私が隔月刊誌『We』と出会ったのは2011年。東日本大震災と原発事故の後、「あざみ野ぶんぶんプロジェクト」立ち上げのきっかけとなった『ミツバチの羽音と地球の回転』上映会のために奔走していたころのことです。
上映会のチラシを置いてもらうために訪ねたスペースナナの片隅にWe編集部があることを知り、現在編集長となった中村泰子さんと初めてお会いしました。
その後発行されたWeの巻頭に『ミツバチの羽音と地球の回転』の監督、鎌仲ひとみさんのインタビューがあったことで『We』を手に取りじっくりと目を通しました。
そこには原発の問題以外にも、障がいのある方の生活を支援している方、自殺志願者を対象に支援活動をしている方、まちづくりに関わる方、児童福祉司さんや過去に風俗店で働いていた方等々、今まで私が出会ってこなかった人たちの記事や連載が満載で、そこに書かれているのは知らなかったことばかり。目からウロコの出会いでした。障がいやジェンダー、差別など、今まで自分とは無縁と思ってきた問題が実はそうではなく、私が生きているこの社会の中にあり、いつ自分が関わっていくかわからないということに気づかせてもらった気がします。何より中身が濃くて面白く、まだ出会っていないことをもっと知りたくて、現在は定期購読するに至っています。
と、『We』を語る時、ついつい熱くなってしまうのですが、『We』の編集長中村さんは大らかで温かく、前編集長稲邑恭子さんも柔かな物腰のたおやかな女性。今まで何度となくお会いしすっかり懐いてしまっている私ですが(笑)、初めて『We』の歴史をお聞きしてきました。
『We』の前身は、1982年に創刊された『新しい家庭科We』です。か、家庭科?とポカンとする私に、元々男女別の教科であった中学校と高校の家庭科の共修を目指す運動があったことを中村さんと稲邑さんが教えてくれました。
93年に中学、94年に高校の家庭科が共修となり、役割を終えた『We』でしたが、読者の要望から続けていくことになったのだそうです。
当時の『We』は読者も本づくりに参加する、文字通り手づくりの冊子でした。そのころ育児でこもりきりのストレスを感じていた中村さんは『We』と出会い、インタビューのテープ起こしや記事の書き方も一から実践を通して習得してきたのだそうです。
時には他の仕事をしながら『We』を資金面で支えたことも。そこまでしてなぜ『We』を続けたかったのですか? という私の問いに「当時シングルマザーになった私の生きるエネルギーでした。『We』からサバイブする力をもらっていたのかも」と中村さんは答えてくれました。
「弱い人の側に立って考えれば、誰にとっても生きやすい社会になるんじゃないかな。可哀想でも関係無いのでもなく、同じだと気づき、弱い立場の人たちのことを想像すること。『We』では声にならない声を無かったことにせずに、光を当てていきたいんです」というお話には大きくうなずいてしまいます。中村さんにとって『We』はライフワークでもあるのですね。
『We』は誌面からリアルな場も生み出しています。さまざまな課題に取り組んでいる当事者と支援者の方々による連続講座「地域でゆるやかに支えあう場をつくろう」は3年続けて開催しています。今年3月14日(土)の第4回はレイプサバイバーやセクシュアル・マイノリティの支援活動を続けてきた岡田実穂さんをゲストに招き、たくさんの方が参加したそうです。社会課題を見える化して、地域で感じられる場をつくっています。
『We』の今後の希望は、なんといっても読者を増やすこと。「世の中を良くしたいと思っている人の参考になったり、人とつながるきっかけになったら嬉しいです。こんな人がいる、こんな場所あると知ってラクになる人もいるはず。障がいの有無も世代も関心も様々で、違う人がたくさんいる方がおもしろいでしょう? 笑いも大事。楽しさのあるところに人は集まるし」と中村さんはビッグスマイルを浮かべます。
私もまた、A5サイズの小さな窓から広くて深い世界を見せてくれる『We』を毎号楽しみに待っています。そして、ファンの1人として、多くの方に『We』を手に取ってほしいと願っています。
くらしと教育をつなぐ『We」
偶数月10日発行
金額:800円+税(年間定期購読計6冊:5,400円 税・送料込)
申込み先:
TEL 045-482-6711
FAX 045-482-6712
E-mail info@femix.co.jp
詳しくはフェミックスHP
生活マガジン
「森ノオト」
月額500円の寄付で、
あなたのローカルライフが豊かになる
森のなかま募集中!