青少年のサードプレイスってどんなとこ?
未就学児と保護者の居場所(地域子育て支援拠点)や、小学生の居場所(放課後キッズクラブ)を利用してきた私は、娘の小学校卒業が近づく現在、中学生以降の子どもの居場所について、とても興味がありました。そして、私の弟が高校生時代に不登校だったこともあり、フリースクールや青少年期の学校以外の居場所についても、ずっと関心を持っていました。
横浜市こども青少年局の、「青少年の地域活動拠点づくり事業」に青葉区で初めて認定されたのが、あおばコミュニティ・テラスです。横浜市内にある7カ所の拠点の一つです。
青少年の地域活動拠点とは、「中・高校生世代を中心とした青少年が気軽に集い、自由に活動する場の提供、仲間や多世代と交流する機会の提供、地域資源を活用した社会参加・職業体験プログラムなどを実施しています」(横浜市こども青少年局HPより抜粋)
「生きづらさ」を感じる中・高校生世代の増加に伴って、「居場所づくり」の必要性が説かれてきました。けれど、不登校やひきこもりに関わらず、この世代は、体と心の成長に伴う「不安定さ」を抱えている年代と言えるのではないでしょうか。
自分自身を振り返ってみると、不安・理不尽・もどかしさ・反発・理想・失望・夢…色んな感情がうずまき、心が大きく動いた時だったなぁと思います。
多感な時期の子どもたちにとって、学校でも家庭でもない、自分らしさを受け入れてくれる場所の存在はとても大切で、そんな場所とつながる子どもたちが増えたらいいなと強く感じながらの取材となりました。
実際の場所は、こんなところです。
どんな人たちがやっているの??
写真に写っているのが、あおばコミュニティ・テラスの運営「NPO法人まちと学校のみらい」メンバーのみなさんと、大学生のお二人。
あおばコミュニティ・テラスには、サポーターとして大学生も多数関わっています。
「NPO法人まちと学校のみらい」は、市ケ尾中学校・市ケ尾高校の生徒による、まちの未来づくり「市ケ尾ユースプロジェクト」(2017-2019)を主催してきました。その後、コロナ禍で活動が制限される中、子どもたちが落ち込んでいる様子を知り、中高生の集まれる場所、自分たちのやりたいことを実現できる場所をつくれたら、と青葉区の青少年の地域活動拠点づくり事業に応募して採択され、あおばコミュニティ・テラスを開きました。
「学校以外の生きた学びの場が必要」だと考えるメンバーが集まって運営しています。
あおばコミュニティ・テラスが考える居場所づくりとは
1.生きた学びの場の提供
あおば未来プロジェクトは、中高生がチームをつくり、まちの地域課題を見つけ、その解決策を考える年間プロジェクトです。サポートには大学生が付きます。このプロジェクトを通して、自分たちであらゆることに挑戦し、経験を積むことが生きた学びとなるのです。「生きた学びとは、正解を求める学びではないのです。先回りしない、一緒に考えることを大切にしています。」と竹原さん。
大学生の川村さんは、高校生時代にまちづくりに関わった経験から、現在は地域創生について学んでいるそう。学習支援ボランティアとしても活動しています。取材の日は、偶然、友人の鈴木さんを紹介したいと、一緒にあおばコミュニティ・テラスを訪れていました。鈴木さんも、高校生の時、出身の福島県で手話をテーマにした地域での場所づくりプロジェクトを実践していた人。
「高校時代に、自分を認めてくれる大人がいたことで、活動できたし、自分の居場所を見つけた」と鈴木さん。川村さんも「誰かの役に立つことで、幸せ感を感じる」と答えてくれました。
「こうした中・高校生時代に、学校以外の場所で、自分で企画して実行するという経験をした大学生サポーターの存在が、年代の近い中高生にとって、ちょっと先の未来が想像できる、憧れの連鎖を生んでいます」と竹原さんは話します。
そんな大学生と中高生がつながれる場所でもあるのです。
2.子どもたちが自分でつくる空間、育っていく場所
「大人が道筋を立てて、場所づくりをすることは簡単。あえて、それをせず、時間はかかってもいいから、子どもたち自身がこの場所をつくることを大切にしています」と葉石さん。ルールがないのも、この場所の特徴です。
おもしろいなと思ったのが、「この場所を知ってもらうためには?」を子どもたちが考え、実際に広報活動やイベント企画(写真の打ち水企画など)をしているということ。
やりたいことがある時は、まず、「なぜやるのか」をプレゼンしてもらうそう。自分のやりたいことを実現するために必要な、「何のために、どうやるのか」を周囲に理解してもらえるようにプレゼンすることで、主体性を育みます。
「中高生は親と離れて自分の世界をつくっていく時期。自分でやって気づくのが大事。失敗したっていいんです」と竹原さんは話します。
自分たちでやってみて、自分にもできることがあると自信をつける、そのサポートができる大学生と専門家の存在が大きな特徴です。
自分の居場所を自分でつくるという意識は、青少年の居場所ならではだなと感じました。
3.人がつながり、まちとつながる
「場所を開いて、子どもたちがまちとつながることを大切にしています。まちとつながることは、多様な大人とつながること、自分の暮らす地域社会とつながること、地元で自己実現できること。そのことが、今後の子どもたちの進路であったり、目指す未来につながるきっかけになると考えています」と葉石さん。
「この場所をつくったことで、つながった人たちがいます」と話す竹原さんは、木の工房や隣の楽器屋さん、農家さん、地元の商店会や企業などを挙げてくれました。これまでにやってきた活動を、「場所」を持つことでさらに広げ、関わる大人を増やしていきたいと考えています。
4.テラスという名前に込めた思い
名前は公募しました。テラスという言葉に込めたのは、開放的で、交流が生まれ、外と内をつなぐゆるやかな空間となるように。そして、ふらりと訪れた人を優しく「照らす」場所となるようにという思いです。
あおばコミュニティ・テラスのこれから
オープンから2年、場所運営の難しさも抱えています。歩き始めたばかりであるため、まだまだ地域で知られていないこと、運営に関わる人員の問題、場所を運営する経費の問題など、どこの場所づくりにも共通の課題だと思います。
「まずは、あおば未来プロジェクトを中心に動いてきましたが、今後は、誰でもふらっと立ち寄れる一般利用に力を入れていき、地域の多世代がつながる場所にしていきたい」と武智さん。「この場所の趣旨に賛同して、空いている時間帯に場所を利用してくれる大人、この場所の応援者も募集中です」と葉石さんも話してくれました。
どんな場所にしていったらよいか、何をしたら知ってもらえるか、それを関わる子どもたちと一緒に考え、一歩ずつ進んでいるところです。
あおばコミュニティ・テラスは、思春期の子どもをもつ保護者の語り場「思春期お茶の間会」(隔月第2水曜開催。次回は2023年1月11日)、中高生や保護者のなんでも相談所「えんがわ相談」(月・水16~18時。予約不要)も実施しています。
今回の取材を通して、中・高校生時代の子どもたちに必要なこと、が少し見えた気がしました。親から独立していく過程において、この世代をどう過ごすかは、その子の人生において、とても重要な時間なのだと思います。
「支援」とは、一方的に何かを与えるのではなく、寄り添って、その子が自分で立つことを応援すること。導くというよりは、きっかけをつくり、その子が自分で発見したり気づいたりすることを助けること。
自分の子どもに対しても、最終的な目標は「一人で立って歩けること=自立」です。
ただ、一人で歩くというのは誰かを頼らずということではなく、必要な時に上手に人に頼る、人の力を借りることも、とても大事ですよね。
新しいことに挑戦する力を若者は持っていて、それが社会を動かしたり、イノベーションを生み出しています。中高生が新たな挑戦をするに当たっては、子どもたちの持つ力を信じて、応援する大人の存在が必要です。
あおばコミュニティ・テラスには、「与える」という一方的な関係ではなく、「共創」共に創る関係性を大切にする大学生と大人がいました。
多くの中高生に知ってもらいたいし、みんなでこの場所を応援していけたらと思います。
未就学児や小学生、大人が参加できるイベントも開催されていますので、イベントの時でも、通常開館時でも、ぜひ一度訪れてみてください。
*本記事は、独立行政法人福祉医療機構の<WAM助成2022>として実施した取材記事です。
あおばコミュニティ・テラス
〒225-0024
横浜市青葉区市ケ尾町 1153-2
ライオンズプラザ市ケ尾 201(フリースペース)
横浜市青葉区市ケ尾町 1153-3
第2カブラキビル 301(ワークスペース・相談室)
ホームページ:https://aobact.com/
電話番号:045-500-9254
メールアドレス:info@aobact.com
開館時間:月曜日15:00~20:00 水曜日15:00~20:00 土曜日13:00~18:00
※年末年始・祝祭日は閉館
◆えんがわ相談(月・水 16~18時・予約不要)
中高生や保護者のなんでも相談所
◆思春期お茶の間会(隔月第2水曜開催)
思春期の子どもをもつ保護者の語り場
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