第21回:サムソエネルギーアカデミー代表・ゾーレン・ハーマンセンさんインタビュー
ローカル・オーナーシップでエネルギーシフトの実現を!(環境ビジュアルウェブマガジン「ジアス・ニュース」での連載より)

 

ISEP(環境エネルギー政策研究所)の飯田哲也氏とのトークセッション(photo/有福英幸)

 

原子力発電に頼らず、自然エネルギー100%でエネルギーを自給自足していくことは実現可能か? ――可能です。すでに実現している島がデンマークにあります……。

 

デンマーク中央部にある人口約4300人のサムソ島は、1998年より10年間で自然エネルギー100%にシフトしていくことを目標に掲げ、すでに実現。そのノウハウを手本に、日本でも脱原発、自然エネルギー100%を目指す動きが胎動し始めている。約30年に及ぶ上関原発反対運動の島として注目を集めてきた山口県・瀬戸内海に浮かぶ祝島。6月18日、サムソ島の運動をリードしてきたサムソエネルギーアカデミーのゾーレン・ハーマンセン氏がやってきた。祝島では、自然エネルギーでの自給自足を目指すヨーロッパの諸島連合アイルネットへの加盟を目指し、日本のエネルギーシフトを引っ張っていきたいとしている。

 

ゾーレン・ハーマンセン氏に、日本でのエネルギーシフト、自然エネルギー100%の実現可能性について話をうかがった。

 

 

祝島でのゾーレン氏(photo/有福英幸)

 

 

――今回の来日の目的は?

 

デンマークのフレデリック皇太子とともに、東日本大震災で被災した東松島市への寄付を届けにきました。デンマークでは、東日本の復興に対して、デンマークの風力発電技術などでの協力を考えています。

 

――祝島への渡航は初めてですか? どんな印象を持たれましたか?

 

はい。初めてです。歩いてまわれるくらいのこぢんまりとした島で、潮風の香りといい、人々の温かさといい、まるで私の島、サムソ島を思い起こさせます。東京はあまりに人やクルマが多くてゴミゴミしていて、苦手です。

 

――サムソ島で自然エネルギー100%を実現していくまでのプロセスについてお聞かせください。

 

デンマークでは1970年代に原子力発電所の是非について国を二分する議論が起こりました。85年にデンマークの国会で原発を導入しない決定が下されました。

 

1997年、当時のスヴェン・オーケン環境大臣がデンマークの島で100%自然エネルギーのモデルの島をつくる計画を発表し、サムソ島で1998年よりプロジェクトが始まりました。

 

島ではそれまで、家庭での暖房に灯油を使っていましたが、化石燃料への依存をやめて10年間で100%自然エネルギーに転換していくことにしました。暖房、給湯の熱を地域暖房に転換し、太陽熱温水器やわら、木屑などのバイオマスエネルギーで賄うようにしました。現在、島の暖房エネルギーの75%を自然エネルギーで賄っています。

 

現在、1基あたり1MWの風力発電が陸上に10基、2.3MWの風力発電が洋上に11基あります。いずれも島の住民や企業、あるいは自治体が出資しています。この10年で6億ユーロに及ぶ投資を生み出し、地域には雇用が生まれ、地域経済の活性化に結びついています。

 

ほかにも太陽光発電やバイオマスエネルギーの活用によって、自動車やトラック、フェリーなど運輸のエネルギーを含めた島のトータルのエネルギーを100%自然エネルギーで実現しています。CO2排出量はプロジェクト前に比べて140%マイナスとなっています。

 

 

祝島の美しい町並みの中を歩くゾーレン氏(photo/有福英幸)

 

 

――サムソ島ではどのように100%自然エネルギーを実現していくためのコンセンサスを島民から得ていったのでしょうか。

 

まず、「サムソ島を自然エネルギー100%にする」という大きな目標を、島民全体で合意形成しました。サムソ島には風が大きな資源としてあり、歴史的にも風車でエネルギーを賄ってきました。一方で、人々も大切な資源であるととらえ、自然エネルギー100%の実現過程をトップダウンにせず、島民にマスタープランをつくるのに参加してもらうよう促しました。

 

大きな目標を島民で共有し、その後は個別のプロジェクトに分けて、ワーキンググループごとにコンセンサスを得ていくようにしました。太陽光発電や太陽熱利用のプロジェクト、風力発電のプロジェクト、バイオマス利用のプロジェクト……というように、それぞれの分野にキーパーソンを置き、階層的に合意形成を行っていきました。これらを束ねる会議はあくまでもオープンに、誰でも参加できるようにしています。

 

自然エネルギー100%というあまりにも大きな目標に、始めの頃は「実現できないんじゃないか」という戸惑いがあったことも事実です。しかし、洋上風力発電ができて、希望が見え始めました。地域に投資が行われ、雇用が生まれ、投資した人には売電収入を得るようになりました。風車が回っている音が、現実にお金を生み出すことに結びついていくのですから。

 

――サムソ島での成功の秘訣は?

 

実は、デンマーク政府のサポートもたいへん大きいのです。ローカル・エネルギーを実現していくには、ボトムアップ型の動きが重要なのは言うまでもありませんが、政府が関与して、法律や条例、仕組みなどでボトムアップを後押ししていくことがとても大切なのです。

 

現在日本でも審議が行われているFIT(Feed-in Tariff、固定価格買取制度)は、日本で自然エネルギーを増やしていくうえで、とても重要な法案です。自然エネルギーを定額で買い取る法案ができれば、自ずと自然エネルギー分野への投資が進みます。さらに、投資した人は売電収入を得ることができます。

 

地方自治体が抱える問題は世界的に共通しており、より深刻です。サムソ島では大学を出た若者たちが島に戻らず都会で就職してしまいます。地方に仕事がないからです。自然エネルギーは地方に雇用をもたらします。グリーン経済成長によって地方に人材が入り、地方経済の活性化を促していきます。

 

――しかし、日本ではなかなか国全体が脱原発、エネルギーシフトへ向かおうとしません。

 

日本とデンマークで大きく違うのは、これまでデンマークでは原発が存在しなかった一方、日本では長いこと産業面で原発にエネルギーを頼ってきました。日本でエネルギーシフトを始めるのならば、まずは地方から動き、それを大きなうねりにしていくべきです。

 

日本政府は法律や仕組みなどでその動きをサポートしていかなければなりません。今回の福島原発事故はあまりに大きな事故です。「アフター福島」では、多様な議論が必要です。一つひとつの要素を掘り下げ、誠実な議論を行うべきです。ドイツやイタリアでは脱原発が決まりましたが、日本でも国民的な議論を行っていくべきです。

 

 

「自然エネルギー100%は大都市でも実現が可能」と語る(photo/有福英幸)

 

――祝島や、サムソ島など、地方からエネルギーシフトを始めようとのことですが、東京や横浜など大都市ではエネルギーシフトは実現可能でしょうか?

 

大都市での生活はとても複雑です。たくさんエネルギーを使い、それぞれのビルや工場、建物ごとに管理、コントロールが発生します。

 

しかし、大きな都市は、小さなエリアの集合体ととらえることもできます。都市の中の地域をスクエア状に分け、エリアごとに人々をオーガナイズして、個別にエネルギーシフトをしていく、という可能性もあり得ます。大都市の中の小さな共同体を、「島」としてとらえればいいのです。共同体ごとにエネルギーシフトを実践して、それを積み重ねていけば、大都市でのエネルギーシフトの実現は不可能ではありません。

 

100%自然エネルギーを実現するために必要なのは、共同体ごとのボトムアップ文化なのです。それが将来的には、気候変動を抑え、持続可能な未来をつくっていくことにつながります。

 

ローカル・エネルギーを実現していくためには、住民同士のコミュニケ―ションが何よりも大切です。「Think Globally、Act Locally」という言葉がありますが、私はグローバルを考えるよりも大切なこととして、人々がローカルについてもっともっと真剣に考え、ローカルを自分の責任で動かし、変えていくことだと思います。それには、人材を含めたローカルな資源を活用し、ローカルなノウハウを蓄積していくことです。地域の一人ひとりがオーナーシップを持つのです。

 

原発は大規模集中型、巨大なシステムです。今回のような大事故が起こったら、とても人間の制御が及びません。一方、自然エネルギーはとても私たち身近な技術です。わからないことがあれば、わたしや、あなたなど、地域の身近な人に尋ねればいい。運営についても、地域のリーダーと相談しながら、地域の人々が関与できます。中央集権的なエネルギーから、小規模分散型のローカル・エネルギーに、今こそシフトしていくべきです。

 

詳しいノウハウは、私のサムソエネルギーアカデミーのホームページに載っているので、ぜひご覧ください。

http://www.energiakademiet.dk

北原 まどか
この記事を書いた人
北原まどか理事長/編集長/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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