「準工業地域」というのは、都市計画法第9条に「主として環境の悪化をもたらす恐れのない工業の利便を増進するため定める地域」とあり、住宅や店舗と工場施設が混在している地域のことです。わたしは、はじめ「工業団地」と聞いていたので、巨大な団地内に工場があるのかな、などと勘違いしていましたが、第三京浜を望む緩やかな丘の上、いかにも下町の工場街といったのどかな雰囲気の、製造業を中心とした中小企業が集まる一区画でした。
東山田準工地域(通称で準工地域という名称が定着している)では、2013年に地域の小学生が工場を訪れる「まち探検」が始まり、毎年の恒例行事になりつつあります。また2014年には、有志の中学生を募って地域の「防災マップ」づくりもおこなわれました。
「まち探検」やマップづくりの企画をしたのは、株式会社スリーハイという、工業用、産業用の電気ヒーターをつくっている会社です。森ノオトが工業地域の取材? と疑問に思われた方もいるかと思いますが、この企画の陰には、地域で輝く女性の存在がありました。
スリーハイの2代目社長である男澤誠さんは、3.11以後、地域とのつながりをより強く求めるようになったといいます。2013年、一企業として地域貢献できることはないかと、東山田中学校のコミュニティハウス(いわゆる地区センターのようなコミュニティ施設、NPOつづき区民交流協会が運営)を訪ね、そこで、当時PTA活動にいそしんでいた蟹江千里さんと出会います。
蟹江さんが地域活動に打ち込むきっかけとなったのも3.11だったそうです。
「今、ここで自分にできることをと思い切って、はじめてPTAに立候補しました。ベルマークを集めるための協力者を探していた時に、男澤さんが、何か裏があるんじゃないかというくらい(笑)とても積極的にアイデアを出して協力してくれたので、それに感激して、地域にこんないい会社があるんだなと思って。それからしばらくたって人探しをしていると男澤さんから連絡があったので、それならわたしがと就職することにもなり、今はパート社員として週2、3回働いています」
普段工業地域を訪れるのは、取引先のメーカーや企業の方くらいで、職人さんは黙々と自分の作業をしているため、まちは基本的にはとても閑散として静かです。
地域交流に一歩踏み出してみて良かったのは、企業間の横のつながりができたこと。最初は自分の会社の価値や存在感のアピールに重点を置いていた男澤さんも、この地域全体でいかに連携するかを考えるようになったそうです。また、「まち探検」を最初に企画した時には乗り気でなかった他の会社の方が、子どもたちと直に触れることで、とても前向きに、積極的に関わりを持とうと、意識が変わってきたのも嬉しい変化でした。
「うちの仕事はもっと少人数のグループじゃないと伝わらないから次はこうしたい、とか、自ら学校を訪ねるようになった方もいるんですよ」と男澤さん。
今年はさらに、各工場で出る廃材をつかって工作キットをつくる「東山田準工プロジェクト はい!財(廃、材)で自由研究」が始まるそうです。この企画は蟹江さんが考えて、取材当日の朝に社員さんに発表したばかり。スリーハイ内では社内コンペ形式で作品を募集します。他の企業にも参加協力をしてもらい、夏休みには、各社それぞれでキット化して子どもたちに販売したり、無料で提供し、秋には作品展も行いたいとのこと。素材、廃材好きなわたしは、つい参加したくなってしまいました。
こうした企画の背景には、工場の多い地域ということを知らず、港北ニュータウンに近くて便利だからといった理由で移り住んでくる新しい住民との間で、騒音によるトラブルなどが起こるようになったことも関係しています。
近隣住民との共存を図りながら、ものづくりのための環境を守るには、お互いを知るきっかけや交流の場が必要です。子どもたちの発想やアイデアが、ものづくり、まちづくりのヒントになって、まち全体が盛り上がる、そんな風に変わっていったらすてきだなと思いました。近日公開予定のPVプロボノによるプロモーションビデオでは、「まち探検」の様子を見ることができます。
つづきっず、はい!
HP:http://www.tsuzukids-high.jp
株式会社スリーハイ
住所:〒224-0023 神奈川県横浜市都筑区東山田4-42-16
電話:045-590-5561
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