出なかったり、出荷間際に虫に食べられてしまったりと、収入は落ち込みました。日々、気持ちも落ち込み、毎夜うなされていたと言います。
それでも一度決めたら戻らない意思の強さをもつ和也さんです。周囲の「やっぱり農薬使ったら?」の言葉にも負けず、安全を突き詰めたいと努力を重ねていきます。
マメ科、イネ科の植物の力を借りて土を柔らかくすることや、薬品で土壌消毒をする代わりに太陽熱消毒をすること、花の種類を増やしてみたりと試行錯誤しながら育てているうちに、失敗することも多いけれど、育つ花は小ぶりだが強くなったと実感できるようになりました。根が弱くて溶けてしまっていたものが溶けなくなったり、茎が強く丈夫で長持ちするという変化が表れたのです。反対していたお父様も、この花の変化を見て、今ではオーガニックフラワーに大賛成してくれています。
生産者はもちろんのこと、エンドユーザーである私たちや花市場、花屋で働く人たちにとってもメリットのあるオーガニックフラワー。そして、農薬を減らすことで大地への負担を減らすことができ、子どもたちへ健全な大地を渡すことができる、そんな大きな視点で花作りをしている和也さん。慣行栽培を否定するのではなく、選択肢の一つとしてオーガニックフラワーがあればいいと考えています。
最近では、オーガニックフラワーを扱う花屋が増えてきた、と和也さんは言います。2020年という節目の年に向けてオーガニックな食などに関心が高まる中、オーガニックフラワーにも目を向ける人が増えたのではないか、と和也さんは分析しています。毎週市場を通さない注文が入るようになり、収入も持ち直してきました。これからは、通年オーガニックフラワーを楽しんでもらえるように、少量多品目の花作りをめざしています。
取材のため吉垣花園を訪れて、心の底からあたたかい気持ちになりました。子どもたちへの、エンドユーザーへの、花を扱う全ての人への、そして大地への大きな愛をもって作られる吉垣花園のオーガニックフラワー。ぜひ大切な人へのプレゼントに、大切な自分へのご褒美に手に取ってみてくださいね。
吉垣花園 YOSHIGAKI HANAEN
住所:川崎市麻生区王禅寺
電話: 070-5467-7018(直通)
夕やけ山HP
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