第17回:1年後、日本は世界にどんなメッセージを発信するのか?
1年後の地球サミット2012に向けた「WorldShift Forum 2011」 リポート

「3月11日。この日は、日本が素晴らしい国へ復活する始まりの日である」

この3月に内閣官房参与に就任したソフィアバンク代表の田坂広志氏のメッセージだ。「それこそが、東日本大震災で命を賭して私たちに伝えてくれた方々への弔いになるのではないか。そのために、目の前の現実を1ミリでもよい方向に動かすべきだ」と語った田坂氏のWorldShift Talkで始まった「WorldShift Forum 2011」(主催:ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン、地球サミット2012Japan)。1年後にブラジル・リオデジャネイロで開催される地球サミット2012に向けて、エネルギー、消費、ビジネス、お金、社会、地域、ガバナンス……さまざまなシフトを起こそうと多方面からの識者たちがそれぞれの「シフト」を提言した。会場となった国連大学ウ・タント国際会議場には約300名が集い、Ustreamやニコニコ動画では約8万5000人が視聴した。

このイベントの司会進行は、ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン理事でNPO法人ガイアイニシアティブ代表の野中ともよ氏が務めた。

 

 

基調講演は国連大学副学長で、国連大学サスティナビリティ平和研究所所長の武内和彦氏が「持続可能な開発:国連と日本の役割」をテーマに、サスティナビリティの概念の歴史的な背景と、地球サミット2012までの道のりについて語った。

続いて行われた基調セッション「地球サミット2012に向けて」は、地球サミット2012Japan、環境省大臣官房課長補佐の福嶋慶三氏、地球サミット2012Japan、金融庁総務企画局市場課課長補佐の佐藤正弘氏、前環境副大臣の田島一成氏、武内和彦氏、イースクエア代表取締役で元三菱電機アメリカ会長の木内孝氏が登壇。佐藤氏は「地球サミット2012では、持続可能な開発と貧困解消について話し合われる。特に、化石燃料に依存したブラウンエコノミーから、グリーンエコノミーへの変化について語られるだろう」とし、その中で特に日本の発信が注目されると語った。

また武内氏は「昨年のCOP10では“人間は自然の一部である”ことが長期目標に採択された。震災復興はそれにつながる契機で、いかに行動に結びつけるかが大事」と強調。木内氏は、「言行一致を貫くべき。それには自分の体験を一人称で語っていく必要がある」と話した。

 

基調セッションでは、世界のリーダーが集い地球や人類の未来について語り合う国連最大級の会議である地球サミット2012で、日本が何を発信して行くべきなのか議論された

 

続いてWorldShiftストリームセッション・ダイアログが行われた。セッション1は「エネルギーと消費のシフト」。サステナ代表のマエキタミヤコ氏をモデレーターに、LUNA SEA、X JAPANのギタリストであるSUGIZO氏、環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏、衆議院議員の河野太郎氏が、原子力エネルギーから自然エネルギーにいかにシフトしていくかについて語り合った。

河野太郎氏は「3.11以降、原発の新規立地はできなくなる。耐用年数が40年である原発がこれから1基ずつ止まっていけば、2050年にはゼロになる。その穴は省エネと再生可能エネルギーで埋め、それまでの間は天然ガス火力発電でつないでいく」と展望を示し、「政治を動かすのは国民。事務所に直接出向き、あるいは電話をして、地元の国会議員に直接思いを伝えよう」と呼びかけた。

それを受けSUGIZO氏は「日本人は成人全員が持っている権利を公使できていない。理想の政治家がいなければ自分がなろう、という人が現れてもいい」と話した。

 

飯田氏は「現在日本のエネルギーに占める原発の割合はすでに20%を切っている。10年後には10%に、あるいはゼロにできるかもしれない。世界では昨年すでに発電量で自然エネルギーが原発を上回った。奇しくも3.11の午前中には再生可能エネルギーの全量買取制度が閣議決定した日。自然エネルギーを採算が取れるベースで買い取れば、自然エネルギーに参入する地域、企業、個人が増える。まずは送電と発電を分離し、電力会社による地域独占を早急にやめさせるべき」とプレゼンテーション。SUGIZO氏の「この夏の電力不足はどう乗り切ればいいのか?」の質問には、「多くの家庭で調理が始まる夕方の節電が効果的」と答えた。

最後に野中氏が、「エネルギーや消費を変えるには、声をあげる。声を上げないにしても行動するべきだ」とまとめた。

「子どもが“いいよ”と言わないものをつくらない。ジェネレーション・バランスまで大切にされる時代をつくりたい」と2児の母でもある小野寺愛氏は力説した。

 

午後最初のセッションは「ビジネスとお金のシフト」。「今の世の中は男性中心でウソが多い、お金儲けと経済中心の社会。等身大に引き戻すには女性のよさ、知恵を引き出していくのが近道。等身大を訳すと“size of life”。我々の暮らしの大きさを手が届く範囲の世界にすること」と、自らのシフトを語った木内氏。経済界での長年の経験が言葉に重みを与え、会場に共感の輪が広がっていった。

NPO法人アースデイ・エブリデイ理事長の服部徹氏は、「グリーンエコノミーが世界のトレンドとして語られている時代。グリーンGDPや、生物多様性に配慮した環境経済が今後ますます重視されてゆく」と話し、公益財団法人信頼資本財団事務局長の鴨崎貴泰氏は「社会的事業で一度途切れた関係性を回復すべき。震災復興に社会的事業を終結して、意志としての温かいお金、つまり寄付で支援していこう」と呼びかけた。公認会計士の森洋一氏は「お金や経済を“遠”から“近”へ。私たちは社会のオーナーである。生き方、働き方、投資、消費、すべてにおいて腹をくくって生きるべき」と力を込めた。

 

 

「コミュニケーションと社会のシフト」のセッションでは、電通ソーシャル・デザイン・エンジンの並河進氏が進行役を務め、ソーシャルメディアの世界で活躍するコミュニケーションディレクターの佐藤尚之氏、Think the Earth プロジェクト・ディレクターの上田壮一氏がこれからのメディアの役割について語り合った。

佐藤氏はTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアができた現在を「ブログなどを書かなくても、RTやいいね!ボタンを押すだけで発信ができる。関与したい人々とそれを結びつけるプラットフォームができた」と評価した。また自身が震災直後に民官サイトとして開設した「たすけあいジャパン」について紹介した。

上田氏は「Twitterをやっていると世界が変わったように感じるけど、未だに動く人とそうでない人の間に断絶がある。これまで以上に、伝わるやり方でていねいにコミュニケーションしていかなければ」と話した。また、震災後被災地支援など現地に動くNPOやNGOへ寄付できる仕組みである「Think the Earth基金」についても紹介した。

ここで浮き彫りになったのは、「media is message」であるということ。メッセージを持った発信そのものがメディアであるという話は、多くの人の胸に刻まれたはずだ。

 

ダイアログの時間では、少人数のグループをつくり、参加者が自分の意見や考えを伝え、耳を傾ける機会が設けられた。

 

セッション4「ライフスタイルと地域のシフト」は、モデレーターの辻信一氏が公開されたばかりの映画「幸せの経済学」の出演者でもあるるヘレナ=ノーバーグ・ホッジ氏のメッセージとともに、「そろそろ上向き、前向きをやめて、巨大化・肥大化した経済をダウンシフトしていき、人間と自然の原初的なつながり満ちたハーモニーを取り戻してゆくべき」とグローバリゼーションからローカリゼーションへのシフトをていねいにひもとき、「食べ物」「エネルギー」「ケア」がそのキーワードになると話した。

ピースボート共同代表の小野寺愛氏は、震災直後より石巻でおおぜいのボランティアを組織し、ヘドロ除去などを行う活動を紹介。NPO法人ビーグッドカフェのシキタ純氏は長野県信濃町での農業と畜産の循環で地域経済を回しているゼロエミッション・ローカリゼーションの事例を紹介し、「地元が地元を助け合う循環型経済の時代に、TPPはいらない!」とシキタ節を展開した。

「世界一の自然運動家よりも、世界一のお父さん、お母さんが世界を変える」という小野寺氏のメッセージを受け、野中氏は「命を生み出してきた母なる大地に今こそダウンシフトしていこう」と会場に語りかけた。

 

 

セッションの最後は「市民と国際ガバナンスのシフト」。昨年のCOP10で市民ネットワークCEPAの代表として市民提案で決議に重要な役割を果たした博報堂DYメディアパートナーズ環境コミュニケーション部長の川廷昌弘氏、地球環境パートナーシッププラザの星野知子氏、東京工業大学准教授で国連環境計画国際環境ガバナンス・アドバイザリーグループの蟹江憲史氏が登壇した。モデレーターは環境省の福嶋氏が務めた。

川廷氏は「生物多様性とは、多様な命を理解し、知恵を出して暮らし続けていた日本人の暮らしそのもの。CEPAとしては、3.11以降を、海と森と田んぼから考えるべきだと思う。地域の豊かな自然を生かした復興プロジェクトにしていこう」と呼びかけた。蟹江氏は「今までのエネルギー供給システムは中央集権的だったが、小規模分散型エネルギーであればこのような大惨事は起こらなかった。分権的なガバナンスシフトを行い、エネルギーと環境を一つにしていくことで、市民の行動に火をつける。日本が発信することで世界を変えられる、こんなチャンスは今しかない」と提案した。また星野氏は「経済優先より命優先。それを迷わずに言っていくこと。生き物、未来の命を想像し代弁していくことが必要になる」と続けた。

 

 

このWorldShift Forum 2011の特徴は、登壇者のメッセージを参加者が聞く、というだけのスタイルではない。参加者それぞれが対話をし、その声一つひとつを世界に届けていくための仕掛けがほどこされていた。そのスキルである「ダイアログ」は、会場の人同士が自分の「シフト」を書いた紙を持ち、共通するメッセージを持つ人を探し、対話を深めていくことで、知とメッセージを拾い上げていく新しい手法だ。今後「Earth Dialogue」として日本中の声を集めていき、それを地球サミット2012でメッセージとして発信していくーー。その試みの第1回目というわけだ。

セッションの合間のダイアログ1は、ダイアログBar代表の西村勇也氏が、セッション終了後のダイアログ2は地球サミット2012Japan副代表の佐野淳也氏がファシリテータを務めた。

会場からは「わたしなんか、から、わたしでもできる」など、それぞれのシフトが発表され、未来に向けての行動を宣言する人出てくるなど、盛り上がりを見せた。

 

 

今回のイベントで光ったのは、司会進行を務めた野中氏の折々のまとめだろう。最後に彼女はこう言った。

「自分が変える、自分が変えようとする。今日はそれを感じた一日ではなかったか。動きたいのに動けないサイレント・マジョリティー(その他おおぜい)を感じること。ローカルを創り直すことはグローバルの再生につながる。3.11を経験した私たちで日本人でなければ言えないことは何か。地球サミット2012に何をもっていくのか? 今日の参加者たちは、命が輝いている島をつくる責任者になってしまった。お金の幸せ神話は崩壊した。シフトを日本から。シフトを私たちから―—」と。

3.11を経験した私たち日本人。ここに生きていられる意味を今問い直し、一人ひとりがこの大きなパラダイムシフトを牽引していく主人公である―—。それぞれのワールドシフトを胸に、今こそ行動の時である。

北原 まどか
この記事を書いた人
北原まどか理事長/編集長/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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