地域の助け合いで人をつなぐコミュニティカフェ 「ぷらっとkiricafe」の魅力に迫る!
地域コミュニティに焦点を当てている、森ノオト編集部の五感トランポリンチーム。これまでもチーム内でのおでかけ企画を実施し、記事にしてきました。今回訪れたのは……横浜市緑区の霧が丘商店会!
そこは私自身が育ったまちでもあります。地域の集いの場になっている「ぷらっとkiricafe」の根岸あすみさん、武蔵幸恵さんにお話を聞きました。

ぷらっとkiricafeは、2024年の1月に1周年を迎えました。

横浜市の 「まち普請」に採択されてのオープンまでの道のりについても森ノオトで取材しているので、ぜひそちらも合わせてご覧ください!

今回は、1周年を迎えた今、どんなことが見えてきたのかを取材しました。

 

ぷらっとkiricafeの位置する霧が丘は、JR横浜線・十日市場駅からバスで5分、たくさんの団地がひしめき合っているエリアです。

ひと昔前までは横浜のベッドタウンとして子育て世帯が多く住んでいましたが、この団地も他と同じく、少子化の波がじわりじわりと押し寄せました。

霧が丘グリーンタウンの1階部分が商店会のテナントになっている。バリアフリーで車両も通行しないのでみんなが安心して過ごせる

私が小学生だった90年代からすでに、当時霧が丘に三つあった小学校は将来一つに統合されることが決まっており、子どもたちの間でも「福祉施設になるらしいよー」なんて話題になっていたくらい身近な課題となっていました。

その元小学校に2009年、インド人学校が入ることが決まります。

それを機に霧が丘は、今やインド人が800人近く住むまちへとなっていったのです。

 

取材で商店会を歩いていると、子どもだった頃、母とちょっと足りない物を買いに行った「FUJIスーパー」や、放課後になると友達とマンガ雑誌や文房具を求めて集まった「明和堂」がここにあった!と懐かしい思い出が蘇ります。

私が子どもの頃から続いてる「旭屋」さんがあるのがうれしい。レトロなコーラの販売機がシンボル的に置かれている

閉まっているテナントが多くなったと感じる時期もありましたが、今また、クッキーシューのおいしいケーキ屋さん「CakeShopそら」、材料から厳選して作っているパン屋さん「ぷかぷか」、インドのスパイスや食材を取りそろえる「Spice Gate Indian Grocery and Restaurant」など、日常にワクワクを与えてくれるお店があり楽しくなってきています。

 

ぷらっとkiricafeは、そんな変わりゆくまちを支え合おうと活動していた既存の三つの団体が統合し“地域の人がつながるコミュニティカフェ”としてオープンしました。

人気のランチは曜日ごとのテーマにそって日替わりで楽しむことができ、取材に同行していた小さなわが子にはうどんを注文しました。ドリンクメニューも充実していてカフェとして気軽に利用できます。

水・土・日曜日は「学び場・イベントDAY」を開催。インド人へ向けた「日本語カフェ」や、地元小学生のための「学習支援」「英語教室」など多彩な取り組みをしています。

定期開催している「カラオケ喫茶」のようなイベントは、シニアの方に毎回大好評なのだとか。

たくさんのお客様で賑わう店内。新たなつながり生む地域の“ハブ”になっている。子どもが遊べるハウスも有志の手作り。屋根部分が竹を湾曲させた作りになっていて本格的

 

色とりどりで食欲を掻き立てるランチメニュー(月火木金に提供)。子どもからシニアまで安心して食べられる、気持ちがホッと安らぐ優しい味

誰にでもできないことはある

変わりつつある霧が丘商店会の中でも、ひときわ活気にあふれているぷらっとkiricafeのお二人、根岸あすみさんと武蔵幸恵さん。

出会いのきっかけは、お子さんの通う保育園。いわゆる同じクラスの「ママ友」だったそうです。

まるで姉妹!?と思えるような二人の空気感。ほんわかとした笑顔で来る人を迎えてくれる(右が根岸さん、左がさっちゃんこと武蔵さん)

二人の掛け合いを聞きながら、同世代でわが子も保育園に通っていたので、きっと似たような環境だったのではないか?と想像し、頭の中で考えを巡らせました。

 

“当時からのママ友はいるけれど、こんなに自分自身をオープンにできる関係性を築けているだろうか……”

 

送迎時間もバラバラで、ママ同士で話をするタイミングもほとんどないのが保育園あるある。二人の関係性や、どうしたらママ友同士でここまでのことを成し遂げることができるのだろうと、次から次へと興味があふれ出てきました。

 

「さっちゃんはとにかく、すごい主体性のある人だな~って思ってた!」と根岸さんが言います。

当時、武蔵さんが大切してたのは、保護者同士の関係性。保護者会で名札を用意して、「呼んでほしい名前で呼び合う」ということを提案しました。

「助けを求めやすい関係づくりをしたかったんです。その時は2番目の子どものクラスで、ある程度分かっていることもあるし、自分にできることはしたいなっていう思いがありました」と武蔵さんは言います。

今でもそれが続いていて、買い物や子どもの送迎など、ママ友からの依頼を受けることもあり、ヘルプを求めやすい関係性へとつながっています。

 

「でも、あすみちゃんも主体性のある人だなって思ってたよ!」と武蔵さん。

今度は根岸さんが、主体性についてのエピソードを教えてくれました。

「ん~、でも主体性って難しくて、失敗したなってこともあったんです」と話し始めます。

 

「その時は、会長職を決めなくちゃいけなかったんですけど、もちろん誰も手をあげない。だから『私、やります』て言ったんです。そうしたら、『なんでもやれる人なんだ』って思われてしまったみたいで―――。もちろん仕事があって時間的な制約もあるし、不得意なこともある。『できる』と言ったとしても、できないこともあって当たり前。できないこともちゃんと伝えて、お互いにフォローし合うことが大切なんだって気付きを得るきっかけになりました!」

 

なるほど。できないことを伝えて、フォローし合う。

きっと、誰もが心の奥で求めているコミュニティのあり方なのではないか、と私自身考えます。

 

はじまりはママ友同士の助け合いでしたが、その後、二人のベクトルは、困りごとを抱えている人の近くには実は「互いに助け合える人やこと」がもっとあるのではないか、と地域のサポートへ向いていきます。

 

 

地域って最先端でおもしろい!

kiricafeのオープンから1周年を迎えた今、どんなことを感じているのかを尋ねました。

 

「人の温かさが、こんなにあったなんて!」と武蔵さんが思いを話してくれます。

「きっとそれは本来、色々な地域にもあるのだと思います。本当はみんなつながりを求めてる、だけど、きっかけや場所がないのかなって。もともと霧が丘には『何かできることをしたい』と思っている人がたくさんいて、kiricafeがオープンしたことで『できるよ!』って手をあげるきっかけになっているのだと思います」。

 

「霧が丘には、すごい才能を持った人がたくさん潜んでいて、まだまだ発掘できると思っているんです!」続けて根岸さんも熱く語ってくれました。

「世の中には色々な社会課題があるけれど、今、私が一番感じているのは“地域が最先端”っていうこと。地域のつながりが、課題解決の助けになることは本当にたくさんあると感じています!」

1周年を記念して飾られた写真。サポートスタッフや地元小学生たちと取り組んできた活動の軌跡を見ることができる

オープン当初には、お客様からコーヒーが冷めてるとの声があり、kiricafeがカフェであるというと前提に気づかされたこともあったとか。

その頃は毎日が文化祭。箸はあるけど箸置きがない!なんてことも日常茶飯事。

そんな時も、知識と経験豊かな地元の人たちが、助けの手を差し伸べてくれたそうです。

昔、給食作りの仕事をしていた方、飲食店を営んでいた方から、飲食店としてのノウハウを学びました。今では週替わりメニューの担当をしてくれているのだとか。

最近では、この1年間、お客様として来ていた方が「手伝いたい」と申し出てくれたという心温まる出来事も……!

店内から外の様子がよく見える大きな窓がある。登下校をする小学生の姿など、1日のまちのようすを見守っているかのような気持ちになった

コミュニケーションの鍵はダンス

実は、取材の始めに根岸さんがお話ししてくれたのが、“ダンス”にまつわるエピソード。

二人は偶然にも、同じ先生にダンスのレクチャーを受けていたことがあり、ダンスという共通点がありました。

 

緑区内に住む外国人が急増した際、地域の多くの人にとってこれまで、外国人とのコミュニケーションはそう簡単なことではなかったようです。

それは霧が丘に住むインド人にとっても同じこと。

文化の違いはもちろん、言葉の壁も大きく日本人との接点が少ない。

なかなか互いのコミュニケーションが進んでいませんでした。

 

どうやって互いを知り、理解し合えばいいのだろう……

二人にとっての答えは、ダンスにありました。

インドの人は「お祭り」をとても大事にしていて、踊る機会も多く、みなさんよく踊るそう。

Kiricafeの前身として、地域の外国人との交流をする団体があった経緯もあり、インド人と一緒にチームを作ってお祭りに参加することに。

一緒に踊ることでグッと距離が縮み、絆が強くなったと実感したそうです。

「やってみた」の気持ちでスタートしたことでしたが、すっかりチームは一致団結し、昨年の1年間で色々なところへお呼ばれするまでになったのだとか。

 

取材の合間にも、お店に訪れるインドのお客様たちと和気あいあいに関わる様子が何度もありました。

身振り手振りを交えた日本語混じりのカタコトなやりとりをされていて、それでもちゃんと通じている……。互いに声がけしあう様子に垣根のなさが感じられて、“言葉が通じなくてもつながれる”ことを体現していました。

 

「踊り」は、言葉に頼らなくても気持ちを届けたり、つなげたりすることができるツールであり、いつの時代も地域コミュニティを豊かにする一つの「鍵」になっているのだと思います。

チーム名は「Mix&Match」。緑区内や横浜で開催されるイベントに多数参加

日々子育てをしていると、一人ではどうにもならない場面に直面することが少なからずあると思います。

でも、「できない」と言うことって想像以上に難しい―――。

私自身、この記事を書いている最中も習い事の“送迎の壁”にぶち当り、どうしよう……ということがありました。

「助けを求められる関係性」「フォローし合える関係性」をつくりたいという思い、そして実際に行動に移すことができるお二人は本当にすごい!と思いました。

ぷらっとkiricafe誕生のヒミツを垣間見ることができたような気がして、私は胸が熱くなりました。

 

今はシニアとインドのコミュニティがメインとなっていますが、これからは子どもの居場所づくりをやってみたい、というお話もしてくれました。

さらには、二人と同じ子育て世代でもある30〜40代にどう関わってもらうか、ボランティアという壁をどう超えられるか、と現在地点に留まらず先も見つめています。

 

霧が丘商店会には昔から、それぞれに個性あふれる店舗が集まっていました。

一度は成熟し終えたように思えた商店会でしたが、これからも互いに調和を図りながら、多様性が光る次世代の商店会になっていくのではないかと思います。

 

今回のおでかけ企画で、霧が丘周辺には、まだまだ気になるスポットがあることも分かりました。取材はさらに続きそうな予感です……!

霧が丘から車で5分、隣接する旭区若葉台には帷子川(かたびらがわ)の水源がある。知る人ぞ知る名スポットまだありそうだ

Information

ぷらっとkiricafe

住所:横浜市緑区霧が丘3丁目26-1 205 霧が丘商店会

TEL:045-489-9405

HP:https://www.kirigaokaplatform.com/

 

[アクセス]

JR横浜線十日市場駅より

横浜市営バス23系統 若葉台中央行 約10分 郵便局前下車 徒歩2分

 

[営業時間]

9:30~16:00(月・火・木・金)

7:00~9:00(土 モーニング)

水・土・日曜日は「学び場・イベントDAY」

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この記事を書いた人
永田由衣ライター
子どもの頃に自然の偉大さとそこに集まる仲間に魅了されキャンプが大好きに。バックパック一つあれば生きていけると思っている。夢はトレーラーハウスに住むこと。現在は3人の子育て真っ只中。書道で地域をつなげるコミュニティをつくりたいと常に模索している。
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