「森ノオト編集部・五感トランポリン」がゆく! まちのベンチに座ってみた
散歩や買い物、仕事の途中で、ちょっと座りたいと思った時に、ちょうどいいベンチがあったらうれしいですよね。調べてみると、誰かが誰かのことを思って設置した、まちなかのベンチはたくさんあるみたいだぞ?ということで、「森ノオト編集部・五感トランポリン」メンバーで実際に行って、見て、座ってきました。

まちにはベンチが必要だ

恒例となってきた、「五感トランポリン」チームのお出かけ取材企画。

 

第3弾は、彼岸を過ぎて秋風を感じるようになった9月某日に行いました。参加メンバーは梅原昭子、日影愛、松尾圭威子、永田由衣の4人です。調査の結果、最も気になるエリア、東急田園都市線「藤が丘駅周辺」を探訪すべく、藤が丘公園の入り口で待ち合わせました。

ここは花壇の縁。ベンチではありませんが座りやすい!公園にお散歩をしにくる、かわいい園児が目の前を通ったりするので心が和みます。愛護会の方々が手入れしているお花を傷つけないように浅めに腰かけるべし

実は、藤が丘駅周辺には、住民が設置したベンチが2種類あります。一つは、以前ご紹介したことのある、やもと農塾の工藤昇さんが中心となって企画した、お花箱付きのベンチです。

 

坂道の多いまち、高齢になった母親と接する中で、「まちにはベンチが必要だ!」と思った工藤さん。柿の木台地区の自治会等に働きかけて企画を練り、横浜市からの助成を受けられることになりました。2015年から2017年の3年間で、合計130個設置されたベンチは、多くの人々に親しまれています。

中でも、医薬神社近くのお墓(黄泉の園)の前にあるベンチの長さは圧巻

ここのベンチは、周囲がコンクリートに囲まれていて日陰がないのが残念。ですが、お花や柿の木を挟んで、適度な距離感で話ができて心地良かったです。壁の傾斜に合わせて木材がぴったりカットされているなど手が込んでいます。座るだけでなく、テーブルや簡易ベッドとしても使えそう。近所に住んでいたらヘビーユーザーになっていたかもしれません。

 

「ベンチって、使い方の自由度が高いところに私は心惹かれます。ご飯を食べる、本を読む、休憩する、誰かとおしゃべりをする、考えごとをする、昼寝をする、人を待つなどなど。本当に人それぞれで、ちょっとした居場所にもなる」。

 

と話す松尾圭威子さんは、犬を飼うようになってから、公園のベンチに座っている人がいると犬が寄っていくので、知らない方とも自然と話をする機会が増えたそうです。

 

 

だれでもどうぞ「みんなのいす」

さて、もう一つは、谷本連合自治会と、谷本地区社会福祉協議会が設置した「みんなのいす」です。ネット上に情報がほぼないため、どこにあるのか地域の人しか知らない。そこが、今回、探訪したいと思った大きな理由でした。

 

以前タウン誌で紹介されていた際に、「どうぞの椅子」だと記憶していたのですが、諸事情あって、「みんなのいす」になったそう。

 

「みんなのいす」もまた、「高齢化が進む、坂道の多いまちにぜひとも必要だ!」という熱い思いから住民の手で設置されたものです。もちろん、高齢者に限らず誰でも座れます。現在、3カ所にあるうちの一つを、チームメンバーの松井ともこさんが、「車で通りがかる時に気になっていた」と情報をくれていたので、まずはそこへ向かいました。

場所は、藤が丘駅南口の坂を登り、HIBIKI PIANOのあるマンションを通りすぎた少し先にあるドラッグストア、クリエイト前。この手作りの看板がとても可愛い。「みんなのいす だれでもどうぞ」の一言があるだけで、ほんとうに座りやすい!

私たちが訪ねた時、すぐ近くで道路工事をしており、その警備員さんが「たまたまここにあったから」と休憩していました。その寛いだ姿が素敵で写真を撮影したかったのですが断られてしまい残念。そして、私たちが来たために、すっと立って譲ってくれて、休憩の邪魔をしてしまったのも申し訳なかったです。しかし気を取り直して、みんなで座り心地を確かめます。

大人3人くらいが、座ったり、立ったり、すれ違うのに、ちょうどよい空間。階段を登ると福祉施設の入った建物と、クリエイトがあります

 

坂道の途中のため、元々の地面に少し傾斜があり、高さ調節をするためにブロックが置かれていました。しかし、これがやや高すぎ?!座っていると、なんとなく逆方向(向かって左側)に傾いてしまうのと、座面が高くて爪先立ち状態になります。座るのにベストなポジションは向かって左側。背の高い人は右側でもよいかも?と座り心地を検証

 

階段の上から見るとこんな景色です。緑を背景に、人がちょっと溜まる空間があるだけで、まちに、ゆとりと、やさしさ、そして遊び心を感じます

さて、ひとしきり座ったり眺めたりした後で、二つ目の「みんなのいす」に向かいます。梅が丘交差点から谷本小に向かう急坂の途中。一般の方の家の敷地内にあると聞いていたので、みんなでキョロキョロしながら坂を登ると、ありました!

「あら、お久しぶりー」「まあ、お元気ですか?」などと会話がうまれそうな雰囲気

 

樹木があると絵になります。椅子もどっしりとした立派な造りで体格の良い方もゆったり座れます

それにしても、この坂道の傾斜はなかなかのもの。登山道に時々あるような綱や鎖が欲しい……と思うような箇所もあり、住んでいる人たちの、そもそもの足腰のタフさに驚くほどです。

 

法律上、道路にはベンチを置くことができません。一見メルヘンチックでおしゃれな「みんなのいす」ですが、この急な坂道のどこかに絶対に置こう!置くのだ!私有地ならOKだから!という並々ならぬ熱意を感じるようでした。

 

坂道ということは、当然、いすも合わせて傾斜しています。座ってみると、やはりあらら?と傾いて、テーマパークにある、錯覚を利用したアトラクションを体験しているような気分に。目の前がバス通りなので、通りすぎるバスの中のお客さんに手を振ってみたりして、私たちは、気楽な訪問者の立場から、しばしの滞在を楽しみました。

 

 

心地よいベンチを求めて

さて、最後、三つ目の「みんなのいす」の場所が、電話の説明ではどうにも分からなかったため、直接聞きに行こうと、谷本地区社会福祉協議会会長の矢野さんのお宅へ。

急な訪問でもあたたかく迎えてくださった矢野宣子(ふさこ)さん

矢野さんは、長く民生委員を勤めて、現在は、谷本地区社会福祉協議会の会長として、地区の福祉保健計画に基づき、さまざまな取り組みをされています。「みんなのいす」の設置は2020年から始まり、現在も推進中。連合町内会に属する5地区(藤が丘一丁目町内会、藤が丘二丁目A自治会、藤が丘二丁目B自治会、千草台自治会、梅が丘自治会)に一つずつ、設置したいと思っているそうです。

 

「若い人たちが、『みんなのいす』に興味を持ってくれるのがうれしい。みんなキラキラして見えるわ!」

 

と喜んでくださる矢野さんが、私たち以上に熱量高くキラキラ光って眩しい……!
「この地域のことなら何でも聞いて」と、まちの人のために動くことを厭わない、その熱意や行動に、こちらがエンパワーされました。

どこだどこだ?とGoogleマップをみながら教えてもらった三つ目の「みんなのいす」は、青葉自動車学校を通りすぎたら北に進み、信号を右に入った少し先にある、畑の一角にありました

ここは坂道ではなく平坦な道沿いで、背景には長閑な田園風景が広がっています。谷本小学校の子どもたちにも人気の場所だとか。欲を言えば、ベンチの少し手前に一本の樹木があったなら……、暑さや日差しを和らげ、目にも美しく、さらに居心地がよくなりそうでした。

 

秋の日差しを浴びながら、やっぱり、「ベンチは木陰とセットがいいね!」という勝手な結論(?)に達し、ベンチを巡る小さな旅を終えました。

 

 

今回、事前調査によって、青葉区内外に住民が設置したベンチがあることがわかり、シリーズ化したら面白いねという話も出ています。

 

わがまちにも、ステキなベンチがあるよ!という情報があれば、ぜひお寄せください。

Information

・ステキなベンチの情報があれば問い合わせフォームから、編集部宛にお寄せください

森ノオト問い合わせフォーム

 

・「お花箱ベンチ」について

「横浜緑アップ計画」地域緑のまちづくり事業レポート

https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/midori-koen/midori_up/3ryokuka/chiikimidori/ryokuka/kakinokidaikeikaku.files/kakinokidai.pdf

 

谷本地区の地域保健福祉計画(※みんなのいすの情報は載っていません)

https://www.city.yokohama.lg.jp/aoba/kurashi/fukushi_kaigo/chiikifukushi/fukushi-plan/keikaku.files/0281_20220215.pdf

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この記事を書いた人
梅原昭子ライター
引き算の編集が好きです。できないこと、やりたくないことが多過ぎて消去法で生きています。徒歩半径2キロ圏内くらいでほぼ満ち足りる暮らしへの憧れと、地球上の面白い所どこでもぶらりと行ける軽さとに憧れます。人間よりも植物や動物など異種から好かれる方が格上と思っている節があります。
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