


雑木林が残され、広々とした開放感のある奈良山公園。このそばに、横浜市放課後児童クラブの「こどもの国学童クラブ」はあります。東急こどもの国線・こどもの国駅から徒歩数分、目の前にはスーパー三和こどもの国店と、自然と便利さが共存する場所です。
私が取材に訪れたのは、冬休みが明けた1月のある日のことでした。
一人、また一人とビルの3階の学童クラブに帰ってきます。まずは黄色いカバーのついたランドセルを背負った男の子に女の子。2、3年生くらいの子たちが連れ立って。そしてしばらく時間がたつと高学年の子たちも帰ってきました。在籍しているのは、近くの奈良小学校、奈良の丘小学校、モンテッソーリエレメンタリースクールの、1〜6年生25名です。

高学年の男の子は英語の課題に取り組んでいるところ
知らない顔の私たちに視線をやりながら、子どもたちはお母さんくらいの世代の指導員たちと会話を交わしています。まるで家に帰ってきたような、ほぐれた表情です。ランドセルをあけて、行儀良く宿題に取り組んでいる子もいれば、やることを終わらせて畳のコーナーでごろんと寝転んでいる子も。低学年の子たちにとっては、学校でめいっぱいがんばって帰ってきて、ほっとしたい時間帯です。わが子と重ね合わせながら、くつろいでいる子どもの姿に私までほっとしました。

思い思いの遊びでリラックス
プログラムよりも大事にしたいこと
こどもの国学童では、プログラム通りに時間を過ごすことよりも大事にしていることがあります。常勤指導員の加藤陽子さんに話をお聞きしました。
「学校から帰ってきたときの子どもたちの気持ちを一番大事にしたいなと思っています。疲れたからごろんとしたいとか、漫画を読みたいとか。子どもたちの様子を見て、疲れているんだな〜とか、なんかあったかな〜とか思いながら接しています。プログラム最優先だと、その通り進めないといけないので、その時の子どもたちの気持ちに後手後手になってしまいます」
子どもたちがそれぞれにリラックスしているように見えるのは、子どもたちの気持ちを一番大事にしているから。

指導員と楽しそうに語らう子どもたち
「おやつも大体の時間は決めているけど、言葉数が少なかったり、お腹すいたと言っているなら、早めにおやつ食べちゃおう!ってしています。給食をあまり食べられなかった日だってあると思うんです。これも、小規模だからこそできることかなと思います」
子どもたちから「やってみたい」という声が出てきたら、一緒にもりあげて、やりたい気持ちを後押しするように心掛けていると加藤さんは言います。最近の出来事で、こんなことがあったと教えてくれました。畳の部屋ででんぐり返しが突然始まったそうです。「子どもたちがやっていることを危ないからと止めることはできるけど、楽しそうに遊んでいるなら止めなくていいかなと思うんです」と加藤さん。その時は、畳の上に分厚い毛布を2枚引いて、ふかふかにしてあげると、でんぐり返しからさらに発展してケタケタとみんなで笑い合っていたそうです。

原っぱあり、ステージあり、木もお山もある、充実の奈良山公園で思い切り遊ぶのが日課
子どもの心を広げる
社会福祉士と精神保健福祉士の資格を持ち、こどもの国学童ができて1年後に新卒で働き出した加藤さん。心を病んだ方のサポートを学生時代に経験して、「子どもの時に心のキャパを広げて大人になっていくといいんじゃないかな」と感じたのだそう。その考え方が根っこにあり、「異学年の子がいたり、他の学校の子がいたり。障害があったりボーダーの子がいたり。そういうところがいいんですよね」と加藤さんは言います。
「まあいいじゃん!!っていう心の持ちようが大事だと思うんです。一番になりたい人もいるし、そうじゃない子もいる。やりたいことを自分で決めるっていうのは、なかなか難しいし、そうできる人なんてほとんどいない。けど、ここでちょっとでも、大人の一言だったり、下の学年の子の一言だったりが、きっかけになるといいなって思っています。卒業していくときに、自分は自分、というのを持ってもらえたら」

大らかにあたたかくみんなを受け止めてくれる加藤さん
こどもの国学童は、横浜市放課後児童クラブの「桂台学童保育ちびっこの家」に通っていた奈良地区の子どもの保護者らが立ち上げ、2003年から児童の受け入れをスタートしました。横浜市が各小学校に設置している放課後キッズクラブと同じように、横浜市の「放課後児童健全育成事業所」として運営され、キッズクラブとの大きな違いは、過ごす場所が小学校ではなく地域にあることです。通わせている親御さんは、「学校という場所から離れて気持ちを切り替えられる」「異年齢、違う学校の子とお友だちになれて、世界は今いる小学校のクラスだけじゃないと知れる場所」と、地域の学童の魅力を語ります。

「いつでも相談に乗ってくれて、臨機応変に対応してくださる」「やさしくて面倒見がよく、子どもが安心して過ごせる」と保護者から信頼を寄せられているスタッフのみなさん
子にとっても、親にとっても自由度の高い場所
こどもの国学童は、地域運営委員会と保護者会で運営しています。保護者会会長で、2年生と4年生のお子さんが通う吉田美鶴河(みずか)さんにお話を聞きました。「息子は放課後の学童があるから学校にも楽しく通えているのかなと思うくらい、学童に支えられています。『今日学童で何しよう?』と思って、家を出ているんじゃないかな。学校を通過点として、学童に帰ってきているように思います。娘は習い事がある日も、10分でも立ち寄っています。たとえ少しの時間しかいられなかったとしても。そこがあるというのが、ほこらの土台というか。第二の家のような場所ですよね」

週に2日は、時間を決めてゲームをできる日があります。友だちと肩を寄せ合って。まるでお家のように過ごしています
習い事のある子は、学童から自分で習い事に行って戻ってくることもできるのだそう。「子どもにとっては、他の学校の子や異年齢の環境でもまれながらも、今日何をするのか自由に話し合って決められることがとてもよいところです。親にとっては、保護者会の活動はやる気があればイベントをする程度で、時々は集まって小学校の情報交換をしたりと、重すぎないコミュニティに感謝しています」と吉田さんは言います。

取材に訪れた時は、けんだまとこまの検定にチャレンジ中!!
毎月の保護者会では、指導員から子どもたちの様子を聞いたり、運営についての提案をすることもあるそうです。ここで働いて19年の加藤さんをはじめ、ベテランのスタッフばかり。「学童の本質は保護者を支えること。小学生時代って、親子のコミュニケーションが一番豊かにとれる時期かなと思うんですよね。土日にぱっと家族で出かけられる時間の自由さもあるし、貴重な時期です。家族の時間を大事にしてほしい」と加藤さん。保護者会というと負担がある印象があるかもしれませんが、なるべく父母の負担は少なく、指導員でできることはまかなっているそうです。

夏休みや春休み、長期休み中の過ごし方も、映画に行ったり、プールに出かけたりと充実しています。奈良山公園で泥遊びも(撮影:こどもの国学童クラブ)
親の目が少しずつ離れ、社会が広がっていく小学生年代は、子どもにとっても親にとっても山あり谷ありで育ちゆく時期。「やりたい!」も「のんびりしたい」も、どんな気持ちも大事にしてくれる場所。元気いっぱいの日も、子どもが浮かない気持ちのときも、何かあったかな?とそっと見守ってくれるこんな居場所があったら、子育てがもっとやさしくなるように思います。ぜひ一度、のぞいてみてください。

「木登りがしたい」という子がいたら木登りを(撮影:こどもの国学童クラブ)
(クレジット入り以外の写真撮影:齋藤由美子)

こどもの国学童クラブ
住所:横浜市青葉区奈良1-3-2 ビクトリア奈良301
アクセス:東急こどもの国線・こどもの国駅から徒歩2分
HP: https://kodomonokuni-gkd.localinfo.jp/
電話: 045-961-0899
メール:kodomonokuni-gkd@kzd.biglobe.ne.jp
登所したことのある児童:横浜市立奈良小学校、横浜市立奈良の丘小学校、横浜市立若葉台特別支援学校、和光鶴川小学校、玉川学園小学部、モンテッソーリエレメンタリースクール
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