すべては「学んでみるか」から始まった!絵本と仲間と歩んだ「お話宅配ぷちぷちグー」の10年 ~地域デビューは「学び」から~
青葉台地域ケアプラザを拠点に活動する、絵本の読み聞かせグループ「お話宅配ぷちぷちグー」のみなさん。今年結成10周年を迎えました。11月26日(日)の10周年記念イベントの練習にお邪魔して事務局長の内野敏行さんにお話を伺いました。10年続く地域活動のきっかけは意外な一言でした。

ある日、携帯に懐かしい名前の方から着信がありました。

私が10年前に横浜市青葉区地域振興課で生涯学習事業を担当していた時、とてもお世話になったボランティアの方からのお電話でした。かけ直すと「出口さん!元気?今度梅が丘の老人会でイベントをやるから、よかったら見に来てよ!」と懐かしい声が。その声の主は「絵本の読み語り育成・実践講座」を受講してくれていた内野敏行さんでした。

数年ぶりにご連絡をいただいたので、お会いして講座受講後のお話を伺うことにしました。

私にとっては区役所の事業を実施した、その後の展開を知る貴重な機会になりました。

 

当時私は区役所職員として「絵本の読み語り育成・実践講座」という講座を運営委員(実行委員)の皆さんと開催していて、その講座を内野さんが受講してくれたことが出会いのきっかけでした。

絵本の読み聞かせの技術を学び、その力を地域で活かしていこう!という趣旨の講座で、受講後は地域で発表の場を開拓して色んな人とつながっていきましょう、というねらいがありました。

2012年度の講座終了後に受講生さんたちが講座終了後に20名ほど集まり「お話宅配ぷちぷちグー」という読み聞かせグループが発足。その中心となってくださったのが内野さんでした。「ぷちぷちグー」は講師の礒田禎子さんが紹介された『うたうしじみ』という絵本に出てくる、しじみが砂を吐き出す時に出るかわいい音です。

 

当時から「代表という言葉は嫌いなんだよ。事務局長ということならやらせてもらう」と、打ち合わせ場所の確保や進行、議事録づくりや外部との交渉など、自主活動グループがつまずきがちな裏方事務を率先してやってくれました。そこから10年。内野さんは今も変わらず事務局長として活躍されています。

 

結成当初20名いたメンバーは8名になり、小学校や幼稚園、保育園での読み聞かせを中心に、山内図書館の夏のおはなし祭りなどの地域イベントにも参加してきました。絵本の読み聞かせだけでなく、人形劇や紙芝居、映像(プロジェクター)と音楽と組み合わせた読み聞かせなど、表現の幅も広がっているそうです。内野さんは言います。「自分たちがまずは楽しまないとね!」

絵本だけでなく紙芝居も得意な「お話宅配ぷちぷちグー」の皆さん。なんとこの紙芝居は地元青葉区の民話を題材にしたオリジナル紙芝居で、全ての絵を写真の稲葉裕子さんが描かれたそう

10年前、内野さんは長年勤めたお仕事の定年を迎えたばかりで、次に何をしようかなと考えていた時、妻から「孫には絵本の読み聞かせぐらいしてあげたら?」と言われて講座の受講を決めました。定年後に何をしようか、と考える男性の中でも「地域活動」を選択肢に入れる方は当時まれで、区役所で実施していた講座の9割以上の参加者が女性でした。内野さんも「まさかこんなに長く続くと思わなかったよ」と笑います。

久しぶりに会ってお話した内野さんは変わらずお元気で、一度聞いたら忘れない特徴のある声もそのまま!

絵本で和尚さんの役をやらせたら内野さんの右に出る者はいない!と思っていた私は、今も変わらない内野さんの温かくユーモアのある雰囲気に触れ、本当にうれしくて当時を思い出してじーんとしてしまいました。

 

コロナで止まっていた活動も少しずつ再開し「お話宅配ぷちぷちグー」の皆さんは普段の活動拠点である青葉台地域ケアプラザで11月26日(日)に記念イベントを開催します。

「おはなし宅配ぷちぷちグー」の活動10周年記念お話し会のチラシ。読み聞かせ、紙芝居、音楽とのコラボ、恩師である礒田禎子先生のゲスト出演など楽しい演出がいっぱいです。内野さんの和尚さんの役をぜひ聞いてほしい!

お話を伺ったこの日も、皆さん10周年記念お話し会の練習に余念がありませんでした。

それぞれ本番で読む絵本の読み方についてアドバイスをし合ったり、音楽をつけるなどの演出についてアイデアを出し合ったり、なんてクリエイティブで信頼感のあるやりとりなんだろう。皆さんがこの10年間に積み重ねてきた時間に思いを馳せ、当時区役所で講座の企画や運営について打ち合わせをしていた時の風景がよみがえりました。

紙芝居「たべられたやまんば」の練習風景。小僧役の吉村さん(一番右)の声のかわいらしさに、みんな「小僧役と言えば吉村さんだよね」と話していた

内野さんは、先月開催された青葉区梅が丘にある老人会「梅和会」の50周年イベントにも企画・運営として携わられたとのことで、その時のお話もしてくださいました。ともすると記念品を用意してそれで終わり、ということもあり得る流れだったそうですが、内野さんは「せっかくだから人が集まることをしましょう!」と中心になって企画を進められたそうです。声をかけて関わってくれたのは老人会の同好会グループや外部の2団体、イベント当日はなんと100名(うち子ども会39名)を超える人が参加してくれたとか。

 

「団体どうしで協力し合える仲間がいる地域が素晴らしいんだよ。地域の子どもたちとの触れ合いや平均年齢80台のじいちゃん・ばあちゃんがわれを忘れて楽しむのが良いんだよ」と内野さんは言います。

 

「出演依頼当初は戸惑いも見られたけど、準備が進むにつれてやる気満々、結局やってよかったと言われたんだよ。本当にやってよかったよ」。きっと、話し合いや実際の準備の際には誰よりも動いて忙しい時間を過ごされたと思います。活躍のフィールドがどんどん広がる内野さん。今度お会いする時はどんなお話が聞けるのか楽しみになりました。

 

活動10年を迎えて内野さんはこう言います。

「当初目標にしていた10年を迎えて新たな目標は決めていないけど、これからもゆったりと肩ひじ張ることなく地域社会に溶け込んで活動していきたいと考えてるよ。何てったって、素敵なメンバーと一緒だもん」。

張り切り過ぎず、手抜きもしない。内野さんらしい人や地域との関わり方に改めて触れることができて、私自身の地域活動のヒントをいただいたような気持ちになりました。

 

「おはなし宅配ぷちぷちグー」の皆さんのますますのご活躍を応援しています。

取材の日は8名いるメンバーのうち5名の皆さんで練習されていました。懐かしい再会にお話が弾みました。後列左から、稲葉裕子さん、加藤一郎さん、近藤芙蓉さん。前列左から吉村陽子さん、内野敏行さん

Information

・おはなし宅配ぷちぷちぐー

青葉台地域ケアプラザ(青葉区青葉台2-8-22)を拠点に活動中

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この記事を書いた人
出口ひとみライター
青葉区で社会教育に5年間携わり「人が生き生きとしている町」は自分たちで作れることを実感。その後、故郷富山県のアンテナショップで広報・イベント企画の担当を経て独立。富山と横浜2つの「ジモト」がゆるやかに繋がることが夢。星読み、アート、おにぎりが最近の関心事。一男一女の母。
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