私たちが寄付集めで取り組んだ5つのこと。 法人10周年寄付キャンペーンを終えて、その1
森ノオトが2023年に取り組んだ「法人10周年バースデードネーション」。1年をかけて取り組んだキャンペーンの舞台裏で、私たちがどんなことに取り組んできたのかを振り返ります。今回は、寄付集めにまつわる発信で取り組んだことを5つご紹介します。

森ノオトは2018年からマンスリーサポーター制度を導入して、継続寄付で応援してくださる方を募集してきました。現在では約100名のマンスリーサポーターと約40名のNPO会員に支えられています。
 

今回、10周年寄付キャンペーンは1回限りの単発寄付をお願いし、総額183万5,812円(現金寄付を含む)、約170名もの方々からの寄付が集まりました。ご寄付をいただいた皆さまにあらためてお礼を申し上げるとともに、このチャレンジを通して、私たちが取り組んだことを、同じ志を持つ市民団体や寄付集めにチャレンジする方たちの参考になればと思い、紹介したいと思います。 

 

1.ファンドレイジングのプロによる伴走支援 

振り返ってみると、この寄付キャンペーンへのチャレンジは、2021年から始まっていました。現在の森ノオトの理事の鎌田淳さんは、NPOなどの非営利組織のファンドレイジングの支援のお仕事をしています。理事としての参画とは別に、森ノオトがこれから「メディアを寄付で運営する」ためにこれから何を取り組んだらよいのか、2021年〜2022年にかけて、鎌田さんと毎月1回、ミーティングを行いました。事務局長の私、宇都宮と、編集長の梶田に、鎌田さんは毎月問いを与えます。 

寄付者とのワークショップで集めた付箋を見ながら、森ノオトの価値の言語化に取り組んでいる様子。理事の鎌田淳さん(右)

 

「森ノオトが地域にもたらしている価値ってなんでしょうね?」 

「森ノオトというメディアがあることで、地域や社会はどうよくなっているんでしょうか?」 

 

組織としてのビジョン、ミッションはあるものの、森ノオトがもたらしている「価値」を言葉にしようと思うと、それぞれ「これかな…?」という言葉はあるけど、でも「森ノオトのひとりよがり?」という気持ちにもなり、私も梶田も返答に窮してしまうということが最初の数カ月続きました。森ノオトは貧困や国際協力といった具体的な課題解決型のNPOではないことが、そのあとも、どんな言葉で寄付を訴求していくと良いのか、ずっと私たちの内側にハードルとして抱えていたように思います。そんなところからこのキャンペーンに向けた取り組みがスタートしましたが、鎌田さんとの対話的なやりとりを通して、私たちのやるべきことが少しずつ 具体的になっていきました。また実務を行うスタッフ以外にも、専門家が入ることで森ノオトの活動が価値創造型のNPOであるという立ち位置を理解したり、伝わる言葉の探り方を学びました。またこの間、NPOサポートセンター主催のランディングページの制作と改善ゼミ」複数のスタッフで受講し、HPの寄付ページへの動線の改善につなげることができました 

 

2.寄付者へのインタビュー 

 

鎌田さんからは「組織のコアなスタッフだけで森ノオトの価値の言語化しようとせずに、寄付者や読者など森ノオトの周辺にいる人たちに聞いてみるといいですよ」とアドバイスを受けました。 

 

そこで、私たちが次に取り組んだのが寄付者インタビューでした。 

寄付者インタビュー参加者からは「森ノオトの他のサポーターさんとの交流ができた楽しかった!」と思わぬ効果も

NPO正会員やマンスリーサポーターが参加するFacebookコミュニティページや個別に声をかけ、オンラインで2回の寄付者インタビューを行いました。遠方にお住まいのサポーターさんを中心に、「森ノオトのことを知った経緯」と「森ノオトへ寄付してくださっている理由」を伺いました。長野県や静岡県、滋賀県といった遠方から支えてくれている方々ですが、講演会を通して森ノオトを知ったという方や、元々青葉区近隣に住んでいた方が多く、共通して森ノオトとリアルな接点があったということが、とても印象的でした。 対面でのワークショップも実施しました。ズバリ、「森ノオトの価値ってなんでしょう?」という問いを中心に、世代も性別も違うサポーターさんと一緒になって「森ノオト」のことを話せた!という貴重な時間に。 

 

これまで、取材を通じて地域のさまざまな取り組みを応援してきた森ノオトですが、自団体のことを他の方に語ってもらうということはほとんどしてきませんでした。支援してくださる方の言葉を聞く中で、寄付を集めるアクションへの背中を押してもらいました。

 

3.ファンドレイジングチームの立ち上げ 

 

こうして鎌田さんのアドバイスを受けながら、寄付者と一緒に森ノオトの価値を考えてきた2022年。年末に差し掛かった頃、「2023年は法人設立10周年だね!」ということが事務局会議で話題に上がりました。鎌田さんや理事・監事からは「10周年というのは1回きりだから、何か良い機会にしたほうがいい」という助言も。事務局スタッフで、「……じゃ、じゃあ10周年バースデードネーションにチャレンジしちゃう?!」と、寄付決済プラットフォーム「Syncable」のバースデードネーションキャンペーンのページを2022年の年末に急ピッチでつくりました。 

 

2023年1月。バースデードネーションの目標を150万円に設定して、1 年間のキャンペーンスタート。年間を通じて息切れせずに目標を目指して走り抜けるためには……と私たちが考えたのが「ファンドレイジングチーム」の立ち上げでした。事務局を中心にコアなスタッフだけで組織運営をしてきた時間が長かった私たちですが、2021年から各事業でサポートスタッフが増えて、組織が少し大きくなってきた頃でもありました。事務局長の私宇都宮と編集長の梶田、そして編集スタッフの佐藤沙織さん、SNS担当スタッフの佐藤美加さん、経理スタッフの濱田明日美さんの5名でチームをつくりました。それまでは事務局会議での限られた時間で寄付についても結果と計画を話す体制だったのが、寄付について話し会う時間が格段に増えました。「寄付を集めていくために、今月はどういうことに取り組むか」を毎月1回オンラインでミーティングをし、さまざまな視点を持ち寄って検討、翌月の実践におとしていきました。 

 

SNSでこんな投稿をしたら、直後に寄付が入りました!」 

「他団体の寄付ページ、ストーリーがよく伝わって参考になる」 

「募金箱を置いてみたらどうかな…」 

「毎月の寄付報告をしてみませんか」 

ファンドレイジングチームのミーティングから生まれた「ちょいドネ」というフレーズを使ったSNSの投稿。思いが重くなりがちな寄付の投稿をあえて親しみのある言葉を使ってみました

寄付について考える場が増えることで、新しいアイデアがどんどん生まれるのを実感しました。スタッフ歴の長い私や梶田だけでは、決して生まれなかった発想を一つひとつみんなで形にしてきました。150万円の目標達成までなかなか数字が伸びない時期が半年以上続きましたが、誰か一人ががんばる寄付集めではなく、チームとなって取り組む組織のファンドレイジングの土台ができてきました 

 

 

 4.森ノオトを語るインタビュー企画「note」をはじめました

森ノオトとしては新しいプラットフォームを使っての広報のチャレンジにもなりました

鎌田さんの伴走支援、そして寄付者インタビューから、「ローカルメディアのあるまち」というキーワードが浮かびあがってきました。 

「ローカルメディアのあるまちとないまちでは、どう違うのだろう?」 

「森ノオトがあるって、この地域にとってどんな意味や価値があるのだろう?」 

という問いを、まだまだ探求したいと思い、森ノオトをとりまくさまざまな立ち場の人にインタビューして記事として発信していくことに取り組みました。記事コンテンツのプラットフォーム「note」での「森ノオトのある風景」と題した毎月の連載をスタート。取材先やマルシェの出店者、新旧ライターや、サポートスタッフ、草創期からの会員さん……。その人から森ノオトの活動がどう見えているのか、森ノオトがあることで何か変わったことがある?といった、普段の会話では聞けないような問いを投げかけました。編集スタッフを中心に手分けして取材し、そのたびに珠玉の言葉を持ち帰ってくる体験をさせてもらいました。いろんな立場の人に森ノオトを語ってもらう、新しい広報の挑戦は、これまでの10年で積み上げてきた歴史を、新旧のスタッフで共通の言語で理解していくというプロセスにもなり、内部にも大きな価値をもたらしたように思います。 

 

5.「リアル」なイベント、「リアル」な寄付のお願い 

 

noteの連載がはじまりインタビューを重ねていくなかで、森ノオトのスタッフやライターとの出会いや、森ノオトのイベントに参加したことをきっかけとして、地域の中でつながりができた、という方が多いことを感じました。森ノオトはウェブメディアとして地域の情報発信を続けてきましたが、それだけにとどまらず、コロナ禍以前は、年に100を超えるイベントを行なっていました。地産地消マルシェや子ども服のリユースフリマ、映画上映会、エコDIY、子育てツアー……。コロナ禍以降、数がグッと減っていた対面型のイベントを、もう一度取り戻したい!そして、ウェブを飛び出してリアルな場をつくることで、地域の中でリアルなつながりの一歩をもう一度生み出したい。編集長の梶田のそんな思いを出発点として、年度初めの事業計画からの修正を図りながら、ここもまた急ピッチでリアルなイベントを企画していきました。 

 

7月の子ども服リユースマルシェ、9月のいいかも市、10月の森ノオト同窓会マルシェ、11月のあおばを食べる収穫祭、12月のエコキネマ。 

 

どのイベントも盛況で、リアルな場の持つエネルギーを感じながら、私たちの課題としては、それを寄付とどうつなげていくか。イベントを目的に来場した方に「森ノオトへの寄付」は心理的に遠いのではないか。そう思いながらも、小さなチャレンジを重ねました。寄付箱をイベント受付に設置し、バースデードネーションを控えめながらも広報。寄付箱の設置は、イベントに来場された方へのPRはもちろんですが、私たちスタッフにとっても「私たちは寄付集めをしているんだ!」という視覚的なキーアイテムになり、目の前で寄付してくださる方との直接の会話にも何度も勇気をもらっています。 

森ノオウチで開催したいいかも市で寄付箱を設置。スタッフが寄付箱を持っていると、目の前で寄付をしてくださる方も

リアルなイベントの実施の中で、ファンドレイジング的に一番盛り上がりをつくれたのは、11月23日の「あおばを食べる収穫祭」でした。このころ、森ノオトのSNS等をフォローしてくださっている方は、急に寄付の情報量が増えたと感じたかもしれません。12月末までの残り2カ月となったころ、キャンペーンへの寄付の返礼品として、当日マルシェで使えるクーポンも追加し、全スタッフで寄付のお願いをSNS等で発信。そして、イベントの告知もあわせて、スタッフそれぞれが個別に知り合いに、寄付のお願いをしていきました。11月から12月の2カ月間、内部では週次で個別の声かけ状況や、どんなメッセージを送ったかなどを共有して、発信につなげていました。 

あおばを食べる収穫祭の本部ブース。現金での寄付を本部ブースに持ってきてくださる方も

これまで紹介した寄付集めにまつわる取り組みの4つは、既存の寄付者の声を集め、森ノオトの価値を言語化していくこと、メディアで寄付を発信していくこと。いわばウェブでの発信が軸で、間接的に寄付をお願いする、という方法でした。振り返ってみると、そこはまだ上品に寄付をお願いしていたのだと思います。最終的にはやはり、一人ひとりに「森ノオトを寄付で応援してほしい」と声をかけていくこと。「リアル」に声をかける勇気をふりしぼることが必要だったのだと、振り返っています。 

 

* * * *   *

 

1年をかけて取り組んだ10周年寄付キャンペーン。寄付金額としては、11月のあおばを食べる収穫祭を軸にした、最後の2カ月で寄付額全体の約9割が集まりました。数字的には短期のクラウドファンディングのような結果にはなったものの、スタッフでこの取り組みを振り返った時に、この数年をかけて少しずつ、自分たちが寄付集めをする理由と、森ノオトのつくってきた価値を言葉にしていく作業をしてきたことが、わかりました。私たちは最終的に、リアルな声かけの勇気を持つための準備運動を、時間をかけて取り組んできたんだと思います。 

 

もっと上手に団体の価値を発信して、共感を集め、寄付につなげることのできる団体はたくさんあると思います。でも、自分たちの納得感を持って進めるために必要な時間は団体によって違います。数年かけてきた私たち森ノオトのように、紆余曲折、試行錯誤しながら進めてきた等身大のチャレンジが、これから寄付集めに挑戦する人たちの背中を押せるといいなと願います。 

Information

森ノオトのマンスリーサポーター(月々500円〜)、単発のご寄付を募集しています。 

https://morinooto.jp/donate/ 

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この記事を書いた人
宇都宮南海子事務局長/ライター
元地域新聞記者。エコツーリズムの先進地域である沖縄本島のやんばるエリア出身で、総勢14人の大家族の中で育つ。田園風景が残る横浜市青葉区寺家町へ都会移住し、森ノオトの事務局スタッフとして主に編集部と子育て事業を担当。ワークショップデザイナー、2児の母。
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