
住む人がいなくなった実家の庭木が季節のうつろいの中で急に勢いを増してどうにかしなくては……と焦っているときにふと目にした「あなたのお庭いっしょにお手入れ!」というチラシ……。お手入れを一緒に教えてくれる植木屋さんがいる!と興味を持ったのが私がすこっぷの活動を知るきっかけでした。

生活クラブカタログに折り込まれていたチラシ
「企業組合プランツヘルパーすこっぷ」は2015年にワーカーズコレクティブとして誕生した花と緑のお助け隊です。男性5名を含む総勢30余名、今年で10周年を迎えます。
すこっぷは、木や生垣の剪定や伐採、草刈り、花壇や庭周りのデザインや設計・施工、庭のDIYのお手伝いなどお庭のことならなんでも相談可能です。横浜市港北区を中心に、メンバーが通える範囲なら対応してくれます。地域の庭や人々のお役に立てる存在になろうと集まった女性たちが中心になって設立した団体で、HPを見れば料金も明快、見積もりは無料です。

すこっぷの皆さん(事務所にて)。右端が古山理事長
そもそも造園関係のお仕事をされていた古山さん。産休・育休から復帰するにあたり二つの課題が浮かび上がりました。この先は以前のように早朝から夜まで長時間の仕事はできないこと。そしてこれまでやってきた大企業での庭木のメンテナンスはどうしても高額になり、ある程度余裕のある層にしかサービスの提供ができず、同様のサービスを同じクオリティでもっと安価で身近な人たちに提供できるのではないかということ。
これらの問題をクリアしようと模索しているときに古山さんが見つけたのが「ワーカーズコレクティブ」という働き方でした。
「単なる雇用ではない、働く側誰もが出資し、経営に参加することができる」「地域を基盤として自分たちが使える価格でサービスを提供する」という働き方です。
「生活クラブ生協のワーカーズコレクティブ支援室のサポートを受け大きなお腹でチラシを配ったり説明会を開いたりして人を募集し、2015年に5名で設立しました」。自宅のリビングを事務所にして、保育園と近くに住むお母さまに家事・育児を手伝ってもらいながらのスタートだったそうです。
「年をとって草むしりが難しくなったり、大きくなってしまった木を1本だけ切りたいといった細かい仕事や、どこに相談すればいいかわからないちょっとしたお困りごとを気軽に相談していただけることを目指してきました。当初は経験者も少ないなか、少しずつ技術と経験を身につけ、インテリア・コーディネーターや図面の描ける設計士などの資格を持つメンバーも入り、現在では庭の設計・施工、デザイン等もできるようになりました」
2019年には法人格も取り、企業や団体相手の仕事や一企業としてのサポートもできるようになったと話します。
大きなきっかけになったのが東京オリンピックの2021年。
花壇のデザインをやってみないかという企業からの話がきて、チーム体制で、生け花をたしなむメンバーをリーダーに臨んだところ、とても好評を得たのです。企業相手の仕事は長期間定期的に受注できるので、安定収入となり、組織の安定につながります。
今では個人邸の仕事と企業向けの仕事が半々くらいにまでなっているのだとか。
企業から依頼された公園の花壇の管理等の仕事をしながらチームワークやリーダー人材の育成、知識や技術の向上を図り、それをまた個人邸のお庭仕事に生かしています。

公園の花壇の手入れ。定期的にやっています
すこっぷでは下は小学生、上は大学生のお子さんがいるママや、定年退職後の世代とさまざまです。「ライフステージによって子育てやWワーク、介護などと共に働き方も変わります。仕事と人のマッチングにもその人の得意分野ややりたいことを生かし喜んでもらえるように工夫します」と古山さん。

木を剪定している様子
利用する方の6~7割は庭仕事が難しくなった高齢者やお子さんが小さくて庭に手をかけられない共働き家庭です。これまでお願いしていた植木屋さんが高齢化で頼めなくなってすこっぷに依頼がくることもよくあるそうです。
庭仕事以外にもゴミの処理やお掃除の相談を受けた場合には関連のワーカーズのグループを紹介するなど地域のサポートのお手伝いもしています。
すこっぷは細やかなニーズにこたえるような講座も開講していて、2020年から冬に「ビギナーのための剪定講座」を事務所のそばの庭で始めました。毎年好評なこの講座を受けて、閑散期に「お客様のところに出向いてそこの木の剪定方法を教える講座」を開催したらどうかというアイデアが生まれたそうです。こうしてできた「出張剪定講座」は、プロから自宅の庭の「この木」に最適なお世話の方法を教えてもらえます。

事務所近くの梅の木。私が伺ったときにも美しく剪定された梅の木が花を咲かせていました
印象的だったのは「高齢化や共働き化を受けて仕事はたくさんある。売り上げも人も数字は順調に増えている。ただ、常に苦労の連続でした」というお言葉でした。
「サービスを利用するお客様にも働く人たちにも、すこっぷとかかわりを持ててよかったと思える喜びの場にしたい」と古山さんは話します。
今度、実家の梅の木の剪定について教えてもらうことになっていて、ワクワクしています。
どうぞよろしくお願いします!

花と緑のお助け隊「すこっぷ」 古山真千子理事長

「企業組合プランツヘルパー すこっぷ」
横浜市港北区大曾根2-5-11-101
電話:070-5454-2841 fax:045-859-9793
e-mail:wcoschop@gmail.com
営業時間 平日10:00~17:00

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