
「地域の子育て中の家庭が孤立せず、助け合い・学び合いながら成長できる環境をつくる。子育てをきっかけに、地域とのつながりを支援したい」――そんな思いから生まれたのが、横浜市青葉区を中心に活動する「男性子育て支援団体Sunday」です。活動日は、その名の通り日曜日。仕事で忙しい父親や共働き家庭でも、無理なく参加できるように工夫されています。
「男性子育て支援団体Sunday」は、以下の3つを主な活動としています。
①Sunday(場所:荏田地域ケアプラザ)・・・地域の子育て世帯のつながりづくりを目的とした活動。
②パパくらぶ PaPaSunday(場所:たまプラーザ地域ケアプラザ)・・・父親の孤立を防ぎ、父親の子育て関連うつの予防を目指す活動。
③仕事と子育ての両立支援・・・キャリアカウンセラーによる相談を通じて、仕事と育児の両立を図る活動。
父親が孤立しない社会をつくりたい――「パパくらぶ PaPaSunday」
団体代表の髙橋さんは、お子さんの誕生をきっかけに1年間の育児休暇を取得し、日々の子育てに奮闘していました。「寝かしつけはパパじゃないとダメでしたね」と笑顔で話します。
しかし、その中で感じたのは、「子育て支援の多くはママ向け」という現実でした。イベントに参加しても支援者はほぼ女性で、父親が本音を話せる場がほとんどなかったと言います。
「悩みを話したくても、異性には言いづらいこともあるんです。 だからこそ、男性が安心して集まれる場所をつくりたかった」と髙橋さんは言います。
その思いから2025年4月に発足したのが、団体の主要な活動の一つである「パパくらぶ PaPaSunday」(以下パパくらぶ)です。父親が一人で悩みを抱え込むことがないように「父同士がほっとつながれる場所」を提供しています。
子育て8年目の母である私自身も子どもが生まれてから保育園に入るまでは、周りに悩みを打ち明けられる人がおらず、孤独を感じることが多くありました。地域交流センターで同世代の子を持つ母親と交流することで、ちょっとした会話が大きな安心につながった経験から、気軽に集まれる場所はとても重要だと感じています。

団体代表の髙橋伸夫さんは、薬剤師として働きながら、Sundayの活動に取り組んでいます
父親が安心して集まれる場所「パパくらぶ」
たまプラーザ地域ケアプラザで毎月日曜日に開催される「パパくらぶ」は、未就学児とその父親が安心して参加できる交流の場です。トランポリンや滑り台、手押し車や三輪車など遊具が並び、子どもたちがのびのびと遊べる空間になっています。
髙橋さんや藤崎さんが見守ってくれているので、子どもたちが遊んでいる間、パパ同士で気軽におしゃべりをしたり、男性のキャリアカウンセラーに相談することもできます。

「パパくらぶ」の様子。父子で遊びながら交流ができます
取材当日は、初参加の方から常連まで5組の父子が集まりました。
代表の髙橋さんや副代表の藤崎さんも、自身の子どもと一緒に遊びながら参加者に声をかけ、あたたかい交流が生まれていました。
最初はお父さんから離れられなかった子どもたちも、時間が経つにつれ、笑顔で走り回っていました。「子どもの成長を間近で感じられて、とてもうれしかった」と話すお父さんの姿が印象的でした。
団体の副代表を務める藤崎さんは、
「育児休暇を取る男性は増えていますが、仕事と育児を両立するロールモデルがまだ少なく、悩みを共有したり共感できる場が少ないのが現状です。だからこそ、パパ同士が安心して話せる場所が大切だと思います」と語ります。

絵本の時間。穏やかな時間が流れます

この日は、桐蔭横浜大学スポーツ科学部の学生二人がボランティアとして参加していました。「最近は子どもと触れ合う機会が少なく、子どもを“面倒”と感じてしまう若者も増えています。そうした傾向が少子化にもつながっていると感じています。だからこそ、大学生や高校生のボランティアを受け入れ、子どもたちと関わる機会をつくることを大切にしています」と藤崎さん

藤崎さんのお仕事は、横浜市会議員です。長年にわたり「地域・まちづくり」や「青葉区の活性化」に力を注ぎ、近年はお子さんの誕生をきっかけに、子育て支援にも積極的に取り組んでいます
キャリアカウンセラーによるキャリア相談も充実
Sundayのもう一つの柱が、キャリアカウンセラーによる「仕事と子育ての両立支援」です。
たまプラーザ地域ケアプラザで開催している「パパくらぶ」には、男性キャリアカウンセラーが常駐しており、「仕事と育児の両立」「育休後のキャリア設計」など、ライフステージに合わせた相談を気軽に行うことができます。
私もお仕事占いカードを使ったキャリア相談を体験しました。子育ての間に一度仕事を離れたことで、これからどう子育てと仕事を両立していけばいいのか、不安に感じていた私にとって、この相談はとてもあたたかい時間でした。気軽に楽しく話しながら、自分の考えや価値観を言語化することで新しい気づきが得られ、心が軽くなる感覚を味わいました。そして何より、カウンセラーの方がどんな言葉も否定せず、やさしく受け止めてくれたことが、大きな安心につながりました。
キャリアへの悩みは、わが家では夫婦であまり話し合えないのですが、母親でも父親でも同じように不安を持つ人が多いことに取材時に気がつきました。父親同士が同じ立場で、悩みを話せる場があることは、とても貴重だと感じました。
「まずは“相談”をきっかけに、いろいろな話ができればと思っています」と藤崎さんは話します。

アートフォーラムあざみ野で行われたSundayによる「産前産後体験ゲームとお仕事占い!」ブースの様子。色々な世代の方が相談に訪れていました。左に写っているのは、キャリアコンサルタントの立花昭彦さん。Sundayのメンバーとして、「パパくらぶ」に常駐されています
地域とつながる多彩なイベント――「Sunday」
Sundayは、父親支援に加えて、地域の子育て世代が気軽に集まり、地域とのつながりを感じられるような場所づくりにも力を入れています。
絵本の読み聞かせ会やパン作り教室など、地域の講師の方々と協力して多彩なイベントを開催しています。
今年10月にアートフォーラムあざみ野で開催されたイベントでは、元アナウンサーで“歌うアナウンサー”としても活躍中の絵本講師YUMINAさんによる「絵本の読み聞かせ」と、キャリアコンサルタントの七山(ななやま)智恵子さんによる「家族のパートナーシップ講座」が行われました。
「絵本の読み聞かせ」 では、YUMINAさんの優しい声に子どもたちは熱心に耳を傾けます。
「上手でなくても良い、淡々とでなくても良い、自由に読んで良い。子どもとのスキンシップの時間を楽しんでほしい」と語るYUMINAさん。親子で絵本の世界を一緒に味わう時間の大切さを改めて感じられる講座でした。
七山さんの「家族のパートナーシップ講座」では、子どもが生まれた後のパートナーとの関係性や自分の価値観を見返すワークが行われ、自分自身を見つめ直すきっかけとなりました。
講師の方々はいずれも、地域で暮らし、地域と関わりながら活動しています。同じ地域で子育てをする仲間がいるという安心を感じられることが、Sundayのイベントの大きな魅力です。
今後も、看護師による「子どものいざという時のホームケア」や「離乳食教室」など、実用的な講座が予定されています。

YUMINAさんの絵本の読み聞かせの様子。優しい声でみんな笑顔になります

キャリアコンサルタントの七山さん。家族のパートナーシップ講座を担当
孤立しない父親、支え合う地域へ
「子育ては『ワンオペ』でも『夫婦ツーオペ』でも限界があります。地域とつながり、周囲の人々と支えながら進めることで、より豊かな子育てができます」と髙橋さん。「地域で子どもを育て、地域とつながれる団体にしていきたい。地域とのつながりを深めていきたい」と力強く語ります。
子育てで孤立しないよう、父親も地域とつながれる社会を目指して「男性子育て支援団体Sunday」は、これからも地域の子育て世代を支え、みんなで助け合える環境づくりを続けていきます。
もし今、一人で悩んでいるお父さんがいたら、ぜひSundayを訪ねてみてください。
きっと、あたたかい仲間と「ほっとできる場所」が待っています。
男性子育て支援団体Sunday
活動拠点:横浜市青葉区・たまプラーザ地域ケアプラザ、荏田地域ケアプラザ
活動日:月1回(日曜日)
今後のイベント
▶︎Sunday(荏田地域ケアプラザ)
・12月6日(土)13:00~14:30 日々のパン 出張パン教室
・1月17日(土)10:30〜12:00 子どものいざという時のHome Care
・3月8日(日)10:30〜12:00 離乳食教室
▶︎パパくらぶ PaPaSunday(たまプラーザ地域ケアプラザ)
毎月第3日曜日 15:00〜16:30
・12月21日、2月15日、3月15日
ホームページ:https://testpapa.my.canva.site/papasunday2024/
Instagram: https://www.instagram.com/papasunday2024/
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