行ってみた人:梅原昭子、松井ともこ、松尾圭威子、横尾佳子
私が初めて「チャコ村」を訪れたのは4年前。
地域の包括支援センター職員さんが「ここは、将来すごい所になるよ〜」とニヤニヤ顔で話したのがきっかけです。生まれも育ちも神奈川県で「田舎」「帰省」という言葉に縁のなかった私は、創設者(なんて仰々しい言葉は似合わないけれど)のチャコばあちゃんとこの村に、憧れに似た気持ちを持ちました。
チャコ村の名前の由来は、運営者・菊島景子さんのおばあちゃんの愛称「チャコ」(故・小泉ヒサさん)。
チャコさんが、農作業の合間に休んだり野菜を売ったりする小屋で、通りかかる人々を分け隔てなく招き入れては一緒にお茶を楽しんでいた場所を、菊島さんが引き継ぎ2017年に開村しました。
チャコさん亡き後も地域の交流場として無料で解放しており、現在は都筑区の「子どものあんしん居場所マップ」にも掲載されています。
私達が訪れた時は、まだ爽やかな風が吹く6月初めでした。少し早めに到着したら、開村日のはずなのに小屋には誰もいません。
「あれっ?」と裏の畑に回ってみると……いたいた!第一村人発見!
代表の菊島さんほか数人が、畑に何やら(※胡麻だったそうです)種を蒔いていました。
それならば、と私はそのまま隣の場所の雑草取りを担当することにしました。
不思議なのですが、出会って数分の人達と草をブチブチ抜きながら話しているうちに、気付いたら今まで他人にはほとんど話したことのない、「超プライベート」な話をしている自分がいました。
んん?距離感がおかしいぞ?と思いつつも、気づけばすっかり私も村民化。
後から到着した森ノオトメンバー曰く「馴染み過ぎていて気付かなかった」そうですが、いえいえ私まだ、来訪2回目でございます。
お茶を飲みながら、地域のコミュニティについてちょっと真面目に語る時間がありました。
チャコ村の運営費は、社会福祉協議会の居場所事業としての助成金+野菜の売上と、持ち寄りで回っているとのこと。
人件費ゼロ、全てボランティアができる範囲で運営し、後は周りを積極的に巻き込みつつやっていく。
自由さを大切にしたいという、菊島さんの思いが伝わってきました。
話は、子どもの居場所についてへと深まります。
菊島さんは言います。
「子ども達の世界には、大人が口出ししないようにしている。その方が結局うまくいくから。関与はしない。気にかけ目にかけている。子ども達への信頼は手放さない。
託児所ではないから、来たい時に来たい子が来て、したいことをすればいい。
ここで好きにしながら、ゆっくり自分を取り戻していってくれたらいい。まぁそれはそれとして、とりあえず今日は同じ釜の飯を食べようよ」。
「子ども食堂に行けない子もいる。用意された場所に『さぁいらっしゃい!』と看板が立っていても、そこには行けない子がいる」。
それは、決して子ども食堂自体を否定しているのではなく。ただ、こんな場所も必要なのだと、私自身は受け止めました。
「こうして何気ない営みを共にすることで、結果的に見えない貧困の発見や居場所のない子ども達が救われている」(梅原さん)
ああ、わかるなぁ……。
一人っ子の私は、子どもの頃から団体行動が得意ではありませんでした。
表舞台でワイワイ楽しそうに集まっている人気者グループを見ては、舌打ちしたり。
なのでもし子ども時代にこんな場所があったら、世界がちょっと違っていたかもしれませんね。横で話を聞いていた松尾さんも「一見放っているようでありながら、とても気にかけていて、気にかけてくれる人がいるというのは、安心感につながっていくんだろうなぁと思った」と振り返っていました。
今回、私自身の滞在は2時間ちょいだったのですが、その間にも、スタッフらしきおばさま達・20代の女の子・ママとちびっ子2組、ご近所の常連奥様方が昼食を持ち寄り、大通り越しに青年が手を振り、ちょっと寄ってみたと言って自転車で来た少年、野菜を買いに来た名物おばさん。
たくさんの方たちが入れ代わり立ち代わり、訪れていました。
みんなそれぞれのペースで思い思いにしているのが印象的で、人と人との距離も自由自在、お好きにどうぞの世界です。道路から直接ヒョイっと覗ける敷居の低さも、ポイントなのだと思います。
「一人で黙って座っていても寂しくないような、ここにいていいんだよと思えるような人と人との距離感が程よくて、まわりの人たちがおしゃべりしている中で、気持ちよくお昼寝できそうだな~と思わず横になりたくなりました」(松井さん)
「小屋、畑、ひろばといった場の魅力と人の魅力が合わさり、ついついふらっと寄りたくなる感じ、わかります」(松尾さん)
(取材を終えて)
今回の訪問後、この記事を書きながら「チャコ村って何のカテゴリーなのか」と自分なりに考えてみたのですが、途中から、それって意味のないことだと気づきました。
もちろん、昔に比べて「子どもの居場所」として進化した部分はあるけれど、ここは何かに捉われない、集まる人それぞれの個性が溶け合った、唯一無二の場所。
ここには、共にこの場所を慈しみ愛着を持って育てたその思いが、小屋や広場や畑に宿っている。もしそれに名前を付けてしまったら、途端にその名前に縛られてしまうような気がします。だからチャコ村はチャコ村です、としか言いようがないし、それでいいんだと。
親子や夫婦……たとえ良い関係の家族であっても、がっつり向き合っていると、時に息苦しくなる時があります。
だから、居場所って一つだけじゃない方がいいと思うんです。逃げ場所というか、切り替える場所は必要。大人であれば、家庭、仕事場、知人の集うお店、と自分で作っていくことができると思うのですが、自宅に寛ぐ場所のない子ども達や、そもそもその感覚さえ知らない子ども達にとって、私が今日感じた「自然と自分の話をしてしまった」この場所の空気は、宝物になり得るのでは、と思います。
「いつも顔を出していたのに、最近来ないね?」とか、
「この頃なんだか元気がないみたい」と、傍目八目な意見や知恵がもらえたり、
フラッと行ってちょっと話を聞いてもらえる場所が近所にあったなら。
きっと子ども時代も子育て期も歳を取っても、生きていきやすいよなぁ〜と思うのです。
一緒に行ったチーム「五感トランポリン」のライター達も、それぞれの子ども時代に思いを馳せつつ、心地よさに身をゆだねているようでした。
みんなde取材。さて次はどこへ参りましょうか。
チャコ村
住所:横浜市都筑区東山田町1681(中原街道「徳持」交差点近く)
電話:090-2446-4089
開村:火・木・土曜日 9:00〜14:00
Facebook https://www.facebook.com/p/チャコ村-100064470258263/
https://instagram.com/chakomura_?igshid=OGQ5ZDc2ODk2ZA==
▼「五感トランポリンチーム」1本目のコミュニティ訪問記事はこちら
▼2019年取材時の森ノオト記事はこちら
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