第24回:自然エネルギーで日本再生、アジアの友好を目指す
自然エネルギー財団、発足!
(環境ビジュアルウェブマガジン「ジアス・ニュース」での連載より)

3.11から半年。町ごとのみ尽くす津波の恐怖、原発爆発の前になすすべなく、目に見えない放射能への恐怖に怯え、絶望の中に立ちすくんだ記憶はまだ鮮明だ。ポスト3.11、私たち日本人は何に夢と希望を託すのだろう。歴史の転換点に居合わせていることは間違いない。自然エネルギーという大きな旗を掲げ、現代の草莽の志士たちが立ち上がっている。

 

被災地に足を運び、為政者たちを動かし、自らがプロジェクトを旗揚げし、そのプロセスがTwitterやUstreamで白日の下にさらされる。ソフトバンクの孫正義氏が立ち上げた「自然エネルギー財団」は、ソーシャル・オープンな新しい物語と言えよう。9月12日、自然エネルギー財団設立イベント「Paradigm Shift in Energy」と題したシンポジウムが、東京国際フォーラムで開催された。その第一幕には、全国自治体や世界各国から招かれたゲストと、Twitter応募で当選した約1,000人が集い、来るべき新しい時代のビジョンを共有した。

 

■孫正義氏が掲げる東アジアスーパーグリッド構想

 

角界のそうそうたるメンバーが揃った自然エネルギー財団設立イベント

10億円の私財を投入して財団を設立した孫正義氏の講演で始まった自然エネルギー財団設立イベント。孫氏は2030年に我々が目指すべき方向性として、(1)原発のミニマム化、(2)火力発電の依存度低下、(3)自然エネルギーの本格普及であることを確認した。再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)は来年夏に施行されるが、買取価格や買取期間の具体的数字についての本格的な議論はこれからだ。自然エネルギーの送電網への接続義務や、用地の規制緩和も普及には不可欠だ。「自然エネルギー産業が起こるように」と孫氏は念を押した。同時に、電力取引市場の活性化と、発電・送電の分離、託送料の適正化や、送電網の強化も求められる。

 

そこで孫氏が掲げたのが「東アジアスーパーグリッド構想」だ。通信業界では、すでに海底ケーブルを設置し終えているといい、「電力の送電網も同様の方式で、高圧・直流の海底ケーブルを張り巡らせ、日本だけでなく、中国や韓国、モンゴルなどとも提携しながら、東アジア全体で電力を融通し合いながら、自然エネルギーを普及していこう」という壮大なビジョンだ。

「人類が限られたエネルギー資源を奪い合う。このことが戦争の根底にある。自然エネルギーは安全で、安定していて、しかも安価に提供できるようになれば、これらの問題も解決するのでは」と、孫氏は力説した。

 

 

■国内外のプロフェッショナルが参集

 

自然エネルギー財団は、スウェーデンの前エネルギー庁長官のトーマス・コバリエル氏が理事長(代表理事)を、国連環境計画・金融イニシアティブ特別顧問の末吉竹次郎氏が副理事長(代表理事)を務める。ISEP(環境エネルギー政策研究所)の飯田哲也氏が業務執行理事兼政策イノベーション事業部ディレクターとして、国政、地方自治体首長などと連携し、自然エネルギーによるイノベーションの政策面からの実現を目指す。東京大学総長室アドバイザーの村沢義久氏は、業務執行理事兼テクノロジー・ビジネス開発事業部ディレクターとして、自治体やメーカーと協力して自然エネルギーの技術開発面でコスト低下を目指していく。「自然エネルギーがなぜ必要なのか」という問題提起をしながら、自然エネルギー産業育成に対する助成と、日本や海外のエキスパートとのネットワーキングを担当するのは、アドボカシー・助成事業部ディレクターの大林ミカ氏。事務局長を務めるのは水野恵美氏だ。

 

末吉代表理事はこの布陣で、「専門性に支えられた革新性と、世界の英知を集め日本が世界の国際問題を解決していく国際性をもち、何者にも依拠せずに公平・中立性・ガバナンスを保ち、常に公益のために働いてゆく」と決意表明した。

 

東電福島原発事故以来、内向きで、停滞しがちだった日本に、自然エネルギーを軸にパラダイムシフトを起こし、「未来志向の平和をアジアに育てるためのビジョンとも言える」(飯田氏)東アジアスーパーグリッド構想。末吉氏は「スーパーグリッドでアジアをつなぐという構想は、海に囲まれ地理的に孤立している日本が、世界へとつながっていく可能性を持つ」と期待感を語った。

 

■中国やモンゴルで台頭する自然エネルギー

 

この日はモンゴル・ニューコム社会長のツェレンプンツァグ・ボールドバター氏によるモンゴルの自然エネルギーについてのプレゼンテーションと、中国国家発展・改革委員会(NDRC)、エネルギー研究所副所長のリー・ジュンファン氏による「中国におけるエネルギーと再生可能エネルギーの展開」の講演が行われた。ゴビ砂漠を有するモンゴルでは、世界の電力需用量の66%をデザーテック(砂漠地帯で豊富な太陽光・太陽熱や風力で電力を生み出すこと)などで賄うことができるという試算があるほど、自然エネルギーに恵まれている。経済成長著しくエネルギー消費量の伸びも急増している中国では原発の新設が増えているが、それ以上に伸びを見せているのが自然エネルギーだ。中国の全エネルギーに占める再生可能エネルギーは16%、原子力は2.8%に過ぎない。風力は2010年には原発の4倍以上、44.73GWもの発電量だ。太陽光発電では世界シェアのトップ10のうち中国の会社が4社入っている。リー氏は「自然エネルギービジネスは国境を越える。技術協力、情報共有で、コストを削減し、国際的なサプライチェーンをつくっていこう」と呼びかけた。

 

また、米国のロッキー・マウンテン研究所会長のエイモリ・B・ロビンズ氏は、「米国でも化石燃料から効率的に自然エネルギーへの移行が進んでいる。炭素繊維などでの自動車を軽量化するなど、革新技術と両輪で走らせることが不可欠。エネルギーシフトを加速するには、政策面での革新も必要だ。日本が自然エネルギー分野で、世界でのリーダーシップを取り戻していくのを応援したい」と激励した。

 

 

■ものすごい汚染地帯を生み出した福島原発事故

 

午後のセッションでは、本特集でもインタビューを紹介したデンマークのサムソ・エネルギー環境研究所のゾーレン・ハーマンセン氏が、サムソ島での自然エネルギー100%プロジェクトについてプレゼンテーションした。ゾーレン氏は「サムソ島での次のステップとしては、2030年までに輸送燃料を含めた化石燃料を脱すること」と話した。ZERI財団設立者で”ゼロエミッション”の提唱者としても知られるグンター・パウリ氏は「ブルー・エコノミー」の概念について紹介。新たなイノベーション事例として、重力を利用したエネルギーや、水力発電によるコージェネレーション、下水処理場や汚泥の化学反応の多様性、太陽光発電の両側を利用するといった、「今ある技術を活用して競争力を高める手法」について、具体事例を交えながら紹介した。

 

これらの発表と議論を受け、財団代表理事の末吉氏は、「行動を起こさないコストの大きさは、行動を起こすコストの大きさを超える。地球温暖化などの問題解決策としての自然エネルギーは、今日の現実である」と述べ、トーマス・コバリエル氏は「いま我々の前にはものすごく大きなチャンスがある。最も優れた知を集結し、起業家精神をもって、変化を起こしてゆこう」と呼びかけた。

いま目の前にある問題解決に必死な我々に、孫氏の提案する東アジアスーパーグリッド構想はあまりに大胆なビジョンかもしれない。しかし孫氏はこう力説する。「迷った時ほど遠くを見よ。そこで見えた未来を現在に逆算して、そこに最短距離で向かうにはどうしてゆくのかを考えよう。3.11で受けた苦しみの問題解決にまっしぐらに向かう。そこには希望とチャンスがある」と。

 

地域での実践の積み重ねと、国境を越えた大きなビジョン。グローバルに、ローカルに、次に向かう道は示されている。

北原 まどか
この記事を書いた人
北原まどか理事長/編集長/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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