子どもだった頃、私はこどもの国に頻繁に通っていました。季節ごとに移ろう自然にふれることで常に新たな発見や学びがあり、とても楽しかったことを覚えています。当時は、こどもの国で親の付き添いなしで宿泊できるキャンプがあり、職員の方やアルバイトのお兄さんやお姉さんが自然と遊べるプログラムを提供してくれました。
真っ暗闇で懐中電灯を手に生き物を探したり、地べたに寝転んで満天の星を観察したり。ドキドキ怖い気持ちとともに、ワクワクにあふれた体験をして、今でもその時の気持ちを鮮明に思い出します。自然のことを生き生きと楽しく語れる大人たちがかっこよくて、自分もあんなふうになりたいと憧れを抱いたものでした。
一児の母となってからも、娘を連れてよく遊びに行くようになりました。今でもこどもの国を訪れると、都会の中にあって、姿を変えることのない広い自然に癒やされながら、童心になって楽しむことができると感じます。
今回、新たなこどもの国の魅力や、人々、自然との出会いができたらと思い、みどりのボランティアのみなさんからお話を伺いました。
「私達は子ども達に何ができるのか。私達は子ども達に何かを遺してみませんか。」こどもの国 みどりのボランティア
みどりのボランティアは、敷地内の椿の森、畑、ハーブや花、野草園、シイタケの原木の管理から、収穫体験やかぶと虫イベントなどの各種イベントの実施まで、多岐にわたる活動をしています。平均年齢71.9才、約50名の方が登録されています。中には、28年間継続している方も。日・火・木曜の各曜日で月9日間ほどを活動日とし、主な活動場所は、こどもの国のプールやアイススケート場の奥、児童センター周辺になります。
こどもの国に行ったことのある方でも、その場所まで足を踏み入れたことのある方は、そう多くはないのかもしれません。遊具施設の整備された場所とは対照的に、緑深い山林が残され、様々な植物や虫たちを見ることができる場所となっています。その一画に、約600種類7000本にものぼるツバキとサザンカが植樹された「椿の森」、ハーブがありサツマイモなどの野菜の収穫体験もできる「畑」、周辺地域では見られなくなってしまった多摩丘陵の貴重な植物も残る「野草園」があります。
様々な植物に出会うことができる、静かな山林の景色の中にたたずむと、それだけでとても気持ちのよいものです。同時に、この素晴らしい景観と植物の多様性を維持する活動は、労力のかかるものであると想像できます。
「みどりのボランティアの心得」という紙面の冒頭には、「私達は子ども達に何ができるのか。私達は子ども達に何かを遺してみませんか。」と書いてあります。
5年ほど前にボランティアの代表世話人となった瀬田武久さんは、こども国のみどりのボランティアについてこのように話してくれました。
「現在参加しているボランティアは、ほとんどが定年退職した時間のある人たち。だからといって、健康維持のためにとか、自分のためだけにやるというのはよくないと思うんだよね。私たちはボランティアの心得をつくっていて、何のためにやるのかっていうことを、みんなで共有している。何のためかっていうと、やっぱり子どもたちのためなんだよね」
敷地の管理は外作業となり、暑い夏の日や、寒い冬の日もあり、取材当日のように冷たい雨の日もあります。瀬田さんの言葉では、「植物は待ってくれない」ので、天候が厳しくとも作業しなければならない日もあります。その活動の原動力となっているのが、「子ども達のために」という強い気持ちなのです。
経験や知恵をフル活用。自然や道具、あるものを活かしきり、ワクワク楽しいコトを作り出す
ボランティア活動は様々な年齢の、多様な経歴や動機を持った方が集まるため、活動の統一感や継続性を持たせることは容易ではありません。そこで、みどりのボランティアの運営では、皆が気持ちよく、楽しく活動を継続できるよう、瀬田さんが中心となり、ボランティアの心得や組織、工程表まで整理をしました。ただし、強制はせず、自発性を持ち、楽しく活動できることを重要視しています。「フリー」という担当を設け、やりたい事をやりたい時にできる仕組みを設けているところも、各人が続けられるための工夫だそうです。
取材当日も、雨にも関わらず数名のボランティアの方が活動していました。みなさん、設計、農業、園芸、陶芸と、多様な技能をお持ちです。ボランティアについてお聞きすると、活動についてのお話が次々とあふれ出てきました。
「道具はほとんど中古だけど、なんでもつくれるものが揃っているから、いろんなことができて本当に楽しい」
「わざと雑草をたくさん生やしておく一画をつくったりして。その中で虫を見つけたりすると、こどもがキャッキャして喜ぶんだよ」
「ツバキまつりで販売するツバキの苗の器も、ここにある陶芸窯で焼いて作ったりして。土はこどもの国の土を使い、釉薬もこどもの国でとれる原料で作っている。色々と工夫をして、あるものを活かして作り出すことはとても楽しいよね」
「ここの畑で使っている堆肥も、牧場の牛糞や、落ち葉を使っているんだよ。来週は芋ほりのイベントがあるんだけど、子どもたちがたくさん来て、ここで走り回るんだ」
みなさんが、心からワクワク楽しみながら活動していることが、私にも伝わって来ました。そのワクワクは、ここを訪れた子どもたちにも伝わっていることと思います。「子ども達に何かを遺してみませんか。」それは、この豊かな景観や自然を楽しむための知識、技能はもちろんのこと、ボランティアの皆さんが持ち続けている、「センス・オブ・ワンダー(※)」のスピリットが、子どもたちへと引き継がれていくのだと思いました。
(※)アメリカの生物学者で環境活動家のレイチェル・カーソンは、子ども時代に感じることができる「神秘さや不思議さに目を見はる感性」を「センス・オブ・ワンダー」と表現し、その力をもった人は、「生活のなかで苦しみや心配ごとにであったとしても、かならずや、内面的な満足感と、生きていることへの新たなよろこびへ通ずる小道を見つけだすことができると信じます。 」と語っています。(『センス・オブ・ワンダー』(レイチェルカーソン著、新潮社)より)
こどもの国と来園者、自然とのふれあいでつなぐボランティア
現在こどもの国の園長を務める田村悟さんに、こどもの国のボランティア活動についてお聞きしました。
「こどもの国には、『みどりのボランティア』以外に、自然に関する調査、自然保護区の整備等に関する『自然ボランティア』、工作などの遊びに関する『遊びボランティア』等があります。子どもたちが自然の中で様々な体験をすることは、心身共に健康になるために、とても重要なことだと思います。」
お話をお聞きして、子どもが畑で土に触れたり芋堀りをしたりすることは、自然に触れる第一歩であり、ボランティアのみなさんの活動は、そのふれあいを育むのにとても重要なことなのだと認識しました。そして、こどもの国が、様々なボランティアのみなさんの活動によって支えられていることを知りました。
収穫体験や色々な遊びのイベントに参加をする、自然の楽しみ方を教えてもらう、ボランティア活動に参加してみるなど、ボランティアのみなさんとふれあうことで、こどもの国や自然との遊び方がさらに広がりそうです。
みどりのボランティアが関わるイベントとして、12月~2月のたき火広場、様々なツバキの品種の販売もされる3月のツバキまつりやシイタケを育てる会、6月のジャガイモ掘り、7月の枝豆収穫、10月のサツマイモ掘りなどが予定されています。
私もこどもの国のイベントに参加をして、シイタケを育てたことがありますが、ホダ木(原木)にタネ菌を打ち込んで、シイタケが出てきたときは感動しました。そして、収穫したシイタケはとてもおいしかった!
今回、みどりのボランティアさんを取材させていただいて、私の中にあるワクワクする子ども心が再びくすぐられました。ボランティア活動にも参加してみたいな、なんて考え始めている私でした。
こどもの国(横浜)
住所:横浜市青葉区奈良町700
電話:045-961-2111(代表)
HP: https://www.kodomonokuni.org/
各種イベントについては、ホームページ、駅のポスター、Facebook、構内のイベントカレンダーでお知らせします。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、スケジュールや内容が変更になることもあります。みどりのボランティアの活動は主に、火/木/日ですが、不定期になります。イベントやボランティア活動全般に関するお問い合わせは、代表電話にお電話ください。
この記事は、横浜市青葉区とNPO法人森ノオトとの協働事業「フラワーダイアログあおば」の一環で制作しています。
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