子育てと食のフリーペーパー「Necoron」発行者の草薙由紀子さんです!
「子どもに伝えたい大事な食べ物の話」をテーマに、小学校でボランティア活動を行う傍ら、フリーペーパー「Necoron(ねころん)」の発行、食とレシピの本の企画・編集を行う草薙由紀子さん。食を大切にする「お母さんの輪」が広がることを目指して……。

子どものおやつは「4度目のごはん」

 

──昨年創刊のフリーペーパー「Necoron(ねころん)」は、子どもが1日に摂る砂糖の摂取量の提案や、インフルエンザ・ワクチンに対する見解など、食と暮らしをテーマとした興味深い記事が多く、たいへん面白く拝読しました。草薙さんが「Necoron」を発行したきっかけは?

草薙由紀子さん(以下敬称略): 少し遡るのですが、「Necoron」を出す2年前に、『子どもに食べさせたいおやつ』という本を暮しの手帖社から出版したことからつながっています。

私の3男が卵アレルギーで、どんなおやつを与えたらいいのかずっと困っていました。それまでも食事には気をつけてきたつもりでしたが、市販品で無添加のおやつを探すのはなかなか大変で、また、蒸かしたさつまいもやとうもろこし、おもちなどにも正直、飽き始めていました。

もしかしたら、私のように困っているお母さんがいっぱいいるかもしれない。私が3男のために集めた情報を提供したい、という思いから、本の出版を企画したのです。

──おやつといっても、おにぎりや枝豆、おやき、いも天など軽食レシピが多く、レシピも簡単。これなら気軽に手づくりおやつに挑戦できると思いました。

草薙: 子どもは一回に食べられる量に限界があるため、3食だけでは足りないのです。それで補食としてのおやつを食べるわけですが、一般的におやつと言うと、甘いビスケットやチョコレート、清涼飲料水など、砂糖がたっぷり入ったものがイメージされるのではないでしょうか。小学生が1日で摂取する砂糖の量としては20g程度までが望ましいと考えられていますが、角砂糖4個分までなのですが、ドーナツには約10g、アイスクリーム1カップなら約20g、とある500mlペットボトルの清涼飲料水には何と60gもの砂糖が含まれています。明らかに砂糖の過剰摂取状態なのです。

本来、子どものおやつは「4度目の食事」として考えるべきものなので、実はおにぎりが一番なんです。子どもの目の前でさっとおにぎりを結んであげる。あるいは簡単なおやつを一緒につくっても楽しいですよね。

──この本から「Necoron」につながる経緯は?

草薙: おやつの本のページの下に、「ゼリーやキャンディを鮮やかな赤色にする天然添加物のコチニール色素。じつは、南米のサボテンに寄生する虫をすり潰したものなのです」など、食に関する様々なうんちくを載せています。実は、レシピよりもこのような情報を伝えたかったんですね。幸い、この本は多くの方に読んでいただいて、何度か増刷しています。読んでくださった方々におかえしするつもりで、私が本当に伝えたい食のこと、暮らしのことをまとめよう、と思ってつくったのが「Necoron」なのです。

 

『子どもに食べさせたいおやつ』(暮しの手帖社)。普段から食べ親しんで、体に負担をかけないようなおやつ、となると、穀物を中心にしたものがベスト。そのため、この本で紹介しているレシピは砂糖控えめ、「特別な日のおやつ」以外は卵や乳製品を極力使わないようにまとめてある。後ろはフリーペーパー「Necoron」

 

 

小学生なら、自分で食べるものを選べる

 

──「Necoron」の発行のほかにも、小学校でボランティア活動を行っているとのことですが、どんなことをしているのですか?

草薙: 「子どもに伝えたい大事なはなし」と題して、地元の小学校で5年生を対象に授業前の15分を使ってお話をしています。

「この歯だれの歯?」というテーマでは、野菜を食べるうさぎの歯、お米やいもをすりつぶすゾウの歯、肉を噛みちぎるライオンの歯のパネルを見せます。それから人間の歯を見せるのですが、人間の28本の歯のうち、8本がうさぎと同じ野菜を食べる歯、16本が穀物を食べるゾウの歯で、お肉を食べるライオンの歯はたったの4本。つまり、人間は元々、お肉はほんの少し食べるだけでよく、本来は穀物や野菜を食べて生きていく生き物なんです。動物の腸の長さと比較しても、それがわかるんですよ。

ほかにも、子どもたちの目の前で本物のメロンからメロンジュースをつくり、その後、食品添加物を調合して果汁0%のメロンジュースをつくって見せます。まず、水の入ったビーカーに着色料を入れ、メロンフレーバーの液体、ブドウ果糖液、粉末ビタミンC、粉末クエン酸といった食品添加物を次々と投入すると、みんなが知っているメロンジュースができます。本物のメロンを買ってジュースをつくると、高い。添加物でつくったジュースは、安い、簡単、便利。でも、台所にある食べ物ではつくられていない。自分の食べるおやつについて、しっかり考えて買ったり、食べたりしましょう、と伝えています。

──小学生はどのように反応しますか?

草薙: 特にメロンジュースの実験では、子どもたちは「えーっ!?」と驚き、興味津々で食らいついてきます。そして、家に帰ってからお母さんに学んだことを伝えるんですね。小学5年生なら、自分で食べたいものを選べるようになります。大人を変えるのは難しいから、まず子どもに食の大切さを知らせて、そこからお母さんに伝われば……という作戦ですね(笑)。

 

自作のパネルを使って人間の食事のバランスを伝える。ライオンと人間の腸の長さを比較したツールや、ウンチの色のパネルなど、すべて草薙さんが手づくりした

 

子どもの目の前で添加物を調合して、果汁0%のジュースをつくる。その様子はインパクト大

 

 

食を大切にする人が増えれば、「お母さんの輪」が広がる

 

──『子どもに食べさせたいおやつ』や「Necoron」は、草薙さんの名前ではなく、「お母さんの輪」のグループ名で出しているのはなぜですか?

草薙: この本をつくる過程で、おやつのレシピをご近所の方や保育園のママ友にリサーチし、一緒に試作を重ね、撮影にも協力してもらいました。子どもの食事のことをきちんと考えるお母さんは、みんな「お母さんの輪」。そう願って名付けました。

──今後の活動ビジョンをお聞かせください。

草薙: 「Necoron」は年4回の発行を目標にしています。取材が順調に進めば次は2月の発行予定です。記事は、私が普段気になっている素朴な疑問について、実際に生産者に話を聞いたり、現地に行って取材をして、まとめています。安い卵と高い卵は何が違うのか、家庭から出た排水はいつどの段階できれいになるのか、など、取り上げたいテーマがたくさんあります。

また、おやつの本の続編として、お料理の本も計画しています。お母さんが自分で味見をして、五感を磨きながら料理をつくるような……そんな本を目指しています。

──そうそう、「Necoron」はどこで手に入るのでしょうか?

草薙: 知り合いのお店などに頼んで置いてもらっています。地元の三輪町や柿生、玉川学園、青葉区など……。自然食品店や雑貨店、食材にこだわったレストランなどで目にする機会があるはずです。

──「こどもは おとなが作ったものを 良いものだと信じ 買ったり 食べたりする だから おとなは その子どもたちのこころを 裏切らないようなものを 作ったり、選んだり、与えなくてはいけない」。創刊号の巻頭にあるこの言葉に、どきっとさせられます。

草薙: 子どもの食事は、親が決めているんですよね。痒そうに肌をかきむしりながらスナック菓子をボリボリと食べている子どもを見ると、胸が痛みます。毎日ご馳走ばかり食べていると、体の負担になってアレルギーも肥満も糖尿病もなくならない。食事を変えるだけで子どもは驚くほど健康になるのに……。

我が家の食卓はとても質素です。普段はごはん、お味噌汁、漬物、大根を焼いた野菜のメインディッシュといった風に。その分、お正月など特別な日は思い切って豪華につくります。「ハレとケ」のメリハリがついているから、子どもも楽しそうにしています。

「草薙さんは変人だわ」と思っている周りのお母さんも多いと思います(笑)。それでも、情報を流し続けていきたい。「お母さんの輪」が少しでも広がることを願っています。

 

草薙さんの家の定番おやつ、ほこほこに蒸したさつまいも。自然のあまみが何ともうれしい

 

##取材を終えて……(一言)

「Necoronのホームページはないんですか?」とうかがったら、「Necoronは紙のブログのようなものです」と答えた草薙さん。元々グラフィックデザイナーで、「Necoron」の企画、取材、執筆、編集、デザインのすべてを自分で手がけているそうです。内容のクオリティの高さはさることながら、スポンサーもとらずに全て自分の責任で発行を続ける草薙さんの志の高さに脱帽! 同じような志向を持つ人間として、いつか一緒に発信ができたら……と願わずにはいられません。

Information

●草薙由紀子(くさなぎ・ゆきこ)

町田市三輪町在住。子どものアレルギーをきっかけに食の大切さに目覚める。地域のお母さん仲間から無添加・手づくりおやつのレシピを集め、『子どもに食べさせたいおやつ』と題した本を暮しの手帖社から出版。現在は小学生向けの食育コンテンツを開発し、地域の小学校でボランティア活動を行うほか、食のフリーペーパー「Necoron」を編集・発行している。

北原 まどか
この記事を書いた人
北原まどか理事長/編集長/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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