緑のリサイクル 「はまっ子ユーキ」で ふかふかの土づくり
園芸を楽しむために、冬の間の土づくりはとても大切なしごとです。春の種まきシーズン到来の前に、堆肥「はまっ子ユーキ」で土壌改良をしてみませんか?「はまっ子ユーキ」の原材料は、100%横浜市内の樹木の枝や刈草などです。(photo:畑道代)

「緑の資源は緑の大地へ」をコンセプトに作られる「はまっ子ユーキ」。その名前と存在は、4、5年前から知っていましたが、実際に自分で購入したことはありませんでした。わが家の土づくりに加え、もっと多くの方にその存在を知って使ってもらいたいと、はまっ子ユーキの製造・販売を行う緑のリサイクルプラントを見学してきました。 

 

緑のリサイクルプラントは、横浜市旭区の里山ガーデンの入り口を通り過ぎた先の左手にあります。12,000㎡という広い敷地内には、持ち込まれた伐採木等の仮置ヤードと、発酵棟、出来上がった堆肥やチップの貯蔵ヤード、管理棟があります。

 

材料を細かく切って、ふるい分けて、自然発酵させていく。その製造工程はとてもシンプル

 

お話を伺ったのは、緑のリサイクルプラントの運営を担う、横浜市グリーン事業協同組合のリサイクル事業課長、小泉俊一さんです。前任の方から仕事を引き継ぐことになり、ここへ来てからまだ1年未満。それまでは、横浜市の環境創造局などで下水道の仕事をしていたのだそうです。「勤め始めは、緑のことはあまりよくわからなかったけれど、今は仕事が面白い」と、小泉さんは笑顔で話されます。 

 

「お客さんから、ここの製品は品質が良いとよく言われるんです。最近は畜産業の方が、小屋に敷くと牛さん豚さんの居心地が良くなるからと、大量に買っていったり生チップ(乾材チップ)は建築の集成ボードを作るためなど、農家や造園業者以外の方の利用も増えてきています。横浜市内の原材料を使っているという『由来証明』があるのも珍しく、安心して使えると信頼されているんですよ 

 

ちなみに、原料の剪定枝等は、市内18区中の7区青葉、緑、都筑、港北、旭、保土ケ谷、瀬谷で、環境創造局や土木事務所から発注された工事から出るものです。規格外の大きさの材料は18区全部から受け入れているとのこと一昨年の台風被害などでは処理しきれない量の材料が届いたそうです。「だから、本当は横浜市内にここと同じような施設が他にも必要だと思うんです」と、緑のリサイクルのさらなる推進への熱い気持ちを持っていらっしゃいます。 

 

横浜市内全区から出る自然由来の資源が、全て循環できるようになったら素敵だなと私も思いま 

 

取材した日にいらしたスタッフのみなさん。中央が小泉さん

 

緑のリサイクルプラントは横浜市が計画して造った公設の施設です。公募によって横浜市グリーン事業協同組合が運営者として選ばれ、平成17年から事業が始まりました。 

横浜市グリーン事業協同組合は、市内で造園業を営む民間の中小事業者が集まってつくられた組合で、里山ガーデンや動物園の植栽等の維持管理の仕事など共同で受注し、請け負っています。 

 

緑のリサイクルプラントでは、刈草や剪定枝根株(木の根っこの部分を、3〜4カ月かけて自然発酵させた堆肥「はまっ子ユーキ」と、その過程でふるい分けられた発酵チップ商品として販売しています。また伐採された樹木を素材とした生チップやおが粉も販売しています商品の製造にあたっては、横浜市の公園や街路等から持ち込まれたことを示す由来証明の徹底と、受け入れ規定外の材料病気の木やごみの混入が無いように契約した事業者に呼びかけ品質を保っています。これだけ広くて、植物だけで堆肥を作り、由来証明ができる施設は、他の自治体にもあまりないそうで、県外から視察が入ることもあるそうです。 

 

仮置きヤードには、持ち込まれた剪定枝、伐採木、根株、発酵途中の材料などが、種類ごとに分けて積まれている

仮置きヤードでは運ばれてきた材料をもう一度職員の目で余計なものが混ざっていないかを厳しくチェックして選り分けています。品質を保つためには、人の目と手作業が大切なのですね。チェック済みの材料は機械で細かく砕いて、堆肥用チップとして一時外に置かれます。この堆肥用チップの山の端の方は発酵による熱で程よい温かさになるため、大きなカブトムシの幼虫が育っているそうです。 

 

仮置きヤードの向かいにある、広い体育館のような屋根付きの発酵ヤード。中には、細かくふるい分けられた材料が高く積まれた山が静かに並んでいる

発酵ヤードでは、取材のために職員の方が破砕機とふるい分け機を、一度ストップさせて、最初から動かして見せてくれました。 

 

右手のショベルカーで材料を入れると砕かれた材料が吐き出されて溜まっていく。1日に破砕できるのは、およそ3トンだという

 

破砕された材料は、さらにふるい分け機へ。遠心力を利用して、細かなおが粉と、チップが別々に出てくる

 

破砕機が動くとヤード内には樹木の芳香が漂います。植物原料のみで、動物の糞などが混ざっていないため、発酵中のものも特に臭わむしろ空間全体が清浄で心地よいと感じました。 

 

堆肥用のチップは、一度では細かくなりきらないので、ふるい分けの作業を何度か繰り返すことで、最終的に、堆肥と発酵チップという商品になっていきます 

 

発酵ヤードの中に積まれた山には温度計が差し込まれている。発酵始めは40度くらいで、時間が経つごとに順に温度が上がり、最高で80度にも達する

 

「ホースで水をかけて、空気と水分を調整して、ここで8回切り返しをします」。発酵ヤードでの仕事を説明してくれた田村健一さんは、小泉さん同様「この仕事は面白い」と言います。「この仕事に就くまでは、室内でパソコンに向かう作業をして帰るという生活の繰り返しで、外で働く仕事がないかなと思っていたところ、たまたま見つけまして。ここでは、時間をかければ、必ずよい堆肥ができるので」と、品質への誇りを持って、仕事にやりがいを感じている様子がうかがえました。 

 

出来上がった「はまっ子ユーキ」は外の貯蔵ヤードの一番手前へ運ばれる。黒々と、いかにも良い土を作ってくれそう。近くで見ると、ほかほかと温かく湯気がたっている

 

袋詰めされて出荷を待つ「はまっ子ユーキ」1袋10キロで、210円と安いのも嬉しい。ばら積みと言って、袋詰めされていない「はまっ子ユーキ」をトラックなどに自分で必要なだけ積み込むこともできる。ばら積みだとさらに安くて、10キロ58円

 

「はまっ子ユーキ」は袋詰めのもの、ばら積みともに、一般の人でも1袋から購入することができます。チップ類はばら積みのみですが、こちらも10キロ33円で、手頃な価格で手に入ります。ばら積みの場合は管理棟で受付をした後に、トラックや車の重さをはかり、自分で必要な分だけ積んだら、帰りに重さが増えた分の支払いをする仕組みです。市外、県外から、トン単位で買っていく事業者もいるそうです。一般の方の場合は、予約も特に必要ありません。販売時間は平日9:00-17:00の間で、12:00から13:00の間はおやすみです。ズーラシアに遊びに行くついでに買って帰る、なんていうのもありですね。 

 

一方、緑のリサイクルプラントに剪定枝等を持ち込むのは、契約した業者に限られます。横浜市内であっても、一般家庭から出るものは受け付けてないのでご注意ください。 

 

横浜産の堆肥を使ってみよう!

 

さて、最後に「はまっ子ユーキ」の使い方を小泉さんに教えてもらいました 

 

「はまっ子ユーキ」の成分は、窒素1.8%、リン酸0.5%、カリ1.3%、水分61.6%と、植物由来の堆肥なので栄養分は少ないです。 

「『土壌改良剤』として、土5に対して1混ぜるのをおすすめします。たくさん入れすぎると固くなってしまいます。冬の間とか、植え替えをする時に定期的に繰り返し土に混ぜると、通気性や保水性が良くなって、だんだん土がふかふかになっていきます。肥料分が少ないので、必要に応じて肥料を入れてください」とのこと。 

 

「はまっ子ユーキは袋詰めしてからも発酵・熟成が進んでさらに良い堆肥になります。ただ保管の仕方によっては、カビやきのこが生えてきたりするんですね。でもその部分を取り出して、土をかけておけばカビも消えますから、ダメになったと思わないでください。保管するときには、袋から出して、庭のすみに積んでおくとよいです」というアドバイスもいただきました。 

 

公園や街路など、暮らしのそばで育った樹木が、土に還り、また新たな緑が育つ。 

「はまっ子ユーキ」を使うことで、緑のリサイクルの循環の輪に、誰もが加わることができます。私も、わが家と森ノオトの畑や庭で、早速「はまっ子ユーキ」を使っていきたいと思います。 

 

Information

横浜動物の森公園 

緑のリサイクルプラント 

住所:〒241-0001 横浜市旭区上白根町1442-5 

TEL045-958-3028 

FAX045-958-3029 

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この記事を書いた人
梅原昭子コミュニティデザイン事業部マネージャー/ライター
引き算の編集が好きです。できないこと、やりたくないことが多過ぎて消去法で生きています。徒歩半径2キロ圏内くらいでほぼ満ち足りる暮らしへの憧れと、地球上の面白い所どこでもぶらりと行ける軽さとに憧れます。人間よりも植物や動物など異種から好かれる方が格上と思っている節があります。
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